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〔突発性難聴〕


概要病気症状原因診断
治療予後合併症情報書籍
 

この疾患の概要です

 〔突発性難聴〕は、特別な原因も予兆もなく、ある朝目を覚ましたら突然耳が聞こえない、あるいは聞こえにくくなるような病気です。

 ほとんどの場合、片方の耳だけに突発的に難聴が起こります。

 難聴の程度は、耳が詰まった程度の軽いものから、耳鳴りがしたり、音がまったく聞こえなくなるような重症なものまでさまざまです。



 半数程度の場合に、めまいの症状が起こり吐き気や嘔吐を伴います。

 めまいの症状は、多くの場合に2~3日ほどで消えますが、難聴と耳鳴りはそのまま続きます。

 〔突発性難聴〕の軽度のものは自然に治ることもありますが、そうでない場合も多々あります。

 発病後

 即日、あるいは遅くとも数日以内に治療すれば

 ほぼ完治することが多いです。

 しかし、1か月も放置すると、改善はとても困難で、絶望的となります。


 〔突発性難聴〕は、一刻も早く治療することが肝心で、治療を開始せずぐずぐずしていると、病状が固定化し治療しても回復不可能となってしまいます。

 この病気は厚生労働省の「特定疾患」のひとつに指定されていて、全国での患者数は毎年、人口10万人あたり30人程度です。

 発症率は年齢的には50~60歳代が多いもののどの年代でも発症します。また、性別によりあまり違いはありません。

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どんな病気ですか?
〔突発性難聴という病気〕

 突発性難聴の特徴は、ある日突然、特別な原因も予兆もなく突発的に難聴の症状が発生することです。

 通常は片側の耳だけに難聴が発生します。発症以前に何らかの耳の病気を経験したことのないごく普通な健康な人に突然起こります。

 難聴の程度は、ちょっと耳詰まりが起こったような非常に軽度なものから、片方の耳だけまったく聞こえなくなるような重度なものまで様々です。

 通常は、難聴に伴って耳鳴りやめまい(眩暈)が発症します。めまいは2~3日くらいで自然によくなりますが、耳鳴りは消えないことが多いです。

 軽度の突発性難聴の場合には、自然に治ることもあるとされますが、多くの場合、治療せずに放置すると症状がそのまま固定してしまい、治療不可能になってしまうことがあります。

 特に、ひと月以上も治療を開始しなければ、もはや回復は望めません。突発性難聴では、症状の軽重にかかわらず、早期の治療開始が欠かせません。

 突発性難聴は、確たる発症原因が不明であり、治療法も定まっていない難病です。

 突発性難聴は、厚生労働省の特定疾患のひとつで難病に指定されています。発症年齢は50~60歳代が多いものの、どの年齢層にも発症します。

 発症率に男女差はありません。厚生労働省の2001年度での調査では、全国での受療者数は35000人であり、人口100万人当たりで275人だったとされています。

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どんな症状ですか?
〔突発性難聴の症状〕

 突発性難聴の主症状は、突然に片方の耳だけが聞こえなくなる、あるいは聞き難くなることです。

 また、副症状として、耳鳴りや耳の閉塞感(閉耳感、耳が詰まった感じ)、めまい、吐き気、嘔吐などを生じます。

 この病気の経験者の話によると、難聴が発症して専門医を訪問し待合室で待っている間に、最初は聞こえていた会話がどんどん聞こえなくなり、自分の診察の順番が回ってきたときにはほとんど会話が聞き取れず、手招き会話で診察室に呼び込まれたということです。

 この病気の進行はこれくらい速いということを理解しておかなくてはなりません。

 発症が突発的なので、いつ、どのような状況下で起こったかを鮮明に覚えているのが普通です。逆にいえば、いつから難聴になったか分からない、とか徐々に聞こえなくなったという難聴は、突発性難聴とは別物です。

〔突発性難聴の主症状〕

 突発性難聴の主症状の現れ方の特徴は、「突然の難聴発生」「高度な感音難聴」および「原因不明」の三つです。

難聴の主症状
突然の難聴発生

 難聴は徐々に起こるのではなく、何かの作業中や就寝中に突然おこります。主症状は、突然の難聴で軽度~中等度~重度の難聴があります。

 難聴発生時に自分が何をしていたかはっきりと覚えています。何かの作業をしている途中で突然、音が聞こえなくなった、あるいは朝起床したら片耳だけ音が聞こえなくなっていたなどです。

高度な感音障害

 感音障害というのは、簡単に言えば音などが聞こえ難くなる症状のことをいいますが、聞こえ難くなる音の周波数は、低音部が聞こえにくかったり、高音部が聞こえにくかったり、あるいはどの周波数域の音も聞こえないなどいろいろです。

原因不明

 この病気の患者は、過去に特別な耳の病気などを経験していない健康な人に発症しますが、発症時には耳の閉塞感や耳に水が入ったような感覚だけを感じることもあり、難聴に気づかないこともあります。(この場合は、治療開始が遅れる原因となり危険です。)


〔突発性難聴の副症状〕

 突発性難聴の主な副症状・随伴性症状としては「耳鳴り」「めまい」および「吐き気・嘔吐」などがあります。

難聴の副症状
耳鳴り

 難聴の発生の前後、あるいは発生と同時に耳鳴りが発症することが多いです。

 耳鳴りの症状ばかりでなく、「音が異常に響く」「音が割れる」「音が割れて聞こえる」および「音程が狂って聞こえる」などの症状を伴うこともあります。

 これらの症状はほとんどの場合、片側の耳だけに生じますが、数日程度の間をおいて反対側の耳にも現れることがあります。

めまい

 約半数の患者では難聴の発症の同時に、あるいは前後してめまいが起こります。

 めまいは数日すると治まり繰り返し現れることはありません。また、めまいが生じても、四肢の麻痺や意識障害などの他の神経症状が現れることはありません。

吐き気・嘔吐

 難聴の発症と同時、あるいは発症に前後して吐き気や嘔吐の症状がでることがあります。


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原因は何ですか?
〔突発性難聴の原因〕

 突発性難聴の発生原因は、現在のところよく分かっていません。

 脳内の「めまいと聞こえの神経」である第8脳神経に限局して発症していることから、有力なものとして、「内耳循環障害」や「ウイルス感染説」などの説があります。

 さらに、ストレスや生活習慣が何らかの原因になっているかも知れないとの説もあります。

突発性難聴の発生原因説
内耳循環障害

 内耳血管の痙攣や塞栓、血栓、出血などの理由で毛細血管への血流が抑制され、内耳に十分な血液が供給されないために、突発的に機能不全を起こし難聴となるとするのが、内耳循環障害説です。

 この病気の治療において、「血管拡張剤」や「血液抗凝固剤」などの薬剤が、しばしば有効であることがこの説の根拠を示唆しています。

 しかし、この説では、突発性難聴はほとんど再発しないとする点についての説明は困難とされています。

ウイルス感染説

 突発性難聴の発症前に風邪などの症状を経験している場合が少なくないことや、突発性難聴は一度しか罹らず再発しないということなどから、ウイルスが原因ではないかというのが「ウイルス感染説」です。

 はしかやおたふく風邪などのウイルス疾患が突発的な難聴を引き起こすことがあることが、この説の裏づけ根拠ともなっています。

 また、ウイルス感染症などに対し抗炎症作用を有する、ステロイド薬が突発性難聴の治療薬として効果を示すことからもウイルス感染説が示唆されます。

ストレス原因説

 根拠は明確ではないのですが、この病気では遺伝的要素はなく、耳以外の神経症状がみられないことから、ストレスや疲労などが関与しているのではないかとの説もあります。  真偽のほどはよく分かっていません。

生活習慣原因説

 以前に、おたふくかぜ、はしか、みずぼうそう、じんま疹、胃腸炎、感冒、高血圧、糖尿病、心疾患などの病気を患ったことのある人に多く発症しているとの説もあり、生活習慣病と何らかの関係があるかも知れません。

 また、突発性難聴の患者では、野菜の摂取量が少ない傾向があるとのことです。


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診断はどうやりますか?
〔突発性難聴の診断〕

 厚生労働省研究班では突発性難聴の診断基準として、主症状、副症状の全部の事項を満たすものを「確実例」、主症状の「突然の難聴」と「高度な感音難聴」を満たすものを「疑い例」と定めています。

突発性難聴の診断基準
主症状

・突然の難聴:難聴発症時に何をしていたか明言できる。
・高度な感音難聴
・原因不明または不確実

副症状

・耳鳴り
・めまい
・吐き気や嘔吐


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治療はどうやりますか?
〔突発性難聴の治療方針〕

 突発性難聴は、進行速度がとても速いので、発症したら、即日、あるいは数日以内に治療を開始しないと、その後の治療は極めて困難となります。

 ぐずぐずしていて、二週間以上、特にひと月も放置すれば、難聴などの症状が固定化してしまい、最早治療効果は期待できなくなります。

 どんなに遅くても、発症後2週間が症状の回復を期待できる限度です。

 そのため、基本的な治療方針は、発症したら即日、耳鼻咽喉科の専門医の診断を受けることです。

 一般医や小病院・小児科医などでは専門知識が不足していたり、検査設備が不足していることが多いので、治療開始が手遅れにならないためには、耳鼻咽喉科の専門医による診断は不可欠です。

 発症直後に大切なことは、発症したら先ず、安静にストレスを解消することです。

 安静にするだけでも内耳循環障害の改善や進行を遅らせる効果が期待できます。

 その上で、治療の基本は、主な原因説である「内耳循環障害説」や「ウイルス感染説」に対応した「薬物療法」を行います。また、生活習慣の見直しなども必要です。

 症状が軽度であれば、薬物による自宅療法が可能ですが、難聴の程度によっては入院加療が望ましいとされます。

 なお、治療として聴力回復を目的としての外科的手術は行ってもまったく効果が期待できないので、外科的治療は行われません。

〔内耳循環障害改善の薬物療法〕

 内耳循環障害の改善を目的とするいくつかの「薬物療法」の他に、「高気圧酸素療法」「星状神経節ブロック注射」などの療法もあります。

内耳循環障害改善
血管拡張剤

抗凝固剤・血流改善剤

 アデホスコーワ等

代謝促進剤

 メチコバール等

利尿剤

 イソバイド、メニレット等。内リンパ水腫改善。

向神経ビタミン製剤

二酸化炭素による血管拡張

 95%酸素・5%二酸化炭素混合ガス吸入による二酸化炭素による血管拡張を期待。

高気圧酸素療法

 高気圧酸素による血液内酸素濃度の上昇を期待。

星状神経節ブロック注射


〔ウイルス感染対応の薬物療法〕

 ウイルス性内耳障害改善を目的として用いる薬物は、ステロイド剤(副腎皮質ホルモン剤)です。ステロイド剤の抗炎症作用により、ウイルス性内耳障害の改善が期待できます。

 ステロイド剤は、点滴や内服により投与されます。耳鳴り治療法のステロイド鼓膜内注射を行うこともあります。

 ステロイド剤による治療法は、ステロイド剤とビタミン剤を内服し、聴力の改善状況を検査しながら、徐々にステロイド剤を減量する方法です。

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予後はどうですか?
〔突発性難聴の予後〕

 突発性難聴は、発症直後に適切な治療を行えば、少なくとも日常生活に支障をきたさない程度の改善は期待できますが、完治はとても困難で何らかの後遺症が残る場合が多くなります。

予後の例
完治

 患者の三分の一程度。この場合でも、聴力が回復するまでには、ひと月ほどはかかります。

難聴・耳鳴りの後遺症

 患者の三分の一は症状の改善は見られるが、難聴や耳鳴りの後遺症が残ります。難聴は日常生活に支障ない程度にまで改善しても、耳鳴りは半永久的に残る場合が非常に多いです。

改善困難

 患者の残り三分の一は、改善を期待できません。特に、高音部の難聴は改善が困難です。

 治療開始が発症後2週間以上の場合や、発症時の平均聴力レベルが非常に悪く90dB以上の高度難聴の場合、回転性のめまいを伴う場合、および高齢者での場合には、一般に予後は不良です。

 通常、突発性難聴は再発しないので、もしも再発する場合には、何か他の疾患があるかも知れません。メニエール病や外リンパ瘻、あるいは聴神経腫瘍などの可能性があります。

〔生活習慣の見直し〕

 突発性難聴の日常生活面での関与因子として、肉体的疲労や精神的ストレスなどがあるとされています。安静を保ち、ストレスを受けないような日常生活に心がけることが必要です。


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