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急性膵炎

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 膵液に含まれる消化酵素が、膵臓自体を消化してしまう病気が急性膵炎です。胃の後ろに位置する膵臓は、消化酵素を含む膵液を十二指腸に分泌し消化を助けます。通常なら、膵液は十二指腸で初めて活性化するのですが、何らかの異常により膵臓内で活性化されると、膵臓自体を消化してしまい急性膵炎を発症させます。通常は、上腹部の痛みが数日続く程度ですが、重症になるとショック、意識障害、腎不全などを誘引します。


 急性膵炎が発症すると、膵臓だけでなく、周囲の消化管や腎臓・肝臓・心臓・肺・脳などにも影響が及び、ショックや腎不全・呼吸不全などを誘発することがあります。この場合、死亡率は極めて高くなります。

 急性膵炎の原因は、アルコールの長期摂取や過剰摂取、脂肪の多い食品の過食、胆石症、胆道炎などです。胆石症とアルコールの過剰摂取は特に大きな要因です。

 食生活の欧米化、アルコール摂取の増加が急性膵炎の増加傾向に拍車をかけています。急性膵炎は、30〜50代の人に多く発症しますが、アルコール起因の患者は男性に多く、胆石症は女性に多く見られます。

 重症膵炎は難病と指定されていて、年間に発症する患者数は約2万人あり、そのうちの25%相当の人が死亡しています。

消化器:急性膵炎
急性膵炎とは?  急性膵炎は、膵組織からの酵素の逸脱によって、組織が自己消化されて起こる炎症です。リパーゼ、ホスホリパーゼ、エラスターゼなどの膵酵素が、種々の原因で膵臓の細胞周囲の組織に漏れ出して、膵臓の自己消化を招きます。

 急性膵炎の症状としては、上腹部の激痛、必ずみぞおちから背中へ放散する激しい腹痛がでます。腹痛は、膵炎発症時より時間が経つにつれてひどくなり、持続的な激痛のなります。特に、アルコールの摂取や暴飲病食、脂肪分の多い食物を摂取した後では、ひどくなり、吐き気、嘔吐、発熱、腹部膨満感、時には黄疸を伴うこともあります。

 腹痛は仰向けに寝るとひどくなり、海老状に前かがみの姿勢でやや軽くなる特徴があります。上腹部の痛みは、軽症なら数時間〜2日くらいで鎮まりますが、こじれて胆道感染や膵膿瘍などの合併症を起こせば、39〜40度の発熱がでます。

 多くの場合は「急性間質性(浮腫性)膵炎」で軽症で済みますが、膵酵素が血管に作用して「急性出血性膵炎」になったり、膵細胞や脂肪組織に作用して壊死を生じる「膵臓壊死」に発展すると、生命の危険もあります。急性出血性膵炎のような重症になると、ショックや呼吸困難、高度の脱水が出現します。特に、全身ショック症状が出るなら、生命の危険が極めて大です。

 重症時には、臍の周囲が暗赤色に染まる「カレン徴候」が現れます。これは、膵液が組織を溶かして血性滲出液が臍周囲の皮下組織に沈着し暗赤色に見える状態です。さらに、左側腹部の周囲が暗赤色に染まる「グレイ・ターナー徴候」と呼ばれる症状が現れるようになります。これは、血性滲出液が左側腹部の皮下組織に沈着して暗赤色に見える状態です。

急性膵炎の原因  急性膵炎の主な原因は、アルコールの過剰摂取と胆石症です。その他にも高脂血症、薬剤の副作用、膵臓がんなどがあり、更に、上腹部の手術なども誘引原因となります。

急性膵炎の診断  急性膵炎の診断は、臨床症状・徴候、血液・尿検査、画像診断、膵逸脱酵素の上昇などを総合的に判断して行います。慢性膵炎の画像診断は、超音波やCTスキャンなどを用いて膵臓の線維化や膵石の有無を調べます。画像診断で異常が見つかる場合には、病態はかなり進行していることが多いとされます。急性膵炎が疑われる場合の検査は下表のように実施されるのが普通です。

問診・身体検査 問診し、身体診察を行う。
血清アミラーゼ測定 急性膵炎の診断に対する血清アミラーゼの測定をする。通常は血中アミラーゼ値の上昇を認めることで診断できるが、急性膵炎の重症度判定にはこの結果を利用しません。急性膵炎でも劇症肝炎でも、臓器全体が破壊されてしまい、散逸酵素が上昇しないことがあるからです。
血清リパーゼ測定 血清アミラーゼの限界を補うための血清リパーゼの測定をする。他疾患との鑑別が問題となる場合、血清リパーゼが血清アミラーゼを含めた他の膵酵素に比べて最も優れているからです。
胸・腹部単純X線写真 急性膵炎が疑われる場合には、胸・腹部単純X線写真を撮影します。
超音波検査 急性膵炎が疑われる場合には、超音波検査を施行する。
CTスキャン 臨床所見や血液・尿検査、超音波検査などによって急性膵炎の確定診断ができない場合、または膵炎の成因が明らかでない場合にはCTスキャンで確認します。

 1990年に当時の厚生省が特定疾患難治性膵疾患調査研究班により「急性膵炎の診断基準」を定め、通常は今日までこの診断基準が用いられています。この際の鑑別診断の対象は、腹痛を伴う急性腹症とされて疾患であり、消化管穿孔、急性胆嚢炎、イレウス、腸間膜動脈閉塞や急性大動脈解離などが挙げられます。

急性膵炎の診断基準 (1)上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある。
(2)血中、尿中あるいは腹水中に膵酵素の上昇がある。
(3)画像で膵に急性膵炎に伴う異常がある。

上記3項目中2項目以上を満たし、他の膵疾患および急性腹症を除外したものを急性膵炎とする。

ただし、慢性膵炎の急性発症は急性膵炎に含める。また、手術または剖検で確認したものはその旨を付記する。

注:膵酵素は膵特異性の高いもの(p-amylaseなど)を測定することが望ましい。


 適切な治療を施すためには、発症後48時間以内での「重症度判定」が重要となります。膵臓の損傷や破壊の程度によっては、数日で軽快するものから、数時間内に重篤になるものまであり、発症初期の診断と治療がその後の経過に大きく影響するからです。

 1998年に厚生労働省特定疾患難治性膵疾患調査研究班で作成された急性膵炎の「重症度判定基準」があります。また、それに伴う急性膵炎のステージ分類も示します。

予後因子 判定基準 ポイント
予後因子1 ショック、呼吸困難、神経症状、重症感染症、出血傾向、Ht≦30%(輸液後)、BE≦−3 mmol/L、BUL≧40 mg/dL、または血清 Cr≧2.0 mg/d 各2点
予後因子2 Ca≦7.5mg/dL、FBS≧200 mg/dL、PaO2≦60 mmHg(room air)、LDH≧700 IU/L、総蛋白≦6.0 l/dL、プロトロンビン時間≧15 秒、血症板≦10万/mm3、CTGrade IV/V 各1点
予後因子3 SIRS診断基準における陽性項目数≧3
年齢≧70歳
2点
1点

ステージ番号 症状程度 重症度スコア
Stage 0 軽症急性膵炎
Stage 1 中等症急性膵炎
Stage 2 重症急性膵炎(重症度I) 重症度スコア2〜8点
Stage 3 重症急性膵炎(重症度II) 重症度スコア9〜14点
Stage 4 重症急性膵炎(最重症) 重症度スコア15〜27点

急性膵炎の治療  基本的な急性膵炎の治療方針は、絶食による膵の安静、十分な輸液、呼吸・循環動態の維持、痛みの治療、および感染症などの合併症の予防となります。

 急性膵炎が比較的軽症の場合には、食事の中止、脱水改善のための点滴、静脈からの高カロリー輸液またはチューブを用いての栄養補給、および膵臓の消化ホルモンをブロックする薬や細菌感染予防のための抗生物質の投与を行います。

 症状が重いものについては、初期の十分な輸液、薬物療法、経空腸的な栄養管理、選択的消化管除菌、腹腔洗浄、腹膜灌流、血液浄化法、壊死性膵炎における蛋白分解酵素阻害薬と抗菌薬の持続動注療法、内視鏡的治療あるいは外科的手術などを症状に応じて実施します。

初期の十分な輸液 炎症による循環血漿量の低下を補充するために、症状が軽症であっても、十分な初期輸液を行います。

重症例では血圧、中心静脈圧、ヘマトクリット、血清総蛋白濃度や時間尿量を指標にして、輸液量を決定し、循環動態の安定を確保します。
薬物療法 <鎮痛剤による疼痛対策>
 精神的不安解消のためにも、早期より十分な除痛をおこないます。軽症〜中等症では、塩酸ブプレノルフィンの静脈注射を持続的に行います。

<抗菌剤の予防的投与>
 軽症〜中等症では不要ですが、重症の場合には、腸内細菌による感染症の合併は危険なので、イミペネムなどの抗菌剤を投与します。

<重症例に対する蛋白分解酵素阻害剤の大量持続点滴療法>
 軽症〜中等症では効果が期待できませんが、重症の場合は有用性が認められています。

<軽症と中等症に対するヒスタミンH2受容体拮抗薬>
 H2受容体拮抗薬の直接的な効果はないものの、急性胃粘膜病変や消化管出血合併例では投与することもあります。

経空腸的な栄養管理  重症例では、早期から経空腸的な栄養管理の実施が、感染などの合併症が減少させる効果があります。

重症例での選択的消化管除菌  重症急性膵炎の膵および膵周囲の感染症の予防するために、腸内細菌に有効な非吸収性抗菌薬を投与します。

腹腔洗浄、腹膜灌流  腹腔内に貯まった毒性物質を洗浄液で洗い流すと重症膵炎が改善される可能性があります。

重症急性膵炎における血液浄化法  血液中の悪い物資の除去や腎臓・心臓・肺などの多臓器不全への進行を防止する目的で、発症早期の持続的血液濾過透析が行われます。

壊死性膵炎における蛋白分解酵素阻害薬と抗菌薬の持続動注療法  蛋白分解酵素阻害剤と抗菌薬を用いた持続動注療法は、重症膵炎の死亡率や感染合併率を改善できる可能性があります。

内視鏡的治療・外科的治療  胆石が原因の急性膵炎は、内視鏡的治療あるいは外科的治療が必要となることがあります。

外科的手術  発熱や炎症反応の悪化で膵局所の感染が疑われるなら、CTスキャンや超音波ガイドで監視しながら、穿刺吸引をして細菌の存在を調べます。感染性膵壊死が確認された場合は、膵壊死部摘出術などの外科的処置をします。

 手術後も、洗浄用のチューブを留置し持続的に洗浄します。

 重症膵炎から約4週間以降に膵臓付近に膿の貯留が認められる場合、外科的、または皮膚を介して管を入れて、超音波で監視しながらドナレージ(排膿)を行います。