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〔脳・神経の病気〕

慢性硬膜下血腫


概要病気症状原因診断
治療予後合併症情報書籍
 

この疾患の概要です

 脳の表面は、外側から硬膜、くも膜、軟膜という三つの膜で覆われています。

 この内、硬膜の内部にじわじわと血液が溜まるのが〔慢性硬膜下血腫〕と呼ばれる病気です。



 頭部の軽い打撲などを受けて、瘤(こぶ)が出来たりしても、数週間もするとすっかり治り、忘れてしまうのが普通です。

 しかし、頭部の軽い打撲などから数週間後の慢性期になっても、硬膜の内部に血液が蓄積している場合、ごく少量なら特別な自覚症状は出ません。

 多量になると頭痛や手足の麻痺、歩行障害、認知症などの形で異変が発症します。


 〔慢性硬膜下血腫〕は、アルコールをよく飲み肝障害をもつような60歳以上の男性に多い病気です。

 年間発生頻度は、人口10万人に対して1~2人とされています。

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どんな病気ですか?
〔慢性硬膜下血腫という病気〕

 慢性硬膜下血腫は、頭部に軽い外傷を負った後、1~2か月して、頭蓋骨の下で脳を覆っている硬膜の内側にじわじわと血液が溜まる病気です。

 少量であれば自覚症状はおこりませんが、多量に溜まると血腫が脳を圧迫して様々な症状が現れてきます。

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どんな症状ですか?
〔慢性硬膜下血腫の症状〕

 慢性硬膜下血腫は、頭部に軽い外傷を負った後、1~2か月してからじわじわと症状が出始める病気です。

 大別して3種類の症状群のいずれかの症状が複数出現するようなら、この病気の可能性があります。

 このような場合には、すぐに脳外科でCTやMRIなどによる検査を受けるべきです。

慢性硬膜下血腫の症状群
〔頭痛〕

 血腫が大きくなると頭蓋内圧亢進をきたし、頭痛や吐き気、嘔吐を生じます。

〔精神症状〕

 血腫により脳が圧迫され、物覚えが悪くなったり、記憶が抜けたり、認知症的な症状などさまざまな精神症状を示します。

〔麻痺症状〕

 血腫による脳への圧迫のため、片麻痺、失語症など大脳半球の症状を起こすことがあります。歩行障害や手足の麻痺なども起こります。


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原因は何ですか?
〔慢性硬膜下血腫の原因〕

 慢性硬膜下血腫のできる原因としては、頭部の軽い打撲などによるものと、肝機能障害や腎透析によって血液が固まりにくくなっているものとに大別されます。

 主な原因は、軽微な頭部外傷によって脳と硬膜を繋ぐ橋静脈の破綻などで、硬膜下に血性貯留液が皮膜を形成しじわじわと溜まり血腫として成長するものとされています。

 その他でこの病気の発症に影響する因子として、次のようなものがあります。

・アルコール依存症の人、大酒家
・脳に萎縮があり頭蓋骨と脳の間に隙間が多い人骨
・出血傾向がある人
・脳梗塞予防薬として抗凝固剤を飲んでいる人
・水頭症の短絡術後の人
・透析
・がんが硬膜に転移している場合

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診断はどうやりますか?
〔慢性硬膜下血腫の診断〕

 数ヶ月前に頭部外傷の経験があり、頭痛、片麻痺(歩行障害、上肢の脱力)、記憶力低下、意欲減退、痴呆など精神症状が見られる場合、慢性硬膜下血腫の可能性が高くなります。

 通常の頭部単純X線撮影での診断では、慢性化し石灰化した慢性硬膜下血腫以外の場合はの特定は不可能です。

 確実な診断はCTスキャンで検査する方法となります。

 CTスキャンの他には、脳血管撮影とMRIとがあります。

 脳血管撮影はCT技術出現以前においては使われた技術ですが、最近では使用されません。

 MRIは周囲の脳構造を鮮明に、しかもあらゆる断層面で描出できるので極めて有用な方法です。

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治療はどうやりますか?
〔慢性硬膜下血腫の治療方針〕

 慢性硬膜下血腫の治療には、保存療法と手術による方法とがあります。

 ごく軽微な血腫の場合には保存療法により経過をみることがあります。

 しかし、ほとんど自覚症状のないような場合を除けば、血腫が自然治癒することは極めて稀なことで、治療については基本的には外科的治療が必要です。

〔慢性硬膜下血腫の保存療法〕

 慢性硬膜下血腫の保存療法には、副腎皮質ステロイド薬や脳圧降下薬、非ステロイド抗炎症薬、あるいは止血薬などの薬剤を用いた療法があります。

 これらの療法は、全身状態がよくなく外科的処置が出来ないなどやむを得ない場合を除いては推奨はできません。

慢性硬膜下血腫の薬剤による保存療法
〔副腎皮質ステロイド薬〕

 硬膜下の出血量が少ない場合や、全身症状がよくなく手術ができない場合に副腎皮質ステロイド薬を使用し経過を観察します。小さい血腫は数年で吸収されることがあります。

〔脳圧降下薬〕

 脳圧降下薬を用いることがありますが、効果ははっきりしません。この方法はお奨めできません。症状がある場合は手術が必要です。

〔非ステロイド抗炎症薬〕

 非ステロイド抗炎症薬が用いられる場合がありますが、たとえ効果があっても血腫が縮小し消滅するまでには長期間を要します。この方法もお奨めできません。症状がある場合は手術が必要です。

〔止血薬〕

 止血薬が用いられる場合がありますが、血腫が縮小し消滅するまでには長期間を要します。この方法もお奨めはできません。症状がある場合はやはり外科的手術が必要です。


〔慢性硬膜下血腫の外科的治療〕

 慢性硬膜下血腫があり麻痺や意識障害などの神経症状があるなら、手術で血腫を除去することが最善の方法です。

 慢性硬膜下血腫の外科的治療法には、穿頭ドレナージ術、および穿頭洗浄術とがあります。

慢性硬膜下血腫の外科的治療法
〔穿頭ドレナージ術〕

 穿頭ドレナージ術は、頭蓋骨に小さな穴をあけて硬膜を切開し、そこから管を入れて血腫を取り去る方法です。

 この方法は最も確立された手術方法で、局所麻酔だけで簡単に行えます。

 手術を行うことで症状は速やかに解消します。

 ただし、手術後に血腫が再び溜まり、再手術が必要となることも10%ほどあります。

〔穿頭洗浄術〕

 穿頭洗浄術は、頭蓋骨に小さな穴をあけて硬膜を切開し、そこから管を入れて生理的食塩水などで血腫を洗い流す方法です。

 この方法は最も確立された手術方法で、局所麻酔だけで簡単に行えます。

 手術を行うことで症状は速やかに解消します。

 ただし、手術後に血腫が再び溜まり、再手術が必要となることが穿頭ドレナージ術よりも若干多く起こります。



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