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〔消化器の病気〕

痔核・いぼ痔


概要病気症状原因診断
治療予後合併症情報書籍
 

この疾患の概要です

 消化器官の最終部分は大腸ですが、大腸は盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸、そして最後に肛門へと繋がっています。

 肛門の「肛」は、お尻の穴を意味し、「門」は、出入り口を意味します。

 体内で消化・吸収された食物の残りかすを排泄するデリケートな器官です。


 肛門にかかわる重要な病気に〔痔〕があります。

 痔には、典型的な三つの症状があります。

 ・痔核
 ・裂肛
 ・痔ろう

肛門

 痔核とは、俗称〔いぼ痔〕のことで、直腸や肛門周囲の静脈密集部分がうっ血し膨れてしまった状態の痔です。〔痔核〕は、痔の中で最も多く見られる痔です。

 〔痔核〕は一般に肛門部の静脈に負担がかかると起こります。



 痔核が直腸の内側にできるか、肛門の外側にできるかにより、区別されて呼ばれます。

・内痔核:肛門の内側にできる痔
・外痔核:肛門の外側にできる痔

 ほとんどの痔核・いぼ痔は、生活習慣の改善で症状を軽減することができますが、重症の場合でも手術で完治できます。

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どんな病気ですか?
〔肛門とは〕

 消化器官の最終部分にある器官です。肛門はデリケートな器官で、長さは約3cmあります。

 肛門の周囲は、「内肛門括約筋」と「外肛門括約筋」という二つの筋肉が取り囲んでいます。

 これらは排便時以外は閉じていて、肛門から便が漏れ出ることはありません。

 肛門粘膜の近くにある内肛門括約筋は、不随意筋で、自律神経によって支配されていて、本人の意思とは関係なく肛門を一定の力で締め付けていて、眠っているときでも便が漏れたりはしません。

 一方、外肛門括約筋は、随意筋で、脊髄神経に支配されていて、本人の意思で緩めたり、締めたりすることができます。

 急に便意をもよおしても我慢できるのは、この筋肉のお陰です。

 直前の結腸で水分を吸収された便が直腸へ降りてきて、直腸が拡げられると、自律神経の反射作用で便意が起こります。

 本人が排便したいと思うと、外肛門括約筋が緩んで、排便できるようになります。

 直腸と肛門部の接合部は、肛門のふちより約1.5cm奥の方にあり、歯のようにギザギザ状なので歯状線とよばれています。

 この歯状線の奥側は自律神経の支配下にあり、異常があってもほとんど痛みは感じません。

 歯状線より、お尻に近い外側部分は、皮膚と同様に脊髄神経(体性神経)の支配下にあるので、異常があれば敏感に痛みを感じます。

〔痔核・いぼ痔という病気〕

 痔は肛門部および、肛門付近にできる病態であり、二つの異なる神経系の支配下にあるために、痔の発症部位によって、痛みの症状は異なります。

 痔の種類には、このページでご説明している「痔核(いぼ痔)」の他にも「裂肛(切れ痔)」および「痔ろう(あな痔)」という三種類があります。

痔核・いぼ痔

 痔核(いぼ痔)には、できる場所によって「内痔核」と「外痔核」とがあります。

 痔核はいわゆる痔の中で最も多いタイプです。痔核は肛門周辺の動脈や静脈にできる動脈瘤や静脈瘤で、図で示したように、血管と結合識とが肛門内部や肛門外部に盛り上がったり、垂れ下がったものです。

 形が「いぼ」に似ているので、俗称「いぼ痔」と呼ばれます。

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どんな症状ですか?
〔内痔核と外痔核〕

 痔核は放置すると、徐々に大きくなり、やがて排便時に肛門の外に飛び出してしまう「脱肛」状態になります。

 肛門内の歯状線より内部にできたものは内痔核、それより外に出来たものは外痔核と呼ばれます。

 内痔核と外痔核は、コントロール下にある神経系統が異なるために、症状が異なります。

 一般に内痔核は出血しやすいですが痛みは感じません。それに対して外痔核は、出血は少なめながら痛みが激しい特徴があります。

 内痔核は、自律神経の支配下に存在して、歯状線より内部の動静脈叢が膨らみ肛門内の粘膜領域で発生し垂れ下がったものなので、痛みは感じません。

 出血や肛門外に脱肛してきて初めて気づくことが多いです。

〔内痔核の症状〕

 内痔核は、内部に血液が充満したスポンジ球のようなもので、血液のうっ血の程度により球の大きさも変化します。内痔核は、症状によって4段階に分類されます。

内痔核の症状段階
〔レベル 1〕

 脱肛はなく、痔核自体はブヨブヨな状態のもの。ただし、排便時に力むと、内痔核が膨れ粘膜が裂けて出血する。

 激しくなると血液がほとばしることもある。通常は、出血は排便時のみで治まる。

〔レベル 2〕

 排便時に力むと、内痔核が膨らみ、痔核が肛門の外に脱肛するもの。

 排便が終わると自然に戻るもの。排便が終わると内痔核は自然に戻ります。

〔レベル 3〕

 排便時に脱出し、指で押さないと戻らないもの。

 排便時のみならず重量物を持ち上げたりすると脱肛することもあります。

 戻し方が悪いと、一部がそのまま脱肛したままとなることもあります。

〔レベル 4〕

 排便とは関係なく、常時脱肛しっぱなしのもの。

 内痔核を指で戻してもすぐに脱肛してしまい、外に出たままとなります。

 多いときは3個以上出ることもあります。

 痔核に引っ張られる形で肛門内の粘膜も外に飛び出てきます。

 お尻周りがジクジクしたり、皮膚がかぶれたり、痒みが出たりします。

 少量の便が流れ出して肛門が汚れます。

 これらの4段階に痔核と異なり、稀に脱肛した痔核を指で戻そうとしても肛門に戻らないことがあり、「嵌頓(かんとん)痔核」と呼んでいます。

 痔核の根元が肛門括約筋で締めつけられた結果、うっ血してしまうものです。

 内痔核は通常は痛みがないのですが、嵌頓痔核では患部が大きく腫れ上がり、激しい痛みが出ます。

 内痔核と嵌頓痔核との症状の違いは下に示したようなものです。

普通の内痔核と嵌頓(かんとん)痔核の比較
〔内痔核〕

 ・排便時に痛みはないが血がぽたぽた落ちる
 ・最近トイレが長い
 ・便の外側に血が付く
 ・排便時にお尻がムズムズし、いぼ痔が飛び出してきた
 ・肛門に何かぶら下がる感じで、痛まないが残便感がある

〔嵌頓痔核〕

 ・出血は少量だが激痛が走る
 ・排便に関係なく出血して痛みがある
 ・いぼが脱肛したままで激痛が続く


〔外痔核の症状〕

 外痔核は、肛門を取り囲みクッションのような役目の動静脈叢にできる血栓性動静脈炎で、血の塊が球状になった痔です。

 便秘などで、無理に排便しようとして力んだり、急に腹圧を掛けると、肛門に激痛が走り、しこり状の痔が肛門上皮部などに突き出てきます。

 この部位は歯状線より外側にあって皮膚と同じ組織で、体性神経の支配下にあるため激痛があります。

 外痔核の典型的な症状は次のようなものです。

典型的な外痔核の症状
〔外痔核の症状〕

 ・肛門に腫れがあり、排便に関係なく出血し痛む。

 ・突然お尻が痛みだし、肛門出口にいぼのようなものが突き出てくる。


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原因は何ですか?
〔痔核・いぼ痔の原因〕

 痔の大部分を占める痔核の原因は、便秘などで頻繁に力んだりして肛門に負担を掛けることで起こります。

 また、妊娠後期で子宮が左右の腸骨静脈を圧迫して分娩時に力むと内痔核になることがあります。

 また、長時間、座ったままの人、立ったままの人など同じ姿勢が続くと、肛門がうっ血して痔核の原因となります。

 ウエイトリフティング、トランペットなどの趣味でお腹に圧力をかける運動も原因となります。

 唐辛子などの香辛料は、ほとんど体内で吸収されないで便として排泄されます。

 そのため、便の中に残っている刺激成分が肛門を刺激し、炎症の原因となることがあります。

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診断はどうやりますか?
〔痔核・いぼ痔の診断〕

 通常、痔の検査は「触診」で行われます。横向きに寝て、膝を曲げ、医師に対してお尻を突き出した格好をします。

 医師が薄手の手袋をして、肛門に指を入れてしらべます。

 これで大体のことは分かります。

 全裸になるわけではないので恥ずかしくもありません。

 状況に応じて、精密な検査が必要な場合に内視鏡検査が行われます。

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治療はどうやりますか?
〔痔核・いぼ痔の治療方針〕

 痔核・いぼ痔の治療法は、現在の症状によって多少異なりますが、内痔核、外痔核ともにほとんど同じです。

 最初にしなくてはいけないのは、悪い生活習慣の改善です。

 いぼ痔はたとえ手術によって一時的に治癒し良くなっても、生活習慣の改善なしでは再発の危険性が高い病気だからです。

〔内痔核の治療〕

 初期段階(レベル1、2)であれば、脱肛があっても指で戻せるような状態なので、塗り薬・座薬・内服薬を用いて治療することで軽快します。

 また、痔核に直接注射していぼを固めてしまう硬化療法や、赤外線でいぼを固めて自然に落としてしまう方法があります。

 しかし、レベル3、レベル4の内痔核では、脱肛状態が自然には戻らない状態であり、手術しなくてはならない場合があります。

 この場合の手術法には次のようなものがあります。

・硬化療法(注射療法)
・レーザー療法
・結さつ療法(輪ゴム結さつ法)
・ジオン(消痔霊治療)
・ICG併用半導体レーザー療法
・半閉鎖法
・PPH法

〔外痔核の治療〕

 外痔核だけの場合は、通常、悪い生活習慣を改め、塗り薬・座薬・内服薬などの治療薬で治療すれば、徐々に軽快します。

 特に、痛みが激しい場合は、鎮痛薬を使用することもあります。

 外痔核の場合は、肛門付近のうっ血が主な原因なので、肛門周辺を温めることが効果的です。

 ゆっくりお風呂に入って、外痔核をゆっくりと押し戻してしまうこともできることがあります。

 外痔核の治療上の留意点は、次のようなこととなります。

・食生活の改善(便秘解消)
・刺激の強い香辛料などを控える。
・アルコール・タバコを控える。
・入浴などでお尻を温める。
・治療薬の使用


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