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〔気管支喘息〕 |
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〔気管支喘息〕は、重大なアレルギー病のひとつで、細菌やウイルス感染などの刺激が発端となって、空気の通り道である気管支が炎症を起こす慢性病です。 |
簡単にいうなら、喘息とは「喘鳴を伴う発作性の呼吸困難」ということができます。 喘息発作時には、これらの症状が重症化し、喉が極度に狭窄するために、しばしば窒息死を招きます。 〔気管支喘息〕が特に小児に発症するものは〔小児喘息〕などと呼ばれることがあります。(小児喘息については別のページで詳細にご説明しています。) |
ところで、「喘鳴」とは、「ぜいめい」と読みますが、気管支から生じる「ゼイゼイ」「ゼーゼー」あるいは「ヒューヒュー」する音のことで、狭窄して細くなった気管支を空気が通過するときに出る音のことをいいます。 |
通常、人は特に病気でなくても、坂道や階段の昇り降り、強度な仕事などをすると、それなりに呼吸が荒くなり負担を感じます。 このような労作時に呼吸困難が生じる〔心臓性ぜんそく〕や〔肺気腫〕などの病気があります。 しかし、〔気管支喘息〕は、これらの状態や病気とは異なり、特別な労作がなくても、「気道が狭くなっている」ために呼吸困難が起こる特徴がある病気です。 このように、喘息は〔気道の慢性炎症性疾患〕ということになります。 喘鳴があったとしても必ずしも喘息というわけではなく、それ以外の病気でも同様な症状を起こすことがあります。 たとえば、〔慢性気管支炎〕〔肺気腫〕〔肺門部のリンパ節腫脹〕〔縦隔腫瘍〕〔心不全〕および〔気管支の異物〕などがそれに該当します。 日本での喘息の発症割合は、アトピー型が7割程度、非アトピー型が3割程度とされています。 1998年に日本アレルギー学会より発表された「アレルギー疾患治療ガイドライン」における喘息(気管支喘息)の定義は次のようになています。
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気管支喘息は、「アトピー型喘息」かどうか、外因性かどうかなどにより分類されます。
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〔気管支喘息〕の症状としては、「喘鳴を伴う呼吸困難」「咳や痰」「発熱やチアノーゼ現象」などが現れます。 |
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喘息を最も特徴づける症状は、ヒューヒュー・ゼーゼーという喘鳴と、呼吸困難の現象です。 呼吸困難については、息を吸うとき(吸気性)と、息を吐くとき(呼気性)とがあり、どちらかというと呼気性の場合が多いとされます。 軽度の呼吸困難では、胸が硬くなったように感じることもあります。 呼吸困難が重度になり、いわゆる「発作」が起きると、苦しさのために横になることができず、坐った状態で前かがみの姿勢をとる「起坐呼吸」をする状態となります。 この発作状態で、喉につかえていた痰が排出されると、気道での空気の流れがよくなり、発作状態は治まってきます。 個人差はあるものの、多くの場合、喘息発作は夜間や明け方に起こります。人により発作の起こる時間帯が決まっているともいわれます。 |
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普通は、粘り気味で透明の痰が喉にからまり、なかなか吐き出せないという人が多いのですが、細菌感染を伴って黄緑色の痰がでることもあります。 中には、特に痰がでないで、空咳だけの人もいます。 多くの場合、咳とともに痰が吐き出されると楽になります。 |
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通常の喘息発作では、発熱することはありませんが、風邪や気管支炎などの呼吸器感染症を併発すると、発熱してきます。 また、症状が重度になると、指先や唇などが紫色になる「チアノーゼ現象」がみられます。 この状態になると特に重篤な発作の危険が差し迫っていると考えられます。 |
喘息の種類には既に述べたように〔アトピー型喘息〕と〔非アトピー型喘息〕とがありますが、それぞれの発症のメカニズムは異なります。 |
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〔アトピー型喘息〕では、本人や家族に〔アレルギー性鼻炎〕や〔アトピー性皮膚炎〕などのアトピー疾患があることが多く、アレルギーの血液検査や皮膚検査を行うと、室内ゴミ・ダニや花粉などのアレルゲンに対して陽性となる特徴があります。 〔アトピー型喘息〕の発症メカニズムには、アレルゲンによる「即時型反応」の場合と「遅発型反応」の場合とがあります。
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〔非アトピー型喘息〕では、風邪などの気道感染によって発作が誘引されることが多いタイプで、発熱や膿をもった痰、咽頭部や扁桃などの発赤があらわれます。 〔非アトピー型喘息〕では、アレルゲンの皮膚反応は陰性です。 現時点では、〔非アトピー型喘息〕の発症メカニズムは明らかではありませんが、〔アトピー型喘息〕の場合と同様に、肥満細胞や好酸球が重要な役割を担っていることは間違いないと考えられています。 〔非アトピー型喘息〕の直接的な引き金となるものは、「気道感染」「冷気」「大気汚染物質」および「ストレス」などです。 これらの刺激が気道上皮にある刺激受容体を刺激し、副交感神経を介してアセチルコリンなどの物質を放出することで、気道狭窄を起こすのです。 |
喘息の診断は、その特徴的な症状から診断されるのですが、喘息が疑われるときの検査方法としては、次のものなどがあります。
・理学所見 |
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通常、発作時にはゼーゼーやヒューヒューなどの呼吸音(喘鳴)が聴取されますが、顕著には現れないこともあります。 また、呼吸数が増多したり、チアノーゼ状態が現れることもあります。 |
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〔気管支喘息〕が疑われる症状発作がでているときに、「肺活量計(スパイロメーター)」を用いて空気の流れる量を測定して、「気道閉塞の可逆性」を検査します。 通常、スパイロメーター検査は、気道閉塞を検査する場合と、治療効果を確認する場合に使用されます。 喘息発作が現れているときに、先ず、スパイロメーターでの肺活量検査を行い、1秒間にどれだけの空気を吐き出すことができるかを調べる「1秒量」を測定します。 その直後に「β2刺激薬」を吸入し、再度、1秒量を測定します。 β2刺激薬の吸入後の「1秒量」が吸入前の値より、200mL以上、かつ12%以上改善する場合、気道可逆性がある(喘息)と診断されます。 β2刺激薬とは、気道を拡張する医薬のことです。 あるいは、2~3週間の「ステロイド薬」の内服を継続し、吸入前後で同様な呼吸機能検査を行い、1秒量が200mL以上、かつ12%以上改善する場合にも、気道可逆性がある(喘息)と診断されます。 喘息発作が起きていないときには、このスパイロメーター検査で喘息を証明できないことがあります。 この場合、「ピークフローメーター」という小型携帯式の器具を用いて検査する方法もあります。 ピークフローメーターは、息を深く吸って一気に吐き出すときの最大の吐き出し速度を測る機器です。 自宅でこのメーターでの検査を継続します。通常、ピークフロー値は、午前4~6時に最低値を示し、午後4時前後に最大値を示します。 ピークフロー値に20%以上の日内変動がみられる場合も、気道可逆性あり(喘息)と診断されます。 特に、30%以上の変動があるときは、中等度~重度の喘息と診断されます。 |
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通常、喘息では、胸部エックス線検査での異常は認められません。 この検査は、腫瘍や肺炎、心不全などのような他の疾患により「喘鳴」や「気道狭窄」が起こっていないかを判別するために行われます。 |
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喘息が〔アトピー型喘息(アレルギー性喘息)〕であれば、末梢血中好酸球の増加や非特異的「IgE抗体」値の上昇がみとめられます。 アレルゲン判定のためにも、アレルゲン特異的IgE抗体を測定します。 |
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喘息であれば、好酸球浸潤と平滑筋肥大が認められます。 |
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喘息が疑われるものの、検査時に気道狭窄が起こっていない場合、健常者には影響がない程度の気道狭窄誘引物質(メタコリンやヒスタミン)を吸入させ、検査することもあります。 アレルギーが引き起こす喘息の場合には、皮膚テストでアレルゲンの検査などを行います。 特定のアレルゲンが原因となる場合は、そのアレルゲンに反応する抗体の血液中の濃度を測定する検査を行うこともあります。 喘息の中で、〔運動誘発性喘息〕というものがあり、この場合には、自転車エルゴメーターなどでの運動の前後で、スパイロメーターによる1秒量を測定します。 1秒量が15%以上減少するなら、〔運動誘発性喘息〕と診断されます。(運動誘発喘息は、小児喘息に深く関連しているので、この詳細は「小児喘息」のページでご説明しています。) |
〔気管支喘息〕の治療法には、根治のための「原因療法」と、喘息の発作を鎮める「対症療法」とがあります。 原因療法には「特異的減感作療法(免疫療法)」と「非特異的変調療法」があり、対症療法には、気管支拡張剤や咳止めなどの薬剤投与法があります。 症状がひどい場合には薬剤として、副腎皮質ステロイド系薬剤を使うこともあります。 |
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〔気管支喘息〕の重症度分類は、ステップ1~ステップ4までがあり、それぞれのステップに対する治療法は次の表のようになります。 治療の基本は、気道の炎症を抑えて肺機能を維持することで長期的に発作が起こりにくくします。 また、どのステップの患者においても、発作発生時には、短時間作用性の気管支拡張薬(吸入β刺激薬)を頓用します。
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急性に憎悪する発作の程度分類には、「小発作」「中発作」「大発作」および「重篤発作」があり、それぞれ次の表のような治療が行われます。
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〔気管支喘息〕の治療薬は、「長期管理薬(コントローラー)」と「発作治療薬(リリーバー)」とに大別されます。 また、薬の作用によって「気管支拡張薬」と「抗炎症薬」とに分けられ、目的に応じて使い分けます。 通常は、長期管理薬により発作が起きないようにし、急性発作が起きてしまった場合には、発作治療薬で対処するのですが、長期管理薬の使用により、如何に発作の発生を抑制し、発作治療薬の使用量を抑えるかが、基本的な治療の目標となります。 長期管理薬の基本薬剤は、吸入副腎皮質ステロイド薬です。 重症度に応じて経口ステロイド薬も用います。その他、長時間作動型β2刺激薬、抗アレルギー薬、抗コリン剤などが併用されます。 |
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長期管理薬は、「コントローラー」とも呼ばれ、喘息の発作が起こらないように長期にわたって予防管理・コントロールするための薬です。 長期管理薬の基本薬剤は、吸入副腎皮質ステロイド薬です。重症度に応じて経口ステロイド薬も用います。その他、長時間作動型β2刺激薬、抗アレルギー薬などが併用されます。
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発作治療薬は、「リリーバー」とも呼ばれ、喘息の発作が起きてしまったときの対処・治療に使う薬です。 喘息発作が起こったときは、気管支の収縮をすみやかに取り除くために、気管支拡張薬が使われます。急を要する度合によって、注射、吸入、経口薬などが使い分けられています。また痰を出しやすくする薬剤もあります。
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喘息治療薬は、その作用によって、次の二つに分けられます。
・気管支拡張薬(気管支を広げる薬)
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