|
慢性腎炎とは?
|
慢性腎炎は正式には「慢性糸球体腎炎」という病気で、急性腎炎の症状が軽かったりしたために、適切な治療をしなかった場合など、繰り返し的に急性腎炎が発症し、やがて慢性化してなります。
急性腎炎に罹った後、1年以上にわたって血尿・たんぱく尿が続いたり、顕著な急性腎炎の症状はなくても、尿の異常が1年以上続く場合、慢性腎炎と診断されます。
慢性腎炎の症状は、基本的には急性腎炎と同じように、「血尿・たんぱく尿」「高血圧」「むくみ」の三大症状が現れます。このような症状が1年以上にわたって継続的に現れるのが慢性腎炎ということになります。
慢性腎炎の症状は、ほとんど自覚症状がないもの、顕著な高血圧を伴うもの、ネフローゼ症候群が見られるもの、そして腎不全となって最終的に尿毒症になるものなどがあります。
慢性腎炎になると、腎臓の糸球体が部分的に損傷されてしまいます。その結果、血尿・蛋白尿や高血圧、むくみ、貧血などの主体症状が慢性的に現れる他、手足のしびれ、目のチカチカ、眩しい目、頻尿、青い顔色、にきびや湿疹、鼻時などの症状も出てきます。これをそのまま放置すると、糸球体の破壊が更に続き、ついには腎機能がほとんど機能しなくなる腎不全の状態まで進行してしまいます。
ここまで病状が進行してしまった状態は、「尿毒症」という病気で、慢性腎炎の典型的な症状に加えて、疲労感、食欲減退、動悸、吐き気、嘔吐、歯茎の出血、気力減退、皮膚の痒み、腹水など多くの症状が現れてきます。症状が、尿毒症まで進行してしまうと、透析療法や腎臓移植を行わないと命に関わることになります。
|
|
慢性腎炎の原因
|
体内にウイルスや細菌などの抗原が侵入してくると、それに対抗するために、体内で抗体がつくられます。この抗原とそれに対するIgA抗体とからなる免疫複合体が、腎臓の糸球体に沈着すると、それを白血球が攻撃することで腎臓に炎症が起こります。これが慢性腎炎の主な原因と考えられていてIgA腎症といわれます。急性腎炎からこのような状態に移行する場合もあります。
IgA腎症は、20〜30代の人に多く発症し、慢性腎炎患者の30〜40%はこれによるといわれます。IgA腎症に次いで多いのが、「ネフローゼ症候群」と呼ばれるもので、体内に侵入してきた抗原と抗体との免疫複合体が、腎臓のマルピギー小体の基底膜に沈着して発症するものです。特に、小児に多く、40歳代までの発症が認められます。
|
|
慢性腎炎の診断
|
慢性腎炎の検査は「尿検査」「血液検査」および「腎生検」などで行われます。
一般に、慢性腎炎を自覚症状から発見することは困難です。従って、健康診断などでの尿検査や血液検査などで、血尿やたんぱく尿がでていないかが最初の検査となります。血尿やたんぱく尿は、泌尿器科的な病気でも認められる症状なので、これだけの証拠では診断はされません。
次に行われるのが、血液検査によるクレアチニンの測定などを行います。腎臓機能が低下するとクレアチニン係数の数値は上昇します。このクレアチニン係数は感度が悪く、腎機能低下を的確に検出できないため、クレアチニンクリアランスという方法も用いられます。この係数が小さいほど異常が大きいことを意味します。
尿検査と血液検査だけでは慢性腎炎の正確な診断には不十分で、最終的には「腎生検」が行われます。腎生検では、背中から腎臓に対して特殊な針を刺し、腎臓組織の一部を採取し、光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察して正確な病理組織診断を行います。沈着している免疫複合体の有無なども蛍光抗体法によって確認されます。
|
|
慢性腎炎の治療
|
慢性腎炎の治療は、その進行段階や症状によって「食事療法」「薬物療法」「人工透析」および「腎移植」が選択されます。
|
食事療法
|
安静時の尿検査に異常がなくても、少し運動するとたんぱく尿がでる人は多くいます。このような場合であれば、クレアチニンクリアランスの結果で腎機能に問題がないのであれば、特別な治療は不要ですが、定期的な健康診断による推移を観察することは必要です。
慢性腎炎では、どのような場合でも食事療法は欠かせません。中でも蛋白質や塩分の摂取量は厳しく管理しなくてはなりません。
・低たんぱく:腎機能の低下を防ぐ。
・低塩:腎機能低下、むくみ、高血圧の予防。1日7グラム以下。
・ビタミン、カルシウム摂取:腎臓、血管の壁を強化したんぱく質の代謝を促す。
|
|
薬物療法
|
慢性腎炎を根治できる特効薬はないので、病状の進行を抑制することが治療の目標となります。また、高血圧のコントロールを行います。
治療薬には、副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)、抗凝固剤、血圧降下剤のカクテル療法を行うこととなります。
|
|
人工透析
|
食事療法や薬物療法によっても治療効果が認められない場合や、効果が少ない場合には、最終的に人工透析による治療が必要です。通常、人工透析は、一度始めたら一生涯にわたって定期的に行う必要があります。
|
|
腎移植
|
人工透析が必要な患者で、もしも適切なドナーが見つかるなら、腎移植をすることも可能です。この手術が成功すれば、人工透析なしでの日常生活は可能となります。
|
|
|
クレアチン
|
クレアチンは、窒素を含有する有機物の一種で、肝臓や腎臓、膵臓、脾臓などの臓器で、「アルギニン」「グリシン」「メチオニン」の3種のアミノ酸から合成されます。また、肉や魚などの食物やサプリメントから摂取することもできます。
体内で合成されたクレアチンは、血流に乗って、95〜98%が骨格筋に運ばれます。筋肉のエネルギー源として骨格筋組織に貯蔵されます。残り数%のクレアチンは、心臓や脳、精巣などに蓄えられます。
体重70kgの健康な男性のクレアチン体内量は約120〜140gで、一日に約2〜3gが消費され、その分が合成・摂取されて、バランスが保たれています。
|
|
クレアチンリン酸とATP
|
筋肉内に取り込まれたクレアチンの一部分は、「クレアチンキナーゼ」という酵素の作用で「クレアチンリン酸」という物質に変換され、エネルギー源として貯蔵され、筋肉が瞬発力を必要とする瞬間などに活用されます。
人間が筋肉を使って運動するときに、筋肉の収縮に使用されるエネルギーは「アデノシン三リン酸(ATP)」という物質から供給されます。このATPは、「アデノシン」+三つの「リン酸」から成っています。
|
|
クレアチニン生成とエネルギー放出
|
ATPが持つ三つの「リン酸」のうち一つを放出して「アデノシン二リン酸(ADP)」という物質に変化するとき、「クレアチニン」という物質が生成され、同時に多量のエネルギーを放出します。
いい方を変えると、ATPが分解されると「アデノシン二リン酸(ADP)」と「クレアチニン」という物質になり、そのとき多量のエネルギーが放出され、それが人体を動かしたり脳を働かせる原動力となるのです。特に、筋肉運動で瞬発力を発揮するためのエネルギーとなるのです。
筋肉中に存在するATPの量はごく少量なので、このエネルギーは主に「瞬発力」を発揮するために使われますが、直ぐに消費し尽くされてしまいます。そこで、新たな「クレアチン」が供給されて、不足状態となったATPを補給するための反応が起こります。
|
|
ATP再生とクレアチニン
|
筋肉中に存在するATPの量はごく少量なので、このエネルギーは主に「瞬発力」を発揮するために使われますが、直ぐに消費し尽くされてしまいます。そこで、新たな「クレアチン」が供給されて、不足状態となったATPを補給するための反応が起こります。
こうしてクレアチンは、役割を終えると、最終的に「クレアチニン」という物質に変化します。即ち、クレアチニンは、筋肉運動のエネルギー源となるクレアチンが代謝されてできた物質で、尿酸や尿素窒素と同様に老廃物のひとつとなり、腎臓から尿に排せつされることになります。
筋肉で生成されたクレアチニンは、血液に運ばれてすべて腎臓に移動します。クレアチニンは腎臓の糸球体で濾過されますが、尿素窒素とは違って尿細管ではほとんど再吸収されずに、尿中に排泄されます。
このためクレアチニンの血中濃度は腎臓の重要な機能である「濾過機能」の指標として用いられています。腎臓に何らかの疾患があって、腎糸球体の濾過能低下や尿排泄障害発症時には、クレアチニンが血清中に停滞し、血清中残存「クレアチニン濃度」が上昇することになります。
|
成人男性
|
0.6〜1.0 mg・dL
|
一般にクレアチニン濃度は筋肉量に比例します。そのため、筋肉量の多い男性の方が女性よりも20〜50%程度高い値となります。
|
|
成人女性
|
0.4〜0.8 mg・dL
|
尚、血中クレアチニン濃度の上昇、あるいは低下で想定される疾患などとしては、次のようなものがあります。
|
高度上昇・中等度上昇
|
血中クレアチニン濃度が、2[mg/dL]以上にまで上昇している段階では、しばしば「腎不全」を初めとして、急性腎炎・慢性腎炎・尿毒症・腎盂腎炎・腎臓結石・肝硬変・心不全などが認められます。
血中尿素窒素(BUN)検査や、K、P、Ca、尿酸などの測定を行い、直ちに腎不全対策を始めなくてはなりません。
|
|
軽度上昇
|
血中クレアチニン濃度が、1.2〜2.0[mg/dL]程度の軽度上昇では、しばしばあるいは時に、脱水、心不全、ショック、糸球体腎炎、間質性腎炎、尿路結石、前立腺肥大、先端巨大症などが認められます。
「尿検査」や「クレアチニンクリアランス」「腎臓の超音波検査」「水分の出入りチェック」などをして重大な問題が潜んでいないか確認することが大切です。
|
|
基準下限以下
|
血中クレアチニン濃度が、0.4[mg/dL]以下では、しばしば、妊娠、糖尿病初期、長期臥床が認められます。また、時に尿崩症や筋ジストロフィー、多発性筋炎、筋萎縮性側索硬化症など筋肉量が少なくなる疾患などが認められます。
念のため、原因疾患の診断をした方がよいかもしれません。
|
|
|
クレアチニン係数
|
尿中クレアチニンの排泄量は、年齢や体重などによる筋肉の発育と運動量とに関係していて、個人差があります。このため、尿中へのクレアチニン排泄量を「クレアチニン係数」という指標に変換して、腎機能状態の把握に用いることがあります。
クレアチニン係数は、24時間中分の尿の全量に対して、尿中に排泄されるクレアチニンの量を、体重1kg当りに換算した量です。
|
(24時間尿中クレアチニン排泄量[mg/日])
|
|
【クレアチニン係数】=
|
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
|
|
(体重[kg])
|
クレアチニン係数に変換すると、比較的個人差が少なくなり、健常成人男性では、ほぼ20〜26、女性では14〜22の範囲の値をとります。このクレアチニン係数の有用性は、他の蓄尿を必要とする検査において、採尿が正しく行われたかの確認や、筋肉の発達度の推定などで発揮されます。
しかし、クレアチニン係数は、感度が悪いといわれ、これに代わる指標として、後に述べる「クレアチニン・クリアランス」が一般的に使用されます。
|
|
血清クレアチニン濃度
|
血清クレアチニン濃度は、腎臓における尿の濾過機能低下に応じて上昇します。そのため、腎機能低下状況の確認や腎障害、尿路閉塞性疾患などの経過観察、治療効果の確認に活用されます。また、血液の人工透析が必要な場合の透析の導入時期決定などにも重要な判断因子となります。
ところで、腎糸球体の濾過機能(GFR)の代謝能はとても大きくて、その能力が正常時の半分以下にまで低下しないと、血清中のクレアチニン濃度の上昇は認められません。逆にいえば、血中クレアチニン濃度が上昇しはじめたときには、腎臓疾患はかなり進行しているということになります。
一般的に、腎機能の50%以上が失われた慢性腎不全状態では、血清クレアチニン濃度が2[mg/dL]以上になります。
血中クレアチニン濃度がわずかに増加していると認められる段階でも、腎糸球体の濾過機能(GFR)は、正常時の30〜40%程度にまで低下しています。
尿蛋白が持続的に陽性となり、腎機能が正常の20%〜30%以下になってしまうと、もはや完全な「腎不全」の病態となり、食事制限などを行っても、血清クレアチニン濃度が正常化することはなく、常に軽度上昇状態が続きます。
また、腎機能が正常の5〜10%以下まで低下すると、末期腎不全の状態と考えられ、血清クレアチニン濃度は非常な高値を示し「尿毒症」の症状を呈するようになります。血中クレアチニン濃度の正常値は概ね 1.0[mg/dL]以下ですが、この値が5.0[mg/dL]超となるようなら、腎透析(人工透析)が不可欠となります。
|
|
クレアチニン・クリアランス
|
クレアチニン・クリアランスは、腎臓が体内に蓄積した老廃物を、尿として排泄する能力を調べる検査です。別ないい方をすれば、この方法はクレアチニンなど身体内に蓄積した老廃物を、尿中に排出する効率を測定する検査で、腎機能の低下を早期に検出できる方法です。
クレアチニン・クリアランスの値が概ね、100[ml/min]以上であれば正常です。通常、クレアチニン・クリアランスが、50[ml/min] 以下となれば、慢性腎不全と診断され、もしも10[ml/min]以下という状態であれば、人工透析による治療が必要な状態です。
クレアチニン・クリアランスは、次の計算式で求められます。
Ccr=(U * V)/ S * 1.73/A
Ccr :クレアチニン・クリアランス[ml/min]
U :尿中クレアチニン濃度[mg/dL]
V :1分間尿量[ml/min]
S :血清中レアチニン濃度[mg/dL]
1.73:日本人の平均体表面積[m2](日本腎臓学会2001)
A :対表面積[m2]
ここで、体表面積A[m2]の計算式はいろいろと提案されているが、Du Bois の式は次のようになっています。
A[m2]={(体重[kg])**0.425}*{(身長)**0.725}* 0.007184
クレアチニン・クリアランスの正常値の範囲は、下表のようになっていますが、通常、男女ともに、100[ml/min]以上であれば正常とされます。
| 男性 |
97〜137[ml/min] |
| 女性 |
88〜128[ml/min] |
40歳を過ぎると、10年、年齢が上がるごとに、クレアチニン・クリアランス値は約10%低下するのですが、想定以上に低すぎるときは腎機能が低下していることを意味します。
低下の度合いが、50〜70[ml/min]で「軽度障害」、30〜50[ml/min]で「中等度障害」、30[ml/min]以下で「高度障害」となります。高度障害の状態では、尿毒症を呈するようになり、極めて危険な状態です。
クレアチニン・クリアランスが異常値を示す場合、次のような疾患・病気が考えられます。
|
低値を示す場合:高度障害
|
クレアチニン・クリアランス値:30[ml/min]以下
尿毒症の状態であり、「心臓麻痺」「腸閉塞」「昏睡」などを引き起こす極めて危険な状態です。また、重度の「心不全」や「糸球体腎炎」「腎硬化症」「糖尿病性腎炎」「膠原病」「尿管閉塞」などによる腎障害が考えられます。
|
|
低値を示す場合:中等度障害
|
クレアチニン・クリアランス値:30〜50[ml/min]
中等度の「心不全」や「糸球体腎炎」「腎硬化症」「糖尿病性腎炎」「膠原病」「尿管閉塞」などによる腎障害が起こっているかも知れません。
|
|
低値を示す場合:軽度障害
|
クレアチニン・クリアランス値:50〜70[ml/min]
軽度の「心不全」や「糸球体腎炎」「腎硬化症」「糖尿病性腎炎」「膠原病」「尿管閉塞」などによる腎障害が起こる可能性があります。
|
|
高値を示す場合
|
糖尿病、末端肥大症、妊娠などが想定されます。
|
クレアチニン・クリアランス検査は、相当な手間がかかるため、簡便に推定する方式が考案されています。このような方法は、あくまでも簡便法なので、明らかに腎機能低下が疑われる状態では、正式な方法でクレアチニン・クリアランス値を求めることが推奨されます。
ここでは、コッククロフトとゴールトにより提唱された算定式を示します。コッククロフトとゴールトの計算式では、血清クレアチニン濃度と年齢、体重を用いて、値を推定します。この推定式は、18歳以上の成人用で、乳幼児や60歳以上の筋肉質の人には適用されません。また、女性では、算出結果の値を0.85倍します。
Clcr = (140−Age)* Weight / 72 / Scr
Clcr :クレアチニン・クリアランス[ml/min]
Scr :血清中レアチニン濃度[mg/dL]
Weight:体重[kg]
Age :年齢[−]
|