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身体の病気

眼瞼痙攣


 まぶたを閉じるための眼輪筋が過度に緊張し、意思に関係なく痙攣する病気が〔眼瞼痙攣(がんけんけいれん)〕です。

 この病気は、〔目瞼痙攣〕とか〔瞼痙攣〕と呼ばれることもあります。

 この病気の日本神経学会での正式名は〔眼瞼攣縮(がんけんれんしゅく)〕といいます。


 〔眼瞼痙攣〕になると、初期にはまぶしさを感じたり、目が乾く、目が開けていられない、目の周囲がピクピク動く、まばたきが増えるなどの症状が現れます。進行性で左右両方の目に発症します。

 重症になると、まぶたが開けられなくなり、目が見えない状態に近くなります。視力があるにも関わらず盲目に近い状態となり日常生活にも大きく支障が出てきます。


どんな病気ですか? ◆「眼瞼痙攣」とは、一体どんな病気なのかご説明します。
どんな病気ですか?  人の顔には顔面神経系の小さな筋肉が集中していて、これらが絶えず複雑に動くことで豊かな表情を作り出しているのですが、その中のひとつに「眼輪筋(がんりんきん)」という筋肉があります。

 眼輪筋は、まぶたの開閉などの重要な役割を果たす筋肉で、普通には加齢とともに衰えてゆき、まぶたのたるみやむくみ、シワなどの原因となります。高齢になるにつれて瞼が下がって目が小さくみえたり、下がり目になったり、ちりめんシワが出現してきます。

 「眼瞼痙攣」というのは、両目の眼輪筋に自分の意思とは無関係に力が入り反復的に痙攣してしまう病気です。眼瞼痙攣の最初の症状は、眩しさを感じたり、下眼瞼部のピクピク感、パチパチ感からはじまり、次第に上眼瞼部に進行してゆきます。この症状は、専門的には両側の眼瞼の眼輪筋に間代性、強直性の攣縮(れんしゅく)が起こると表現されます。

 眼瞼痙攣の進行は緩慢ですが、自然治癒は期待することはできません。治療せず放置すれば、徐々に症状が進行し、自分の意思とは関係なく無理やり閉眼されるようになります。この症状による長期間の苦しみの後に、機能的な失明状態に陥ります。

 眼瞼痙攣で直接生命に危険が及ぶことはありませんが、目元などでの異常な痙攣、引きつりは非常に不快なものです。痛さで目を瞑り勝ちとなるため視界が狭くなるばかりか、他人との対面もストレスであり億劫になります。当然ながら異常なシワが出たりするので美容上も辛いものとなります。

 この病気の原因ははっきりとはせず、40~70歳代の中高齢者の女性に好発します。男女比では女性が男性の2~3倍の発症率となっています。




どんな症状ですか? ◆「眼瞼痙攣」の症状をご説明します。
眼瞼痙攣の症状  眼瞼痙攣は、左右両方のまぶた周辺に同時に症状が出現する進行性の病気で、いったん発症すると自然治癒することは極めて困難です。通常、眼瞼痙攣の発症は左右両眼対称性ですが、多少の左右差が出ることもあります。

 初期症状は、まばたきが増えたり、眩しさを感じたりする違和感から始まり、次第にまばたき回数の増加、明るいところでの異常な眩しさ感が強くなり、突発的にまぶたがギュッと閉じてしまう現象があらわれ、しばしの間、目を開けられなくなります。症状は、まぶたの異常だけの場合と、唇にも異常をきたすものもあります。

 異常なまばたきや羞明(眩しさ)などの異常症状は、明るいところでひどく、暗いところでは軽くなります。緊張したり活動したりするとひどくなり、休憩すると軽減します。

 病気が進行すると、両側の眼輪筋が自分の意思とは無関係に不随意に瞼を閉じてしまう現象が繰り返し起こります。瞼を開くことができなくなり、ものを見るためには強引に指で瞼を持ち上げなければならなくなります。

 多くの場合、次第に痙攣回数が増加し、仕事や日常生活に大きな支障をきたすようになります。最終的には、瞼が閉じたままとなってしまうために、目自体には視力があるにも関わらず、機能的な失明状態に陥ります。

 眼瞼痙攣の具体的症状として、次のようなデータが公表されています。

眼瞼痙攣の症状
症状 症状を訴える率 備考
羞明感 95% ほとんどの人が異常に眩しいと感じます。
目が閉じる 92% 目を開けてられない。目をつぶった方が楽になる。
目の乾燥 51% 目が異常に乾く。
外での眩しさ 49% 外に出ると眩しくて目が開けにくくなる。
目の違和感 41% 目に違和感がある。
下向き願望 34% 下を向いていたくなる。
眼瞼下垂 29% 眼瞼が垂れ下がってくる。
瞬き増加 26% 瞬きの回数が増加する。
開眼困難 16% 指で無理やりやらないとまぶたが開かない。
目の周囲ピクピク感 8% 目の周囲がピクピクする。
額のシワ寄り 8% 額や眉間にシワの寄った特有な表情になる。


原因は何ですか? ◆「眼瞼痙攣」の原因や発症の仕組みをご説明します。
眼瞼痙攣の原因  眼瞼痙攣の原因は完全には分かっていないのですが、症状を引き起こす引き金となるものには、極度の精神緊張・ストレスや、目の使いすぎなどがあります。通常の目の病気が眼瞼痙攣発作の引き金になることはないとされています。また、眼瞼痙攣があるからといって、視力自体に影響はしません。

 単なる過労的なものが原因となって起こるようなケースでは、目を休めたり、休養や十分な睡眠などで軽快することがありますが、この場合には眼瞼痙攣とは呼びません。

 眼瞼痙攣の明確な原因は不明であるものの、最も有力な説としては「大脳基底核の異常」が原因ではないかと指摘されています。

 顔の筋肉は、眼輪筋を含めてすべて脳から出る顔面神経の制御下にあります。大脳基底核異常説によれば、本態性眼瞼痙攣は「局所性ジストニア」と呼ばれる病気の一つであり、大脳基底核を中心とする運動抑制システムの機能障害によって引き起こされるとされます。

 一般に「ジストニア」というのは、中枢神経系に異常があり、筋肉が自分の意思ではなく勝手に持続的な収縮を起こしてしまう運動障害のことで、身体の一部などが硬直したり、痙攣したり、捩れたりする病気です。

 表現が難し過ぎますが、簡単にいうなら、眼輪筋などを支配している大脳の基底核と呼ばれる部位に異常があり、それにより眼輪筋が勝手に収縮してしまうのです。


診断はどうなりますか? ◆「眼瞼痙攣」の検査方法や診断方法をご説明します。
眼瞼痙攣の診断方針  問診や眼科的検査などの結果、眼瞼痙攣特有な多くの症状があるなら、眼瞼痙攣の疑いがあります。診察時に眼瞼痙攣が起こっていれば診断は容易です。診察時に痙攣発作が起こっていない場合には、眼瞼痙攣を誘発するための「瞬目負荷試験」を試みます。

 瞬目負荷試験では、強くまぶたを閉じたり、強い光を目に当てたり、口をすぼめたり、唇を横に伸ばしたりという動作を何度でも繰り返してみて、眼瞼痙攣特有な症状が誘発されるかどうかが確認されます。

 このような試験により、眼瞼痙攣と診断された場合、その後の治療を行うために「Jankovic分類」という重症度分析を行います。

眼瞼痙攣の瞬目負荷試験  旬目負荷試験は、次のように行いますが、この瞬目負荷試験中に、口角に不自然な収縮があったり、まぶただけでなく瞼以外の全身各部に痙攣などの異常が現れる場合には、眼瞼痙攣とはまったく別の病気の可能性もあります。

 類似症状を示す疾患として、メージュ症候群や、顔面痙攣、眼部ミオキミア、ドライアイ、眼部チック、眼瞼下垂、開眼失行などがあり、それらの疾患と区別するために鑑別診断が必要になることもあります。

 鑑別診断では、眼科的検査だけでなく、頭部MRI検査やCT検査などを行い、脳内血管の動脈硬化の有無や、脳腫瘍など痙攣発作の原因となる他の病気が隠れていないかなどを確認します。

眼瞼痙攣の瞬目負荷試験
軽瞬テスト 軽く瞬きさせても、強い瞬きしかできない。
速瞬テスト 速く瞬きさせても瞬きが遅くなったり、できなかったりする。
強瞬テスト 強く瞬きさせると、目を開ける際に瞼が痙攣したり、遅くなる。

Jankovic分類  Jankovic分類では、眼瞼痙攣の症状を「重症度」と「頻度」として把握し、それぞれをスコアを0~4までの5段階で位置づけ、その後の治療に役立てます。

Jankovic分類
分類 スコア 症状の特徴
重症度スコア 痙攣を全く認めない状態(正常)
光・風・振動などの外部刺激によってのみ痙攣が誘発される。
軽度な痙攣を認める。
痙攣を認める他の顔面筋との差異がわかる。
他の顔面筋の痙攣を伴う著明な眼瞼痙攣を認める。
頻度スコア 痙攣を全く認めない状態(正常)
通常よりまばたきが多い(20回/分以上の頻度)
まばたきが著しく増加し、1秒程度の持続する軽度な痙攣を認める。
1秒以上の持続する痙攣が認められ、日常生活に支障を来しているが、50%は開瞼している。
痙攣によってほとんど眼瞼が閉じた状態のため、機能的には失明状態となっていて読書やテレビを見ることができない。


治療はどうやりますか? ◆「眼瞼痙攣」の治療方法をご説明します。
眼瞼痙攣の治療方針  現在、眼瞼痙攣の真の原因が分かっていないために根治する治療法はありません。従って、現時点での眼瞼痙攣の治療法は、症状を抑えたり、軽くしたりする対症療法となります。

 眼瞼痙攣による羞明(眩しさ)を軽減する日常的な方法としてサングラスを用いると、少しでも苦痛を和らげる効果はあります。

 しかし、このような方法だけでは現実的な苦痛を取り去ることは不可能で、どうしても積極的なな治療が必要です。現在、用いられる対症療法としては「薬物療法」「手術療法」および「ボツリヌス療法」などがあります。

 ボツリヌス療法は、ごく微量のボツリヌス毒素を患部に注射する治療法で、90%以上の患者に対して着実な効果が認められている新しい治療法となっています。

薬物療法  薬物療法は、人工涙液の点眼により目の症状を緩和する治療を行ったり、抗痙攣薬・抗コリン製剤・抗うつ薬・抗パーキンソン薬などの神経の興奮を鎮静させるような内服薬による治療法です。

 これらの治療法は、効果が不十分であり、かつ不安定であったりしてとても完全な方法とはいえません。一時的には症状が軽減されても再発する可能性が高く、しかも副作用として顔面神経麻痺や聴力障害などの合併症が現れることがあるなど問題点の多い治療法です。

 これらの治療法に掛かる費用は安価ですが、眼瞼痙攣の治療薬としては、健康保険の適応にはなっておりません。

手術療法  眼瞼痙攣の手術療法は、障害の出現している眼輪筋などの筋や神経の一部を切除する手術法で、外輪筋や神経を切除してしまうので一定の効果は期待できますが完全ではありません。いったん手術してしまえば、その部分に関してだけは再発の心配はありません。

 しかし、顔の表情を豊かにする眼輪筋などの一部を失うことで、手術後に多少ながら容姿が変わってしまう恐れがあります。特に女性の場合では、顔が無表情になるなど問題が残るかも知れません。

 手術療法では、この他の方法として顔面神経に接触する血管の位置をずらしてしまう「開頭手術(微小血管減圧術)」が行われることがありますが、成功率は50~70%程度とされ、これも完全な方法ではありません。この手術を施しても、神経の過敏性はそのまま残っているので、依然として痙攣が治まらないこともあります。

 手術療法では、更に脳外科的手術を行うこともありえますが、お勧めはできません。

ボツリヌス療法  薬物療法が効果を発揮しない場合や、手術療法を避けたい場合には、近年開発された「ボツリヌス療法」という優れた治療法があります。この治療法は「ボツリヌス毒素療法」とか「ボトリックス療法」などとも呼ばれます。

 ボツリヌス療法では「ボツリヌスA型毒素」という毒素を有効成分とする新しい治療薬で、このごく微量を眼瞼部・眼窩部の数か所に注射することにより、神経筋伝達を阻害し、持続的な筋弛緩作用をもたらすことができます。ボツリヌス毒素はボツリヌストキシンとも呼ばれます。

 ボツリヌス毒素は1977年に米国において斜視治療としてはじめて臨床応用され、その後、眼瞼痙攣や片側顔面痙攣の治療に展開された医薬です。日本では眼瞼痙攣治療薬として1996年に保険適応が承認されました。更に、2000年には片側顔面痙攣治療薬としても効能追加されました。毒素を使用するため、一定の講習と実技をマスターした登録医師だけに使用が許可されています。

 ごく微量のボツリヌス毒素の筋肉への注射は「ボトックス注射」と呼ばれています。

 このボトックス注射をまぶたの皮下の筋肉に行うと、運動神経筋接合部で神経末端から神経伝達物質が放出されることを阻害します。これにより、異常な神経の興奮が眼輪筋へ伝達されるのを遮断してしまうので、結果として痙攣発作の出現が抑制されます。

 治療効果は、ボトックス注射後1週間くらいから現れ、1か月ころに最大となり、徐々に効果が弱まりながら3~4か月間持続します。ボツリヌス毒素で障害を受けた神経は、3~4か月すると再度枝を延ばして筋肉に到達するようになるためです。

 注射後3~4か月して、効果が弱まり症状が再発する場合は、再度ボトックス注射を繰り返します。

 人体の免疫機構の作用で、投与したボツリヌス毒素の総量が2000単位以上になると、ボツリヌス毒素に対する抗体が産生されるようになり、毒素の効果が無くなり症状を抑えることができなくなります。

 注射一回あたりに投与される毒素の量は最大30単位くらいですが、長年月にわたりこの療法を繰り返すためには、注射と注射の間隔はできるだけ長くとり、注射量も必要最小限に抑えて、抗体の産生を防ぐことが重要です。

 現時点で、ボトックス注射は最も優れた治療法ですが、毒素の投与量が過剰だったりすると、まれに物が二重に見えたり、夜間睡眠時に瞼が閉じにくくなったり、流涙、眼の乾燥感、眼瞼下垂、頭痛、めまい、発疹、全身の筋力低下などの副作用が出ることがあります。これらは、一時的な現象です。

 しかし、滅多にないことですが、極度に強いアレルギー反応が出現する場合には、この療法は中止するしかありません。

 先に述べたように、ボツリヌス毒素療法は、許可された施設や医師が限られていますので、最寄の施設などの情報は「眼瞼痙攣電話情報センター(電話:0120-611-094)」で確認してください。(受付時間:月曜~金曜の午前9時~12時、午後1時~5時、祝祭日は受け付けない。)