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〔チアノーゼ〕


概要病気症状原因診断
治療予後合併症情報書籍
 

この疾患の概要です

 〔チアノーゼ〕は医学用語で、皮膚の粘膜が紫色、暗青色または暗藍色になることをいいます。

 紫色とはいっても、藍、青、紫、暗赤色などの色がいろいろ混ざり合ったような色です。

 私の生まれ故郷では、子供がプールに長時間入っていると口唇が紫色になり、これを「どび色」と呼んでいました。

 この症状は、口唇、指爪、耳朶、鼻尖、頬、指趾などによく見られます。



 赤血球中には、鉄と結合した蛋白質であるヘモグロビンが含まれています。

 正常であれば、動脈血中のヘモグロビンの98%以上は酸素と結合し、血液の色は赤色をしています。

 一方、酸素含有量の低い血液は、赤色というより、青色~紫色に近くなります。

 それ故、何らかの原因で、動脈を流れる血液中の酸素濃度が低下すると、爪や唇などが紫色に変化するチアノーゼが現れやすくなります。


 この現象は、身体の表面にある毛細血管中の還元ヘモグロビン量が5g/dL 以上(酸素不飽和度6.5vol% 以上)の状態のとき出現するといわれますが、貧血患者には出現しにくいという特徴があります。

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原因は何ですか?
〔チアノーゼの種類〕

 チアノーゼのタイプには「動脈血の酸素欠乏による中心性チアノーゼ」と「静脈血の酸素欠乏による末梢性チアノーゼ」および「先天性疾患によるチアノーゼ」という三つの種類があり、ほとんどの場合、心臓の病気や呼吸器の病気が原因で起こります。

 中枢性チアノーゼは、主に口腔粘膜、眼球結膜などに出現し、末梢性チアノーゼは、指、耳朶、鼻尖、頬部などに出現します。

 結局、チアノーゼの原因となる疾患は、「呼吸器疾患」「循環障害」および「異常ヘモグロビン」にあるとされています。

 肺や心臓の病気の多くは、血液中の酸素濃度低下の原因となり、血管や心臓に先天的異常があれば、肺から戻り心臓に向かうべき血液が直接静脈や左心室に流入してしまい、チアノーゼを起こすのです。

〔呼吸器疾患によるもの〕

 本来、還元ヘモグロビンは、全身の静脈から大静脈に集まり肺に運ばれ、ここで酸素と結合して酸化ヘモグロビンとなり、今度は動脈を経由して全身に運ばれます。

 しかし、呼吸器疾患があると、還元ヘモグロビンがうまく酸化されない状態が起こる結果、チアノーゼの症状が現れてきます。次のような疾患が原因となります。

呼吸器疾患によるチアノーゼの種類
肺気腫

 肺気腫は、呼吸細気管支と肺砲が拡張して破壊されてしまう疾患です。遺伝的要素もなしとはしませんが、非常に多くの場合、ベビースモーカーの中年以降の男性に多くみられる病気です。

 自覚症状として、少し身体を動かすだけで、息切れや息苦しさ感じるようになり、咳や痰がでたり、体重が減少したりします。

 慢性的な息切れなどの呼吸困難を伴うようになり、身体を動かすとひどく、休憩すると少し回復します。

 肺砲は、肺の中の重要な細胞で酸素と二酸化炭素を交換する組織ですが、拡張し破壊されてしまうと、最悪「ブラ」と呼ばれる重篤な呼吸機能障害に陥ることがあります。

 肺気腫は発病してしまうと、喫煙を止めても進行は止まらず、もはや進行を止める手立てはありません。この病気になる前にタバコは止めることが最善の防御策です。

肺線維症

 肺で酸素と二酸化炭素を交換している肺砲の数は数億個もありますが、「肺繊維症」は、この肺砲に繊維組織が増加し硬く縮んでしまった病気です。

 酸素・二酸化炭素のガス交換ができなくなり呼吸困難に陥ります。症状が進行して繊維化が広域になれば生命の危険に関わります。

 初期には、労作時に息切れする程度から始まり、次第に進行すると、安静時でも呼吸困難な状態となります。

 痰のでない頑固で乾いた咳や、指の先端が広くなる「バチ状指」がみられるようになり、慢性的な酸素欠乏状態に陥り、チアノーゼが現れます。

 職業的に大量のホコリに晒される人に起こる塵肺や、過敏性肺炎、膠原病、サルコイドーシス、突発性間質性肺炎等の病気が進行して引き起こされることが多い病気です。

 酸素吸入やステロイドの投薬、抗生物質などで治療しますが、完全な治療は極めて困難です。

肺動脈狭窄症

 肺動脈狭窄症は、右心室の出口、肺動脈弁、肺動脈自体が狭くなる病気で、全先天性心疾患の7~10%を占める、比較的発生頻度の高い病気です。

 肺動脈の狭窄の部位は、「肺動脈弁の上部(主肺動脈)」「肺動脈弁」「肺動脈弁の下(漏斗部)」および「末梢の肺動脈」があり、部位や狭窄の程度により症状や経過は異なります。

 軽度なものでは、ほとんど無症状であり運動制限の必要もない程度ですが、中等程度以上になると、疲れ易さや運動時の息切れ現象が現れてきます。

 新生児ではチアノーゼ現象が認められ、多呼吸やミルクの飲みが悪くなったり、体重増加が停滞するなどの、典型的な心不全症状が出現します。

 軽度なものでは、特に問題はないですが、中程度以上のものでは運動管理や手術が必要となります。

 治療では「カテーテル」を挿入して狭窄を拡げるものと、外科的手術により狭窄を正常化するものとがあります。ほとんどの場合、手術をすれば、日常生活に支障を来たすようなことはなくなります。

無気肺

 無気肺は、何らかの原因で肺組織に空気が供給されなくなり、肺がつぶれた状態になる病気です。 機能低下した肺の中で血液は流れ続けるので、血液中の酸素濃度が低下し、さまざまな酸欠症状が現れます。

 典型的な症状は、息切れからはじまり、心拍数の増加、呼吸困難、皮膚の色が紫色になるチアノーゼ症状などで、咳や胸痛も見られます。

 無気肺は、喫煙者に発症リスクが高く、急性無気肺と慢性無気肺とがあります。

 無気肺を引き起こす原因には、感染や強い炎症、外傷、先天性、気道の閉塞などがあります。

 通常は、一方の肺で起こるので、治療によっても改善しないときは、手術で肺の切除を行うこともあります。多くの場合、自宅での酸素吸入が必要です。

気管支の通過障害



高度の腹部膨隆




〔循環障害によるもの〕

 呼吸器疾患があると、還元ヘモグロビンがうまく酸化されなくなるのと同様に、循環器疾患があると、一部あるいは全身の還元ヘモグロビンの数が異常に多くなり、その色がチアノーゼとして現れます。

 次のような疾患が原因となります。

循環障害によるチアノーゼの種類
静脈血の動脈血への混入

 「ファロー四徴症」と呼ばれる先天性心奇形による病気があります。この病気はフランス人医師のファローにより1888年に報告された病気で、次のの四つが合併した疾患です。

 ・肺動脈狭窄(漏斗部狭窄)  ・心室中隔欠損
 ・右心室肥大
 ・大動脈騎乗

 動脈血に血中二酸化炭素濃度の高い静脈血が混入するために、チアノーゼ症状が起こります。

 また、血中酸素濃度の不足を補うために、赤血球数が増加する「赤血球増加症」や手指の変形する「太鼓バチ状指」が起こります。
 呼吸困難となり、しゃがみこむようになります。

 低酸素発作時や発作予防として、酸素投与、輸液、塩酸モルヒネ、重炭酸ナトリウム、βブロッカーなどの薬物治療がありますが、自然治癒はありえないので、外科的に根治手術をします。

末梢毛細血管における鬱血

右心不全、末梢循環不全、腫瘍による大静脈圧迫などで起こります。


〔異常ヘモグロビンによるもの〕

 何らかの理由で異常ヘモグロビンが血中に増加するとチアノーゼが現れます。

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診断はどうやりますか?
〔チアノーゼの検査〕

 血液中の酸素濃度は、動脈血ガス分析で検査できます。酸素濃度が何故減少しているのか調べるために、胸部X線撮影、血液流量検査、肺や心臓の機能検査が行われます。

 電極を指先や耳たぶに挟むだけで酸素濃度が測定できる、パルスオキシメーターを使えば、重症患者の酸素濃度も連続的に調べられます。

 チアノーゼの原因確定と、治療には、先ず酸素吸入療法が試みられます。

血液中の酸素濃度による診断
100%酸素を吸入で酸素分圧が改善

原因は呼吸器疾患

100%酸素を吸入で酸素分圧が改善しない

原因はチアノーゼ性心疾患

動脈血酸素飽和度、酸素分圧が正常

原因は末梢性チアノーゼ

動脈血酸素分圧が50mmHg以上あるが酸素飽和度が低下

原因は異常ヘモグロビン症

上下肢の酸素分圧に差

原因は解離性チアノーゼ


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