肺塞栓症の治療方針
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肺塞栓症の治療法には、酸素吸入療法、抗凝固療法、血栓溶解療法、下大静脈フィルター法、外科的血栓除去術などの方法があります。
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酸素吸入療法
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脂肪や羊水によって生じた血栓による肺塞栓症では、まず酸素吸入療法や人工呼吸器を使用し、必要に応じて鎮痛薬で痛みを和らげます。
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抗凝固療法
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すでに形成された血液の塊が更に大きくならないようにしたり、新たな塊が生じないように抗凝固療法が行われます。
抗凝固薬のヘパリンは確実な効果がありますが、出血しやすくなる副作用があるので、慎重にモニタリングしながら投与されます。この薬は妊婦の胎盤を通過しないため妊婦に対しても使用可能です。ワルファリンという内服薬も抗凝固療法に用いられますが、こちらは妊婦には使用できません。
抗凝固薬の服用期間は病状により異なります。肺塞栓症の原因が何かの手術に伴って発症した一時的肺塞栓症なら2~3か月、その他の長期的原因によるものなら3~6か月となります。また、血液が凝固しやすい遺伝的要因がある人では、一生涯にわたって服用を続けなくてはならないこともあります。
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血栓溶解療法
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血栓溶解療法は、重大な肺血栓症の患者に対して使用されます。血栓溶解薬のストレプトキナーゼなどは、凝固した血液を分解し溶解します。この方法は、抗凝固療法に比べて出血の危険性が高く慎重な投与が必要です。直近に手術を受けたり、出血しやすい人、妊娠中の人には使用できません。
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下大静脈フィルター法
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下大静脈フィルター法は、脚や骨盤から右心房へ流れる腹部大静脈内に金属製フィルターを挿入する方法です。一般に血栓の形成は脚や骨盤内で起こるため、フィルターを入れることで、たとえ血栓ができたとしても肺動脈に運ばれるのを防ぐことができます。
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外科的血栓除去術
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急激で広範囲の肺塞栓症で状況が切迫していて、直ちに生命の危機に瀕している場合には、救命の観点から一刻の猶予もなく緊急の外科手術により肺塞栓を除去することが必要です。また、薬物療法に効果がなく病状が進行してしまう場合にも外科手術が必要となることもあります。
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