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〔はしか・麻疹〕


概要病気症状原因診断
治療予後合併症情報書籍
 

この疾患の概要です

 〔はしか〕は〔麻疹〕」とも呼ばれる病気です。

 〔はしか〕は〔ウイルス感染症〕のひとつであり、はしかウイルスの感染により起こります。

 感染後10日ほどの潜伏期間を経て発病し、38~39度の発熱を伴いながら、咳、鼻汁、目やに、結膜炎、紅斑などの症状が現れます。



 口内の頬側粘膜に発赤をともなう小さな発疹ができるのが特徴です。

 発病後、2~3日して熱が下がった後、体中に発疹ができます。熱が下がると発疹は出来た順序で消えてゆきます。

 〔はしか〕は、伝染力が非常に強いことと、日本においては未だ制圧されていないために、日本人は一生の内に一度ははしかに罹ります。

 はしかワクチンがありますが、流行株が変異するので、ワクチンは必ずしも有効ではありません。

 ワクチンで獲得した抗体が効かない変異型が流行することがあるからです。


 日本は〔はしか〕制圧後進国ですが、2007年に「麻疹排除計画」が策定され、2012年までに制圧することを目指していました。

 2008年1月1日以降、麻疹は全数把握疾患となり、同年5月1日より5年間の期限付きで、定期予防接種対象が拡大されています。

 2013年3月時点までに、一定の成果を得たとのことで、定期予防接種計画が終了したとの報告がありますが、制圧できたのかどうかは定かではありません。

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どんな病気ですか?
〔はしか・麻疹という病気〕

 はしか(麻疹)は、主に小児期の間で流行する急性感染症であり、「麻疹ウイルス」によって引き起こされます。

 麻疹ウイルスの感染力は非常に強く、主な感染経路は「空気感染」「飛沫感染」および「接触感染」の三つで人から人へ感染します。

 はしかの免疫がない人では、感染したらほぼ全員が発症します。しかし、一生に一度罹れば免疫ができて、通常、二度とは罹りません。

 麻疹ウイルスの感染すると、10日程で風邪に似た発熱や咳、鼻水などの症状で発症します。

 39度C以上の高熱が2~3日続き、発疹が出現します。1000人に一人くらいの確率で肺炎や中耳炎を発症することがあります。

 以前は、大部分の人は、小児期に麻疹ウイリスに感染し治癒とともに自然に免疫を獲得していました。

 しかし、最近でははしかの大流行がないことやワクチンを接種する影響で、大人の感染者も増えています。

 小児期にワクチンを接種しても、成人するにつれてワクチンの効果が薄れたり、変異型のウイルスが出現するために、成人してから罹患する人も増えています。

 残念ながら、日本は「麻疹制圧後進国」の烙印を貼られています。

 このため、2007年8月に厚生労働省が「麻疹排除計画」を策定し、2012年までを目処にはしかを制圧しようとしています。

2008年1月1日以降、麻疹は全数把握疾患に設定。

2008年4月1日以降、5年間の期限付きで麻疹の定期予防接種対象拡大。

国立感染症研究所が対策・ガイドラインを表明。

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どんな症状ですか?
〔はしか・麻疹の症状〕

 はしか・麻疹には、感染から症状が出て回復するまでのパターンにあまり個人差がないという特徴があります。

 はしか・麻疹の感染から治癒までには「潜伏期」「前駆期」「発疹期」および「回復期」という四つの段階があります。

 はしか・麻疹に感染するとウイルスや細菌の二次感染による合併症も心配されます。

〔はしかの感染から治癒までの段階〕

 はしかウイルスに感染し、発症から回復し治癒するまでの主な症状の説明です。

はしか・麻疹の感染から治癒までの症状
潜伏期  はしかは麻疹ウイルスの感染で発症する病気ですが、主な感染原因は麻疹患者からの飛沫感染が多いとされます。

 麻疹ウイルスへの感染から発症までの潜伏期間は、8~12日程度です。

前駆期(カタル期)  感染してから8~12日間の潜伏期が過ぎて、3~4日の間、発熱や咳、鼻水など風邪に似た症状を呈する「前駆期」が始まります。

 前駆期は「カタル期」とも呼ばれています。

 発症第1日目には、発熱がはじまり、倦怠感、上気道炎症状、結膜炎症状、鼻炎、咳などを認めます。

 次の日ころから口腔粘膜の奥歯付近に、直径1ミリほどのコプリック斑という少し膨らんだ白色小斑点が生じます。

 そして、カタル期の終わり時点では、いったん熱が下がります。

 他者への感染力はこの前駆期(カタル期)が最も強くなります。

発疹期  発症後3~4日目後のカタル期の最後でいったん解熱しますが、半日ほどして再び39~40度Cの高熱が出現し、今度は全身への発疹が現れます。

 これが発疹期のはじまりです。発熱の現れ方が前駆期と発疹期の二度あるので、この現象を二峰性発熱と呼んでいます。

 発疹は、少し隆起した鮮虹色の発疹で、まず前額から耳介後部顔面、体幹から目立ち始め、徐々に四肢の末梢にまで及んでいきます。

 体幹部の発疹は一部の健常皮膚は残るものの、全体的に癒合して身体を覆うようになります。

 高い発熱や発疹の出現だけでなく、咳や鼻汁などの鼻炎症状はさらに激しくなり、口腔粘膜が荒れて痛みます。

 ときに下痢症状を訴えることもあります。高熱のために全身倦怠感、食欲減退、経口摂取不良となるため、乳幼児では脱水状態になる危険があります。

 発疹期は、発疹の出現後72時間ほど持続します。その後、発疹は褐色の色素沈着を残して消退し、解熱に向かいます。これが発疹期の終了です。

 しかし、もしもそれ以降も発熱が続くようなら、細菌による二次感染の心配があります。

回復期  発疹は退色後、褐色の色素沈着を残して消退し、数日で徐々に皮がむけるように剥がれ落ちます。

 こうして、発疹期が終わるといよいよ回復期に入ります。解熱後も咳は継続して残りますが、それも徐々に改善してきます。

 しかし、回復期に入っても、回復期2日目ころまでは感染力が残っているので、学校保健法により解熱後3日を経過するまでは出席停止の措置がとられます。


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原因は何ですか?
〔はしか・麻疹の原因〕

 はしかは麻疹とも呼ばれる病気で、原因は麻疹ウイルスによる感染です。

 はしかの感染には、空気感染・飛沫感染・接触感染という三つの感染経路があります。

 はしかは感染力が極めて強く、日本では、はしかの制圧が遅れていることもあって、誰でも一生に一度は感染するといわれている病気です。

 免疫を持たない人が、麻疹ウイルスに接する機会があれば、確実に感染してしまうとされます。

 麻疹ウイルスは、世界保健機構の分類でA~Hの8群、22遺伝子型に分類されています。

 これらのウイルスに対して、麻疹ワクチンが存在しますが、次々と新型の麻疹ウイルス変異株が登場するために、ワクチンを接種して抗体を獲得しても、必ずしも効果がでないことも心配されています。

 はしかの大流行があると、強い感染力のために、多くの人が感染し免疫を獲得します。

 免疫を持った人が増えることで、しばらくは流行が鎮まります。

 数年して、免疫のない尿幼児が増えたころ、また大流行が発生します。

 はしかの流行では、このようなパターンが何度となく繰り返されています。

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診断はどうやりますか?
〔はしか・麻疹の診断〕

 通常、はしかはその症状などから臨床症状のみで診断されることが多いです。

 しかし、流行ウイルス株を確認したり、ウイルスのH抗原の変異などを調べる必要がある場合には、麻疹ウイルスを分離し調べることもあります。

 抗体測定方法には、赤血球凝集抑制法や中和法、ゼラチン粒子凝集法、ELISA法などと呼ばれる方法が用いられています。

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治療はどうやりますか?
〔はしか・麻疹の治療方針〕

 はしか・麻疹はウイルス性なので、効果のある特異的治療法は存在しません。治療は対症療法が中心となります。

 対症療法として、解熱剤、鎮咳去痰薬、輸液や酸素投与などの支持療法が行われます。

 また、合併症として中耳炎や肺炎などの細菌性の疾患を伴う場合には、抗菌薬の投与が必要となることもあります。

 はしかの予防および治療法として、ワクチンによる予防的方法と、免疫グロブリンの予防投与法とがあります。

〔麻疹ワクチン〕

 はしか・麻疹に対しては、100%効果があるといえないまでも、ワクチンによる予防が最も重要となります。

 ワクチン接種すれば、95%以上の免疫獲得率があるので、ワクチンによるはしかの予防効果は明白です。

 なお、ワクチン接種後には、軽度の発熱、発疹が認められます。

 乳児では、母体から受け継ぐ麻疹特異IgG抗体が存在することがあり、生後まもなくワクチンを接種しても、麻疹ワクチンウイルスの増殖が十分となりません。

 このため、母体由来の抗体が消滅すると考えられる生後1歳以降になって、速やかにワクチン接種投与を行うのが効果的です。

 日本の現行法では、生後12か月~90か月未満をワクチン接種年齢としています。

 しかし、強い感染力を持つ、はしか・麻疹に感染した場合の重症度を考えると、母体由来の抗体が消えて接種可能年齢に達したら、生後12~15か月くらいの時期に速やかに接種すべきです。

〔免疫グロブリン投与法〕

 はしかの原因はウイルス感染なので、特効薬は存在しません。

 しかし、はしか患者との接触の機会があり感染した可能性があるとき、その感染機会の後3~4日以内に、γグロブリン・免疫グロブリンを投与する方法があります。

 これは血清製剤であるため、原則として適応とされるのは、ワクチン未接種の尿幼児および、免疫不全患者など重篤な症状が予想される場合に限られます。

 免疫グロブリンの投与により、症状が軽くなる場合と完全に予防できる場合とがありますが、どちらにしても、免疫グロブリン投与を受けた人は、基本的に麻疹ウイルスの感染源になる可能性は残っているので、他の人に感染させないために注意が必要です。

免疫グロブリンの使用法
完全予防  麻疹の感染後、72時間(3日)以内に、体重1kg当たりに免疫グロブリン0.25mL以上を筋肉注射すれば、発病を免れることができます。(γ-グロブリンは濃度は150mg/mL)

 とはいっても効果の出方に個人差はあり、多少の症状がでてしまうことはあります。

 また、注射の時期が遅れた場合でも、症状を軽減することができるとされます。

症状軽減化  免疫グロブリンを、体重1kg当たりに、0.05mL筋肉注射すれば、症状は軽症化できるとされています。


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合併症はありますか?
〔心配される合併症〕

 はしか・麻疹に感染し発症すると、一時的に免疫力が低下し、ウイルスなどの感染症に罹りやすくなります。

 発熱時の解熱などで適切な治療が行われない場合などには細菌による二次感染も心配され、いろいろな合併症に冒されることがあります。

主な合併症の可能性
脳・神経系の合併症  はしか・麻疹の感染者数万人に一人という低い発症率ですが、はしか・麻疹が治癒してから数年後に「亜急性硬化性全脳炎」を発症することがあるとの報告があります。

 この病気は予後の悪い脳炎のひとつです。

 はしか・麻疹感染者の1000人に一人ほどの割合で「ウイルス性脳炎」を発症することがあります。

 この脳炎が発症すると6人に一人は死亡するとされ、3人に一人には神経系の障害が残るとされています。

咽頭・気道系の合併症  麻疹ウイルスによる合併症には、中耳炎や肺炎、細気管支炎、および仮性クループなどの疾患があります。

 また、細菌の二次感染による合併症には、中耳炎や肺炎、気管支炎、および結核の悪化などの合併症が起こることがあるとされています。

その他の合併症  はしかワクチン見接種の女性が妊娠中にはしか・麻疹に罹ると、子宮収縮のために流産してしまう危険があります。

 感染時期が妊娠初期の場合では31%が流産するとされ、妊娠中期以降でも9%が流産または死産する可能性があり、24%が早産するとの報告があります。



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