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〔メニエール病〕


概要病気症状原因診断
治療予後合併症情報書籍
 

この疾患の概要です

 〔メニエール病〕は、内耳の異常により〔めまい〕などの発作が繰り返される病気です。

 自分や周囲がぐるぐる回るような感じの〔めまい〕に襲われ、1~数時間続き、これが繰り返されます。

 片方あるいは両方の耳に〔耳鳴り〕や〔難聴〕が現れ、肩こりや吐き気、嘔吐などの症状をともなうこともあります。



耳の構造

 内耳は、骨と膜の二重構造となっていて、膜の内側は「内リンパ液」で満たされています。

 何らかの原因でリンパ液が過剰となると〔内リンパ水腫〕ができ、神経を圧迫します。


 内耳には、回転運動を感知する三半規管や、その中にあって直線加速度や位置感を感じる耳石などの器官がリンパ液で繋がっています。

 これにより、メニエール病に特有なめまい、耳鳴り、難聴などの症状が出現してきます。

 初期の発作では、耳の圧迫感や耳が詰まったように感じます。

 発作を繰り返しているうちに、激しく回転するようなめまいに襲われ、耳鳴りや難聴へと進行してゆきます。

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どんな病気ですか?
〔メニエール病という病気〕

 メニエール病は、フランス人医師プロスペル・メニエールが初めて提唱したことで名づけられた病気で「メニエル病」「メヌエル病」、および「メニエル氏病」などとも呼ばれています。

 この病気は難病のひとつとして、厚生労働省の特定疾患に指定されています。

 メニエール病は、内耳の疾患で、激しい眩暈(めまい)と耳の聞こえにくい状態や耳鳴りを呈する病気です。

 一般的には片側の内耳の障害ですが、両側の耳に障害が起こることもあります。

 この病気では、突然、周囲がぐるぐる回転するような激しいめまいに襲われ、気分が悪くなり吐き気や嘔吐を伴うこともあります。

 初期の段階では、めまいの発作時に耳の圧迫感や耳が詰まるような閉塞感を感じます。

 何度もめまい発作を繰り返しているうちに、耳鳴りや難聴症状が出るようになり、最終的にはめまい発作時以外のときにも、これらの症状が出現します。

 メニエール病は、几帳面で神経質な性格の持ち主が罹りやすく、肥った人より痩せ型の人に多く発症します。発作は精神的・肉体的ストレスや疲労、睡眠不足などを切欠として起こるようになります。

 この病気の患者は男性より女性に多く、発症年齢は30歳後半~40歳前半に集中しています。

 めまいといえばメニエール病を想像することが多いですが、現実にはそれほど多くなく、メニエール病の有病率は、人口10万人当たり15~18人とされています。

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どんな症状ですか?
〔メニエール病の症状〕

 メニエール病の三大症状・主徴と呼ばれるものは次の三つの症状です。

 ・眩暈(めまい)
 ・耳鳴り
 ・難聴

 これらの三大症状の他にも次のような副次的症状も伴いながら、耳に関係する障害がかなりの時間継続することで、これらの主・副症状はいったんおさまっても繰り返し反復的に出現します。

 ・吐き気
 ・嘔吐
 ・冷や汗
 ・動悸

 メニエール病の初期には、めまいの発作が起こると、耳が詰まったような感じ、耳の閉塞感や耳の圧迫感を受けます。

 このようなめまい症状を何度も繰り返しているうちに、耳鳴りや難聴症状が現れるようになります。

 この病気では、難聴があるにもかかわらず、少し大きな音や周波数の高い音が大きく響いて聞こえる「補充現象」が起こる特徴があります。

 最も典型的な症状である眩暈(めまい)は、特別なきっかけもなく突発的に起こり、突然周囲がぐるぐると回転するような激しいもので、発作が起こると30分~数時間も続きます。

 多くの場合、苦痛のために吐き気や嘔吐、冷や汗などの症状を呈しながら顔面蒼白となります。また、脈が速くなる頻脈症状も起こります。

 めまいと同時か、まめいが始まる少し前から、片耳に耳鳴りや耳が塞がったような閉塞感が起こったり、低音域の音声がうまく聞き取れないような難聴の症状が起こります。

 多くの場合、耳鳴りや耳の閉塞感、難聴などの症状は、めまいの軽快とともに消滅し元の状態に戻ります。

 しかし、めまい発作を繰り返していると、発作時以外のときにも耳鳴りや難聴が残るようになります。

 メニエール病の一番つらいところは、激しい回転性のめまいなどの症状が繰り返し、反復的に起こることです。

 めまい発作の起こる間隔は、人により異なりますが、数日ごとに頻繁に起こる人もいれば、数週間、数か月、あるいは1年に一回程度の人もいます。

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原因は何ですか?
〔メニエール病の原因〕

 耳の内耳には、骨と膜でできた二重構造があるのですが、膜の内部はリンパ液で満たされています。

 このリンパ液で満たされている膜の内部には、音を感知する「蝸牛」や回転運動を感知する「三半規管」、直線運動や位置感を感知する「耳石」など、多くの器官があります。

 メニエール病では、何らかの原因で、リンパ液のバランスが狂ってしまい、リンパ液が過剰になると、内リンパ水腫ができてしまいます。

 この状態が神経を圧迫して、めまいをはじめ、耳鳴りや難聴などさまざまな症状を起こすようになるのです。

 このように、メニエール病の直接の発症原因は、内リンパ水腫(内耳の水ぶくれ状態)だと分かっていますが、この内リンパ水腫が何故起こるかという理由は明確にはなっていません。真の原因は不明です。

 この病気に罹りやすいのは、30歳~50歳代の働き盛りの人で、女性より男性に多く発症します。

 仕事や人間関係などで緊張関係にあり、強いストレスの中で生活している人、強い責任感があり、しかも働き過ぎの人に多く発症します。

 このような観点から考えるなら、真の原因とまでは言えないまでも、少なくとも、ストレスがメニエール病の発症に関与している可能性があります。

 また、この病気は、低気圧や前線の接近など季節の変わり目、気候の変化時に起こり易いとされています。このような環境因子も発作を誘因する可能性があります。

 尚、現段階では、特別な遺伝的原因はないとされています。

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診断はどうやりますか?
〔メニエール病の検査・診断方針〕

 メニエール病の典型的な症状はめまいですが、めまいにも様々な原因や症状があり、めまいがあるからメニエール病だとは限りません。

 めまいの原因を詳しく調べるには、耳鼻科だけでなく、脳神経外科や神経内科、内科などの検査が必要となることもあります。

 メニエール病の確定診断は、厚生省メニエール病調査研究班が作成した診断基準により行われますが、メニエール病と診断するには、さまざまな検査が必要となります。

 通常、実施されているメニエール病の検査は「問診」「聴力検査」「平衡機能検査」および「内リンパ水腫検査」などです。

 メニエール病は、初期段階で発見し治療しないと、治療が困難になるため、早期受診・早期発見・早期治療が大切となります。

メニエール病診断基準
1 回転性めまい発作を反復すること

1a

・めまいは一般に特別の誘因なく発来し、嘔気、嘔吐を伴い、数分ないし数時間持続する。

1b

・発作の中には「回転性」めまいでない場合もある。

1c

・発作中は水平回旋混合性の自発眼振をみることが多い。

1d

・反復性の確認されない初回発作では、めまいを伴う突発性難聴と十分鑑別されなければならない。


2 耳鳴、難聴などの蝸牛症状が反復、消長すること

2a

・耳鳴、難聴の両方またはいずれかの変動に伴いめまい発作をきたすことが多い。

2b

・耳閉塞感や強い音に対する過敏性を訴える例も多い。

2c

・聴力検査では、著明な中・低音部閾値変動や音の大きさの補充現象陽性を呈することが多い。

2d

・片耳罹患を原則とするが両耳の場合もみられる。


3 1,2の症候をきたす中枢神経疾患、ならびに原因既知のめまい、難聴を主訴とする疾患が除外できる。

3a

・これらの疾患を除外するためには、問診、一般神経学的検査、平衡機能検査、聴力検査などを含む専門的な臨床検査を行い、ときには経過観察が必要な場合もある。


診断基準  上記1、2、3の条件をどれだけ満たしているかにより、確実にメニエール病であるか、その疑いがあるかを診断します。

確実例

 1,2,3の全条件を満たすもの

疑い例

 1と3 または 2と3 の条件を満たすもの



〔メニエール病の問診〕

 問診では、医師が患者に対して、どのような間隔でめまいなどの発作が起こるか、めまいの症状はどのようなものか、難聴の有無、耳鳴りの有無、頭痛の有無などを詳細に訊ね確認します。

〔メニエール病の聴力検査〕

 聴力検査の方法は、一般的な聴力検査法です。静寂な部屋の中で耳に受話器をあて、周波数の異なる音をごく微弱な音からはじめ、徐々に強い音にしてゆきます。

 音が聞こえたらボタンを押して合図して検査する方法です。どの周波数域の音がどのくらいの音圧レベルで聞こえるかなどを検査します。

 メニエール病の初期段階では、低音域の聴力が弱くなり、発作が繰り返されるに従って、全周波数領域にわたっての聴力低下がみられるようになります。

 聴力検査では、メニエール病に特徴的な難聴があるかどうかを調べます。

 メニエール病に特有な難聴のタイプは、低音領域の音が聞こえない「低音障害型難聴」か、あるいは音が響いて聞こえる補充現象が起こり、言葉が割れて響くために明瞭度が低くなる「水平型難聴」となります。

 低音障害型難聴というのは、音声の低音部がよく聞こえない難聴であるのに対して、水平型難聴というのは、音声の低音部と高音部が同じくらい聞こえない難聴です。

 会話に何となく頼りなさを感じる特徴があります。

 メニエール病の難聴に対しては、グリセロールという医薬を点滴で体内に入れると聴力が改善することが分かっています。

 そのため、確定診断の一つとして「グリセロールテスト」と称し、グリセロールを内服した後で、聴力の改善が見られるかどうかを試験することがあります。

〔メニエール病の平衡機能検査〕

 平衡機能検査は、身体のバランス状態を調べる検査で、体のふらつきを見る多くの検査方法と眼の動きを見る眼振検査(目振検査)とがあります。

平衡機能検査
遮眼書字検査

 遮眼書字検査は、眼を閉じた状態で、真っすぐ縦に5文字くらいの文字を書き下ろします。たとえば、自分の「姓名」や「ABCDE」や「アイウエオ」などを書く「文字書き検査」です。

 この検査は、眼を閉じて文字を書いたとき左右に文字が傾くかどうかを調べる検査です。

 何度か繰り返して行い、だんだんどちらかに偏ってくると、そちら側に偏倚(へんい)があるということになりメニエールの疑いが出てきます。

 また、文字に震えが出るなら、脳幹障害が、文字に乱れが出るなら小脳障害がある可能性があります。

立ち直り検査

 目を開けた状態と閉じた状態で、両足での直立検査(両足直立検査)、片足での直立検査(単脚直立検査)、マン検査を行います。

 マン検査というのは、一方の足のつま先の前にもう一方の足の踵(かかと)を出し、二つの足の踵とつま先をくっつけて立った状態で行う検査です。

 これらの検査は、目を開けた状態と閉じた状態で行います。

 もしも、脳に異常がある場合には、開眼状態でも閉眼状態でもふらつきが現れますが、内耳が悪いと、閉眼状態でのふらつきが大きくなります。

偏倚検査

 眼を閉じて、その場で50~100歩の足踏みをします。どちらかに大きく回転するなら、その方向に偏っていく傾向があることになります。

 片側の内耳に障害がある場合には、悪い側の耳の方角にだんだん曲がってゆきます。脳幹に障害があってもどちらかの方角に回転してゆきます。

 両側の内耳に障害があるか、小脳障害があると、後ろ側に倒れたり、歩幅が広くなったりして足踏みがスムーズにできなくなります。

重心動揺検査

 体重計のような装置の上にのり、30秒~60秒間、だまって装置の上に立っているだけの検査です。眼を開けた状態と眼を閉じた状態で検査します。

 この装置では、身体の揺れを自動的に記録します。重心のふらつきを正確に測定することができ、ふらつきの度合いを客観的な数値として知ることができます。

注視眼振検査

 眼の前に注視するものを置き、頭を動かさずに視線を上下左右に移動し、そのときに「眼振」現象が起こるかどうか調べます。

 眼振というのは、眼球が一方に片寄った後で中央に戻る動き、眼の揺れをいい、これによりめまいの起こり易さを診断することができます。

 平衡器官に異常があると、規則的な眼振現象が起こります。

 内耳が悪いときは、視線を上下左右のどちらを向けても、眼振の方向は右向きか左向きのどちらかに一方に一定して起こります。

 脳幹や小脳に障害があるときは、視線の方向によって、眼振の方向や種類が変わってきます。

頭位眼振検査

 フレンツェル眼鏡という特殊なメガネを装着して、頭を動かしたときの眼振の様子を調べます。

 フレンツェル眼鏡というのは、内部に小さな電球がついた凸レンズのメガネです。このメガネを装着すると、患者からは何も見えないのですが、医師からは患者の目の動きがよく分かるようになっています。

 患者はベッドの上に寝た状態となり、頭を左右に傾けたり、頭を下げたりします。このとき、眼振が出るかどうか観察します。

 内耳が悪いと、眼振の方向は一定していますが、脳幹や小脳に障害があると、様々なタイプの眼振が出現します。

頭位変換眼振検査

 フレンツェル眼鏡を装着した状態で、頭を前後左右に急激に動かし、眼振の状況を観察します。

 良性発作性頭位めまい症では、特定方向に頭を動かしたとき、眼がクルクル回るような眼振が出現します。

回転眼振検査

 頭を回すと、その回転速度(角加速度)によって、三半規管が刺激されて眼振が出現します。

 回転眼振検査というのは、回転の角加速度と眼振の関係を調べるもので、前庭系のアンバランスがないかどうかを調べる検査です。

 内耳や脳幹、小脳などの病気の鑑別し使用できますが、大掛かりな装置が必要であり一般的な検査ではありません。

温度眼振検査

 ベッドに横になり、片耳に水を入れるか、温風を当てます。前庭機能が正常だと2~3分間だけ眼振が現れ回転性のめまいが起こります。

 しかし、メニエール病が進行すると、温度眼鏡反応は低下し、めまいは軽度かまったく起きてきません。


〔メニエール病の内リンパ水腫検査〕

 内リンパ水腫の検査には「蝸電図の検査」および「グリセロールテスト」とがあります。

 蝸電図の検査は、耳に電極を装着して音に対する内耳の電気反応を見ます。メニエール病では特有の反応波形が見られます。

 グリセロール検査は、内リンパ液を抜き出す効果のあるグリセリンなどを服用し、薬の服用前後での聴力検査で、改善があるかどうか調べます。

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治療はどうやりますか?
〔メニエール病の治療方針〕

 メニエール病の治療法のメインは「薬物療法」です。薬物療法で思わしくない場合には「手術療法」もありますが一般的ではありません。

〔メニエール病の薬物療法〕

 メニエール病の直接原因である内リンパ水腫に対しては、水ぶくれを軽減するために、利尿剤系の医薬を用います。

 その他にも、抗めまい薬、抗ヒスタミン剤、精神安定剤、ビタミン剤などが使われます。

メニエール病の薬物療法
利尿剤

 内リンパ水腫に対して、水ぶくれ解消用として利尿剤系医薬が用いられます。特に、イソソルビドが広く使われています。

抗めまい剤

 抗めまい薬はめまいの症状を軽くします。

抗ヒスタミン剤



精神安定剤



ステロイド剤

抗炎症作用を目的として使用されます。

末梢循環改善剤

 内耳の神経細胞や内耳神経の活動を改善するもので、血流を改善するための薬です。

ビタミン剤

 ビタミン剤は、内耳の神経細胞や内耳神経の活性化を助ける効果があります。


〔メニエール病の手術療法〕

 メニエール病は、厚生労働省により難病に指定されている病気で、完治は困難な病気です。

 医薬療法で、めまい発作の頻度を減らしたり、症状を軽くすることはできますが、難聴の進行は止められないことが起こります。

 次に示すような場合には「内リンパ圧降下手術」あるいは「内リンパ嚢開放術」という手術を行うことがあります。

1

・薬物療法で、めまいが止まらない場合。

2

・めまいの回数が酷く、まともに仕事ができないような場合。

3

・難聴の進行が急激な場合。

4

・社会生活に支障をきたすような場合。


〔メニエール病の生活改善〕

 メニエール病に罹ってしまったときの日常生活の心構えとして、次のような点に注意しましょう。

1

・ストレスを溜めないように、心身のリフレッシュに努める。

2

・規則正しい生活を送る。

3

・十分な睡眠をとるようにする。

4

・忙しいときには、その前後でしっかりと休養をとる。

5

・ゆとりある日常生活に気を配る。

6

・趣味やスポーツなど気晴らしを楽しむ。



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