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病院で
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あるとき、あるところに女がいました。女は、いつも世話になっている知り合いの医師のところにくると、真剣な顔つきでこんなお願いをしました。
「定年退職ということで、うちの旦那、毎日家にへばりついていて、ウザくて仕方ないんです。先生、うまいこと亭主が死んでくれるようないいお薬をもらえないでしょうか?」
他でもない、この女は長い年月、うちの病院に足を運んできてくれたことだし、何とかしてあげたいものだと考えてみた。医師はしばらく考えた後で、奥の薬の置いてある部屋へ入っていった。そして、かなりの量の粉薬を持って戻ってきた。
「・・・この薬なんだけど。これは絶対秘密だからね。こないだも奥さんと同じようなことを言ってきた女性がいてね。これを処方してやったんだよ。間違いなく、よく効くからね。でも、使い方には十分、気をつけないとだめだよ。ほんの少しずつ使わないとバレるからね」
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我が家で
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薬を手にいれたことで、女はすっきりと気分がよくなった。早速、家に帰ると、直ぐに試してみなくちゃと思い、その薬をその夜の料理に入れてみた。それだけじゃ足りないかもと思いながら、コーヒーやジュースにも混ぜてみた。来る日もくる日も旦那の食事に入れ続けるのだった。
実のところ、今までろくに料理なんかしたくれたこともない、女房の最近の変わりように、旦那はちょっと驚き、怪しみもした。「おい、最近、何か俺に隠してないか?」と。
そんな疑いを取り繕うようにと、女は満面の笑顔をつくり、旦那に接し、熱烈なキスもした。毎日し続けた。
旦那は最初は少々気持ち悪かったのだが、だんだん嬉しくなってきて、女房の料理を褒めてみる気にもなった。お世辞なんかじゃなかった。元々は料理下手だった女の料理の腕前がいつのまにか上達していたのだ。
女は、今日もまた、旦那の口にあの薬を入れたいがために、愛想をふりまき、コーヒーにお茶にケーキやジュースを出すのだった。それがまた、旦那には、女房の気遣いに思えて嬉しくて仕方なかった。外食では薬が入れにくいので、女房は滅多に外食などすることもなく、毎日、家で二人だけの食事を楽しむようになった。女房はちょっと気づきだしていた。何だか変だと。
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再び病院で
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あれから、数ヶ月がすぎたある日のこと。女は医者を訪れていた。
「・・・あのお。。。先生。。。あの薬って本当に効くの? 本当に?。。。」
「ええー、効きますよ。そうですか、もう半年になりますか。結構、飲ませたもんですねえ〜。じゃあ、もう、そろそろ効いてくる頃ですよ。」
しばらく沈黙が続いてから女が口を開いた。
「あのお。あのさあ。。。アイツのことなんだけど。。。アイツ、結構、いい奴なんだよね。。。この頃じゃあ、あたしの料理も美味しいなんていってくれてさ。いつだって残したりしないで、全部食べてくれるし、だからね。。。だから、あたし。。。」
女の顔をじっと見ていた医者がいいました。「だから?」
「だからね。。。」女の瞳は何かをうったえようとしていた。
「ほら、効いてきだだろ。だから、あんたが一番望んだように、特によく効く薬を調合してあげたのさ」
「だから、あたし。。。アイツに死んでなんか欲しくないんだ。。。あたしにだって悪いとこがいっぱいあったんだし、だからさ。。。先生、お願い、アイツを助けて。。。」
医者はながいこと目をつぶり、何事かを考え始めた。
そして、ゆっくりと目を開け、女の潤んだ瞳を見つめながら、こう言った。
「実はね、あの薬・・・・」
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医者は何と言ったのでしょうか。答えはあなたが知っていますよね。そうです。あなたの思ったとおりのことを言ったんです。
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