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〔腎臓・泌尿器の病気〕

尿失禁

尿道炎


概要病気症状原因診断
治療予後合併症情報書籍
 

この疾患の概要です

 〔尿道炎〕は、細菌や微生物が尿道内に侵入して起こる病気で〔淋菌性尿道炎〕〔非淋菌性尿道炎〕とがあります。

 淋菌性尿道炎では感染から数日後に、尿道口から黄色い膿がでて、尿道に焼けるような痛みを伴います。

 非淋菌性尿道炎では、感染から1~2週間後に、尿道に軽い痛みや痒みが現れます。


 尿道炎は、次のような病原となる病原微生物が尿道内部に侵入することで発症する病気です。

 ・淋菌
 ・クラミジア・トラコマティス
 ・リケッチア
 ・カンジダ
 ・トリコモナスなど

 一般的には、性的接触により男性から女性に、女性から男性にと感染して広まる性感染症のひとつです。

 多くの場合、症状は男性に現れます。男性に多く発症する理由は、男性と女性の性器の付近の身体構造の違いによります。


 女性の場合には、尿道炎として診断されることは少ないのですが、その理由は、女性がこの病気に罹った場合、膀胱炎になっていることが多く、膀胱炎として診断されるからです。

 このため、尿道炎といえば、普通は男性の尿道炎を意味し、女性の場合には、膀胱炎としての症状が先行することで、通常は尿道炎と診断することはありません。

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どんな病気ですか?
〔尿道炎の概要〕

 尿道炎は、細菌や各種微生物が尿道内に侵入しておこる病気です。男性と女性では、尿道付近の人体構造が大きく異なるために、通常は男性が多く罹る病気です。

 男性の尿道炎は、主に不潔な性的接触などで、細菌が尿道に侵入して起こる性感染症のひとつです。

 解剖学的に女性の尿道の長さは男性の15%位しかなく、尿道内の広さは男性よりも大きくなっています。

 女性では尿の出口から侵入してくる細菌などは容易に膀胱まで達してしまい、膀胱炎を起こしやすくなっています。

 尿道炎といえば、普通は男性の尿道炎を意味し、女性の場合には、膀胱炎としての症状が先行するので、女性の尿道炎を単独で診断することはありません。

〔尿道炎の種類〕

 尿道炎には、病原微生物の種類により「淋菌性尿道炎(淋病)」と「非淋菌性尿道炎」とがあります。

 非淋菌性尿道炎の中で最も重要なのは「クラミジア性尿道炎」ですが、その他の病原微生物によるものもあります。

尿道炎の種類
〔淋菌性尿道炎〕

 淋菌性尿道炎は、通常は「淋病」と呼ばれる病気で、尿道に淋菌が感染して発病します。

 昔は最も頻度の多い尿道炎でしたが、近年では後に述べる「クラミジア性尿道炎」が非常に増加していることで、現在は2番目に多い尿道炎となっています。

 昔は売春婦との性的接触などが主な感染ルートでしたが、近年では若い女性の性モラルの低下が新たな感染ルートとして寄与しているとも言われています。

〔非淋菌性尿道炎〕

 非淋菌性尿道炎の主体は「クラミジア・トラコマティス」という「リケッチア」や「ウイルス」に類似した病原菌の感染が原因で発病する「クラミジア性尿道炎」です。  近年では、尿道炎の大部分はクラミジア性尿道炎で、淋菌性尿道炎の5~7倍の発生頻度となっています。

 非淋菌性尿道炎の感染ルートは、淋菌性尿道炎の場合と同様で、若い女性の性モラルの低下が寄与しているといわれます。  女性のクラミジア性尿道炎の症状は比較的軽微なため、不特定多数との性的接触などにより、知らぬ間に感染を広げていることが多くなっています。

 非淋菌性尿道炎には、その他にも「マイコプラズマ」や「カンジダ」「トリコモナス」などの病原微生物などによる尿道炎があります。


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どんな症状ですか?
〔尿道炎の症状〕

 淋菌性尿道炎と非淋菌性尿道炎とでは、尿道炎の症状は大きく異なるので分けて考える必要があります。

尿道炎の症状
〔淋菌性尿道炎〕

 淋菌性尿道炎は感染から3日~7日以内に激しい排尿痛を伴う急性尿道炎のパターンで発症します。黄色く濃厚な膿が排泄されます。

 淋菌が尿道口から逆行性に侵入し、前立腺炎や精巣上体炎を引き起こすこともあります。

〔非淋菌性尿道炎〕

 非淋菌性尿道炎の代表であるクラミジア尿道炎では、感染から発症までの潜伏期間が1~3週間ほどと長く、ほとんど尿道痛もない軽い症状として発症します。

 少量の透明性分泌液がでて痒みを伴うことがあるものの軽度です。

 マイコプラズマやウレアプラズマでの尿道炎でもクラミジア尿道炎と同様な症状が現れますが、女性の膣トリコモナス尿道炎では、尿道痛や掻痒感を伴い濃い分泌物がでることがあります。


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原因は何ですか?
〔尿道炎の病原微生物〕

 尿道炎を引き起こす病原微生物は、従来は「淋菌」が主体でしたが、現在では「クラミジア・トラコマティス」「マイコプラズマ・ゲニタリウム」「ウレアプラズマ・ウレアリティクム」「膣トリコモナス」など数多くのものがあります。

〔尿道炎感染経路〕

 男性の尿道炎の主要な感染経路は、淋菌性尿道炎でも非淋菌性尿道炎でも、性的接触による微生物感染です。

 特に、クラミジア感染の自覚症状が軽いために、一般女性に非淋菌性尿道炎が蔓延していることもあり、性的接触を持つ不特定多数の男性への感染が激増していると考えられています。

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診断はどうやりますか?
〔尿道炎の検査方法〕

 尿道炎の検査・診断は、男性では尿道分泌物の検査、女性では子宮頸管からの分泌液の検査で行います。

 淋菌性尿道炎の検査では、尿道分泌物や子宮頚管分泌液を1000倍の倍率の顕微鏡で観察し視野内に5個以上の白血球が観察されれば尿道炎と診断されます。

 また、初尿沈渣を400倍で顕微鏡検査して視野内に5個以上の白血球が認められれば尿道炎と診断されます。

 非淋菌性尿道炎、特にクラミジア尿道炎の検査は、クラミジアの検出で行うのですが、この微生物はリケッチアやウィルスに類似した細胞内寄生体であるため、一般の光学顕微鏡での検出は不可能です。

 現在では、クラミジアの検出は、初尿を用いた遺伝子診断でできるようになりました。

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治療はどうやりますか?
〔尿道炎の薬物療法〕

 尿道炎の治療は、「薬物療法」で行われます。病原微生物の種類により用いる薬剤に違いはありますが、適した薬物を用いることで数週間内で完治できます。

 感染症なので、薬物療法で使用する医薬は「抗菌薬」が基本です。

〔淋菌性尿道炎の薬物療法〕

 数十年前までは、淋菌性尿道炎の治療には「ペニシリン」が効果的に用いられましたが、近年になって、このペニシリンに耐性を示しまったく効果のでない「ペニシリン耐性菌」の淋菌が出現したことで、状況が変わってきました。

 ペニシリン耐性菌は、βラクターゼという物質を産生してペニシリンを分解することで耐性を獲得します。

 その後、このような「ペニシラーゼ産生菌」に効果的なペニシリン系薬剤の他、「セフェム系」「ニューキノロン系」「アミノグリコシド系」薬剤などが開発されました。

 現在では、これらの新しい抗生物質が淋菌性尿道炎の治療に用いられています。いずれまた、耐性のある淋菌が出現する可能性はありますが、現状では効果抜群の医薬が多数存在します。

淋菌性尿道炎の治療薬
〔ロセフィン〕

 「ロセフィン」は、一般名「セフトリアキソンナトリウム(CTRX)」という医薬で、「日本ロシュ」というメーカーが製造しています。

 セフェム系抗生物質で、扁桃炎、咽頭炎、気管支炎、肺炎、中耳炎、尿路感染症などによく使われる感染症治療薬です。

 以前に抗生物質でアレルギー反応を起こした経験のある人は使用することができません。点滴中にアレルギーを疑われるような、不快感、口の異常感、咳こみ、ゼーゼーという喘鳴などが現れるときは、直ちに投与を中止しなければなりません。

〔トロビシン〕

 「トロビシン」は、一般名「塩酸スペクチノマイシン」という医薬で、「ファイザー」というメーカーで製造しています。

 スペクチノマイシン製剤という病原生物に対する抗生物質で、淋菌感染症の治療薬です。注射液の性状は懸濁液であり注射針が太いので臀部に筋肉注射します。

 不快感、口内異常感、喘鳴、眩暈、便意、耳鳴等のアナフィラキシー症状が出ることがあります。また、稀に、重大な副作用として、ショックを起こすことがあります。

〔オーグメンチン〕

 「オーグメンチン」は、一般名「アモキシシリン・ クラブラン酸カリウム」という医薬で「グラクソ」というメーカーで製造しています。

 淋菌感染症など細菌が原因のさまざまな感染症に効果があり、日本でも幅広く使用されています。アモキシシリン耐性のブドウ球菌やグラム陰性桿菌にも抗菌力を持ちます。

 オーグメンチンの主な副作用は、吐き気や胃痛、下痢などの胃腸症状などです。また、抗生物質にショック症状の経験者などの使用は禁忌です。

 淋菌性尿道炎の患者の20~30%は、クラミジア性尿道炎が合併しているとされ、上記のような治療で一週間以上しても治癒しない場合には、詳細な検査・治療が必要となります。

 これらも含め、3~7日の治療で効果が不十分なら、直ちに異なった系統の抗菌薬に変更する必要があります。

〔クラミジア尿道炎の薬物療法〕

 クラミジア性尿道炎の治療には、次の三系剤のどれかが内服薬として使われます。通常、1~2週間くらいで完治します。

・ニューキノロン系
・マクロライド系
・テトラサイクリン系

クラミジア性尿道炎の治療薬
〔ニューキノロン系薬剤〕

 ニューキノロン系薬剤には、製品名クラビット、タリビッド、オゼックス、トスキサシン、スパラなどがあります。

 マイコプラズマ、クラミジア、好酸菌に基礎的抗菌力があり、緑膿菌やグラム陽性菌に高い抗菌力を有しています。

 頭痛、不眠など中枢神経系に対する副作用がでることがあります。

〔マクロライド系薬剤〕

 マクロライド系薬剤には、製品名クラリス、クラリシッドなどがあります。

 マクロライド系薬剤は、テトラサイクリン系薬剤やニューキノロン系薬剤に対して同等以上の抗菌力があるとされます。

〔テトラサイクリン系薬剤〕

 テトラサイクリン系薬剤には、製品名ミノマイシン、ビブラマイシンなどがあります。

 テトラサイクリン系薬剤は、やや効果が弱いとされます。


〔その他の尿道炎の薬物療法〕

 その他の尿道炎では、原因菌の種類によって、効果のある薬剤が異なりますが、いずれも抗生物質が使用されます。

その他の尿道炎の薬物療法
〔一般細菌性尿道炎〕

 一般細菌性尿道炎に対しては、主に「ニューキノロン系内服剤」が使われます。製品名では、クラビット、オゼックス、トスキサシン、スパラ、バクシダールなどがあります。

〔マイコプラズマ性尿道炎〕

 マイコプラズマ性尿道炎では、「マクロライド系内服剤」のすべての薬剤が有効です。

 製品名では、次のようなものなどがあります。

・エリスロシン
・リカマイシン
・ジョサマイシン
・ミオカマイシン
・ルリッド
・クラリス
・クラリシッド

〔トリコモナス性尿道炎〕

 トリコモナス性尿道炎では、「メトロニダゾール内服薬」が使われます。

 製品名では、次のものなどがあります。

・フラジール
・トリコシード
・アスゾール
・メトロニダゾール

〔カンジダ性尿道炎〕

 カンジダ性尿道炎では、主に「ナイスタチオン薬」の内服薬が使われます。製品名では、次のものがあります。

・ナイスタチン


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予後はどうですか?
〔尿道炎の予後〕

 尿道炎は、抗生物質の服用による適切な治療をすれば、10日程度で完治します。

 治療を怠ると、前立腺炎、精巣上体炎、子宮内膜炎などを引起こす可能性があるので、早期治療が不可欠です。

 一般にこの病気は、性感染症であり、お風呂などで家族に感染するようなことはありませんが、性的接触のパートナーと同時に治療しないと、一旦治療しても直ぐに再発する危険があります。

 特に、女性では感染していても無症状のことが多く、気がつかないことも多いので、注意が必要です。

 また、女性の場合は、腹膜炎や不妊症の原因となる場合もあることを忘れてはいけません。

 コンドームの使用は、性感染症を防ぐ最も有効な手段となるので、特定の相手以外と性的接触をする場合は、必ずコンドームを使用しなくてはなりません。


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