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〔花粉症〕 |
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〔花粉症〕は、杉花粉などのアレルゲンとなる物質が、目や喉、口、鼻の粘膜から体内に侵入し、これらの異物を排除しようとして免疫システムが過剰に働く結果、引き起こすアレルギー反応です。
・くしゃみ |
〔花粉症〕の典型的症状である鼻水やくしゃみ、鼻づまりなどの症状は〔アレルギー性鼻炎〕の症状であり、スギ花粉などの飛散時期に一致して現れることから〔季節性アレルギー性鼻炎〕とも呼ばれます。 〔花粉症〕の原因物質は、スギ花粉が大部分であるため、通常、〔花粉症〕といえば、〔スギ花粉症〕を意味しています。 また、〔花粉症〕は、まれに〔枯草熱〕とか〔枯草熱〕とも呼ばれています。 |
花粉に敏感な人では、スギ花粉だけでなく、檜や白樺などの樹木の他、イネ科の植物、菊科の植物、桑科の植物など、多くの花粉類がアレルギー反応を引き起こす可能性があります。 |
次のような 3大主症状 を特徴とする病気を総称して〔鼻過敏症〕と呼びます。
・くしゃみ
基本的に〔鼻過敏症〕はアレルギー性の病気であり、この内でアレルギー反応を引き起こすアレルゲン(抗原:原因物質)がはっきりしているものは〔アレルギー性鼻炎〕と呼ばれています。 |
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〔花粉症〕の原因となる花粉の中で、最も深刻な影響を及ぼすのは「スギ花粉」です。 戦後、スギの木の植林が盛んに行われ、全国いたるところに大量のスギの木やスギ林が存在することが原因となっています。
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花粉の飛散時期は、樹木や草花、雑草の種類により異なります。また、日本列島が南北に伸びているために、場所による差異もあります。 左の図に示したのは、東京周辺部での飛散時期を表しています。 九州方面ではこれより1か月ほど早く飛散が始まります。また、北海道では、図に示したタイミングより1か月ほど遅くなります。 |
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〔花粉症〕の原因で最も影響の大きいのは杉花粉ですが、スギ花粉は発生地点から数十キロ位の範囲まで拡散するといわれています。 前年夏の雄花の芽ができる時期に、日照時間が長く高温で、しかも少雨のとき、翌年のスギ花粉量は多くなります。 また、暖冬の年には飛散時期は早まります。 一般に、花粉が飛散しやすい気象環境は、次のようなときとなります。
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〔花粉症〕では、発作性のくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目の痒み、涙目などの一連の症状が発症しますが、抗原物質が植物の花粉であり、花粉の飛散時期に集中して発症するのが特徴です。 花粉症特有な症状である「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」および「目のかゆみ」を花粉症の4大症状と呼ぶことがあります。 花粉の飛散が始まる時期には、主に「くしゃみ」「鼻水」「目のかゆみ」の症状が現れるようになり、花粉の飛散がピークを過ぎる頃からは、「鼻づまり」の症状が加わるようになることが多くなります。 〔花粉症〕の症状は、花粉に接触した後、早ければ数分後、遅くても数時間以内には、現れてきます。 花粉症の現れ方に二つのパターンがある理由は、花粉症がアレルギー反応によるものであり、アレルギー反応には、「即時型アレルギー」と「遅発型アレルギー」とがあるからです。 花粉症では、4大症状の他にも、鼻や目だけに限らず、身体の各部位に数多くの症状がみられます。 症状の出方やその強度には人による差異がありますが、多かれ少なかれ、概ね次のような症状が現れてきます。
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花粉症も一種のアレルギー反応ですので、すべてのアレルギー反応に共通する二つの重要な現象が起こります。 ひとつ目は、「感作」といって、アレルギーの原因となるアレルゲン(抗原物質)が体内に最初に侵入してきたとき、将来、再び同じ物質が侵入してきたときに直ちに撃退しようとして身体の免疫機構が準備する段階です。 二つ目は、「抗原抗体反応」といって、二回目以降に同一のアレルゲンが侵入してきたら、これを撃退しようとして免疫機構が直ちに反応する段階です。 〔花粉症〕では、この抗原抗体反応が過剰に反応してしまい自分自身を攻撃してしまいます。 このように、〔花粉症〕の発症メカニズムは、簡単には人体が持つ免疫機能が過敏に反応するアレルギー反応によって起こります。 〔花粉症〕は、杉や桧などの樹木や、カモガヤなどの稲科植物、ブタクサなどの菊科植物などから飛散する花粉類がアレルゲン(抗原)となって起こる、アレルギー反応が原因となって発症するのです。 |
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空気中を飛散してくる各種植物の花粉が、呼吸などにより、<一回目>に吸入され、目や鼻などの粘膜に付着すると、花粉からアレルゲン(抗原)となるたんぱく質が溶け出します。 すると、人体の免疫作用に大きく関わる貪食細胞(マクロファージ)が、このたんぱく質を取り込み、この物質が異物(非自己:外敵)であると認識します。 続いて、この情報は「ヘルパーT細胞」の表面にある受容体に認識されます。 ヘルパーT細胞はサイトカインという物質を放出して、外敵である異物の侵入を「B細胞」に伝達します。 すると、B細胞は、この異物(抗原)に対応した「IgE抗体」を生成し、これが「肥満細胞」と結合して、「感作状態」が成立します。 こうして、本来の免疫機能である、外敵を迎え撃つ準備が整うのです。 |
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感作が成立している状態で、同じ異物(非自己:抗原)である花粉が、二度目以降に目や鼻の粘膜に接触すると、抗原と感作済みの肥満細胞とが結合し、肥満細胞が活性化されて、抗原を撃退するための戦いである「抗原抗体反応」が起こります。 この戦いで外敵である抗原が撃退されてしまえば、「免疫」が作用して生体防御機構が勝利したことになり、健康状態には何事も起こりません。 しかし、この戦いが簡単に決着しないで長引くときには、過剰な抗原抗体反応が起こり、肥満細胞が活性化します。 活性化された肥満細胞からは、多数のヒスタミンやセロトニン、ブラジキニンなどの化学伝達物質が放出されます。 これらの化学伝達物質には、強い活性があり、平滑筋の収縮や粘膜のむくみを起こしたり、粘液の増加により血管拡張を引き起こすなどして、さまざまな作用をもたらします。 花粉は本来的には、人間に有害な物質などではないのですが、人体に備わった免疫機能が過敏に反応する、いわゆる「アレルギー体質」の人にとっては、花粉を「非自己」と認識してしまう勘違いから起こるアレルギー反応です。 結果的に、自己防衛のために、くしゃみや鼻水、涙などにより花粉を体外に排出しようとするのです。 これらの花粉症を招くアレルギー反応は、即時型の「I型アレルギー」の代表ともいえるものです。 アレルギー反応のメカニズムなどの詳細は、「アレルギーと免疫」のページで説明していますので、必要に応じてそちらも参照してください。 |
くしゃみや鼻水、目のかゆみなどの特有な症状により、〔花粉症〕の疑いがある場合の花粉症の検査は、その症状が「アレルギー反応であることの証明」と「原因となっているアレルゲンの特定」という二つの段階を経て行われます。 その上で、「症状の重症度」を判定して治療が開始されます。 |
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〔花粉症〕になると、「くしゃみ」「鼻水」「目のかゆみ」などの特有な症状が現れます。 しかし、このような症状が出るのは、〔花粉症〕には限らず風邪や他のアレルギーなど別の病気によることもあるので、これらとの鑑別が必要です。 〔花粉症〕の検査は、次のような方法で行われます。
・問診
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花粉によるアレルギー症状が証明され〔花粉症〕と診断されると、次に何の花粉がアレルゲン(抗原)となっているか、確認するための検査が必要です。 アレルゲンである花粉の種類が特定されたからといって、〔花粉症〕の治療法が特別変わることはないものの、患者がどの花粉に敏感かを知っておくことは、日常生活上の対策ができる点で重要です。 尚、アレルゲンの特定などの詳細については「アレルギーの検査」のページで説明していますので、必要に応じてそちらも参照してください。
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鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会による「鼻アレルギー診療ガイドライン」によると、アレルギー性鼻炎症状の重症度は、「くしゃみ、または鼻漏」と「鼻閉」の両者で設定されています。 (通常「鼻漏」や「鼻閉」とは言わないので、以下の表では「鼻水」や「鼻づまり」と表示します。)
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〔花粉症〕は、アレルギー病のひとつなので、一般のアレルギー病に対する治療法が適用されます。 〔花粉症〕に特有な「くしゃみ」「鼻水」「目のかゆみ」などの症状を抑える目的の治療法は「対症療法」であり、現時点では、〔花粉症〕の治療といえば、これらの症状を抑制する対症療法が主体です。 〔花粉症〕そのものの治癒を目指すものを「根治療法」と呼びますが、完全な根治療法と呼べるものは存在していません。 |
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〔花粉症〕の症状を抑制する基本的な療法は、「点眼薬」「点鼻薬」の他、次のような医薬などによる「医薬療法」となります。
・抗アレルギー薬
これらの方法は、あくまでも「くしゃみ」や「鼻水」「目のかゆみ」などの症状を抑制する対症療法です。 |
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化学伝達物質遊離抑制薬とは、化学伝達物質(ケミカルメディエーター)の遊離を抑える薬です。 アレルギー反応による粘膜型肥満細胞からの化学伝達物質の遊離を抑制する作用も、炎症を抑制する作用も弱い医薬ですが、継続することで効果がでてきます。 この医薬は、効果が現れるまでに1~2週間の服用が必要なので、他の薬でとりあえず急性発作を鎮めた後、その状態を維持するために用いられることが多くなっています。 |
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受容体拮抗薬とは、遊離された化学伝達物質(ケミカルメディエーター)が作用しにくくする医薬で、いくつかの種類があります。
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II型ヘルパーT細胞からサイトカインが放出されるのを阻害する医薬で、各種サイトカインの放出を抑制する効果が期待されていますが、その効果があるかどうか明確ではありません。 |
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〔花粉症〕の治療に用いられるステロイド薬は、局所用の「鼻スプレー」と「内服用」とに分類されます。 鼻スプレー用のステロイド薬は、微量でも局所的効果が強く、ほとんど吸収もされないので、1年間程度の長期間使用しても全身的な副作用は出にくいです。効果は1日程度で現れます。 内服用のステロイド薬は、花粉症の症状が重症・最重症・難治症などの特別な場合に限ってのみ使用されることがあります。しかし、副作用が非常に強いために、この治療法は好ましいものではありません。 |
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自律神経作用薬の中で「α交感神経刺激薬」は、うっ血に有効であり、鼻粘膜腫脹が強く鼻づまりがある場合に短期間使用されることがあります。 |
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抗コリン薬は、即効性で鼻水に効果がありますが、くしゃみや鼻づまりには効果はありません。抗コリン薬には全身的な副作用があるので、使用する場合は「点鼻薬」として使われます。 |
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対症療法として用いる医薬の中で、「軽症」「中等症」および「重症」の各症状程度に応じた医薬選定の一例を示します。 各医薬は同時に二つ以上用いず、表の中の「〇番号」のどれか一つを用いますが、症状によりステロイド薬などを併用します。
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アレルギーは一種の体質に由来する病気なので、体質改善のための治療として、「減感作療法」を行うことがあります。 この治療法は、ごく微量のアレルゲン物質を注射するなどで体内に入れ、そのアレルゲン物質に身体を慣れさせる(馴染ませる)方法です。 わざわざアレルギーを起こす物質を体内に導入するわけで、危険な面もありますが、非常に低い濃度のアレルゲンエキスを用いて、長期にわたり治療すれば、効果が期待できます。 現状、確実な根治療法が存在しない中で、減感作療法が唯一、根治療法に近い治療法といえます。 減感作療法の詳細については、「アレルギーの治療」のページで説明していますので、必要に応じてそちらも参照してください。 |
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最近では花粉が飛散するタイミングは予測が出されるので、主にスギ花粉シーズン到来の前に、予防的治療として薬の服用を始めると効果があります。 これを「季節前投与」と呼んでいます。 投与する薬の効果が出るまでには、ある程度の時間が必要なので、通常は花粉飛散シーズン開始の2週間くらい前に薬の内服などを開始すると効果的です。 症状がひどくなってからの〔花粉症〕の治療は困難でもあり苦痛も大きくなる傾向があるので、この予防的治療は、症状が出にくくしたり、発症したとしても炎症を軽く済ませるためにとても有効な方法です。 花粉飛散シーズン到来前か、遅くても症状ができるだけ軽いうちに受診し、治療を開始することがおすすめです。 |
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〔花粉症〕への対処は、医療機関での治療も重要ですが、患者自身の生活改善によっても、発症を回避したり、発症を遅らせたり、症状を軽く抑えることができます。 患者自身による生活改善的な手法は「セルフケア」と呼ばれています。 セルフケアでの花粉症対策の主な方法は、原因となる花粉との接触の回避と、身辺にある花粉の除去ということになります。 絶対的な決め手となる方法ではありませんが、下記のような点に気を配った生活に心がけましょう。
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