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〔糖尿病性網膜症〕


概要病気症状原因診断
治療予後合併症情報書籍
 

この疾患の概要です

 目の構造は非常に複雑で多くの組織が微妙なバランスの上に精細にできています。

 中でも重要なのが、水晶体や網膜などです。

 網膜は眼球壁の最内層にある薄い層で、外部から水晶体を透過して入ってくる光学的情報を視覚情報として受け取り、脳の中枢に伝える重要な働きを持っています。



目の構造

 〔糖尿病〕で高血糖状態が続くと、網膜に分布している毛細血管がもろくなり、血管壁が破れたり、詰まって血栓ができやすくなります。

 このような状態を〔糖尿病性網膜症〕といい、手遅れになれば失明する可能性が大きくなります。


 〔糖尿病性網膜症〕は、次のようにこれも含めての糖尿病の三大合併症のひとつです。

 ・糖尿病性網膜症
 ・糖尿病性腎症
 ・糖尿病性神経障害

 糖代謝異常に伴う眼の網膜などに異常をきたし、〔白内障〕や〔緑内障〕などの眼科疾患の原因ともなります。

 また、この病気は、次のような疾患を引き起こし最終的に失明します。

 日本における後天性失明原因の第二位を占めています。

 ・硝子体出血
 ・牽引性網膜剥離
 ・虹彩血管新生

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どんな病気ですか?
〔糖尿病性網膜症という病気〕

 糖尿病は長期間にわたって糖代謝異常が続き、血糖値の高い状態が続く病気で、糖尿病自体というよりも、その合併症として起こるいくつかの重大な病気が問題となる病気です。

 糖尿病の三大合併症というのがあって、それらは「糖尿病性腎症」「糖尿病性神経障害」そして「糖尿病性網膜症」です。

 糖尿病性網膜症は、長期間にわたる慢性的な高血糖により、網膜の毛細血管がもろくなり、初期段階では自覚症状がなく、知らず知らずのうちに症状が進行し、大出血や網膜剥離が起こし、最終的には失明してしまう病気です。

 日本における成人の失明原因の第一位を占めていて、毎年3000人ほどの人が糖尿病性網膜症で失明しています。

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どんな症状ですか?
〔糖尿病性網膜症の症状〕

 糖尿病性網膜症は初期段階では自覚症状はでませんが、ある程度病状が進行すると、自覚症状および他覚症状が現れてきて、重症になると、視神経が壊死し失明します。

 病期による分類法では、糖尿病性網膜症は次の三つに分類されます。

 ・単純型網膜症
 ・前増殖型網膜症
 ・増殖型網膜症

 症状は、単純型網膜症、前増殖型網膜症、増殖型網膜症と進行してゆき、最終的には硝子体出血や網膜剥離を来たし失明に至ります。

 それぞれの病期についての内容は次のとおりです。尚、これら三つの病期の呼び方は、必ずしも統一されておらず、表中でも示すようにさまざまな呼び名が使われています。

糖尿病性網膜症の病気分類
単純型網膜症
単純網膜症
単純性網膜症

 単純型網膜症は、比較的経度な糖尿病性網膜症で、異常が網膜だけに限局している段階です。この段階では、良性網膜症とも呼ばれ、すぐすぐ失明の危険はありません。

 眼底検査で網膜に小さな出血や白い斑点などが見られ、進行するとしみ状出血、部分的浮腫なども見られます。高血糖のために網膜の細小血管が詰まったり、点状出血したり、たんぱく質や脂肪による硬性白斑(しみ)や毛細血管瘤(血管のこぶ)などが出来る状態です。

 単純型網膜症の段階では、特別な自覚症状はなく、眼底検査などをしなければ分かりません。

 この段階であれば、血糖値管理・制御がうまく成功すれば自然に改善し消失できます。しかし、糖尿病を放置すれば、確実に次の段階へと進行してしまいます。

前増殖型網膜症
前増殖性網膜症
前増殖期網膜症
増殖前網膜症

 前増殖型網膜症は、単純型網膜症と増殖型網膜症の中間段階を指しています。

 細小血管の症状が進行し網膜の血管が詰まり、その部分の神経は軟性白斑と呼ばれる白い斑点を作ります。

 血管が詰まり酸欠状態になると、その血管は役にたたないため、新生血管と呼ばれる新たな血管が出現します。この新生血管は、不安定でもろいため、やがて新たな疾患を招く原因になります。

 この段階でも、自覚症状はほとんどなく、レーザー光凝固術などで治療すれば症状は改善されます。

増殖型網膜症
増殖性網膜症
増殖期網膜症

 増殖型網膜症は、網膜血管の詰りが進行し、それを補おうとして新たに出来た数多くの新生血管が増殖している段階です。新生血管は、網膜からはみ出して、硝子体の方にまで増殖しています。

 硝子体の内部にまで侵入した新生血管は、やがて目玉の中心部分にまで伸びていき、そこで硝子体出血を起こしたりします。

 新生血管が網膜上に新たに膜を生成すると、本来の網膜を剥がしてしまう「網膜剥離」を起こします。網膜はく離すると、視細胞は、色素上皮細胞からの栄養分を受け取れなくなり機能低下をきたします。

 硝子体の汚れや網膜剥離の進行により、著しく視力が低下し、最悪時には失明してしまいます。

 最終的には視力低下や失明するのですが、増殖型網膜症になっても視力低下などの自覚症状はそれほど激しくでないために、気づいたときには手遅れになるケースも多々起こります。

 糖尿病に罹ってからの経過年数と、糖尿病性網膜症が発症する確立との関係はおおよそ次のようになっています。

 ・糖尿病発症後10年:50%
 ・糖尿病発症後20年:80%

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原因は何ですか?
〔糖尿病性網膜症の原因〕

 糖尿病に罹って長期間にわたって高血糖状態を続けると、身体いたる部分の毛細血管が詰まり、もろくなります。

 この現象は網膜の毛細血管でも起こり、毛細血管が詰まり、もろくなって出血を起こします。

 血管の詰まりのために酸欠状態になるため、今度は、酸素不足を補うために、新生血管と呼ばれる新たな毛細血管が発生します。

 しかし、この新生血管はとてももろい血管であり高血圧やちょっとした刺激、衝撃で破れ易く出血を起こします。

 毛細血管は硝子体の内部にまで侵入したり、本来の網膜上に別の膜を生成するために、物を見るための細胞に十分な酸素が供給されなくなり視力障害や失明にいたります。

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診断はどうやりますか?
〔糖尿病性網膜症の診断〕

 糖尿病性網膜症の検査は眼底透視で行います。糖尿病に羅感している場合には定期的な検査が必要です。

 ちなみに、日本糖尿病眼学会は定期的眼科通院を促すため、糖尿病眼手帳を配布しています。

 糖尿病性網膜症の疑いがあるときは、眼底血管の漏出や無血管野の確認、新生血管の確認、病期や治療法の決定などのために、蛍光網膜造影検査を行います。

 眼底を詳しく観察するために、検査は瞳を開く点眼薬を用いて散瞳状態にして行います。

 散瞳薬を用いると、30分間ほどは、ピント調節能力が低下するため自動車の運転は困難となるので注意が必要です。

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治療はどうやりますか?
〔糖尿病性網膜症の治療方針〕

 糖尿病網膜症の治療は、症状がごく初期で軽度であるときは、糖尿病自体の治療をきちんと行えば問題はありません。この段階では眼科的治療は必要ありません。

 しかし、糖尿病の治療をきちんと行い、血糖値のコントロールができていないまま放置すれば、糖尿病性網膜症は着実に悪化し、その症状の進行を遅らせることはできても、元の状態に戻すのは極めて困難となります。

 本来、この病期の治療の基本は、糖尿病の管理をきちんとやることに尽きるのです。

 そうはいっても、網膜症がある程度進行してしまった場合には、症状に応じて次のような療法などで治療します。

 ・薬物療法
 ・レーザー光凝固術
 ・硝子体手術

糖尿病性網膜症の治療法
薬物療法

 糖尿病性網膜症の眼科的な薬物療法では、程度に応じて医薬を使い分けます。

 ・止血薬
 ・血行改善薬
 ・出血の吸収を助ける薬
 ・末梢循環改善剤
 ・血管強化剤
 ・脂質代謝改善剤

 これらの医薬により、血糖値管理を少しでも良好に維持することで、網膜症の発症や進展の抑制を行います。

レーザー光凝固術

 レーザー光凝固術は、「網膜光凝固術」とか「レーザー治療法」などとも呼ばれています。

 レーザー光凝固法は、現時点での糖尿病網膜症の最も基本的で、効果の大きい治療法です。症状がひどくなければレーザー光の一回の照射で治療でき、通常は外来での治療が可能です。

 酸欠状態で壊死する網膜は、酸素を要求するために新生血管の生成を促してしまうので、新生細胞を生じさせないように、酸欠状態の網膜をレーザー光線を照射して焼きつぶします。焼きつぶすことを凝固といいます。

 このレーザー光凝固術は、あくまでも網膜症が現状以上に進行するのを抑制する予防法です。

硝子体手術

 硝子体手術は、眼球全体に多量の出血があったり、網膜剥離を起こした場合に、出血を止め、混濁を除去したり、剥離した網膜を元の位置まで戻すために、硝子体手術を行います。



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