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〔乳腺炎〕 |
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女性の乳房は、鎖骨の下あたりにあり、その構造は下図に示すように多くの組織からできています。 |
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授乳時にできた乳首の傷などから侵入した細菌による細菌感染で起こる「急性化膿性乳腺炎」と、授乳が順調に出来ず、乳房に母乳が溜まりすぎて起こる「停滞性乳腺炎」とがあります。 |
子供を出産すると、新生児にお乳を飲ませるために、乳房は活性化して盛んにお乳を作るようになります。 お母さんがおっぱいを作り、赤ちゃんがおっぱいをどんどん飲んでくれれば順調に生育してくれます。 赤ちゃんがおっぱいをかじるなどして、乳首(乳頭)や乳輪などに傷を作ると、そこから乳房内部に細菌が侵入し炎症を起こすことがあります。 こうなると乳房が赤く腫れて激しく痛みます。これを「急性乳腺炎」とか「急性化膿性乳腺炎」と呼んでいます。 また、出産後に赤ちゃんが順調におっぱいを飲んでくれればいいのですが、赤ちゃんがしっかり飲んでくれない、授乳がうまくいかないで乳汁が乳房内に溜まってしまい、乳房が赤くなり硬く腫れて痛みを生じるようになります。 これを「停滞性乳腺炎」とか「急性うっ血性乳腺炎」などと呼んでいます。 |
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乳腺炎をより正しく理解できるように、乳房の構造と働きを簡単にご説明します。 乳房は男女共に、左右の胸壁にひとつずつあり、女性の場合には性的に成熟すると膨らみをもつようになります。 女性の乳房の状態を決めているのは、卵巣ホルモンや黄体ホルモンという女性ホルモンです。 乳房を構成する部位は、乳頭(乳首)、乳輪、乳管、乳腺葉、乳腺などです。
乳房は、女性が妊娠し出産するタイミングに応じて、「月経期」「妊娠期」および「授乳期」という三つの異なる働きをします。
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基本的に乳腺炎は、乳首や乳輪部などにできた傷口からの細菌感染で起こるものと、出産後、乳汁ができるのにうまく排出できず乳腺内に溜まってしまい炎症を起こすものとがあります。 乳腺炎のうち、細菌感染による乳腺炎には「急性乳腺炎」と「乳輪下乳腺炎」という二つの種類があります。 そして、乳汁が乳腺内に溜まってしまう乳腺炎に「うっ帯性乳腺炎」があります。 乳腺炎には一般的な症状として、身体にでる症状と母乳にでる症状とがあります。 これらの症状のひとつでも思い当たることがあれば、乳腺炎になっている心配がありますので、早めに受診することをお勧めします。 |
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乳腺炎の一般的症状として「身体にでる症状」と「乳汁にでる変化」とがあります。
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急性乳腺炎は、主にはじめて赤ちゃんを出産した女性が授乳を始めてから1~3週間後に発症することが多いです。 赤ちゃんが吸い付いたり、かじったりして、乳頭(乳首)や乳頭周辺の乳輪部の皮膚が傷つき、そこから細菌が侵入して乳腺・乳管に炎症を起こすのです。 乳管内に溜まったお乳が細菌感染で腐敗し、その部分に膿瘍(おでき)できた状態です。 このような急性乳腺炎になると、乳房が赤く腫れて、激しい発熱を伴います。直ちに授乳を中止し、受診し、抗菌薬などでの治療を受けなければなりません。 |
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乳首の周囲で色素沈着している皮膚が乳輪ですが、この下におできができることが多く、これを乳輪下膿瘍と呼んでいます。 この症状は陥没乳頭に合併して起こることが多い疾患です。乳頭が陥没しているとその部分に垢などがたまり、細菌がついて感染するのです。 陥没乳頭とは、乳頭がへこんでしまっている状態をいい、特に珍しくはなく10%以上の成人女性に片側あるいは両側で発生します。 ちょっと刺激すると膨らむ仮性陥没乳頭と、刺激しても突出しない真性陥没乳頭とがありますが、手術で治せます。 乳輪下膿瘍は、切開排膿で症状が軽減しますが、慢性化することもあるので乳首周囲を清潔に保つなど注意が必要です。 慢性化してしまうと乳輪周囲に蜂巣炎、乳頭分泌、乳頭瘻孔というような症状を起こすようになります。 |
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停滞性乳腺炎は、「急性うっ血性乳腺炎」とも呼ばれ、乳汁が溜まったままになり乳房が赤くなり、硬く腫れて痛みが生じます。 この場合は、揉みほぐすなどで乳汁が溜まらないようにすれば治ります。 |
先にご説明したように、乳腺炎には細菌感染によるものと、授乳が思うようにできすに乳汁が乳房内に溜まってしまってなるものとがあります。
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乳腺炎の検査・診断では、マンモグラフィーや超音波検査が行われます。また炎症の程度を調べるために血液検査を行います。
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乳腺炎の治療は、その発症原因により異なります。細菌感染の場合は、いったん授乳を中止し、抗生物質などでの治療が必要です。 また、乳房内に乳汁が溜まっておこる乳腺炎では、乳管などの詰まりをなくす方法がとられます。 |
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乳首や乳輪部の傷から侵入したブドウ球菌や連鎖球菌が、乳房内部でうっ滞した乳汁に細菌感染すると、化膿性乳腺炎となり乳房内部でおできとなり、乳房の腫脹、圧痛を伴うしこりができ、発熱や疼痛、発赤、脇の下のリンパ節の腫れを起こします。 このような細菌感染による乳腺炎の治療では、先ず、直ちに授乳を中止し、抗生物質の投与を行います。 乳房内のおできが大きくなってしまったときは、乳房を切開して内部の膿を排出する「ドレナージ」が必要なこともあります。 また、症状によっては、膿の溜まっている部位に細い管を挿入して排膿する方法もあります。 これらの手術療法によっても軽快しない場合は、炎症性乳がんも疑われるので、他の疾患がないか確認する検査が必要かもしれません。 細菌感染の場合でも乳輪下膿瘍では、通常は切開排膿すれば軽快しますが、清潔に保つなどを怠ると、再発慢性化してしまうので注意も必要です。 慢性化するようなら、陥没乳頭の形成手術など根本的な治療が必要かもしれません。 |
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細菌感染が伴わないつまりによる閉塞性乳腺炎ん・うっ滞性乳腺炎は、乳房の腫脹や疼痛、発熱がありますが、基本的な治療法は、とにかく母乳を外に出してやることとなります。 この乳腺炎は、乳汁が凝固して乳管を閉塞させているものの細菌感染がないものなので、治療としては乳房を冷やしたり、乳房マッサージや搾乳を行ってうっ帯をなくします。 すべての乳管に詰まりがないよう搾り出すことが大切です。 これで改善するようなら、その後はこまめに飲ませるか、残乳がないように搾り出すようにすれば再発の危険性は減ります。 乳房が赤く腫れて痛くなり、高熱が出るような症状が出るときは、細菌感染型の乳腺炎に進行してしまっていると考えられるので、病院での受診が必要となります。
〔軽症:家庭で〕 |
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乳腺炎の予防法には多くのものがあるので、早期にご自分に合った方法を見つけてこまめに実行することが大切です。 授乳中の母親にも優しく、赤ちゃんにも優しい方法が見つかるといいですね。
・乳房マッサージをする。(専門のマッサージもあります) |