|
〔肥満・肥満症〕 |
|
〔肥満症〕とは、正常な状態に比べて体重が異常に多い状態、あるいは体脂肪が過剰に蓄積した状態をいいます。 |
しかし、通常は、簡易的に身長と体重とから計算される「BMI値」を用いて、肥満度を判定します。 |
尚、BMI値が18.5より低いときは「低体重」ですが、これが酷いときは、〔痩せ症〕ということになります。 |
身体につく脂肪分には、皮下脂肪と内臓脂肪の二種類があります。 皮下脂肪は、身体の表層部、皮膚のすぐ下の部分につく脂肪分であり、もう一方の内臓脂肪は、身体の深い部分、内臓の周辺などに蓄積する脂肪分です。 肥満症には、脂肪分が蓄積する身体部位によって、〔皮下脂肪型肥満症〕と〔内蔵脂肪型肥満症〕とがあります。 脂肪分は、エネルギーを蓄積するという意味では同じですが、それぞれの肥満症の型には特有な性質があります。 どちらの脂肪分も過剰に蓄積すれば健康を害することになるのですが、様々な研究成果から、内臓脂肪型肥満症の方が、いろいろな病気との合併症を誘発しやすいことが分かっています。 特に、高血糖症、高血圧症、脂質異常症の中のどれか二つ以上と内臓脂肪型肥満症が合併すると極めて危険な状態であることが分かっていて、これがいわゆる〔メタボリック症候群〕あるいは〔メタボリックシンドローム〕と呼ばれる状態です。 メタボリックシンドロームの状態であるなら、直ちに治療が必要です。
|
肥満・肥満症が怖いのは、体重の増加や体形の変化だけではありません。本当に怖いのは、脂肪が増えることで多くの重大な合併症を発病しやすいからです。 肥満が原因で発症する代表的な合併症には、高血糖症(糖尿病)、高血圧症、脂質異常などがありますが、これらに限られるものではありません。 肥満が誘起する健康障害は、肥満を引き起こしている脂肪細胞の「質的異常」や「量的異常」などの性質によって異なります。 肥満は、下表に示すように非常に多くの健康障害を誘起する可能性があります。
|
肥満・肥満症の直接的原因として、食事などでのカロリー摂取量が、基礎代謝(呼吸や安静時に消費されるエネルギー)や運動時の消費カロリーよりも定常的にオーバーしていると起こります。 簡単にいえば、食べすぎと運動不足が主な原因となります。 潜在的原因としては、遺伝的要因(体質)も見逃せませんが、環境因子としての生活習慣がより大きく寄与しています。 |
肥満・肥満症の診断法には、「体重による肥満診断法(BMI法)」「体脂肪率による肥満診断法」および「ウエスト周囲長による判定法」などがあります。 肥満は直感的にも分かりやすいのですが、これらの方法を組み合わせてより確かな判断ができ、極度の肥満に対しての治療が可能となります。 ここでは、それぞれの肥満診断法についてその方法や特徴などを解説しています。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
標準体重より概ね20%以上体重が超過していれば、肥満といってもいいかと思われるものの、この定義ではいろいろな不確かさが残ります。 そこで、現在、成人の体重による肥満診断には、BMI値(ボディマスインデックス)による方法が用いられています。 「日本肥満学会基準2000年」では、BMI値による肥満の定義を次の式のように定めています。 〔BMI値〕 = 〔現在の体重(kg)〕/〔身長(m)*身長(m)〕
例えば、体重70kg、身長165cmの人の場合のBMI値は次のように計算して 25.7 となります。
BMIでの評価は身長と体重から単純に計算できる便利さがあり、肥満の目安にはなりますが、この値だけでは筋肉質なのか脂肪過多なのか、更に皮下脂肪型肥満なのか内蔵脂肪過多肥満なのかの判定は全く出来ないという欠点があります。 従って、このBMI値法は、普通の体形の人には有効な方法であるものの、特別な体形(骨太、足長、骨細、筋肉質)の人には必ずしも正しくはありません。 BMI(ボディ・マス・インデックス=肥満指数)の統計的な調査結果から、BMI=22という状態が最も健康な状態であることが分かっています。 これを用いて身長ごとの標準体重を計算すると、最も好ましい標準体重が分かります。 その標準体重を20%以上超えると、肥満と呼ばれることになります。
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
適正な体脂肪率は、成人男性では15~19%、女性では20~25%とされています。 基本的には、この適正体脂肪率よりも高ければ肥満ということになります。現状では、男性で25%以上 女性で30%以上は明らかな肥満と診断されます。 体脂肪率の値は、CTやMRIなどにより体脂肪面積を測定し、その値から体脂肪率を計算する方法が最も正確です。 しかし、この方法は設備的にも、費用的にも簡単ではないので実用性には欠ける欠点があります。 そこで、いわゆる「体脂肪計」を用いて測定することになります。 この方法はあくまでも簡易的な測定法となるので、必ずしも正確な値ではありませんが、肥満かどうかを判定する目安としては十分なので、よく使用されています。 ところで、肥満症には、意外なタイプのものがあります。 見た目にはスラッとしていて全く肥満などには見えないのに、体脂肪率を測定してみると、異常に高い値を示す肥満症です。 このようなタイプの肥満症は、〔隠れ肥満症〕と呼ばれています。 隠れ肥満症の人にはどんな特徴があるか整理してみると次のようになります。 このような条件に合致している人は、一度メタボ検診などを受けた方がいいでしょう。
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
肥満症判定方法として、「ウエスト周囲長」で行う場合があります。 ウエスト周囲長が、男女それぞれに定められた値を超えていれば、生活習慣病になりやすい肥満と判定されます。
|
肥満は、基礎代謝や運動で消費されるエネルギーよりも食品から摂取するエネルギーの方が多すぎるとき起こります。 基本的な肥満防止の方法や治療方法は、エネルギーの摂取を減らし、運動に使用するエネルギーを増加させることとなります。 摂取するエネルギー源としては、蛋白質、脂質、糖質、アルコールなどがあります。 摂取するエネルギーを減らす対策としては、まずアルコールを減らすことが必要です。 アルコールの摂取量を減らしても欠乏症は一切起こらないから安心です。アルコール好きな人には地獄かも知れませんが。 蛋白質、糖質、脂肪はどれも必要な栄養成分なので、過剰摂取はいけませんが、摂取しないわけにはいきません。 蛋白質は体を構成する重要な栄養素であり、体重1kgあたり毎日10gは必要です。 脳や神経系などはブドウ糖からしかエネルギーを得られないので糖質の摂取も不可欠です。 また、高エネルギーな脂肪も脂溶性ビタミンの吸収を高めたり、必須脂肪酸が必要なことから一定量は摂取しなければなりません。 このようなことから、全体での摂取エネルギー量を制限した上で、まず蛋白質の必要量を確保し、脂肪は摂取する全体エネルギーの20~30%以内とします。 そして、残りの55~60%のエネルギー相当分を糖質で摂るとバランスがよいとされています。 また、蛋白質、糖質、脂肪の代謝を高めるためにビタミンやミネラルをしっかり摂取することも重要です。食物繊維などの成分も必要です。 肥満になってしまったら、ダイエットが必要ですが、これは相当な決心と強い意思がないと完遂できません。ここに、ダイエットのための指針例をあげておきます。
|