甲状腺機能低下症にはいくつかの原因があり、基本的に次のような原因に分類されています。
・原発性(甲状腺性)
・二次性(下垂体性)
・三次性(視床下部性)
・末梢性
・医源性
甲状腺機能低下症の中で、最も一般的な原因は、「橋本甲状腺炎」と呼ばれるもので、原因分類の「原発性」に属するもののひとつです。橋本甲状腺炎では、甲状腺が徐々に破壊され、それにつれて甲状腺の機能低下が進行します。
これらの原因分類とは別に、甲状腺が機能を果たすためにはヨードが必要ですが、開発途上国などで十分なヨードが摂取できずに、甲状腺機能低下症になる場合もあります。食生活の充実している日本では全くこのようなことは起こりえません。
甲状腺ホルモンの不足する状況としては、分泌調節の段階から次のように分類できます。
原発性 (甲状腺性) |
原発性の甲状腺機能低下症は、甲状腺組織自体に問題があり、その機能が低下するために、甲状腺ホルモンの分泌量が不足して起こる症状です。この中で最も多く一般的なのが「橋本病」とも呼ばれる「慢性甲状腺炎(臓器特異的慢性疾患)」で、自己免疫疾患のひとつです。
自己免疫疾患とは、本来であれば、外部からのウイルスや細菌の侵入に対して働く免疫機能が、自分の細胞を攻撃してしまうことで起こる症状です。
甲状腺機能低下症とは逆に、甲状腺ホルモンが過剰に産生されるバセドウ病もそのひとつですが、膠原病と呼ばれる一連の病気など、このような原因で起こる数多くの病気が知られています。
慢性甲状腺炎は、抗サイログロブリン抗体(TgAb)や、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)などの甲状腺自己抗体が出現するために起こる疾患で、血中の甲状腺刺激ホルモンTSHが高値を示すのが特徴です。
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二次性 (下垂体性) |
甲状腺刺激ホルモンTSHの分泌が少量となってしまうために、十分な甲状腺ホルモンを分泌できないタイプの甲状腺機能低下症です。その原因には、次のようなものがあります。
・TSH単独欠損症
・先天性下垂体ホルモン複合欠損症
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三次性 (視床下部性) |
甲状腺刺激ホルモンTSHは、視床下部から分泌される「甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンTRH」によって分泌が促進されます。このとき、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンTRHが減少してしまい、甲状腺刺激ホルモンTSHが減少し、それにより甲状腺ホルモンも十分に分泌できないタイプの甲状腺ホルモン低下症です。
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末梢性 |
甲状腺ホルモンの分泌量は十分あるのに、レセプターに異常があり、この甲状腺ホルモンをうまく活用できていないタイプの甲状腺機能低下症です。
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医原性 |
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)や甲状腺癌の治療を行った患者が、治療を行った後に甲状腺機能低下症になる場合があります。これは、治療のために使用したアイソトープ(放射性ヨード)、あるいは甲状腺の外科的切除のために、甲状腺ホルモンが十分に産生されなくなった場合に起こります。
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