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〔心臓・血管の病気〕

肺塞栓症


概要病気症状原因診断
治療予後合併症情報書籍
 
この疾患の概要です

 肺動脈に血液の塊(血栓)が詰まってしまった状態が〔肺塞栓症〕で、肺動脈が詰まると、肺胞に血液が流れないためにガス交換ができなくなります。

 こうなると、全身の血液循環が著しく損なわれるようになり、呼吸困難となります。



 次のような状況下で同じ姿勢を続けた場合などに、下肢や上腕、特に下肢の血管の深い部分などに血液の塊、血栓が生じることがあり、肺塞栓症の原因となります。

 ・脱水状態
 ・感染
 ・長期伏床
 ・手術
 ・長時間の飛行機旅行など

 この血栓が何かの拍子に血流に乗って移動し肺に到達して、肺動脈を詰まらせるのが〔肺塞栓症〕で、いわゆる〔エコノミークラス症候群〕がこの典型例です。


 〔肺塞栓症〕では、自覚症状が全くない初期の段階を過ぎても、軽度ならば胸やけや発熱程度で治まります。

 しかし、その段階を過ぎると、症状として激しい胸痛や呼吸困難、血痰、咳、不安、発汗、顔色不良などが起こり、生命が危険な状態に晒されます。

 肺塞栓を起こす血栓の大きさが大きい場合には、即死をきたすこともあります。

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どんな病気ですか?
〔肺塞栓症という病気〕

 肺塞栓症は、他の場所で生成された血液の固まり(血栓)などによって肺動脈が突然詰まってしまう病気です。

 肺動脈は、心臓の右心室から肺へ血液を送り出す動脈ですが、流れているのは静脈血です。

 肺動脈は、体の各部に酸素を供給し代わりに二酸化炭素を受け取った静脈血を、肺まで運ぶ唯一の動脈となっています。

 体内で生成された二酸化炭素含みの静脈血を肺まで運び、酸素と交換するための大血管です。

 肺塞栓症になると、小さな血栓は短時間で分解されるため損傷は限定的になりますが、大きな血液の塊の場合には、分解されるまでに多くの時間が必要となり損傷も大きくなります。

 肺動脈の詰まりが酷くなれば、生命維持のための酸素の供給ができなくなり、それをカバーしようとして心臓に大きな負荷がかかることになり、突然死を招きます。

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どんな症状ですか?
〔肺塞栓症の症状〕

 肺塞栓症による症状は、肺動脈の詰まった範囲などでさまざまなものとなりますが、ごく狭い範囲の塞栓では特別な症状は現れません。

 しかし、狭い範囲の肺塞栓症を繰り返していると、慢性的な息切れや足首や脚のむくみ、咳、血痰などが見られるようになり、脱力感などが続きます。

 肺塞栓症は急激に起こることも多く、広範囲の肺塞栓では突然の呼吸困難、強い全身倦怠感、鋭い胸部痛がおこり、失神してしまう場合もあります。

 太い肺動脈が1つでも詰まると、指先や唇などの皮膚が紫色になるチアノーゼ反応を起こし、突然死することがあります。

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原因は何ですか?
〔肺塞栓症の原因〕

 航空機内での窮屈な座席などで、長時間同じ姿勢を続けると脚の静脈の流れが停滞して脚や骨盤の静脈内で血液の塊、いわゆる「血栓」が形成されやすくなります。

 静脈内で生成された血栓が、移動し肺に運ばれて、肺に詰まるのが肺塞栓症です。

 従って、肺塞栓症の最大の原因は、下肢深部静脈内で生成された血栓による肺動脈の詰まりということになります。

 このほかの原因として、骨折により放出される脂肪組織や、羊水、注射時の空気の詰まりなどもありますが、極めて稀です。

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診断はどうやりますか?
〔肺塞栓症の診断〕

 肺塞栓症の診断の決め手は、肺血流スキャンと肺換気スキャン、および肺動脈血管造影法です。

 この他に、診断の傍証として、心電図、血液検査、胸部レントゲン、心臓超音波検査などの方法も使われます。

 通常の検査・診断は、肺血流スキャンで示された血流パターンと、肺換気スキャンによる換気パターンとを比較し、血流と換気に違いがあれば、肺塞栓症と診断されます。

肺塞栓症の検査方法
〔肺血流スキャン〕

 肺血流スキャンでは、静脈内に少量の放射性物質を注射し、その血液が肺に到達した後でどのように流れるかの様子を映し出します。

 血栓により血液が供給されない場所には放射性物質は届かないので映像は暗く映ります。

〔肺換気スキャン〕

 肺換気スキャンでは、微量の放射性物質を含んだ体に無害なガスを吸入し、ガスが肺胞に広がる様子を映像化します。二酸化炭素が放出されて酸素が取りこまれる領域の画像がスキャン上に現れます。

〔肺動脈血管造影法〕

 肺動脈血管造影法は、肺塞栓症の診断を正しく行うことができる検査法ですが、やや危険が伴うため、肺血管スキャン法、肺換気スキャン法でうまく診断ができなかった場合などに限って使用されます。

 肺動脈に造影剤を注入しX線画像で観察します。肺塞栓症があれば、その部分が欠けた陰影となって示されます。


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治療はどうやりますか?
〔肺塞栓症の治療方針〕

 肺塞栓症の治療法には、酸素吸入療法、抗凝固療法、血栓溶解療法、下大静脈フィルター法、外科的血栓除去術などの方法があります。

〔酸素吸入療法〕

 脂肪や羊水によって生じた血栓による肺塞栓症では、まず酸素吸入療法や人工呼吸器を使用し、必要に応じて鎮痛薬で痛みを和らげます。

〔抗凝固療法〕

 すでに形成された血液の塊が更に大きくならないようにしたり、新たな塊が生じないように抗凝固療法が行われます。

 抗凝固薬のヘパリンは確実な効果がありますが、出血しやすくなる副作用があるので、慎重にモニタリングしながら投与されます。

 この薬は妊婦の胎盤を通過しないため妊婦に対しても使用可能です。ワルファリンという内服薬も抗凝固療法に用いられますが、こちらは妊婦には使用できません。

 抗凝固薬の服用期間は病状により異なります。

 肺塞栓症の原因が何かの手術に伴って発症した一時的肺塞栓症なら2~3か月、その他の長期的原因によるものなら3~6か月となります。

 また、血液が凝固しやすい遺伝的要因がある人では、一生涯にわたって服用を続けなくてはならないこともあります。

〔血栓溶解療法〕

 血栓溶解療法は、重大な肺血栓症の患者に対して使用されます。

 血栓溶解薬のストレプトキナーゼなどは、凝固した血液を分解し溶解します。この方法は、抗凝固療法に比べて出血の危険性が高く慎重な投与が必要です。

 直近に手術を受けたり、出血しやすい人、妊娠中の人には使用できません。

〔下大静脈フィルター法〕

 下大静脈フィルター法は、脚や骨盤から右心房へ流れる腹部大静脈内に金属製フィルターを挿入する方法です。

 一般に血栓の形成は脚や骨盤内で起こるため、フィルターを入れることで、たとえ血栓ができたとしても肺動脈に運ばれるのを防ぐことができます。

〔外科的血栓除去術〕

 急激で広範囲の肺塞栓症で状況が切迫していて、直ちに生命の危機に瀕している場合には、救命の観点から一刻の猶予もなく緊急の外科手術により肺塞栓を除去することが必要です。

 また、薬物療法に効果がなく病状が進行してしまう場合にも外科手術が必要となることもあります。

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