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〔内分泌・代謝の病気〕

甲状腺機能低下症


概要病気症状原因診断
治療予後合併症情報書籍
 

この疾患の概要です

 〔甲状腺機能低下症〕は、何らかの原因で甲状腺ホルモンの量が減少するために、全身のさまざまな器官に不調がでてくる病気です。
甲状腺
 全身的な症状として、疲れ易くなり、筋力の低下、全身のだるさ、脱力感を伴い、元気がなくなります。

 また、体重増加、食欲低下、便秘、こむら返りなどの症状がでてきます。動脈硬化などの老化が早まります。



 精神症状にも変化がでてきて、動作が緩慢になり、記憶力や集中力が低下します。痴呆ではないのに、いわゆる痴呆症状がでることがあります。

 顔つきが腫れぼったくなり、唇や舌が大きくなります。皮膚からの発汗がなくなり乾燥します。髪は白髪となり、脱毛が激しくなります。

 また、眉の外側三分の一くらいが薄くなります。下肢のむくみもみられます。首の前下の方にある甲状腺は大きくなりません。

 その他の症状として、声が低音でしわがれ声になります。女性では月経過多症状がでることがあります。


 甲状腺機能低下症は、通常、甲状腺を攻撃して破壊する「抗甲状腺抗体」と呼ばれる異常物質ができるために起こる自己免疫疾患です。

 この原因による甲状腺機能低下症は、〔慢性甲状腺炎(別名:橋本氏病)〕と呼ばれていて、女性が男性の10倍の頻度で発症します。

 治療が必要な人は、全人口の1%くらいだとされています。

 症状が軽症や中等症の場合には、他の病気と似た症状を呈するために、見落とされる可能性が少なくありません。

 症状から単なる「加齢現象」や「更年期障害」「老人性痴呆症」などと間違われることがあります。

 このような間違いを冒さないためにも、〔甲状腺機能低下症〕の可能性が疑われたら、すぐに血液検査を行い、血液中のTSHというホルモン量を測定すればすぐに分かります。

 正しい治療を行えば、上記したような症状からすべて開放されるので、検査は大切です。

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どんな病気ですか?
〔甲状腺機能低下症という病気〕

 甲状腺ホルモンは、全身で使われるエネルギーの利用を促進するホルモンです。

 エネルギー需要に応じて適量分泌されていれば、快適な生活ができますが、分泌量が多すぎるとバセドウ病となります。

 また、何らかの原因で分泌量が不足する状態が「甲状腺機能低下症」で、エネルギーをうまく利用できなくなるために、全身の器官などに様々な影響がでてきます。

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どんな症状ですか?
〔甲状腺機能低下症の症状〕

 甲状腺ホルモンが不足すると、症状は徐々に進行する形で、身体全般の機能が低下していきます。脈拍は遅くなり、手のひらと足の裏がちょっと黄色味も帯びてきます。

 目と顔が腫れぼったくなり、まぶたが垂れ下がり、眉毛の外側三分の一ほどが抜けて、無表情になります。話し方は緩慢となり、かすれ声になります。

 体重が増加し、便秘や冷え性を訴えるようになります。毛髪は薄くて粗くなり、皮膚は乾燥し、きめが粗くなり、うろこ状に厚くなります。

 高齢者の場合には、錯乱、もの忘れ、痴呆、うつ状態などの症状がでてきます。

甲状腺機能低下症の症状
全身症状

全身倦怠、無気力、元気がなくなる、疲れやすい、脱力感、寒がり、体重増加、食欲低下、便秘、高コレステロール血症、貧血、痴呆症状

循環器症状

脈拍数が遅い、徐脈、不整脈、心不全、息切れ、胸痛、むくみ、心電図異常、心肥大

消化器症状

食欲低下、便秘、肝臓障害(AST、ALT、LDH、γ-GTP上昇)

精神症状

記憶力低下、集中力低下、動作が緩慢、痴呆ではないが、一見痴呆と間違われる症状、無気力、痴呆、うつ状態

皮膚症状

発汗低下、皮膚乾燥、黄色皮膚(カロチン血症)、毛髪脱毛

顔面症状

腫れぼったい顔、大きな口唇や大きな舌、白髪が増加、脱毛、眉の外側三分の一が薄くなる、難聴、耳鳴り、めまい、声の低音化、しわがれ声、声がれ

下肢症状

下肢のむくみ(押してもへこみが残らない状態)

筋肉症状

筋肉痛、関節痛、筋力低下、けいれん、こむら返り

女性症状

月経過多、無月経

 甲状腺機能低下症を放置すると、コレステロールの増加や動脈硬化を促進し、動脈硬化性疾患である心筋梗塞や脳梗塞の危険性が増大します。

 体のむくみなどが悪化し、心臓周辺に水が溜まって、心不全になることもあります。

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原因は何ですか?
〔甲状腺機能低下症の原因〕

 甲状腺機能低下症にはいくつかの原因があり、基本的には「原発性(甲状腺性)」「二次性(下垂体性)」「三次性(視床下部性)」「末梢性」および「医源性」などに分類されています。

 甲状腺機能低下症の中で、最も一般的な原因は、「橋本甲状腺炎」と呼ばれるもので、原因分類の「原発性」に属するもののひとつです。

 橋本甲状腺炎では、甲状腺が徐々に破壊され、それにつれて甲状腺の機能低下が進行します。

 これらの原因分類とは別に、甲状腺が機能を果たすためにはヨードが必要ですが、開発途上国などで十分なヨードが摂取できずに、甲状腺機能低下症になる場合もあります。

 食生活の充実している日本では全くこのようなことは起こりえません。

甲状腺ホルモンの不足する状況としては、分泌調節の段階から次のように分類できます。

甲状腺機能低下症の分類
〔原発性(甲状腺性)〕

 原発性の甲状腺機能低下症は、甲状腺組織自体に問題があり、その機能が低下するために、甲状腺ホルモンの分泌量が不足して起こる症状です。

 この中で最も多く一般的なのが「橋本病」とも呼ばれる「慢性甲状腺炎(臓器特異的慢性疾患)」で、自己免疫疾患のひとつです。

 自己免疫疾患とは、本来であれば、外部からのウイルスや細菌の侵入に対して働く免疫機能が、自分の細胞を攻撃してしまうことで起こる症状です。

 甲状腺機能低下症とは逆に、甲状腺ホルモンが過剰に産生されるバセドウ病もそのひとつですが、膠原病と呼ばれる一連の病気など、このような原因で起こる数多くの病気が知られています。

 慢性甲状腺炎は、抗サイログロブリン抗体(TgAb)や、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)などの甲状腺自己抗体が出現するために起こる疾患で、血中の甲状腺刺激ホルモンTSHが高値を示すのが特徴です。

〔二次性(下垂体性)〕

 甲状腺刺激ホルモンTSHの分泌が少量となってしまうために、十分な甲状腺ホルモンを分泌できないタイプの甲状腺機能低下症です。その原因には、次のようなものがあります。

 ・TSH単独欠損症
 ・先天性下垂体ホルモン複合欠損症

〔三次性(視床下部性)〕

 甲状腺刺激ホルモンTSHは、視床下部から分泌される「甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンTRH」によって分泌が促進されます。

 このとき、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンTRHが減少してしまい、甲状腺刺激ホルモンTSHが減少し、それにより甲状腺ホルモンも十分に分泌できないタイプの甲状腺ホルモン低下症です。

〔末梢性〕

 甲状腺ホルモンの分泌量は十分あるのに、レセプターに異常があり、この甲状腺ホルモンをうまく活用できていないタイプの甲状腺機能低下症です。

〔医原性〕

 バセドウ病(甲状腺機能亢進症)や甲状腺癌の治療を行った患者が、治療を行った後に甲状腺機能低下症になる場合があります。

 これは、治療のために使用したアイソトープ(放射性ヨード)、あるいは甲状腺の外科的切除のために、甲状腺ホルモンが十分に産生されなくなった場合に起こります。


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診断はどうやりますか?
〔甲状腺機能低下症の診断〕

 甲状腺機能低下症の検査では、先ず、血液中の甲状腺刺激ホルモンTSHの濃度を測定します。

 甲状腺の機能が低下すると、ほんのわずかな低下でも、脳下垂体は血液中のTSH濃度を上昇させるように鋭敏に反応します。

 従って、血液中のTSH濃度が高くなっているなら、甲状腺機能が低下していることを意味しているのです。

 甲状腺機能の働きを調べるために、甲状腺ホルモン(FT3・FT4)を直接測定するよりも、血液中の甲状腺刺激ホルモンTSH濃度を測定する方が、はるかに敏感に甲状腺機能の異常を検出することができます。

 甲状腺刺激ホルモンTSHに異常が確認されたら、その後でFT3,FT4などの検査を追加すればよいのです。

 甲状腺機能低下症の大部分は、橋本病ですので、各種の抗甲状腺抗体が測定されます。

 橋本病では、TSHが高く、かつ、FT3・FT4が低下する他に、抗甲状腺抗体(抗TPO抗体、抗Tg抗体)が陽性になります。

 尚、甲状腺機能低下症は、一般の血液検査などに異常があって、付随的に発見されることが多いのです。

 甲状腺機能低下症では、血液検査での、総コレステロールや中性脂肪の上昇、アルカリホスファターゼの上昇、CPK上昇、血沈亢進、γ-グロブリン上昇などが観察されます。

 また、胸部エックス線での心肥大、心電図での徐脈や低電位などが現れます。

 これらの症状が現れると、甲状腺機能低下症の疑いはあるのですが、加齢や他の病気でも同様なことが起こるので、この病気特有というわけではありません。

 ですから、このような症状が観察されたら、いずれにしても血液中のTSH濃度を測定する必要があります。

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治療はどうやりますか?
〔甲状腺機能低下症の治療方針〕

 甲状腺機能低下症の治療法は、甲状腺のホルモン剤の内服療法だけです。通常、毎日1~2錠のホルモン剤を服用するだけです。薬の量は甲状腺ホルモンの状態を見ながら調整します。

 稀には、薬を数ヶ月間にわたって服用するだけで、正常になる人もいますが、通常は、一生涯この薬を飲み続けなければなりません。

 必要なのは、3~6ヶ月単位で血液検査を行いホルモンバランスを確認することだけです。

 用法・用量を間違わなければ、この薬による副作用はありません。


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