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〔骨盤内感染症〕 |
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下図は骨盤の骨格を前方から見た図です。 |
図では分りませんが、腹壁の内側や内臓の表面を覆っている膜を腹膜といいます。 |
〔骨盤内感染症〕は、子宮や卵管、卵巣などの女性性器、あるいはその周囲にある腹膜や結合組織などに起こる病気の総称ということになります。 |
骨盤内感染症は、女性の生殖器である子宮や卵管、卵巣などの女性性器、あるいはその周囲にある腹膜や結合組織などに起こる感染症を総称した呼び名です。 英語では「PID:Pelvic Inflammatory Disease」と呼ばれている疾患群です。 骨盤内感染症は、感染源となる微生物が膣を経由し子宮入り口から子宮内に侵入し、卵管を通り腹部内部へと広がり起こる感染症の病気です。 女性生殖器の中で、卵管と卵巣を付属器といい、そこに炎症が起こるものを「付属器炎」、腹膜に炎症が起こるのを「骨盤腹膜炎」といいます。 さらに骨盤内の子宮や卵管、卵巣、骨盤内腹膜での炎症を総称して「骨盤内感染症」と呼んでいます。 原因となる微生物は、従来は結核菌や淋菌、大腸菌などが主流でした。 しかし、近年ではクラミジアをはじめとする性感染症特有な微生物が原因となる場合が非常に多くなっています。 骨盤内感染症の主な症状は、発熱を伴う下腹部の激しい痛みで、痛みの程度や場所はさまざまです。 感染を引き起こす原因は、大部分は性的接触によるものですが、分娩や流産に伴う治療によるものやタンポンの使用時などに感染するものなどあります。 骨盤内感染症になると、発熱や腹痛などの他に、多くの場合に不妊の原因になるとされ、患者の20%が不妊になるとされています。 この病気は、性的に活発な女性に多くみられ、若くて未成熟な女性、妊娠中や閉経後の女性には少ない病気です。 避妊具を正しく使用しない女性、複数のセックスパートナーがいる女性、性感染症に罹っている女性、子宮内避妊具を使用する女性などに感染のリスクが高くなります。 骨盤内感染症に属する病気はいろいろありますが、主な感染症には、次のものなどがあります。
・子宮頚管炎 |
骨盤内感染症の症状は、発熱や悪寒を伴いながら、下腹部を中心にした急激な腹痛が起こり、おりものがでます。 痛みの発生する部位は、下腹部中心部や右下腹部、左下腹部とさまざまです。短期間の中で右上腹部に広がることもあります。 症状が慢性化することがり、腹痛や腰痛の他、卵管閉鎖や癒着が起こり不妊症や子宮外妊娠の原因ともなります。 |
感染原因となる病原体は、大腸菌、クラミジア菌、淋菌、結核菌などで、大部分は性的接触などにより、膣から侵入し感染します。 原因となる病原体は、膣内から子宮を通り抜けて、卵管、骨盤内へと侵入していろいろな生殖器などで炎症を起こします。 |
発熱や痛みの症状、部位、程度などから骨盤内感染症が疑われると、内診などにより検査が行われます。内診とは、膣内、子宮などを詳細に観察することです。 また、子宮頚部から分泌物を採取し、クラミジア感染症や淋菌感染症に罹っていないか検査します。 通常は白血球数の増加がみられるので血液検査も行われます。 超音波検査機で骨盤部を撮影し、異常の有無を確認します。 これらの方法で検査しても診断がつかないときや、治療を始めても思うような効果が認められない場合には、臍の近くに小さな穴を開けて、腹腔鏡を挿入し、腹腔内部を直接観察して診断することがあります。 |
一般的に骨盤内感染症の治療は、抗生物質により行います。通常使用される抗生物質は、次のものなどです。
・セフェム系
原因となる病原体により、マクロライド系やテトラサイクリン系などの抗生物質を併用したり、変更したりすることがあります。 |