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身体の病気

扁桃腺肥大


 扁桃は、鼻や口から侵入する病原体と戦うリンパ組織です。いくつかある扁桃組織のうち、口蓋扁桃が増殖肥大した病気を〔扁桃腺肥大〕といいます。

 喉の内部・周辺には多くのリンパ組織がありまる。いわゆる扁桃腺もそのひとつで、正式には「口蓋扁桃」と呼ばれる組織です。

 口蓋扁桃は、舌の付け根の両側にあり、「口蓋垂(こうがいすい:俗称=のどちんこ)」を挟んで対称性の場所に見えます。

扁桃腺

 口蓋扁桃はリンパ組織であり、口や鼻から体内に侵入しようとするいろいろな病原体の侵入を防ぐ役目をしています。

 扁桃腺(口蓋扁桃)は左図で見るように喉の両側に丸くポコッとして見えます。

 これが大きくなった状態が〔扁桃腺肥大〕ですが、肥大の程度により「第1度肥大」「第2度肥大」「第3度肥大」という3つの段階に分類されます。

 扁桃腺が肥大しても多くの場合に無症状ですが、激しい〔いびき〕や〔睡眠時無呼吸症候群〕の原因になることがあります。口蓋扁桃が大きくなるのは、小学生くらいまでの子供に多く、中学生くらいになると自然に小さくなります。


扁桃腺肥大はどんな病気ですか? ◆〔扁桃腺肥大〕とは、一体どんな病気なのかご説明します。
どんな病気ですか?  口蓋扁桃(扁桃腺)が通常より大きくなった状態を扁桃腺肥大といいます。扁桃腺肥大には、人の成長段階で生理的に起こるものと、ウイルスなどの外敵に対する免疫反応の結果起こるものとがあります。

 乳幼児や幼児・小学生などの年少者では、免疫システムの発達が不十分なために、早くしっかりした免疫システムを獲得しようとして、扁桃腺が活発に活動するために肥大が起こります。中学生以降では、免疫システムも確立され、扁桃腺も小さくなるのが普通です。

 幼児期、学童期に起こる扁桃腺の肥大は、人の成長段階での生理的現象として誰にでも起こるものなので、これ自体は特に問題ではありません。しかし、喉を塞ぐほどに大きくなり、喉を圧迫して呼吸がしにくくなる場合には治療が必要となることがあります。

 一方、風邪をひいたり、何らかの細菌やウイルスの攻撃を受けると、身体の免疫反応が働き、これらの外敵に対する抗体が作り出されて戦いが始まります。この戦いの結果として扁桃腺が腫れたり熱が出ることがあります。




扁桃腺肥大はどんな症状ですか? ◆〔扁桃腺肥大〕の症状をご説明します。
扁桃腺肥大の症状  乳幼児期や学童期の子供には生理的な現象としての扁桃腺肥大が見られますが、これ自体は痛みもなく、喉を塞ぐなどの症状を伴わないのであれば、何も問題はありません。

 外部からの細菌やウイルスの侵入により、口内や扁桃腺に炎症を起こすと扁桃腺肥大がおこり、痛みや発熱も見られるようになります。人体に備わった免疫システムが外敵と戦う結果として起こる現象です。

 この場合には、通常、腫れや痛みを伴いながら38度Cを超えるくらいの熱が出ますが、数日すると自然に治まるのが普通です。

 しかし、人によっては普段から体質的に慢性的に扁桃腺が肥大気味で、疲れたり風邪をひいたりするとすぐに扁桃腺肥大になることがあります。このような場合、単に扁桃腺肥大ではなく、〔慢性扁桃腺炎〕と呼ばれます。慢性的な扁桃腺肥大があると、いびきや〔睡眠時無呼吸症候群〕の原因になることがあります。

 本来、扁桃腺は病原体の侵入を防ぐ役割をしていますが、過労やストレスなどのために体の抵抗力が弱まっていると、細菌やウイルスの感染で炎症を起こし〔急性扁桃腺炎〕を起こします。

 急性扁桃腺炎になると、扁桃腺は赤く腫れあがり、表面には黄白色の膿がみられるようになります。扁桃腺だけでなく首のリンパ節も硬く腫れ上がり、激しい咽頭の痛みを伴いながら、40度C以上の高熱を呈するのが普通です。多くの場合、痛みのために口を開くことができず、嚥下痛のために食事も摂りにくくなります。学校や会社を休む原因ともなります。

 急性扁桃腺炎が更に進行し、症状がさらに奥の扁桃腺に及ぶと〔扁桃腺周囲炎〕になったり、そこに膿がたまる〔扁桃腺周囲膿瘍〕となったり、〔滲出性中耳炎〕や〔急性中耳炎〕などの合併症を併発することがあります。

 扁桃腺肥大は、肥大の程度により「第1度肥大」「第2度肥大」および「第3度肥大」という3つの段階に分類されることがありますが、それほど一般的な分類法ではありません。

扁桃腺肥大の症状の分類
第1度肥大  口蓋扁桃(扁桃腺)が前口蓋弓よりわずかに突き出る程度の軽度な肥大。

第2度肥大  口蓋扁桃が前口蓋弓よりかなり突き出た状態。ただし、幼児期にはこれは生理的現象として起こる普通の状態です。

第3度肥大  口蓋扁桃が口蓋垂(のどちんこ)の近くにまで肥大した状態。



扁桃腺肥大の原因は何ですか? ◆〔扁桃腺肥大〕の原因や発症の仕組みをご説明します。
扁桃腺肥大の原因  通常、幼児・学童期においては、扁桃腺は生理的に肥大する特性があります。前述したように、免疫システムが完成していない幼児・小児・学童時代では、扁桃腺の活動を活発にして出来るだけ早く免疫システムの獲得をしようとする生理的要求のために肥大するのですが、これは異常ではありません。一般に、扁桃腺は3歳ころから肥大しはじめ、6〜8歳頃に最大となり、その後は萎縮して自然に小さくなります。

 生理的現象ではなく、風邪や病原体の侵入などにより扁桃腺は腫れることがありますが、これは病原体に対する免疫作用が機能して戦いが始まるためです。通常の人では、このような原因で扁桃腺が肥大しても多少の発熱などを伴うものの症状は一時的なもので、腫れも発熱も数日で自然に治まります。

 もともと扁桃腺が肥大している幼児期・小児期に風邪などをひくと、扁桃腺が更に大きく腫れるために、扁桃腺周囲の器官を圧迫するようになります。本質的には風邪などの症状がそれほど酷くなくても、扁桃腺の腫れが原因で呼吸が苦しくなったり、鼻づまり、いびきなどを引き起こします。ときには、無呼吸症候群の原因になったり、滲出性中耳炎や難聴になるなどの合併症を招く危険性が高まります。

 これとは別に、遺伝的素質・体質などのために、慢性的に扁桃腺肥大がみられる人もいます。このような人の場合には、ちょっとした過労や体調不調、風邪などの病原体の侵入により容易に扁桃腺が肥大し、慢性扁桃腺炎と呼ばれる症状を呈するようになります。

 既に症状の説明部分で述べたように、扁桃腺は本来病原体の侵入を防止する役割を果たしていますが、過労やストレスなどのために体の抵抗力が弱まっていると、細菌やウイルスの感染で炎症を起こし〔急性扁桃腺炎〕の原因となることがあります。


扁桃腺肥大の診断はどうなりますか? ◆〔扁桃腺肥大〕の検査方法や診断方法をご説明します。
扁桃腺肥大の診断  生理的現象として、幼児期・小児期に扁桃腺は肥大し6〜8歳頃に最大となりますが、その後は萎縮して小さくなります。また、遺伝的な体質で扁桃腺が大きい人もいますが、扁桃腺が肥大しているだけであれば病気ではありません。

 扁桃腺肥大で病気とされるのは、何らかの原因で炎症を起こした扁桃腺が周囲の器官を圧迫することで、呼吸が困難になったり、口呼吸になったり、鼻が詰まったり、物が飲み込めなくなったり、あるいはいびきが酷くなったり、発熱などの症状がある場合です。また、これらの前駆的症状から、中耳炎や難聴などの合併症に進行する場合も含まれます。

 扁桃腺肥大の診断は「視診」「間接喉頭鏡検査」「喉頭ファイバー」「側面単純X線撮影」「血液検査」および「細菌検査」などの方法で行われます。

扁桃腺肥大の診断方法
視診  炎症による扁桃腺肥大は、痛みや発熱、呼吸困難、嚥下障害などの現れている症状と、喉の奥にある口蓋扁桃の状態を観察する視診によって診断されます。

 口蓋扁桃の肥大の程度は、口腔内の視診により「第1度肥大」「第2度肥大」および「第3度肥大」という3つの段階に分けて診断されます。

口蓋扁桃肥大の程度分類
第1度肥大  肥大した扁桃腺が前後の口蓋弓よりわずかに突出する程度のもの。
第2度肥大  第1度肥大と第3度肥大の中間程度のもの。
第3度肥大  左右の扁桃が正中で触れ合う程度のもの。

間接喉頭鏡検査  口腔内の視診では扁桃腺肥大がそれほど大きくない場合でも、舌の陰に隠れた部分の口蓋扁桃下極が肥大していて無呼吸症候群などを誘起していることもあるため、「間接喉頭鏡検査」により確認することがあります。

喉頭ファイバー  間接喉頭鏡検査と同様に、「喉頭ファイバー」により確認することもあります。

側面単純X線撮影  間接喉頭鏡検査や喉頭ファイバーと同様に、「側面単純X線撮影」により扁桃が抽出されて診断できる場合もあります。

血液検査  炎症による扁桃腺肥大がある場合、白血球数の増加とCRP値(炎症の程度を示す検査値)の上昇が認められます。

細菌検査  細菌検査をすると、扁桃腺肥大の原因となる病原体として、「溶連菌」「黄色ブドウ球菌」「肺炎球菌」および「インフルエンザ菌」などが検出されるのが普通です。



扁桃腺肥大の治療はどうやりますか? ◆〔扁桃腺肥大〕の治療方法をご説明します。
扁桃腺肥大の治療方針  炎症による扁桃腺肥大が起こった場合、症状が軽度な場合には抗生物質による「薬物療法」が行われます。扁桃腺肥大が頻繁に起こる場合や症状が酷い場合には「手術療法」により根治することを考えます。

扁桃腺肥大の薬物療法  炎症により肥大した扁桃腺は、膿をもったり激しい痛みを伴います。また、首のリンパ節も硬くなり痛みます。風邪などが原因で肥大しているときは、炎症を治め症状を軽くするために抗生物質による治療を行います。

 扁桃腺が肥大する原因の多くは風邪なので、ほとんどの場合に抗生物質での治療を行うことで発熱も治まり、喉などの痛みも軽減されます。

 しかし、薬物療法を開始して数日しても症状が治まらない場合には、単なる風邪ではないこともあり、手術による治療が必要になるかも知れません。

扁桃腺肥大の手術療法  風邪などの症状で扁桃腺肥大が起こり、発熱とリンパ節の腫れや痛みだけでなく、炎症が扁桃腺の奥にある部位まで及ぶと扁桃腺周囲炎になり激しく痛みます。扁桃腺周囲炎が更に進んで膿が溜まるようになると、扁桃腺周囲膿瘍と呼ばれる状態になり、症状は更に酷くなります。このような急性扁桃腺炎では、手術が必要です。

 また、慢性的に扁桃腺肥大が起こり痛みを繰り返すようだと、腎臓に過度な負担が掛かり、関節リウマチなどを誘起する危険性もあるので、手術により扁桃腺を切除するのが得策です。

 一般に、扁桃腺肥大による被害が手術に伴う合併症より強い場合に手術療法を決断することになりますが、扁桃腺の切除術を行うかどうかの判断は次のように行われます。

扁桃腺切除術をするかどうかの判断方法
慢性的に扁桃腺肥大があるとき  慢性的な扁桃腺肥大があり、頻繁に扁桃腺が腫れあがり発熱がでる場合は、手術により扁桃腺を切除するのが得策です。

 また、扁桃腺にいつも細菌などの病原体が巣くっていて、発熱する度に血尿がみられ、腎臓に過度な負担が掛かっていると考えられる場合には、扁桃腺切除は欠かせません。

急性症状が激しいとき  急性扁桃腺肥大が起こり、呼吸困難などの症状がでる場合には、手術による扁桃腺の切除が必要です。

 また、慢性的な扁桃腺肥大のために、睡眠時無呼吸症候群がある場合には、手術により扁桃腺を切除すれば、症状は軽快します。

薬物療法で効果が不十分なとき  抗生物質などの投与にもかかわらず扁桃腺の炎症が治まらない場合にも手術での治療は考慮されるべきもとのなります。


 通常、扁桃腺切除の手術は、全身麻酔下で行われ1時間程度で終わりますが、手術後の回復を確かなものにするために、一週間ほどの入院加療が必要です。

 尚、手術は炎症が激しい最中に行うのは好ましくないため、薬物療法などである程度症状が治まった段階、あるいはまったく炎症のない時点で行います。

 具体的な手術方法は、全身麻酔をかけた状態で、口内から扁桃腺周りの皮膚を剥がして扁桃腺をそっくりくり抜き出し取り去ります。

 手術後は、切除した部分が2〜3日はかなり痛む他、かさぶたができて食事がちょっと辛くなるかも知れません。しかし、手術後2週間もすれば痛みなどは軽快し通常の状態に戻ります。

 手術すると、いびきをかかなくなり、睡眠時無呼吸症候群の心配もなくなります。