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〔膝半月板損傷〕


概要病気症状原因診断
治療予後合併症情報書籍
 

この疾患の概要です

 膝の関節は太ももの大腿骨、すねの脛骨、およびお皿の膝蓋骨という三つの骨からできていて表面はツルツルした軟骨で覆われています。

 大腿骨と脛骨の間にある三角形をした繊維状の軟骨を半月板と呼びます。

 半月板は、関節の適合性を良くし安定性を与えながら、大腿部から受ける体重の荷重を分散し衝撃を吸収するクッションの働きをしています。



膝半月版・膝関節の構造

 この半月板の一部が損傷した状態を〔膝半月板損傷〕とか〔半月版損傷〕と呼んでいます。

 激しい痛みがあるほか膝の曲げ伸ばしができなくなります。


 〔外側半月板損傷〕は生まれつき半月板が大きい人に発症することが多いですが、〔内側半月板損傷〕は、膝にひねりが加わるようなスポーツ活動などで損傷することが多いです。

 スポーツのプロでも起こる危険があり、プロサッカー本田圭佑選手の2011年8月28日の試合での負傷が〔右膝半月板損傷〕と診断されています。

 また、2013年4月14日には、サッカーのイタリア1部リーグ(セリエA)での日本代表DF長友祐都選手がカリャリ戦で〔左膝外側半月版〕を損傷しました。

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どんな病気ですか?
〔膝半月板損傷という病気〕

 半月板は大腿骨と脛骨の間に存在し、体重の加重を分散し膝を守る緩衝作用を持つとともに、ジャンプ着地時などの膝の揺れを防止して安定化させたり、膝を曲げ伸ばしするときに大事な役割を果たします。

 半月板損傷は、スポーツなどの原因で過剰な衝撃が加わったり、不用意なひねりが加わることでヒビが入ったり、裂けたりする損傷を受けることがあります。

 これが半月板損傷です。

 半月板は繊維軟骨とコラーゲンからできていて、周辺の関節包からの血液と周囲にある関節液からの栄養を受けて維持されていて、通常、長さ40ミリ、幅8ミリ、厚さ1~4ミリ程度の大きさをもつ三日月形の形状をしています。

 半月板は激しいスポーツはもちろん、うさぎ跳びのようなど根性動作でも破損・断裂する危険があります。

 半月板が損傷・断裂して砕けた破片の一部が関節内ではさまり、膝関節の他の部位を傷めたりすると関節内で炎症を引き起こすようになります。

 膝に水が溜まる、階段を下りるときやしゃがんで立ち上がるときなどに痛みを感じる場合は、半月板損傷が起こっていることが疑われます。

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どんな症状ですか?
〔膝半月板損傷の種類〕

 半月板は、左右の脚それぞれの膝の内側と外側にあります。半月板損傷が起こった場合の症状は、内側・外側どちらの半月板が損傷しているか、損傷の状態により異なります。

 半月板損傷・断裂の状態には次のような多くの種類があります。

半月板損傷の形態
縦断裂

 内側半月板損傷に多く発症します。

横断烈

 外側半月損傷で多く発症します。

水平断裂

 外側半月損傷で多く発症します。

バケツ柄断裂

 膝が曲がったまま伸ばせない嵌屯症状・ロッキング現象が現れます。

L字状断裂

弁状断裂

オウム嘴状断


〔膝半月板損傷の症状〕

 半月板が損傷しても傷が小さければ無症状か疼痛のみのこともありますが、断裂が大きくなるといろいろな症状が現れてきます。

 半月板損傷の典型的な症状は、膝の痛みや腫れ、運動障害、歩行障害などですが、それにも下記のように多くのパターンが存在します。

半月板損傷の症状
膝の疼痛

 受傷後すぐに荷重歩行痛が現れます。また、膝裏からふくらはぎの上部にかけての放散痛を訴えることもあります。

関節の腫脹

 膝の関節に関節液が溜まり大きく腫れあがります。

嵌屯症状
(かんとんしょうじょう)

 損傷した半月板の破片が大腿骨と脛骨の間に挟まれ、膝が曲がったまま伸ばすことが困難な状態になることがあります。この現象はロッキング現象とも呼ばれます。

 特に、完全伸展ができなくなります。

膝折れ現象

 歩行や走行中に、不意に関節が脱臼するような感じで膝が折れ曲がります。でこぼこ道を走行中などに膝がガクッと折れそうな感じを受けます。

 膝折れ現象は、軟骨片や半月板損傷の剥離片が大腿骨と脛骨間に挟まることで生じます。

弾発現象

 弾発現象は、膝がバネ仕掛けのように急にガクッという不規則な動きを起こす現象です。きしみ音や振動などを伴うこともあります。

キャッチング

 キャッチングは棚障害などで棚が膝蓋・大腿関節に挟まれたときに発生し,運動時に膝の引っかかり感を生じます。

クリック

 膝の中でクリッというクリック音がします。

 半月板損傷が進むと、膝内部での骨の表面が滑らかでなくなり、痛みや引っ掛かりが生じたり、関節液が溜まったりなどいろいろな症状が出現します。

 適切な治療をせず放置すると、半月板以外の軟骨や靱帯などの構造物をも傷めてしまい、やがて重篤な状態に陥ります。

 上記のような症状が続くなら早めの診察・精査が必要です。

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原因は何ですか?
〔膝半月板損傷の原因〕

 膝の関節は、大腿骨(太ももの骨)、脛骨(膝下の骨)、および膝蓋骨(膝のおさら)と3つの骨と、これを取り巻く関節軟骨や靱帯、半月板などからできていて、半月板は骨と骨のつなぎ目を保護したり摩擦を極小化する役目を果たしています。

 ところが、加齢や運動不足などにより軟骨が減少したり、半月板が弱くなって緩衝材としての役割を果たせなくなります。

 このような状態になったときに過剰な負荷が掛かると半月板が損傷・破断するのです。

 また、過剰な運動などにより半月板にも負荷が掛かりすぎて損傷することがあります。

 半月板は、しばしば、テニスでのスウィングなどの膝をひねる動作時に傷むことがあります。

 また、日常生活でも階段を降りる動作時、こたつから立ち上がるときなどに傷めることがあります。更に、交通事故での半月板損傷も多々発生しています。

 半月板損傷の発症原因を要約すれば若年層では、サッカーや野球、バレーボールなどのスポーツ外傷などが原因となり、高齢者では老化現象が誘発原因となります。

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診断はどうやりますか?
〔膝半月板損傷の診断〕

 半月板損傷の検査には、各種の誘発テストと、レントゲンによる関節造影検査、MRIによる画像解析検査、および関節鏡検査などの方法があります。

半月板損傷の検査方法
症状誘発試験

 膝の屈伸・回旋試験を行い、クリック音、疼痛の誘発などである程度の診断は可能です。

 しかし、同様な現象が出現する関節異常の原因には、半月板損傷以外のものもあるため、それらとの鑑別検査も必要となることがあります。

1

・Apley's test:靱帯損傷の検査

2

・McMurray's test:外側半月板損傷

3

・Steinmann's test:外側半月板損傷


関節造影検査

 関節造影検査は、関節内に造影剤を注入しながらレントゲン撮影する検査です。正確な診断が可能ですが、造影剤を持ちいる場合のアレルギー反応などで副作用がでる場合もあります。

 また、最終的に手術をするかどうかの確定診断には、下記の関節鏡検査が必要となります。

MRI画像解析検査

 MRIによる関節内部の検査は、非侵襲性であり身体に負担がないため、頻繁に利用されるようになりました。

 しかし、最終的に手術をするかどうかの確定診断には、下記の関節鏡検査が必要となります。

関節鏡検査

 関節鏡検査は、麻酔下で関節内視鏡を用いて直接膝の中を見る検査です。膝関節部を小さく切開し、そこから膝関節に関節鏡を挿入して、関節軟骨や関節内の状態のテレビ映像を詳細に観察して確定診断します。

 レントゲンやMRIでの検査により半月板損傷と診断された場合でどのような手術を行うかの最終的な判断となります。そのまま手術に移行することもあります。


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治療はどうやりますか?
〔膝半月板損傷の治療方針〕

 半月板損傷の治療法には「保存的治療」と「手術療法」とがあります。保存的治療は損傷範囲がごく小さい辺縁部断裂の場合に限られます。

 半月板の栄養血管は外側の三分1にしか存在しないので、内側部の損傷を保存的に修復するのは不可能です。

 手術療法では「半月板切除法」および「半月板縫合法」とがありますが、どちらの方法を選択するかは、実際の損傷状況の確認により決定されます。

〔膝半月板損傷の保存的治療〕

 半月板の損傷が狭い範囲の辺縁部断裂に限られ、軽度であるときには、ギブス固定や装具療法が可能なことがあります。

 症状からの回復を早めるために、大腿四頭筋やハムストリングスのストレッチングや筋力強化訓練をしてリハビリします。

〔膝半月板損傷の手術療法〕

 半月板の手術療法には、半月板切除法と半月板縫合法とがあるのですが、半月板は膝の緩衝材として重要な役割があるので、その組織はできるだけ温存することが大切です。

 一方で、半月板は血行が乏しい組織であり、症状によっては整復が困難な場合が多いのも事実です。

 このため、切除と縫合、どちらの方法で手術するかは、損傷部位や損傷形態などにより総合的に判断・決定されます。

膝半月板の手術方法
半月板縫合

 損傷範囲が広い辺縁部断裂の場合に、縫合して治癒する可能性が高いと判断されたら縫合術が選択され、関節鏡視下での半月板縫合術が行われます。

 縫合手術の場合には、部分切除法の場合よりリハビリは長くかかるといわれます。

半月板切除

 縫合手術での治癒が困難と判断される場合には、半月板切除術が採用されます。

 半月板の切除では、傷んだ部分を切り取り形を整えます。また、将来の変形性膝関節症発生の未然防止のため、切除範囲を最小限に留めるように行われます。

 半月板切除は、関節鏡を使って非常にちいさな切開で可能ですが、膝頭上部の2箇所に半径1cmほどのバッテンの傷が残ります。


〔手術後のリハビリ〕

 半月板損傷の2週間後には15%、1か月後には30~50%もの筋力低下があるとされます。

 また、体重が1kg増える毎に膝への加重は4kg増すといわれているので、身体のスリム化と筋力増強が不可欠です。

 半月板損傷の手術後には、できるだけ機能回復を図るためのリハビリテーションが欠かせません。通常、リハビリは三つのステップに分けて行います。

手術後のリハビリテーション
第1段階

 第1はもっとも短い期間(約3週間)で、軽い運動をしながらの安静です。

第2段階

 第2段階では、徐々に運動量を増して、膝の前後を支えている大腿四頭筋やハムストリングの筋力強化を図ります。

 同時にストレッチングを行い、筋肉の柔軟性も増し、筋力と耐久力を回復させる。

第3段階

 第3段階は、誰にも必要なわけではありませんが、必要なら専門的なトレーニングを行い、スポーツができるだけの完全回復を目指します。

 将来の半月板損傷の再発防止のためには、スポーツなどを行う場合には、ストレッチングやウォーミングアップは入念に行うことが肝要です。



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