HOME 健康・医療館スマホ版 PC版へ移動現在:スマホ版
 
体の病気操作指示骨・関節・筋肉の病気  

〔大腿骨頚部骨折〕


概要病気症状原因診断
治療予後合併症情報書籍
 

この疾患の概要です

 太ももの骨、大腿骨の先には球形をした「大腿骨頭」があり、「骨盤のくぼみ」にはまっています。

 その大腿骨頭の下の部分を「大腿骨頚部」と言い、ここが骨折したものが〔大腿骨頚部骨折〕です。

 〔骨粗しょう症〕を持つ高齢者などが運動能力の低下でちょっとした段差につまづき転倒して、この病気になることが多いです。



 お年寄りの場合には治療がうまくゆかず、寝たきりになることがしばしばあります。

 〔大腿骨頚部骨折〕は、高齢者の転倒による骨折の中で1番多くなっています。

 特に、女性の場合にはホルモンの影響で男性の3倍ほど寝たきりの原因になる確率が高くなっています。

 高齢女性は、特別に転倒して〔大腿骨頚部骨折〕にならないよう、日常的な注意が必要です。


大腿骨


 〔大腿骨頚部骨折〕には、〔大腿骨頚部内側骨折〕と〔大腿骨頚部外側骨折〕というの二つの種類があります。

 外側骨折は血流が良いので治療しやすいですが、内側は血流が少ないため骨がつきにくく時間がかかります。

ページのトップへ戻る

どんな病気ですか?
〔大腿骨頚部骨折という病気〕

 太ももの骨を大腿骨といいますが、この大腿骨の先端部には球形をした大腿骨頭と呼ばれる部位があり、これが骨盤のくぼみに嵌り込んでいます。

 大腿骨頚部とは、大腿骨頭の少し下でくびれた部分をいいますが、この部分は「関節包」と呼ばれる袋組織で覆われています。

 大腿骨頚部骨折は、大腿骨頚部周辺での骨折をいい、特に関節包で包まれている内部での骨折を「大腿骨頚部内部骨折」、関節包より外の部分での骨折を「大腿骨頚部外部骨折」と呼んでいます。

大腿骨頚部骨折

 65歳以上くらいの高齢者は、家の中などでつまずいたり、ベッドから転げ落ちるなどのちょっとしたはずみで転倒しやすく、大腿骨頚部の骨折を起こします。

 高齢者が転倒するのは、加齢により身のこなしが鈍くなるので仕方ないことですが、これに骨粗しょう症で骨がもろくなる症状なども加わることで、大腿骨を容易に骨折してしまうのです。

 日本では、毎年10万人もの人が受傷していて、特に女性の高齢者に多くみられますが、大腿骨頚部骨折の95%は転倒によるものです。

 大腿骨頚部骨折になると寝たきりになる可能性が非常に高くなります。女性は男性の3倍の発生率となっています。

ページのトップへ戻る

どんな症状ですか?
〔大腿骨頚部骨折のタイプ〕

 大腿骨頚部骨折は、骨折の部位により「大腿骨頚部内側骨折」と「大腿骨頚部外側骨折」とに分類されます。

 更にそれぞれについて、骨折の仕方に「安定型骨折」と「不安定型骨折」とに分けられます。

大腿骨頚部骨折のタイプ

 安定骨折は、ヒビが入った程度の軽度の骨折で折れた骨が極端にずれていない場合などで整復可能なものをいいます。

 不安定骨折は骨がバラバラに砕けたり、激しく転移してしまい整復不可能の骨折をいいます。

〔大腿骨頚部骨折の症状〕

 大腿骨頚部は転倒がその主原因となり容易に骨折してしまいます。大腿骨頚部にひびが入ったり、骨折したりすると、普通は激しい痛みで歩行ができなくなります。

 軽度の場合も含めて、ひびが入ったり、骨折したりした場合には、次のような症状が現れます。

 歩くことはできても骨折している場合もあるので、高齢者が転倒や尻もちをつき、少しでも下記のような症状が起こったときは注意が必要です。

1

・脚の付け根が痛む。

2

・脚の付け根が腫れ上がる。

3

・立つことができなくなる。

4

・歩けなくなる。

5

・ときに、軽度のショック状態となり貧血症状が現れる。

 骨折時の症状としては、内側骨折よりも外側骨折の方が激しく、外側骨折の場合はかなりの出血をともなうので、処置が遅れると貧血により危険な状態となります。

 大腿骨頚部骨折は、骨がくっつきにくいために治療が難しくなります。

 特に頚部内側骨折の場合には、血液のめぐりが悪くことと、関節内腔の骨の表面に「骨膜」が存在しないこととにより、治療には長期間かかります。

 治療で長期間のベッド生活を続けると、これがきっかけで寝たきりの直接原因になることがしばしばあります。また、肺炎や膀胱炎などの余病を併発し、生命の危険に陥ることもあります。

 更に、大腿骨頚部骨折をすると、脚の付け根の痛みと腫れあがりが起こり歩けなくなるのが普通ですが、痴呆の方などでは骨折直後には骨折に気づかず歩けることもあります。

 治療が遅れると生命にも危険が及ぶので注意が必要です。

ページのトップへ戻る

原因は何ですか?
〔大腿骨頚部骨折の原因〕

 若い人での大腿骨頚部骨折の原因は、オートバイ運転での事故や高所からの転落事故などによることが多いです。

 一方、高齢者の場合には、骨粗しょう症が進行しているところで、転倒したはずみで起こることが大部分です。

 統計によれば、高齢者が転倒すると10%ほどの人が骨折を起こします。そしてその1割が大腿骨頚部骨折となっています。

 高齢者の転倒原因は、加齢による運動神経・知覚神経・調節機能が低下していることがあげられます。

 人の身体には、立位でいるときにも無意識にバランスを保とうとする機能があるのですが、加齢によりこのような機能が弱ってくるのです。

 以下に示すようなことが原因となります。

1

・身体の揺れを調節する機能の低下

2

・下肢筋力の低下

3

・足関節の可動範囲の狭まり

4

・白内障などによる視力の低下

5

・高血圧や動脈硬化での脳血管障害や、糖尿病での末梢神経障害などでのめまい

6

・睡眠薬、精神安定剤、血圧降下剤などによるめまい


ページのトップへ戻る

診断はどうやりますか?
〔大腿骨頚部骨折の診断〕

 大腿骨頚部骨折の診断は、問診や診察での所見で大体推察がつきますが、確認は頚椎部のレントゲン撮影やMRI核磁気共鳴撮影画像により診断します。

ページのトップへ戻る

治療はどうやりますか?
〔大腿骨頚部骨折の治療方針〕

 大腿骨頚部骨折する高齢者では、骨粗しょう症ばかりでなく、心臓病や脳血管障害、糖尿病、認知症などの症状を呈していたり、治療していることが少なくありません。

 このような患者が長期間、ベッドで安静にしていると、筋力などの身体能力が急激に低下したり、食物を飲み込めなくなる嚥下障害がでたり、肺炎を併発する場合などが起こります。

 また、認知症の方では、その症状が急激に進行してしまいます。

 これらは、治療上大きな妨げとなってしまいます。

 そのため、大腿骨頚部骨折の患者に対する基本的な治療方針は、麻酔や手術に耐えられる体力があるなら、可及的速やかに手術することとなります。

 手術や受傷した当日、遅くても2~3日以内に実施します。骨折した骨を手術により確実に固定します。

 手術後は、疼痛を和らげる投薬などを行いながら、速やかにリハビリテーションを開始します。手術後、即日ベッド上に起き上がらせ、車椅子訓練、歩行訓練へと移行します。

 このように、高齢者の大腿骨頚部骨折の治療で重要なことは、早期の適切な手術、早期のリハビリを開始により、寝たきりの状態になることを防止することです。

 治療の基本方針は、早期の手術となります。手術法は、骨折の部位や程度により異なりますが、多くの処置法があります。

 場合によっては、単なる手術ではなく、人工の骨に入れ換えることもあります。

 体力がなく、手術に耐えられない状況の場合には、やむなく保存療法を採ることもありますが、この場合にはうまくいっても車椅子の生活となります。

 往々にして寝たきりになることがあります。

〔大腿骨頚部骨折の保存療法〕

 先に述べたように、大腿骨頚部骨折の治療の基本は手術なのですが、手術に耐えるだけの体力がないなどの理由でやむなく保存療法を採用することがあります。

 無理に手術して生命に危険が及ぶリスクが、手術せずに寝たきりになるリスクより大きいと判断した場合に限り行われる療法です。

 大腿骨頚部内側骨折の場合は、基本的に骨がくっつく可能性はほとんど期待できないので、数か月安静にしていれば痛みはなくなるとしても、歩けるようにhあなりませんが、車椅子での生活は可能です。

 痛みがなくなれば速やかに車椅子を使用するリハビリを始めなくてはなりません。

 しかし、最悪の場合は、骨折部の血流が悪いために折れた骨が壊死してしまう可能性がないわけではありません。

 外側骨折の場合には、安静にしていれば骨は接着する可能性が高いです。

 3~4週間すれば一応骨は接着してずれなくなり、2~3か月すれば、歩行訓練を開始できるようになる可能性はあります。

 高齢者が大腿骨頚部骨折をした場合で手術ができずベッドで安静に寝ていると、身体中の筋肉が衰え、寝たきりになるほか、痴呆が進行したり、肺炎になることがあります。

〔大腿骨頚部骨折の手術療法〕

 大腿骨頚部骨折の手術方法は、内側骨折か外側骨折かなどの骨折の部位、程度、年齢、合併症の有無、全身状態、活動性、家庭環境などに基づいて定められ行われます。

 大腿骨頚部骨折及び大腿骨転子部/転子下骨折の治療目的は、早く痛みを取って早くベッドから離し、歩行訓練にもっていくことです。

 そのために、最近は良い手術機械が多く出ています。

 手術の内容は、大きくは次の二つのように分類され実施されます。

 ・保存的手術
 ・人工骨頭挿入手術

大腿骨頚部骨折の手術方法
保存的手術

 軽度の骨折の場合に整復したり、痛みを取り去るために、膝上の大腿骨に鋼線を通し牽引しておき、長期ベッド上で安静にして骨がくっつくのを待つ方法です。

 また、大腿部頚部骨折の安定型骨折の場合で、骨折部に転移がないときには、キャンセラススクリュー、ハンソンピンなどと呼ばれる手術法が採用されることがあります。

 大腿骨頚部ではなく、大腿骨転子部や転子下骨折の部位の骨折では、コンプレッションヒップスクリューやガンマーネイル、エンダーピンなどの手術機械により、骨折部を内部で強固に固定する方法が採用されます。

 侵襲性が少なく早い段階でリハビリを開始できます。

 このような手術法でも、若年者であれば問題ないことが多いですが、高齢者では痴呆になったり、痴呆が進行したり、寝たきりになる危険性が大きいので、最初から次に述べるような人工骨頭を挿入する手術が考慮されます。

人工骨頭挿入手術

 タイプⅡ~Ⅴのような大腿骨頚部の複雑骨折の場合、および高齢者の場合のあらゆるタイプの大腿骨骨折の場合には、骨の接合は困難または不可能なので、最初から人工骨頭挿入術が行われます。

 65歳以上の患者には、通常、骨折した骨を接合する方法ではなく、人工骨頭挿入手術が行われます。

 人工骨頭挿入手術は、大腿骨の代わりに金属製の人工骨頭を挿入する手術です。

 この手術は、高齢者にも安全な手術で、下半身麻酔により行い、出血も少なく1時間ほどで終了します。

 手術完了すると翌日にはベッドに座ることができるようになります。数日以内から歩行練習を開始し、寝たきりになるのを防止します。

 手術後3週間くらいで退院でき、一定期間の歩行訓練を終了すれば、日常生活は普通に過ごすことができるように回復します。旅行なども大丈夫です。


〔環境整備〕

 大腿骨頚部骨折を予防する方法として、環境整備が重要です。家庭では次のような点を整備するようにしましょう。

1

・段差の解消、敷居などのわずかな段差も注意する。

2

・段差のあるところは証明を明るくする。

3

・床面上には電気コードや新聞紙などを散乱させない。

4

・階段やトイレ、風呂場には手すりをつける。

5

・スリッパ、ぞうり、サンダルを使用しない。

6

・滑る床材を使用しない。ピカピカ磨きもよくない。

 また、転倒防止のために、筋力の低下を防ぐようなストレッチ体操や散歩なども重要です。

 歩くことは転倒予防の基本で、姿勢を正して歩幅を広く、ちょっと早めに歩きます。小刻み歩きはつまずきやすく問題です。

 しばしば転倒してしまう人には、ヒッププロテクターという転倒骨折防止用具が市販されています。


ページのトップへ戻る