妻からみれば「旦那は元気で留守がいい」ということになるものです。 しかし、 亭主にとってみれば、何十年もの間、上司にはこき使われ、若い部下には突き上げられ、心身をすり減らしながら、ようやく迎えた定年退職です。 |
退職金を叩いてやっとの思いで手にいれたマイホームでのんびり暮らし、たまに東京からやってくる孫の顔を見るのが夢だったのです。 一体全体、旦那が自分の家に居て、どこが悪い、というのだ。 ここで、ひとつ、妻たちに問うてみたいのです。あなたにとって、本当に亭主なんか居ない方がいいのか、と。 |
◆〔心からの女の願い〕とは一体どういうことなのでしょうか? |
病院で |
あるとき、あるところに女がいました。女は、いつも世話になっている知り合いの医師のところにくると、神妙な顔つきでこんなお願いをしました。 「定年退職ということで、うちの旦那、毎日家にへばりついていて、ウザくて仕方ないんです。・・・先生、うまいことうちの亭主が死んでくれるようないいお薬をもらえないでしょうか?・・・」 他でもない、この女は長い年月、うちの病院に足を運んできてくれたことだし、何とかしてあげたいものだと考えてみた。医師はしばらく考えた後で、薬の置いてある奥の部屋へと入っていった。そして、かなりの量の粉薬を持って戻ってきた。 「・・・この薬なんだけど・・・これは絶対秘密だからね。・・・こないだも奥さんと同じようなことを言ってきた女性がいてね。これを処方してやったんだよ。間違いなく、よく効くからね。でも、使い方には十分、気をつけないとだめだよ。ほんの少しずつ使わないとバレるからね」 |
我が家で |
薬を手に入れたことで、女はすっきりと気分がよくなった。早速、家に帰ると、直ぐに試してみなくちゃと思い、その薬をその夜の料理に入れてみた。それだけじゃ足りないかもと思いながら、コーヒーやジュースにも混ぜてみた。来る日もくる日も旦那の食事に入れ続けるのだった。 実のところ、今までろくに料理なんかしてくれたこともない、女房の最近の変わりように、旦那はちょっと驚き、怪しみもした。「おい、最近、何か俺に隠してないか?」と。 そんな疑いを取り繕うようにと、女は満面の笑顔をつくり、旦那に接し、熱烈なキスもした。毎日し続けた。 旦那は最初は少々気味が悪かったのだが、だんだん嬉しくなってきて、女房の料理を褒めてみる気にもなった。お世辞なんかじゃなかった。元々は料理下手だった女の料理の腕前がいつのまにか上達していたのだ。 女は、今日もまた、旦那の口にあの薬を入れたいがために、愛想をふりまき、コーヒーにお茶にケーキやジュースを出すのだった。それがまた、旦那には、女房の気遣いに思えて嬉しくて仕方なかった。外食では薬が入れにくいので、女房は滅多に外食などすることもなくなり、毎日、家で二人だけの食事を楽しむようになった。女房はちょっと気づきだしていた。何だか変だと。 |
再び病院で |
あれから、数ヶ月がすぎたある日のこと。女は病院を訪れていた。 「・・・あのお。。。先生。。。あの薬って。。。本当に効くの? 本当に?。。。」 「ええー、効きますよ。そうですか、もう半年になりますか。結構、飲ませたもんですねえ~。じゃあ、もう、そろそろ効いてくる頃ですよ。」 しばらく沈黙が続いてから女が口を開いた。 「あのお。。。あのさあ。。。アイツのことなんだけど。。。」ちょっと沈黙が続いた。 「アイツ、結構、いい奴なんだよね。。。この頃じゃあ、あたしの料理も美味しいなんて言ってくれてさ。いつだって残したりしないで、全部食べてくれるし、だからね。。。だから、あたし。。。」 女の顔をじっと見ていた医者がいいました。「だから。。。?」 「だからね。。。」女の瞳は何かをうったえようとしていた。 「ほら、効いてきただろ。だから、あんたが一番望んだように、特によく効く薬を調合してあげたのさ」 「だから、あたし。。。アイツのこと死んでなんか欲しくないんだ。。。あたしにだって悪いとこがいっぱいあったんだし、だからさ。。。先生、お願い、アイツを助けて。。。」 医者はながいこと目をつぶり、何事かを考え始めた。 そして、ゆっくりと目を開けると、女の潤んだ瞳を見つめながら、こう言った。 「実はね、奥さん・・・あの薬・・・・」 ======================================================= 医者は何と言ったのでしょうか。答えはあなたが知っていますよね。 。。。 。。。 。。。 。。。 そうです。あなたの思ったとおりのことを言ったんです。 |