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〔消化器の病気〕

脂肪肝


概要病気症状原因診断
治療予後合併症情報書籍
 

この疾患の概要です

 肝臓の細胞に異常な量の脂肪が蓄積沈着した状態を〔脂肪肝〕といいます。

 軽度であれば自覚症状はありませんが、重症になると、腹部の張り、食欲不振、吐き気、全身倦怠感などの自覚症状が現れます。

 〔脂肪肝〕の原因は、脂肪分の摂りすぎや、糖の代謝異常によって肝細胞内に中性脂肪が蓄積することで発症します。



 具体的には、過栄養性の脂肪分摂取が最も多い要因であり、アルコールの継続的過剰摂取や肥満、糖尿病、薬剤、妊娠なども原因となります。

 アルコールの大量摂取が続くと、肝臓での脂肪代謝が異常となり、肝臓で必要以上の中性脂肪がつくられ蓄積されます。

 〔脂肪肝〕になるとGOTやGTPなどの肝機能指数が上昇します。

 自覚症状がないため、放置すると重症の〔肝硬変〕へと進行する可能性があります。


 〔脂肪肝〕の発症は女性より男性の方が多く、成人男性の20%強、成人女性でも数%の人に〔脂肪肝〕があるといわれます。

 年代では30~70代と幅広い層に発生します。男性では40歳前後、女性では40代以降の中高年に多くなります。

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どんな病気ですか?
〔脂肪肝という病気〕

 健康な肝臓なら3~5%くらいの中性脂肪やコレステロール、リン脂質などの脂肪分がふくまれています。

 正常な肝臓中の脂質のうち、約三分の二はリン脂質で、残りがコレステロールや中性脂肪、遊離脂肪酸などとなっています。

 中性脂肪が異常に増えて、全体の脂肪分が、5%を超えた状態、特に10%を超えると細胞中に脂肪滴が現れるようになり、これが肝細胞の三分の一以上になれば、〔脂肪肝〕と呼ばれます。

 〔脂肪肝〕では、コレステロールやリン脂質が蓄積することはほとんどありません。

 簡単にいえば、皮下や内臓に中性脂肪が蓄積すると肥満になりますが、肝臓に蓄積すれば〔脂肪肝〕ということになります。

 〔脂肪肝〕は極端にいえば、フォアグラの肝臓のような状態ですが、初期段階では自覚症状というものはほとんどありません。しかし、肝炎が合併しやすいという特徴があるので危険なのです。

 脂肪肝の種類は、大きく分けて、〔アルコール性脂肪肝〕と〔非アルコール性脂肪肝〕とに分けられています。これらは肝生検での像が異なります。

 このほか、ステロイド薬などの副作用による〔薬剤性脂肪肝〕もあります。また、極端な拒食症や飢餓状態が続くと、栄養障害から脂肪肝になる可能性もあります。

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どんな症状ですか?
〔脂肪肝の症状〕

 〔脂肪肝〕は初期段階ではほとんど自覚症状は現れませんが、進行してくると、肝細胞が脂肪で膨らみ肝臓内の血管が圧迫されることで、肝臓内部の血液循環が悪くなります。

 その結果、肝機能の低下が起こり、身体の倦怠感や疲労感が現れ、疲れ易くなったりします。

 重症になると、肥満や糖尿病との合併症が現れてきます。

 また、多量の飲酒癖のある人は脂肪肝で重症になる危険性が大です。

 多量のアルコール摂取者の約80%は脂肪肝になっていて、糖尿病患者や肥満でも約半数の人が脂肪肝になっています。

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原因は何ですか?
〔脂肪肝の原因〕

 脂肪肝の三大原因とされるのは、次の三つとされます。

 ・肥満
 ・アルコールの飲みすぎ
 ・糖尿病

 本来、肝臓は人体が生きる上で必要なエネルギーや物質をつくったり、不要となった物質を解毒する代謝機能をもっています。

 食物から摂取した脂肪酸を肝臓で中性脂肪に変換し、血流に乗せて全身に輸送してエネルギー源としたり、各臓器の材料とします。

 また、逆に全身の脂肪組織から血液中に放出された脂肪酸を取り込み、中性脂肪に変換して再利用します。

 正常に機能している肝臓なら、脂肪分のバランスをうまく調節しているのですが、食事から摂取する脂肪分が極端に増えたり、何らかの病気で肝臓機能が低下すると、全身から運ばれてくる脂肪酸を処理しきれなくなり、短期間で脂肪が蓄積してしまいます。

 暴飲暴食を続けると1~3か月で〔脂肪肝〕になるとの話もあるくらいです。〔脂肪肝〕になる食品は脂肪分の多い食品は勿論そうですが、それには限りません。

 アルコールや糖質も立派な〔脂肪肝〕の原因物質です。

 要は、肝臓の代謝能力(処理能力)を超えた、食べ方や飲み方をすれば、確実に〔脂肪肝〕になると思って間違いはありません。

 肝臓機能は個人差があり、体調不良や医薬品服用などでも異なってきます。

 栄養過多が肝臓の処理能力を超える原因となるのは容易に理解できますが、逆に栄養不足も原因となることを忘れてはいけません。

 肝臓で合成された中性脂肪は、ある種の蛋白質と結合し「リポ蛋白」という物質になって、血流に乗って放出されるのですが、栄養不足で結合すべき蛋白質が不足すると、中性脂肪は行き場を失って肝臓に蓄積してしまい、〔脂肪肝〕になるのです。

 アルコール性脂肪肝の人は、肝臓の繊維化が進行して肝硬変になり易くなります。

 いずれにしても、脂肪肝は、肝硬変以外にも動脈硬化や高血圧を誘引し、心臓病や脳卒中のリスクを高めます。

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診断はどうやりますか?
〔脂肪肝の診断〕

 通常の健康診断による血液検査や尿検査を行って、その結果で〔脂肪肝〕の疑いがあると考えられる場合には、肝臓の超音波エコー検査や、CTスキャンによる断層撮影検査を行います。

 超音波エコーの検査で、画面上にギラギラと輝く特徴的な肝臓が映し出されれば、脂肪肝と判定されます。

 CTスキャンの検査で、肝臓全体が大きく腫大していて、通常よりも黒っぽくでれば〔脂肪肝〕と考えられます。

 肝臓は再生が利く臓器であり、常に活発な新陳代謝を行っています。

 肝臓内で機能している酵素に「GOT」「GPT」というのがあり、これらは肝臓内で触媒の働きをしている酵素ですが、通常時でもごく少量は血液中に流入していて逸脱酵素と呼ばれています。

 血液中のGOTやGTPの量が異常に多くなると、それは何らかの肝機能障害によるものと考えられます。

 そこで、もしも、これらが異常値を示すときは、超音波エコーやCTスキャンで〔脂肪肝〕がないかどうか確定するという手順になるわけです。

 肥満が原因の〔脂肪肝〕は、血液検査と超音波検査でほぼ診断できます。

 しかし、〔アルコール性脂肪肝〕の場合は、継続的な飲酒癖により、肝臓に繊維が増える肝繊維症になっていたり、更に進行して肝硬変を起こしている可能性があるため、肝臓に針を刺して肝臓細胞を採取して、顕微鏡による病理検査(肝生検)を行うこともあります。

血液検査での脂肪肝診断
検査項目 正常値 脂肪肝の場合

GOT(AST) 8~40 IU/L 軽度~中等度上昇。過栄養性:GPT>GOT

GPT(ALT) 5~35 IU/L アルコール性:GOT>GPT

ALP 60~220 IU/L 軽度上昇

γ-GTP 50 IU/L以下 アルコール性では高値

コリンエステラーゼ(CHE) 186~490 IU/L 過栄養性:顕著に上昇もしくは正常上限近くの値

総コレステロール 120~220 mg/dL 高値

中性脂肪 50~150 mg/dL 高値

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治療はどうやりますか?
〔脂肪肝の治療方針〕

 脂肪肝の治療方法としては「基礎疾患の治療」「食事療法」「運動療法」および「生活習慣の改善」などがあります。

 原因が肥満や糖尿病などの基礎疾患によるなら、その原因の除去や治療が必要です。

 通常、脂肪肝の最大の原因は過食・暴飲暴食による肥満であり、太らないことが最大の治療法となります。

 太りすぎ防止の方法としては、食事療法と運動療法が不可欠です。

 また、原因がアルコース性の場合は、禁酒が原則となります。

〔基礎疾患の治療〕

 脂肪肝の原因となる疾患、糖尿病や拒食症などがあるなら、これらの疾患の治療を忍耐強く行うことが何より大切です。

〔食事療法〕

 食事療法の最も基本的な方法は、摂取エネルギーを制限する方法ですが、規則正しい食事、時間をかけてゆっくり食べる、食物繊維の多い食品を摂取するなども重要な方法となります。

食事療法の方法
〔摂取エネルギー制限〕

 肥満や栄養過多による脂肪肝では、食事療法での減量は不可欠です。低脂肪・高たんぱくのメニューを心がけます。治療時の一日当りの摂取エネルギー量の目安は、標準体重を求め、それに25[kcal]を掛けて計算します。

 必要エネルギー量は次の式で計算します。

 L:身長〔cm〕
 M:標準体重〔kg〕
 E:必要エネルギー〔kcal〕

M=(L-100)*0.9 〔kg〕
E=M*25 〔kcal〕

 たとえば、身長165センチの人の場合は、

M=(165-100)*0.9=58.5〔kg〕
E=58.5*25=1462.5〔kcal〕

 通常の大人の摂取エネルギー量が1800~2000[kcal]くらいなので、相当な我慢をしないと達成できない少なさですが、これを守らなければ、将来、肝硬変や汗がんになることは免れません。我慢して頑張るか、がんになって死ぬかです。

〔規則正しい食事〕

 毎日三食をモットーとして規則正しく食事をする。ダイエットと称して朝食を抜くと、腸での吸収率が上昇して、かえって太ることにもなりかねません。

〔時間をかけてゆっくり食べる〕

 食事開始から十数分すると、腸から吸収された糖分が血液中に増加し、脳の満腹中枢がそれを感知して、満腹感が起こります。いわゆる早食いをすると脳が感知する前に食べ過ぎ、カロリー過多となってしまい危険です。

〔食物繊維の多い食品を摂取〕

 根菜類や海藻類、こんにゃくなどに多く含まれる食物繊維は、腸でコレステロールを吸着して、からだの外に排泄してくれる作用があるので、肝臓に運ばれる脂肪が減少し脂肪肝の予防となります。


〔運動療法〕

 〔脂肪肝〕の治療では、食事から摂取するエネルギー量を制限することが絶対的に必要ですが、運動によりエネルギーを消費することも不可欠です。

 〔脂肪肝〕の治療を目的としての運動によるエネルギーの消費には一定の法則があります。

 運動の初期には、先ず肝臓に蓄積されたグリコーゲンが使用され、これを使い切るのに20分くらいかかります。その後で、ようやく皮下脂肪や肝臓脂肪が消費され始めます。

 肝臓の脂肪を有効に減少させるためには、最低でも30~40分の運動が必要となります。

 できるなら1時間くらいは続けるのが効果的です。運動の種類としては、ウオーキングが最適で、毎日8千~1万歩くらい歩けば、肝臓脂肪は徐々に減少します。

 有酸素運動と呼ばれる激しい運動では、短時間しか継続できないために、肝臓に蓄積したグリコーゲンは消費されますが、肝臓の脂肪を消費することにはならないので、脂肪肝の治療法としては不適です。

 〔脂肪肝〕の治療としての運動は、軽い運動をなるべく長時間続けることが秘訣です。

 通勤などで運動の時間がとれない人は、通勤時に歩く距離を増やすような工夫をすれば効果が期待できます。

 日常の主婦の仕事、拭き掃除や庭の手入れなども効果があります。

〔生活習慣の改善〕

 〔肥満性脂肪肝〕にしても、〔アルコール性脂肪肝〕にしても、生活習慣を改善しないと抜本的治療はできません。次のような点には十分に注意しましょう。

 〔アルコール性脂肪肝〕の治療では、禁酒は原則で、これが我慢できなければ、やがて肝硬変を経て肝臓がんとなるので、死にいたる確率は限りなく100%に近づきます。

 禁酒を頑張れれば、1~3か月で肝機能は正常に戻るといわれます。

 軽症の場合でも、肥満にならないように食事には注意を配り、運動も含めて体重のコントロールをしましょう。


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