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〔溶血性尿毒症症候群〕

概要病気症状原因診断
治療予後合併症情報書籍
 
この疾患の概要です

 O-157と呼ばれる、腸管出血性大腸菌感染症と合併して、次のような症状を引き起こす病気が〔溶血性尿毒症症候群(HUS)〕です。

 ・発熱
 ・下痢
 ・激しい腹痛
 ・動悸
 ・顔色不良貧血
 ・むくみ
 ・小尿
 ・高血圧のような症状

 この病気には、赤血球が壊れるタイプ、血小板の減少、急性腎不全タイプとあり、尿毒症の症状を呈します。



 溶血性尿毒症症候群は、大腸菌「O-157:H7株」によって引き起こされる病気で腎臓や他の臓器を侵します。

 急性腎不全や慢性腎不全の原因の第一位となっています。

 溶血性尿毒症症候群は、主に温かい時期に多くみられます。メディアなどでは別名ハンバーグ病などと呼ばれることもあります。

 大腸菌は非常に強い毒素を作り出し消化器を侵すので、ときとして便に血液が混じる下痢や嘔吐、腹痛などを引き起こします。


 大腸菌「O-157:H7株」による胃腸炎はどの年齢層にも発病し、乳幼児や高齢者は重症になることが多い恐ろしい病気です。

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どんな病気ですか?
〔溶血性尿毒症症候群という病気〕

 「溶血性尿毒症症候群(HUS:hemolytic uremic syndrome)」は、「溶血性貧血」「血小板減少」および「急性腎不全」を伴い、脳を侵して痙攣したり意識が損なわれたりもする症候群です。

 溶血性貧血というのは、赤血球が破壊されることによる貧血です。血小板減少は、出血を防ぐ細胞の減少を意味します。

 また、急性腎不全では、腎臓の機能が急激に低下し深刻な問題を引き起こします。

〔溶血性尿毒症症候群の種類〕

 溶血性尿毒症症候群には、溶血性貧血や血小板減少、急性腎不全などの発症に先行して下痢を伴う「典型的HUS」と、下痢を伴わない「非典型的HUS」の2種類があります。

 典型的HUSは、一過性で、しばしば幼少児の間で集団発生することがあります。

 非典型的HUSは、年長から成人に多く発症し、何度でも再発します。どちらのHUSも、先行して何らかの感染症を発症していることが多くあります。

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どんな症状ですか?
〔溶血性尿毒症症候群の初期症状〕

 溶血性尿毒症症候群(HUS)は、「腸管出血性大腸菌感染症」の患者の1~10%程度に発症し、下痢や発熱の症状が現れて後4~10日して発症し、細血管障害性溶血性貧血、血小板減少、急性腎不全の3つの症状が現れます。

 溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症した場合の初期症状は、先ず吐き気、嘔吐、下痢、腹痛ではじまり、発熱、血便などの症状が続きます。

 毒素により脳が侵され、刺激に過敏になり興奮性が高まります。

 また、脱力感、無気力、疲労感をうったえ、顔色が悪くなります。尿の量が減少し、腐敗臭の強い便がでます。

〔溶血性尿毒症症候群の後期症状〕

 初期症状の下痢などが治まり軽快した後になって、腹痛が激しくなり、尿量が少なくななり、むくみ(浮腫)や出血班、頭痛、眠りたくなる傾眠傾向が現れ、痙攣起こしたり意識を失うこともあります。

 血尿や蛋白尿の症状がでるようなら、急性腎不全へと重症化する可能性が高くなります。

 後期の典型的症状は、次のようなものです。

後期症状
〔全身症状〕

・全身けいれん
・意識低下
・黄色い皮膚(黄疸)
・顔面蒼白
・皮膚に紫斑
・小さな赤い点のように見える皮膚の発疹(点状出血)

〔腹部・尿〕

・腹部膨隆または腹囲の増加(肝臓と脾臓の腫)
・少量の尿排出(乏尿)
・無尿


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原因は何ですか?
〔溶血性尿毒症症候群の原因〕

 溶血性尿毒症症候群の原因は、先天的なものもあるとされますが、大部分は「病原性大腸菌O-157:H7株」に汚染されt飲食物の摂取によります。

 この「O-157:H7株」という病原菌は、腸内で「ベロ毒素」という毒素を放出します。これが血液中に侵入してさまざまな症状を引き起こすのです。

 1996年に大阪府堺市で5000人以上もの人がO-157に感染して大流行したことがありました。

 溶血性尿毒症症候群(HUS)は成人ではより少ないですが、成人が感染する多くの場合は、癌の化学療法で「5-FU」を投与された場合に起こっています。

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診断はどうやりますか?
〔溶血性尿毒症症候群の検査〕

 溶血性尿毒症症候群(HUS)を疑わせる症候として、乏尿、浮腫、出血斑、頭痛、傾眠、不穏、痙攣、血尿・蛋白尿などがある患者について、所期の段階で便の細菌検査を行います。

 便の中に、「O-157菌」が存在することが確認された場合、既に溶血性尿毒症症候群に進行しているかどうかの検査が必要となります。

 HUSに進行していれば、理学的所見では肝臓と脾臓の腫大が見られ、神経学的な病状も見られます。溶血性貧血と急性腎不全を示す検査結果が得られます。

溶血性尿毒症症候群(HUS)の検査
〔血液検査〕

 血液検査では、次のような検査が行われます。

・血小板減少(血小板減少症)
・赤血球の破壊(溶血)
・赤血球が破壊されることによる貧血(溶血性貧血)
・白血球数増加
・血小板数減少
・プロトロンビン時間や部分トロンボプラスチン時間などの血液凝固に関する値は正常のときも異常のときもあります。
・血清生化学異常
・血中尿素窒素上昇
・クレアチニン上昇
・遊離ヘモグロビン上昇

〔尿検査〕

 尿検査では、次のような検査が行われます。

・尿中の血液(血尿)
・尿中たんぱく(たんぱく尿)

 (尿中タンパク検査は、尿中タンパクの量を示すのに使われます。)

〔その他の検査〕

・便培養で特定のタイプの大腸菌の検出
・腎生検(腎生検)で特徴的な腎組織の変化


〔溶血性尿毒症症候群の診断〕

 「日本小児腎臓病学会(平成12年6月改定)」の診療・治療ガイドラインによれば、「HUSは、腸管出血性大腸菌感染者の約1~10%に発症し、下痢あるいは発熱出現後4~10日に発症することが多い。

 患者の約1/4~1/3に何らかの中枢神経症状がみられる。急性期の死亡率は約2~5%である。」とされています。

 このガイドラインによるHUSの診断基準は次の通りです。

HUS診断基準
主徴 溶血性貧血 破砕状赤血球を伴う貧血でHb10g/dL以下

血小板減少 血小板数10万/μL以下

急性腎機能障害 血清クレアチニン濃度が、年齢別基準値の97.5%値以上で、各個人の健常時の値の1.5倍以上です。

 ここではデータを表示していませんが、日本人小児の基準値が男女別、年齢別に定められています。

随伴する症状 中枢神経症状 意識障害、痙攣、頭痛など。HUS発症直後に急性脳症を合併することがある。

その他 肝機能障害(トランスアミラーゼの上昇)、肝内胆管・胆嚢結石、膵炎、DICを合併することがある。


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治療はどうやりますか?
〔溶血性尿毒症症候群の治療方針〕

 胃腸炎の段階では、脱水状態となるのを回避するため、十分な水分補給をします。

 下痢止めは菌や毒素の体外排泄を遅らせるので使用しません。

 溶血性尿毒症症候群(HUS)になった場合、2週間ほど入院しての治療が必要となります。

 強度の貧血があるなら体液管理として輸液や人工透析が必要になります。

 HUSの治療には「支持療法」と「特異的治療法」とがありますが、HUSの治療法の基本は支持療法です。

 ここに、日本小児腎臓病学会の提唱する治療のガイドラインを「支持療法」と「特異的治療法」とに分けて示します。更に、経過観察の指標について示します。

〔溶血性尿毒症症候群の支持療法〕

 支持療法は、次のような項目からなります。

・退役管理
・高血圧に対する治療
・輸血
・脳症に対する治療
・DICに対する治療
・中心静脈栄養

支持療法
〔体液管理〕

 体液管理法としては、輸液と透析とがあり、それぞれは次のようになっています。

体液管理法
〔輸液〕

・水、電解質の管理を厳重に行う。

・乏尿・無尿期には強い脱水は少なく、むしろ過剰輸液による溢水(容量負荷)、高血圧、低ナトリウム血症に注意する。

・高カリウム血症の場合と低カリウム血症の場合がある. 低カリウム血症に対してはカリウムの補充を行う。

・低蛋白血症に対してアルブミン製剤の投与を行う場合には溢水に注意する。

〔透析〕

・絶対的適応
 ・乏尿(10 ml / m2 /時間以下)、無尿のある時
 ・他の方法でコントロールできない溢水、高血圧、電解質異常、アシドーシス

・透析の中止時期
 ・利尿のみられた時(あるいは利尿剤に反応する時)

・方法
 ・施設によって慣れた方法を用いるが、一般的には次の方法が選択される。
 ・年長児:血液透析(HD)または腹膜透析(PD)
 ・乳幼児:腹膜透析(PD)

・透析施設への転院時期
 ・HUSは急速に進行する可能性があることから、HUS発症後はすみやかに血液浄化療法が行なえる施設にコンサルトすること。

 特に、乳幼児は小児の透析が可能な施設にコンサルトすること。


〔高血圧に対する治療〕

 HUSに伴う高血圧は溢水によることが多い。

 フロセミド(ラシックス1~2 mg/kg/回を使用し、反応しない場合は透析を考慮する)または、カルシウム拮抗剤(透析中は血圧低下に注意する)を使用する。

〔輸血〕

 貧血の急激な進行、血小板の急激な減少に注意し、急性期には1日2回の血球算定を行う。

 輸血による溢水や高血圧に注意する。 赤血球輸血、Hbを 6g/dL 以上に維持するように輸血する。

 血小板輸血は、出血傾向のある時、外科的処置の前に行う。

〔脳症に対する治療〕

 痙攣に対しては、ジアゼパム(セルシン)、ジフェニルヒダントイン(アレビアチン)を静注し、もし無効であれば呼吸管理下にチオペンタール(ラボナール)などの麻酔薬を使用する。

 脳浮腫に対しては、除水、グリセオール投与(ただし、溢水状態を悪化させる可能性があるので注意して使用する)や透析を行う。(小児神経科医のコンサルトを求めることが望ましい)

〔DICに対する治療〕

 播種性血管内凝固症候群(DIC)の診断基準を満たす場合は、次の医薬などを使用する。

・メシル酸ナファモスタット(フサン)
・メシル酸ガベキセート(FOY)
・ウリナスタチン(ミラクリッド)
・アンチトロンビンⅢ製剤

〔中心静脈栄養〕

 1週間以上絶食の場合には考慮する。


〔溶血性尿毒症症候群の特異的治療法〕

 いくつかの特異的治療法が知られているが、以下の治療法は試験段階のもので、「腸管出血性大腸菌による HUS」に対しての有効性は現時点では確立されていない。

特異的治療法
〔血漿交換療法〕

 HUSの進展(腎機能障害など)の阻止に対する有効性は認められない。

 中枢神経症状・急性脳症に対する効果は、現在のところ不明である。血漿交換療法を行う場合は、溢水状態の悪化を防ぐために透析の併用を行うのが望ましい。

〔γ-ブログリン製剤〕

 HUSの進展(腎機能障害、血小板減少など)の阻止効果は認められない。

〔抗生剤〕

 HUSを発症している時期では一般的には使用しない。

〔抗血小板剤、プロスタグランデインI2(PGI2)、血漿輸注、ビタミンE、ハプトグロビン〕

 腸管出血性大腸菌によるHUSでの有効性は証明されていない。


〔溶血性尿毒症症候群の経過観察の指標〕

 溶血性尿毒症症候群の経過観察指標には、尿検査および腎機能検査、腎生検、神経系検査がある。

経過観察の指標
〔尿検査および腎機能検査〕

・尿蛋白
・尿β2MG
・クレアチニン・クリアランス
・血圧
・DMSAシンチ

〔腎生検〕

 腎生検の適応や時期などについては、次のようになっています。

腎生検の適応や時期など
〔適応〕

・長期に無尿の持続していた例

・回復期においても中等度以上の蛋白尿や腎機能低下、あるいは高血圧の持続する例

〔時期〕

・回復期に施行

〔予後判定の指標〕

・硬化糸球体、血管病変、腎皮質壊死の有無と程度


〔神経系検査〕

 脳波、CT、MRI、(眼底所見)
(中枢神経症状のあった例には少なくとも1回は行うのが望ましい)


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