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体の病気

〔狭心症〕

 

 心臓病を大分類として示すだけでも、その種類は次のように多岐にわたります。

・狭心症 ・心筋梗塞 ・高血圧
・心不全 ・不整脈 ・肺塞栓症
・解離性大動脈瘤 ・本態性低血圧 ・閉塞性動脈硬化症
・下肢静脈瘤


 中でも生活習慣と関連性の深い心臓病として特に重要で注目されているのは、狭心症と心筋梗塞です。このページでは、心臓・血管の病気の中でも特に重要な狭心症について説明しています。

 心臓を働かせるための専用の血管が心臓を取り囲むようにあり、冠動脈とか冠状動脈と呼ばれています。

 狭心症は、心臓自体に血液を供給する冠動脈が狭くなったり、詰まってしまい、心臓を働かせている筋肉や心筋に十分な血液が流れなくなる状態をいいます。


 狭心症では、十分な酸素や栄養分が供給されないために、心臓を働かせる血管や心筋が酸欠や栄養不足となり細胞が壊れ死んでしまいます。狭心症の直接的原因は、冠動脈の動脈硬化症です。動脈硬化の原因には、老化の影響も確かにあるのですが、一番重要な原因は不適切な生活習慣にあります。

 狭心症になると、発作的に胸が締め付けられるような症状や圧迫感が現れます。発作は10秒~10分~30分くらいで消失しますが、呼吸困難、頭痛、嘔吐などを伴うこともあります。また、発作の症状を放置すると、心筋梗塞や心室細動などと呼ばれる更に重大な病気に発展する危険性があります。

 狭心症にみられるような虚血性心疾患(血液の供給が不足する状態)は、以前は日本人には少なかったのですが、食生活や生活様式の欧米化に伴い増加しています。ちょっと統計が古い(平成11年患者調査)ですが、現在の総患者数は、全国で100万人くらいもいて、毎年7万人の人が虚血性心疾患で亡くなっています。


どんな病気ですか? ◆「狭心症」とは、一体どんな病気なのかの説明です。
どんな病気ですか?

 心臓自体も一つの臓器として酸素と栄養分とを必要としています。心臓を機能させる心筋に酸素と栄養分とを送る血管が冠動脈と呼ばれます。

 冠動脈に問題があって十分な酸素と栄養分とが送られない病気は虚血性心疾患と呼ばれ、重症状態になれば、血管や心筋は壊死してしまいます。血流が不足状態ではあっても壊死には至らない状態が狭心症と呼ばれ、壊死してしまった状態は心筋梗塞と呼ばれる病気です。

 狭心症の発作は、冠動脈に動脈硬化がある人が急激な運動や強いストレスを受けた場合や熱い風呂での入浴などで、心臓に負担をかけたときなどに起こります。

 最初は心臓部の軽い痛みから始まり、締め付けられるような痛みとなり、強い圧迫感を感じることもあります。痛みや圧迫感は、軽い場合なら10秒以内、長くても15分程度で消滅します。よほど酷いときでも30分を超えることはありません。

 狭心症の発作で直接生命にかかわることは少ないですが、狭心症の症状が何度も繰り返すようであれば、やがて心筋梗塞(心筋などの壊死)に発展する危険性が大きくなります。この場合には生存は極めて厳しくなります。

 日本人の三大死因は、次の三つとされ、心疾患はそのひとつとなっていて、日本での年間発症数は15万人、死亡率30%となっています。

 ・悪性新生物(がん)
 ・心疾患(虚血性心臓疾患:狭心症・心筋梗塞症)
 ・脳血管疾患


どんな症状ですか? ◆「狭心症」の症状の説明です。
狭心症の症状

 狭心症の特徴的症状は、激しい胸の痛みが突然襲い、痛みは数秒~15分くらい続いて自然に消滅することです。痛みの程度は軽症から重症までさまざまで、患者は胸の締め付け感・絞扼感・圧迫感などを訴えます。激しい痛みで冷や汗を伴うこともあります。

 ・胸が締め付けられるように痛い。
 ・胸がつまりそう。
 ・胸苦しい。
 ・胸の奥が痛い。
 ・胸が押さえつけられる。
 ・胸が焼け付くように感じる。

 このように、多くの人が感じる症状は、胸骨の裏側あたりの前胸部の痛みや圧迫感が最も多く、胸全体、右左どちらかの胸、みぞおちなどに痛みを感じます。

 痛みは、しばしば頚部や左肩に向かう放散痛となって現れ、背中、喉、顎などに達することもあり、歯が浮くような感じをうったえる人もいます。ときには、左肩から腕にかけて痺れを感じる人もいます。

 狭心症発作の発症頻度も人によりまちまちです。月に数回程度の人もいれば、1日に何回も起こる人もいます。

 狭心症の発作時間は長くても15分以内ですので、もしも痛みがそれ以上続く場合には、単なる狭心症ではなく、心筋梗塞や心室細動を引き起こす危険が極めて大となります。

 特に、激しい頭痛、動悸や不整脈、呼吸困難、嘔吐などの症状を伴う場合には、生命の危険が迫っていますので、緊急に救急車を呼んで病院に行かなくてはなりません。


原因は何ですか? ◆「狭心症」の原因や発症の仕組みの説明です。
狭心症の原因

 狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の直接の原因は、冠動脈硬化ですが、これを誘引するのは、高血糖、高脂血症、体質遺伝(家族にそういう人がいる家系)、および特殊な性格などの危険因子です。

 特殊な性格の人とは、自信家、几帳面、仕事熱心、負けず嫌い、成功欲や支配欲が強く気性の激しい人、すぐイライラして怒りやすいタイプの人などです。いつも強いストレスや緊張に晒される人、酒、タバコ中毒の人なども危険です。

 虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)は、食生活やライフスタイルの欧米化に伴い増加しています。いずれにせよ、狭心症の最大の原因は、長い年月の悪い生活習慣の蓄積を見逃せません。また、あまりに几帳面の頑張り屋さんは、少し気を抜き、のんびりすることも重要です。


診断はどうなりますか? ◆「狭心症」の検査方法や診断方法の説明です。
狭心症の診断

 心臓病の検査は、日常の予防的健診などで行う一般的な検査と、発作などの発生によって緊急に行うものとがあります。

 検査そのものは、身体に直接針を刺したり、管を入れたりはしない非侵襲性検査と、身体に針を刺したり、管を入れたりする侵襲性検査とがあります。通常は非侵襲性検査を行い、異常が発見されれば侵襲性検査も行われます。

 心臓病の検査では、まず医師による問診や聴診が行われます。高血圧などが心臓病の原因の一つですから、血圧測定が行われます。

 心臓の現在の状態を知ることと、血圧降下剤などの薬の効果を判定するためのデータとなります。これらに異常が認められれば、心電図検査へと進みます。

心電図上にデルタ波出現

 左図は、正常な状態での心臓刺激伝道系での信号の流れる順序を示したものです。

 心電図検査では、P波、QRS波、T波という3つの波形が測定されます。

 P波は心房の電気的な興奮を示し、QRS波は心室の電気的な興奮を示します。T波は心室の電気的興奮が回復するときの波形です。

 心臓に何らかの異常があると、その異常特有の波形が現れるので、医師が心電図をみれば心臓の病気やその進行状態などを判断することができます。(図は国立病院大阪医療センター政策医療循環器病のHPより転用し一部を追加改変)

 狭心症などの虚血性心疾患の診断には、定められた運動をし心臓に負担を掛けながら、運動負荷心電図検査と呼ばれる測定をします。ベルトコンベアーの上を歩くような軽い運動をしながら心電図を測定します。

 狭心症であっても、胸痛がない静かな状態での心電図測定では特別な変化がないように見えますが、運動負荷心電図では、狭心症特有のパターンが現れるので、狭心症の正しい診断ができます。

 通常のクリニックなどで行える心臓病の検査は以上のようなものですが、これら以外にも次のような検査方法もあります。

 ・心エコー図検査(心臓超音波検査)
 ・胸部X線検査
 ・心臓カテーテル検査
 ・冠動脈造影検査
 ・心臓核医学検査
 ・CT
 ・MRI測定

 現実に発作が起こった場合などには、これらの検査が複数行われることもあります。


治療はどうやりますか? ◆「狭心症」の治療方法の説明です。
狭心症の治療方針

 虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)の予防的意味では、節度のある日常生活を心がけ、食べすぎ、飲みすぎを避け、バランスのよい食事を摂り、禁煙し、適度な運動を行うこと、また、十分な休養と睡眠をとることが必要です。

 しかし、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の発作や症状が起こった場合には、早期に適切な治療が必要です。

 治療方法は、症状や段階に応じて「薬物療法」「カテーテルによる治療」、および「外科手術」などとなります。

 狭心症や心筋梗塞の発作が起こったときには、ためらうことなく救急車を呼び、CCU(冠動脈疾患の集中監視と治療体制を備えた設備)がある緊急病院へ搬送してもらい、手当てをうけることが大切です。早ければ早いほど救命率が上がります。

薬物療法

 薬物療法としては、次のような医薬が、症状に合わせて使用されます。

 ・血管を拡張して血液の流れをよくする血管拡張剤
 ・血圧を下げて心臓の負担を軽くする血圧降下剤
 ・血液の粘度を下げ血液をサラサラにする抗血小板剤
 ・尿が多量にでるようにして心臓の負担を軽減する利尿剤
 ・心臓の働き自体を強くする強心剤
 ・脈の乱れを正常にする抗不整脈剤など

 狭心症の緊急特効薬は、血管拡張剤としての硝酸薬(ニトログリセリン錠)やカルシウム拮抗薬です。  中でも硝酸塩の舌下錠は即効性があり狭心症の発作時に特効的に効きます。発作が起きそうなときに直前に用いることもできます。

 皮膚に貼って、皮膚から薬成分を吸収させる貼付薬・経皮吸収剤もあります。これはあくまでも予防薬であり、発作止めにはなりませんが、効き目の持続性があるので就寝前に貼っておけば、早朝発作を防止する効果があります。

 貼付薬は、お腹の上部や胸、上腕部などで皮膚の柔らかい部位に貼りますが、皮膚への刺激を避けるため、毎回、少しずつ貼る場所を変えないといけません。

 尚、この貼付薬には、眩暈(めまい)やふらつき、立ちくらみ、血圧低下を起こし易い副作用があります。長時間貼付し続けると激しい頭痛が起こることもあります。

 急に立ち上がったり、激しい動作はさけてください。車の運転なども注意が必要です。副作用が出る場合には危険な場合もありますので、すぐに主治医に相談してください。

カテーテルによる治療

 カテーテルによる治療方法は、狭心症や心筋梗塞の直接原因である傷んで狭くなった冠動脈の病変部内部に直径2~4ミリ、長さ20ミリくらいの小さな風船を挿入し膨らませて、冠動脈を内側より拡張する方法です。

 このカテーテルによる方法は、比較的軽症の患者に適用されます。風船は血管を広げた後で縮ませて抜き去ります。この他にも、ステントと呼ばれる小さな筒状の金網を血管の内部に入れて膨らませ、そのまま入れておく方法もあります。

外科手術

 更に重症の患者には冠動脈バイパス手術という、大掛かりな外科治療が必要となります。この方法では、狭くなった血管部分や、閉塞した病変部の先に、別の血管を繋いで血液の流れをよくする血液のバイパス路をつくる方法です。

 以前には、人工心肺を使いながら心臓を完全停止させてこの手術は行われましたが、最近の医学の進歩で、現在では心臓を停止させることなく手術することが可能となっています。

 とはいえ、いずれにしても極めて高度な設備とテクニックが必要な手術であることに違いはありません。