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〔呼吸器の病気〕

気胸


概要病気症状原因診断
治療予後合併症情報書籍
 

この疾患の概要です

 〔気胸〕は、肺を包んでいる肋膜(胸膜)に穴が明いてしまう疾患です。

 激しい胸の痛みが突然襲ってくる病気で、呼吸困難となります。

 肺は膨張と収縮を繰り返して呼吸していますが、この病気になると、肺の表面から胸の中に空気が漏れ出すために、収縮したまま十分に膨らむことができません。



 原因別区分では、次の3つがあります。

 ・自然気胸
 ・外傷性気胸
 ・医原性気胸

 多くの場合は〔自然気胸〕で、肺の表面に薄い空気の袋ができる気腫性膿胞や胸膜直下に出来た膿胞が破れて生じる〔原発性自然気胸〕と、他の肺の病気に続いて起こる〔続発性気胸〕とがあり、いずれの場合も、吸気が胸腔に洩れて起こります。

 〔外傷性気胸〕は、胸部圧迫や交通事故などで肋骨を骨折したときなどに起こります。

 また、〔医原性気胸〕は、経皮肺生検、鎖骨下静脈穿刺、肩背部や胸部などへの鍼の直深刺などにより起こります。


 〔気胸〕が同時に両方の肺に起これば生命に関わりますが、これは稀でほとんどの場合は片方の肺だけに起きます。〔気胸〕を起こしたことのある患者の約半数は再発しますので注意が必要です。

 高齢者の〔気胸〕は、〔肺気腫〕〔結核〕〔肺がん〕などの基礎疾患に伴って起こる〔続発性気胸〕が多いです。

 〔自然気胸〕は、若年者で長身でやせ型の男性に発生することが多いです。女性には〔月経随伴性気胸〕が起こることもあります。

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どんな病気ですか?
〔気胸という病気〕

 肺は肋骨と筋肉で構成された胸郭の中にあり、この納まっている空間のことを「胸腔(きょうくう)」と呼びます。

 簡単にいえば、レントゲン写真で肋骨の内部に写った部分が胸腔です。

 喉から通じる気管は、胸腔に入り枝分かれして気管支となり、最後にブドウの房のような形の肺胞になります。

 この肺胞で外から吸い込んだ酸素と体内で排出された二酸化炭素の交換作用が行われるわけです。

 気管支や肺胞を取り囲む空間である胸腔全体は、「胸膜」という二重構造の膜に包まれています。

 二重構造の胸膜の内、胸腔と接する内側の胸膜は「臓側胸膜」と呼ばれ、反対に肺の外側にある肋骨や助間筋、および横隔膜と接する側の胸膜は「壁側胸膜」と呼ばれています。

 臓側胸膜と壁側胸膜は辺縁で連続していて、一枚の扁平な袋になっていて、この袋の中が胸腔だということになります。

 この二つの胸膜、壁側胸膜と臓側胸膜との間には隙間があり「胸膜腔」と呼ばれていて、この中は胸膜液という液体で満たされています。

 正常な状態であれば、肺は大きく膨らんだり縮んだりして呼吸作用をしていますが、胸膜液があることで呼吸運動で内側の臓側胸膜と外側の壁側胸膜との摩擦を解消して、肺が滑らかに動けるような役目を果たしています。

 このとき、何らかの原因で内側の臓側胸膜に穴が開き、肺の内部(胸腔)からの空気が、胸膜液のある二つの胸膜の間の隙間に流入してしまった状態が〔気胸〕という病気です。

 正常な状態であれば、胸膜液の満ちている胸膜腔内の圧力は、肺の内部よりも低くなっていて、肺は膨張・収縮はしますがつぶれはしません。

 しかし、気胸の状態になると、胸膜腔内の圧力が肺の圧力より高くなり、肺の一部または全体がつぶれてしまいます。

 左右両側の肺に同時に気胸が起これば直ちに生命に関わりますが、それは滅多に起こりません。気胸は、たいていは片方の肺にだけ起こります。

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どんな症状ですか?
〔気胸の症状〕

 気胸になると、突然、激しい胸の痛みに襲われ、酸素飽和度の低下、頻脈、動悸、咳などの症状を伴い呼吸が苦しくなります。

 胸膜腔への空気の漏れ出しが多いと、時には呼吸困難からショック状態に陥ることもあります。

 気胸発症に伴い損傷部からの出血が多量になると、血液が胸腔内に溜まる血胸になります。

 この血胸が感染症を起こすと膿が胸腔内に溜まる膿胸へと悪化しとても危険です。

 気胸は、20~30歳くらいまでの若く、背が高く、やせ型の男性に多くみられる病気です。

 最近の高齢化の進展に伴い、高齢者の気胸も増加傾向があり、この場合は肺気腫などの合併症が多く見られます。また、女性の気胸も増加傾向にあります。

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原因は何ですか?
〔気胸の原因〕

 気胸の種類の分類ほど訳の分からないものはないというのが実感なのですが、ここではあえて気胸の種類を分類してみたいと思います。

 多くの書籍や、ネット上の情報を見ても、分類方法は気が遠くなるほど訳が分かりません。

 一医師に一つづつの分類法があるとでも言えばいいのでしょうか。(済みません。愚痴です。)

 困り果てた末に分類しましたが、いろいろ呼ばれている気胸の大部分の呼び方を採用して分類してみました。

 名称が異なっても性格が似ている名称は同じカテゴリーとしてまとめています。

 主な気胸の種類は、自然気胸、外傷性気胸、医原性気胸の三つとなりますが、その他の気胸もあります。

気胸の原因の分類
〔自然気胸
原発性自然気胸
突発性気胸〕

 原因がはっきりしない気胸で、通常は何の前触れもなく突発的に起こる気胸です。肺表面に出来る小さな風線状のブラと呼ばれる肺う胞ができ、そこの穴が開いておこります。若年者に多く発症します。

〔外傷性気胸
続発性気胸
症候性気胸〕

 交通事故などでの胸部圧迫や、折れた肋骨が肺に刺さるなどの胸部外傷、損傷、および肺内の疾患や病巣が原因となります。

〔医原性気胸〕

 医療行為での診断や治療行為によっておこる気胸で、経皮肺生検、鎖骨下静脈穿刺、肩背部や胸部などへの鍼の直深刺などが原因となります。

〔緊急性気胸
緊張性気胸〕

 何らかの原因で、胸膜腔内に空気が入るが抜けていかない状態になったものや、胸腔内に空気が一方的に貯留し胸腔内圧が次第に上昇していくのが原因です。

〔二次性気胸〕

 肺気腫や子宮内膜症によって肺に穴があくのが原因です。月経随伴性気胸などがあります。

〔人工気胸〕

 かつて、肺結核の治療の為に人工的に起こした気胸で、現在では行われていません。

 多くの場合は自然気胸で、肺の表面に薄い空気の袋ができる気腫性のう胞や胸膜直下に出来たう胞が破れて生じる原発性自然気胸です。他の肺の病気に続いて起こる続発性気胸も比較的多くありますが、どちらの場合も吸気が胸腔に洩れて起こります。

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診断はどうやりますか?
〔気胸の診断〕

 自然気胸と区別しにくい病気として、狭心症、肋間神経痛、横隔膜ヘルニアなどがあります。

 これらの紛らわしい病気なら、聴診器を当てれば呼吸音が聴こえるのに対して、気胸では胸の一部分で正常な呼吸音が聴こえません。

 胸部を打診すると太鼓のような空洞化した音がするため直ぐに気胸だと診断できます。また、胸部X線撮影やCT検査を行って診断が確定されます。

気胸の診断
〔聴診〕

 上記した状況のほかに聴診により、患部のある側に呼吸音の減弱が見られます。

〔X線撮影
CT検査〕

 胸部X線写真で気胸は血管影を伴わない空虚な領域として写ります。

 血胸や血気胸があれば血液を含む胸水によるX線透過性の低下した像が現れます。

 胸部X線検査では、通常は片方の肺がつぶれているために、気管が片方に押されているかどうかでも気胸が確認できます。

 大きなのう胞があれば胸部CT検査によって、その場所が確認されます。


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治療はどうやりますか?
〔気胸の治療〕

 気胸になっても必ずしも特別な治療や手術などが必要とはなりません。

 軽症であれば安静にするだけで治癒する可能性が高いです。

 しかし、気胸を患った患者の半数は後に再発することが知られています。

気胸の治療
〔軽症時の安静〕

 軽い原発性自然気胸は軽症時には、安静にするだけで縮んでしまった肺が毎日少しずつ拡張し、たまった空気は数日間で吸収されます。初期段階では安静にするのみで自然治癒を待つのがよい方法です。

 より広範囲の気胸では、安静にしているだけでは、空気が完全に吸収されるのに2~4週間かかります。

〔穿刺脱気療法・持続脱気療法〕

 穿刺脱気療法は、胸膜に針を刺して、たまった空気を抜きます。持続脱気療法では、胸膜にチューブを挿入しておき、持続的に空気を抜くようにします。安静にして自然治癒を待つより、より早く空気を除去できます。

〔胸腔鏡下手術で肺のう胞切除術〕

 再発を繰り返す自然気胸やドレーン後も改善しない場合には、胸腔鏡下手術でのう胞の切除を行うことで再発が防止できるようになります。この手術では、事前に胸部CT検査で原因病巣と考えられるのう胞を探査しておきます。

〔胸膜癒着療法〕

 胸膜癒着療法では、胸腔内に化学薬剤を注入し、強制的に肺と胸膜を癒着させます。肺が潰れなくなるため、うまくいけば根本的な治療となるが、手術を行う場合、多くの場合に開胸を必要とします。

 多くの場合、自然気胸の発症原因ははっきりしていません。しかし、大気汚染や喫煙が関連している可能性は高いので、禁煙や、日常生活での空気清浄化などが必要です。


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