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糖尿病性腎症

 糖尿病のために血糖値を適正範囲に制御できなくなって、高血糖状態が長く続き、腎臓の機能が低下した状態を糖尿病性腎症といいます。初期段階では症状は出にくいものの、長期間放置するとネフローゼ症候群を経て、腎不全、尿毒症に進行してしまいます。


 糖尿病腎症は、糖尿病の3大合併症のひとつです。糖尿病を患ってから10年以上の長期間にわたって、正しい治療をせずに高血糖状態を続けていると、腎臓の糸球体にある毛細血管が動脈硬化を起こして固くなり、糸球体組織が粗くなり濾過機能が低下します。

 こうなると、たんぱく質は糸球体を通り抜けて尿に出てしまったり、尿をつくる働きが低下して老廃物が体内に蓄積します。これが糖尿病性腎症で、高血圧やむくみなどの症状が起こります。

 糖尿病性腎炎は、治療を怠り病状が進行すると、腎不全から尿毒症となり、最終的には透析が必要な状態となってしまいます。日本で、腎不全が末期状態となり透析が必要となる原因は糖尿病です。

腎臓・泌尿器:糖尿病性腎症
糖尿病性腎症とは?  糖尿病性腎症は、糖尿病の三大合併症のひとつです。10年以上もの長期にわたって糖尿病を患い、しっかりした管理ができず高血糖状態が継続していると、腎臓の糸球体の細小血管障害が起き、硬化して数が減少していきます。

 これにより腎臓機能が低下し、尿中にたんぱく質が出てきたり、高血圧やむくみなどの腎炎と同様な症状が現れてきます。この症状を放置すれば、確実に進行し、腎不全から尿毒症となり、最終的には透析が必要となります。

 糖尿病性腎症の症状は、その症状の程度などにより「第1期」〜「第5期」に分類されています。

第1期(腎症前期)  特別な自覚症状はありません。

 しかし、糸球体濾過量(GFR)が増加する、糸球体濾過過剰状態となります。
第2期(早期腎症)  第1期の発症から、5〜15年で発症する。この段階でも自覚症状はありません。

 微量のアルブミンが尿中に流れ出る、微量アルブミン尿が見られます。これは血糖コントロールによって消失します。この時期でも糸球体濾過過剰は継続していますが、血尿は発症していません。この頃から、高血圧が発症し始め、高血圧と腎障害の悪循環(腎障害→高血圧→腎障害→高血圧)が起こります。
第3期(顕性腎症) <第3期A>
 ・尿検査用試験紙で尿蛋白が陽性となる持続的蛋白尿を呈する時期です。通常は、特別な自覚症状はありませんが、病変としては、既に不可逆病変となっていて元に回復することはできません。

<第3期B>
 ・続発性のネフローゼ症候群を呈するようになります。低アルブミン血症によるむくみ(浮腫)やうっ血性心不全を生じるようになります。
第4期(腎不全期)  あきらかな自覚症状として、浮腫に加え、倦怠感、悪心、精神的不安定、掻痒感などの尿毒症症状が顕著に生じはじめます。

 糸球体が濾過した、原尿の量であるGFR(糸球体濾過量)が低下し、血清クレアチニン値が増加します。
第5期(透析療法期)  腎機能がほとんど消滅してしまい、透析療法を行わなければ、尿毒症症状が容易に生じ死に至ります。

糖尿病性腎症の原因  腎臓の重要な構成部位である糸球体は、血液を濾過し、血液中の老廃物を尿として排泄する濾過器の働きをしています。

 糖尿病が進行し、高血糖状態が長期にわたり継続すると、糸球体を構成している毛細血管が動脈硬化を起こし、硬化して糸球体自体の目が粗くなってしまい、糸球体本来の濾過機能が低下してしまいます。糸球体の目をたんぱく質が通り抜けてしまい、尿蛋白が出るようになります。更に、尿を生成する機能が低下することで、老廃物が排泄できなくなり体内に蓄積するようになります。これが糖尿病性腎症です。

糖尿病性腎症の診断  糖尿病性腎症の検査は「尿一般検査定」「腎臓生体針検査(病理検査)」および「腎臓超音波検査」などによって行われます。これらの検査結果に基づいて、病状が、第1期〜第5期に分類されます。

尿一般検査  方法は、普通の採尿検査で、尿中微量アルブミン測定を行います。
腎臓生体針検査
(病理検査)
 腎臓に針を刺して細胞サンプルを採取して、病理検査を行います。糖尿病性腎炎が進行すると、毛細血管基底膜が肥厚し、メサンギウム基質が増加する性質があります。病状が第1期でも糸球体メサンギウム領域に結節性病変ができ、腫大します。
腎臓超音波検査  糸球体が腫大するため、腎不全になっても腎臓は萎縮せず、腫大します。

糖尿病性腎症の治療  糖尿病性腎炎の治療は、病状の進行状態によって「血糖管理」「食事療法」「薬物療法」「人工透析」および「腎移植・膵腎移植」のように行われます。

 糖尿病性腎炎は、初期の段階では何ら自覚症状がなく、検査により蛋白尿がでるようになった段階では、既に発病していて完治することは不可能となっています。最近では、尿中の微量なアルブミンを検査し、糖尿病性腎炎を初期段階で発見できるようにもなってきました。

 糖尿病の人は、早期発見により糖尿病を厳しくコントロールすることで腎症の進行を抑制することはできます。早期発見こそが最大の治療法です。

血糖管理  糖尿病性腎症は、糖尿病により長期にわたり高血糖状態が続くことで起こる病気なので、血糖値管理が最も重要となるのは当然といえます。

 血糖値管理の中で、先ず必要なのは、肥満は禁物なので、標準体重を目標に食事制限などすることになります。肥満の人がダイエットの目標とすべき、理想体重は、身長を [m] 単位で表して次の式で求めます。

 (標準体重)=(身長)X(身長)X22 [kg]

 たとえば、身長165cmの人なら、59.9kgとなります

 (標準体重)=(1.65)X(1.65)X22=59.9 [kg]

 ダイエットだけで血糖値管理がうまくいかない場合には、薬物療法などを行って管理することになります。
食事療法  糖尿病の基本的な治療法は、食事療法です。これにより肥満を防ぐことが何より大事だからです。

 糖尿病腎症では、食事療法はとても複雑になります。糖尿病に対する食事療法と慢性腎不全などに適応する食事療法の両方を行わなければなりませんが、これらは互いに矛盾する面があるため、複雑になるのです。

 日本腎臓学会が定め推奨する各病期ごとの「ガイドライン」があるので、その一部を抜粋して表に示します。表中の総エネルギーやたんぱく質の計算に用いている [kg] とは標準体重のことです。

病期区分 総エネルギー
[kcal/kg/日]
たんぱく質
[g/kg/日]
食塩
[g/日]
カリウム
[g/日]
第1期
腎症前期
25〜30 制限せず 制限せず
第2期
早期腎症
25〜30 1.0〜1.2 制限せず 制限せず
第3期A
顕性腎症前期
25〜30 0.8〜1.0 7〜8 制限せず
第3期B
顕性腎症後期
30〜35 0.8〜1.0 7〜8 軽度制限
第4期
腎不全期
30〜35 0.6〜0.8 5〜7 1.5
第5期
透析療法期
維持透析患者の食事療法に準じた特別な食事療法

 尚、食事療法とは限らないが、糖尿病性腎症の治療には、生活習慣の改善も絶対的に必要です。次のような点にも十分注意して日常生活を行いましょう。

 ・減塩食を心がける
 ・暴飲暴食しない
 ・夜食は避ける
 ・脂肪分の多い料理を控える
 ・原則禁酒・禁煙とする
 ・適度な運動を継続する
 ・肥満にならないよう注意する
 ・ストレスをためない
 ・たんぱく質の摂取を医師の指示に従って制限する

薬物療法  薬物療法では、糖尿病自体の治療は継続したうえで、糖尿病性腎炎に必要な薬物療法が行われます。薬物療法は、基本的には、高血圧の治療薬としての高圧薬、浮腫(むくみ)治療薬としての利尿薬を用います。

降圧薬  糖尿病性腎症の進行を抑制するために、高血圧の治療は不可欠です。一般には、先ず糸球体内圧を低下させ糸球体肥厚や硬化を防ぐために、アンギオテンシン変換酵素阻害薬が使用されます。この薬には、血圧を下げるだけでなく、糖尿病腎症自体の進行を阻止する効果もありとても有用です。

 アンジオテンシン変換酵素阻害薬だけでは十分な血圧低下ができない場合、カルシウム受容体拮抗薬など、他の降圧薬も併用されることがあります。
利尿薬  糖尿病腎症が進行して慢性腎不全の状態になると、体液が過剰となることで、浮腫が生じやすくなります。浮腫があると、心機能や網膜症などの問題が発生することがあるので利尿薬を使用してむくみを除去します。浮腫に対しては、GFR(腎糸球体濾過量)を低下させないループ利尿薬を用います。

 また、特にネフローゼ症候群を合併している患者では、過剰な体液が高血圧の原因ともなるので、降圧薬としての利尿剤の投与が必要となります。

 利尿薬は、浮腫を改善し、心機能や網膜症の防止によい影響を与えますが、一方で、利尿薬の使い過ぎば、腎機能の低下を招く恐れもあります。利尿剤の利用は、毎日の体重測定による自己管理と、医師の指示に従った厳密な管理とが不可欠となります。

人工透析  糖尿病性腎症が進行して、腎機能が完全に失われる状態になれば、どうしても透析療法が必要です。

 GFR(糸球体濾過量)が低下し、血清クレアチニン値が増加が、透析導入の判断基準となります。

 人工透析は、初期には週に1〜2回くらいの頻度で始まり、症状の進行度合いによっては、毎日実施しなければならない場合もあります。
腎移植・膵腎移植  人工透析でも症状の改善が思わしくない場合、腎移植や膵腎移植も選択肢のひとつとなります。

 膵臓の一部分と腎臓の片方だけの移植でも、糖尿病患者の生活向上に資するので、生体移植ももうひとつの選択肢となります。

 また、膵臓や腎臓は心臓死移植でも可能です。