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体の病気

 

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〔身体の病気〕

◇アレルギーの病気◇

花粉症


 花粉症 は、杉花粉などのアレルゲンとなる物質が、目や喉、口、鼻の粘膜から体内に侵入し、これらの異物を排除しようとして免疫システムが過剰に働く結果、引き起こすアレルギー反応です。

 異物を排除しようとする過剰なアレルギー反応の結果、激しい鼻水、くしゃみ、目のかゆみなどの症状を引き起こします。


 花粉症の典型的症状である鼻水やくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状は、アレルギー性鼻炎の症状であり、スギ花粉などの飛散時期に一致して現れることから、季節性アレルギー性鼻炎とも呼ばれます。

 花粉症の原因物質は、スギ花粉が大部分であるため、通常、花粉症といえば、スギ花粉症を意味しています。また、花粉症は、まれに枯草熱とか枯草熱とも呼ばれています。

 花粉に敏感な人では、スギ花粉だけでなく、檜や白樺などの樹木の他、イネ科の植物、菊科の植物、桑科の植物など、多くの花粉類がアレルギー反応を引き起こす可能性があります。とはいっても、スギ以外の花粉には何事も起こらない人もいるので、個人差があります。


花粉症はどんな病気ですか? ◆「花粉症」とは、一体どんな病気なのかの説明です。
花粉症は
どんな病気ですか?

 次の 3大主症状を特徴とする病気を総称して、鼻過敏症と呼びます。

 ・くしゃみ
 ・鼻みず
 ・鼻づまり

 基本的に鼻過敏症は、アレルギー性の病気であり、この内でアレルギー反応を引き起こすアレルゲン(抗原:原因物質)がはっきりしているものは、アレルギー性鼻炎と呼ばれています。また、抗原がはっきりしないものは、血管(神経)性鼻炎と呼ばれています。

 アレルギー性鼻炎には、季節にかかわりなく発症する、通年性アレルギー性鼻炎と、特定の季節に集中的に発症する、季節性アレルギー性鼻炎とがあります。

 年間を通して発症する、通年性アレルギー性鼻炎の主な抗原(原因物質)は、家庭内のチリやホコリ、ダニなどのハウスダストなどです。

 これに対して、はっきりとした季節性をもって発症する、季節性アレルギー性鼻炎の主な抗原は、樹木や草花、雑草などの植物の花粉です。日本列島は南北に長いために花粉症の原因となる植物も多種多様であり、80種類ほどが知られています。このように花粉類が原因抗原となって起こる、季節性アレルギー性鼻炎を主体とした症状が花粉症です。この病気は枯草病と呼ばれることもあります。

花粉症の抗原となる植物

 花粉症の原因となる花粉の中で、最も深刻な影響を及ぼすのは「スギ花粉」です。戦後、スギの木の植林が盛んに行われ、全国いたるところに大量のスギの木やスギ林が存在することが原因となっています。

花粉症の抗原となる植物
樹木 スギ科 ・スギ
ヒノキ科 ・ヒノキ
カバノキ科 ・ハンノキ・シラカバ
草花 イネ科 ・スズメノテッポウ・カモガヤ
・オオアワガエリ・ナガハグサ
・ハルガヤ・ホソムギ
・スズメノカタビラ
雑草 キク科 ・ブタクサ・クワモドキ
・ヨモギ・セイタカアワダチソウ
クワ科 ・カナムグラ

植物による花粉の飛散時期 花粉の飛散時期

 花粉の飛散時期は、樹木や草花、雑草の種類により異なります。また、日本列島が南北に伸びているために、場所による差異もあります。

 左の図に示したのは、東京周辺部での飛散時期を表しています。


 九州方面ではこれより 1か月ほど早く飛散が始まります。また、北海道では、図に示したタイミングより 1か月ほど遅くなります。

花粉が飛散しやすい気象環境

 花粉症の原因で最も影響の大きいのは杉花粉ですが、スギ花粉は発生地点から数十キロ位の範囲まで拡散するといわれています。

 前年夏の雄花の芽ができる時期に、日照時間が長く高温で、しかも少雨のとき、翌年のスギ花粉量は多くなります。また、暖冬の年には飛散時期は早まります。

 一般に、花粉が飛散しやすい気象環境は、次のようなときとなります。

花粉が飛散しやすい気象環境
外気温

 最高気温が高い日。

湿度

 湿度が低く、乾燥した日。

天気

 晴天でしかも風の強い日、雨上がりの翌日の晴れた日。



花粉症はどんな症状ですか? ◆「花粉症」の症状の説明です。
花粉症の症状

 花粉症では、発作性のくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目の痒み、涙目などの一連の症状が発症しますが、抗原物質が植物の花粉であり、花粉の飛散時期に集中して発症するのが特徴です。花粉症特有な症状である「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」および「目のかゆみ」を花粉症の 4大症状と呼ぶことがあります。

 花粉の飛散が始まる時期には、主に「くしゃみ」「鼻水」「目のかゆみ」の症状が現れるようになり、花粉の飛散がピークを過ぎる頃からは、「鼻づまり」の症状が加わるようになることが多くなります。

 花粉症の症状は、花粉に接触した後、早ければ数分後、遅くても数時間以内には、現れてきます。花粉症の現れ方に二つのパターンがある理由は、花粉症がアレルギー反応によるものであり、アレルギー反応には、「即時型アレルギー」と「遅発型アレルギー」とがあるからです。

 花粉症では、4大症状の他にも、鼻や目だけに限らず、身体の各部位に数多くの症状がみられます。症状の出方やその強度には人による差異がありますが、多かれ少なかれ、概ね次のような症状が現れてきます。

花粉症の症状の出方
鼻の症状

・くしゃみ・鼻水・鼻づまり・鼻のかゆみ

目の症状

・目のかゆみ・目の充血・涙目・まぶたの腫れ

耳の症状

・耳のかゆみ

喉の症状

・のどのかゆみ・咳

皮膚症状

・肌荒れ

頭の症状

・微熱・頭痛・頭重感・不定愁訴(イライラ感)

全身症状

・嘔吐・便秘・下痢・胃腸の具合悪化
・身体のほてり・顔のほてり
・倦怠感・めまい・肩こり・意欲の低下



花粉症の原因は何ですか? ◆「花粉症」の原因や発症の仕組みの説明です。
花粉症の原因

 花粉症も一種のアレルギー反応ですので、すべてのアレルギー反応に共通する二つの重要な現象が起こります。

 ひとつ目は、「感作」といって、アレルギーの原因となるアレルゲン(抗原物質)が体内に最初に侵入してきたとき、将来、再び同じ物質が侵入してきたときに直ちに撃退しようとして身体の免疫機構が準備する段階です。

 二つ目は、「抗原抗体反応」といって、二回目以降に同一のアレルゲンが侵入してきたら、これを撃退しようとして免疫機構が直ちに反応する段階です。

 花粉症では、この抗原抗体反応が過剰に反応してしまい自分自身を攻撃してしまいます。

 このように、花粉症の発症メカニズムは、簡単には人体が持つ免疫機能が過敏に反応するアレルギー反応によって起こります。花粉症は、杉や桧などの樹木や、カモガヤなどの稲科植物、ブタクサなどの菊科植物などから飛散する花粉類がアレルゲン(抗原)となって起こる、アレルギー反応が原因となって発症するのです。

感作成立

 空気中を飛散してくる各種植物の花粉が、呼吸などにより、<一回目>に吸入され、目や鼻などの粘膜に付着すると、花粉からアレルゲン(抗原)となるたんぱく質が溶け出します。

 すると、人体の免疫作用に大きく関わる貪食細胞(マクロファージ)が、このたんぱく質を取り込み、この物質が異物(非自己:外敵)であると認識します。

感作の成立

 続いて、この情報は「ヘルパーT細胞」の表面にある受容体に認識されます。

 ヘルパーT細胞はサイトカインという物質を放出して、外敵である異物の侵入を「B細胞」に伝達します。

 すると、B細胞は、この異物(抗原)に対応した「IgE抗体」を生成し、これが「肥満細胞」と結合して、「感作状態」が成立します。こうして、本来の免疫機能である、外敵を迎え撃つ準備が整うのです。

抗原抗体反応

 感作が成立している状態で、同じ異物(非自己:抗原)である花粉が、二度目以降に目や鼻の粘膜に接触すると、抗原と感作済みの肥満細胞とが結合し、肥満細胞が活性化されて、抗原を撃退するための戦いである「抗原抗体反応」が起こります。

抗原抗体反応

 この戦いで外敵である抗原が撃退されてしまえば、「免疫」が作用して生体防御機構が勝利したことになり、何事も起こりません。

 しかし、この戦いが簡単に決着しないで長引くときには、過剰な抗原抗体反応が起こり、肥満細胞が活性化します。

 活性化された肥満細胞からは、多数のヒスタミンやセロトニン、ブラジキニンなどの化学伝達物質が放出されます。これらの化学伝達物質には、強い活性があり、平滑筋の収縮や粘膜のむくみを起こしたり、粘液の増加により血管拡張を引き起こすなどして、さまざまな作用をもたらします。

 花粉は本来的には、人間に有害な物質などではないのですが、人体に備わった免疫機能が過敏に反応する、いわゆる「アレルギー体質」の人にとっては、花粉を「非自己」と認識してしまう勘違いから起こるアレルギー反応です。結果的に、自己防衛のために、くしゃみや鼻水、涙などにより花粉を体外に排出しようとするのです。

 これらの花粉症を招くアレルギー反応は、即時型の「I型アレルギー」の代表ともいえるものです。

 アレルギー反応のメカニズムなどの詳細は、「アレルギーと免疫」のページで説明していますので、必要に応じてそちらも参照してください。


花粉症の診断はどうなりますか? ◆「花粉症」の検査方法や診断方法の説明です。
花粉症の診断

 くしゃみや鼻水、目のかゆみなどの特有な症状により、花粉症の疑いがある場合の花粉症の検査は、その症状が「アレルギー反応であることの証明」と「原因となっているアレルゲンの特定」という二つの段階を経て行われます。その上で、「症状の重症度」を判定して治療が開始されます。

アレルギー反応の証明

 花粉症になると、「くしゃみ」「鼻水」「目のかゆみ」などの特有な症状が現れます。しかし、このような症状が出るのは、花粉症には限らず風邪や他のアレルギーなど別の病気によることもあるので、これらとの鑑別が必要です。

 花粉症の検査は、「問診」「鼻鏡検査」「鼻汁中好酸球検査」「皮膚反応テスト」「抗体検査RAST法」「鼻誘発テスト」などにより行います。

アレルギー反応の証明
問診

 問診では、似た症状を示す風邪などの病気もあるため、症状を詳しく聴取します。また、患者にアレルギーの既往症があるか、家族にアレルギーの人がいるかなど患者に「アレルギー素因」があるかなども調べます。

鼻鏡検査

 鼻鏡によって鼻内部の粘膜の様子を観察し、花粉症に典型的な炎症症状があるか確認します。花粉症特有な症状があって、しかも花粉の飛散する時期に一致しているなら、花粉症である可能性が非常に高くなります。

鼻汁中好酸球検査

 アレルギー症状が起こると、白血球の一種である「好酸球」が増加します。そこで、鼻汁を採取し、顕微鏡でこの「好酸球」の数を調べます。好酸球の増加が確認されれば、アレルギー症状が陽性であることが、ほぼ証明されます。

他の検査

 「副鼻腔炎」などの他の病気が疑われる場合には、エックス線検査などが行われることもあります。


アレルゲンの特定

 花粉によるアレルギー症状が証明され花粉症と診断されると、次に何の花粉がアレルゲン(抗原)となっているか、確認するための検査が必要です。

 アレルゲンである花粉の種類が特定されたからといって、花粉症の治療法が特別変わることはないものの、患者がどの花粉に敏感かを知っておくことは、日常生活上の対策ができる点で重要です。

 尚、アレルゲンの特定などの詳細については「アレルギーの検査」のページで説明していますので、必要に応じてそちらも参照してください。

アレルゲンの特定検査
皮膚反応テスト

 腕の皮膚に針で小さなスクラッチ(傷)をつけて、そこに少量の「花粉エキス」を垂らす「スクラッチテスト」や、直接皮内に注射する「皮内テスト」などで、皮膚反応を調べます。

 いろいろな種類の花粉エキスを試して、特に反応の強いものがあれば、その花粉がアレルゲンと確定されます。具体的には、テスト後 15~20分して、20mm 以上の赤い腫れが生じるなら、その花粉がアレルゲンと確定されます。

鼻誘発テスト

 特定の花粉エキスを浸み込ませて紙片を鼻の粘膜に接触させ、アレルギー反応が発症するか調べます。「くしゃみや鼻のかゆみ」「鼻水分泌」「鼻粘膜の蒼白浮腫」の 3つの症状のうち 2つ以上の症状がでれば、その花粉がアレルゲンと確定します。

血液検査

 血液を採取し、「血清抗体検査RAST法」による検査を行います。これにより血液中の「IgE抗体量」を測定します。血液中に「IgE抗体」が存在しているなら、アレルギー反応は陽性となります。

 それぞれの植物の花粉に対する「特異IgE抗体」を測定することで、どの花粉がアレルゲンとなっているか診断できます。

 この検査は、専門の検査機関で行うため、結果がでるまでに若干の日数と費用がかかります。


花粉症の重症度

 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会による「鼻アレルギー診療ガイドライン」によると、アレルギー性鼻炎症状の重症度は、「くしゃみ、または鼻漏」と「鼻閉」の両者で設定されています。(通常「鼻漏」や「鼻閉」とは言わないので、以下の表では「鼻水」や「鼻づまり」と表示します。)

アレルギー性鼻炎の重症度
程度 くしゃみ発作
(回/日)
鼻水
(回/日)
鼻づまり 日常生活支障度
++++ 21回以上 21回以上 1日中完全につまっている まったくできない
+++ 20~11回 20~11回 鼻づまりが非常に強く、口呼吸が 1日のうちかなりの時間あり 手につかないほど苦しい
++ 10~6回 10~6回 鼻づまりが強く、口呼吸が 1日のうちときどきあり +++と+の中間
5~1回 5~1回 口呼吸は全くないが鼻づまりあり あまり差し支えない
+未満 +未満 +未満 +未満


花粉症治療はどうやりますか? ◆「花粉症」の治療方法の説明です。
花粉症の治療方針

 花粉症は、アレルギー病のひとつなので、一般のアレルギー病に対する治療法が適用されます。

 花粉症に特有な「くしゃみ」「鼻水」「目のかゆみ」などの症状を抑える目的の治療法は「対症療法」であり、現時点では、花粉症の治療といえば、これらの症状を抑制する対症療法が主体です。

 花粉症そのものの治癒を目指すものを「根治療法」と呼びますが、完全な根治療法と呼べるものは存在していません。

対症療法

 花粉症の症状を抑制する基本的な療法は、「点眼薬」「点鼻薬」の他、「抗アレルギー薬」「抗ヒスタミン薬」「副腎皮質ステロイド薬」などによる「医薬療法」となります。

 これらの方法は、あくまでも「くしゃみ」や「鼻水」「目のかゆみ」などの症状を抑制する対症療法です。

 花粉症を含むアレルギー病の治療方法については、「アレルギーの治療」のページで説明していますので、必要に応じてそちらも参照してください。

 ここでは、薬品療法に使用される医薬についての説明です。

薬物療法に使用される医薬
化学伝達物質遊離抑制薬

 化学伝達物質遊離抑制薬とは、化学伝達物質(ケミカルメディエーター)の遊離を抑える薬です。

 アレルギー反応による粘膜型肥満細胞からの化学伝達物質の遊離を抑制する作用も、炎症を抑制する作用も弱い医薬ですが、継続することで効果がでてきます。

 この医薬は、効果が現れるまでに 1~2週間の服用が必要なので、他の薬でとりあえず急性発作を鎮めた後、その状態を維持するために用いられることが多くなっています。

受容体拮抗薬

 受容体拮抗薬とは、遊離された化学伝達物質(ケミカルメディエーター)が作用しにくくする医薬で、いくつかの種類があります。

受容体拮抗薬の種類
ヒスタミン拮抗薬
(抗ヒスタミン薬:
第1世代
第2世代)

・抗ヒスタミン薬には「第1世代」と「第2世代」とがあります。

・第1世代はくしゃみと鼻水に効果がありますが、鼻づまりへの効果は弱いために、主に軽症~中等症の花粉症の治療に用いられます。また、眠気、胃腸障害、口渇き、めまい、頭痛などの副作用があり、車の運転などには適しません。

・第2世代は、効き方が穏やかで、花粉症全般症状や鼻づまりに効果がありますが、効果を発揮するまでに2週間くらいかかります。継続すると症状の改善率が向上します。

トロンボキサンA2拮抗薬
(抗トロンボキサンA2薬)

 トロンボキサンA2の作用を抑制する医薬で、鼻づまりに対する効果は第1・第2ヒスタミン拮抗薬よりも大きく、くしゃみにも効果があります。しかし、効き目が現れるのは緩やかで、4~8週間くらいかかります。

ロイコトリエン拮抗薬
(抗ロイコトリエン薬)

 ロイコトリエンは鼻粘膜のむくみを促進する化学伝達物質ですが、抗ロイコトリエン薬は、そのその働きを抑制する薬で、鼻づまりを改善する効果の他、くしゃみや鼻水にも効果があります。服用を始めると 1週間くらいで効果が現れます。


II型ヘルパーT細胞サイトカイン阻害薬

 II型ヘルパーT細胞からサイトカインが放出されるのを阻害する医薬で、各種サイトカインの放出を抑制する効果が期待されていますが、その効果があるかどうか明確ではありません。

ステロイド薬

 花粉症の治療に用いられるステロイド薬は、局所用の「鼻スプレー」と「内服用」とに分類されます。

 鼻スプレー用のステロイド薬は、微量でも局所的効果が強く、ほとんど吸収もされないので、1年間程度の長期間使用しても全身的な副作用は出にくいです。効果は 1日程度で現れます。

 内服用のステロイド薬は、花粉症の症状が重症・最重症・難治症などの特別な場合に限ってのみ使用されることがあります。しかし、副作用が非常に強いために、この治療法は好ましいものではありません。

自律神経作用薬

 自律神経作用薬の中で「α交感神経刺激薬」は、うっ血に有効であり、鼻粘膜腫脹が強く鼻づまりがある場合に短期間使用されることがあります。

抗コリン薬

 抗コリン薬は、即効性で鼻水に効果がありますが、くしゃみや鼻づまりには効果はありません。抗コリン薬には全身的な副作用があるので、使用する場合は「点鼻薬」として使われます。


症状に応じた医薬の選定

 対症療法として用いる医薬の中で、「軽症」「中等症」および「重症」の各症状程度に応じた医薬選定の一例を示します。各医薬は同時に二つ以上用いず、表の中の「〇番号」のどれか一つを用いますが、症状によりステロイド薬などを併用します。

症状に応じた医薬選定
軽症

 症状が軽い場合には、どちらか一方を選定します。

①化学伝達物質遊離抑制薬
②第2世代ヒスタミン拮抗薬

中等症

 くしゃみ・鼻水が中心の症状のとき

①化学伝達物質遊離抑制薬(必要に応じ局所ステロイド薬を併用)
②第2世代ヒスタミン拮抗薬(必要に応じ局所ステロイド薬を併用)
③局所ステロイド薬


 鼻づまりが中心の症状のとき

①トロンボキサンA2拮抗薬(必要に応じ局所ステロイド薬を併用)
②ロイコトリエン拮抗薬(必要に応じ局所ステロイド薬を併用)
③局所ステロイド薬

重症

 くしゃみ・鼻水が中心の症状のとき

①第2世代ヒスタミン拮抗薬+局所ステロイド薬併用


 鼻づまりが中心の症状のとき
①トロンボキサンA2拮抗薬+局所ステロイド薬を併用
 更に、必要に応じて治療開始初期 5~7日に限り、α交感神経刺激薬を局所に用いる。

②ロイコトリエン拮抗薬+局所ステロイド薬を併用

 更に、必要に応じて治療開始初期 5~7日に限り、α交感神経刺激薬を局所に用いる。


根治療法

 アレルギーは一種の体質に由来する病気なので、体質改善のための治療として、「減感作療法」を行うことがあります。この治療法は、ごく微量のアレルゲン物質を注射するなどで体内に入れ、そのアレルゲン物質に身体を慣れさせる(馴染ませる)方法です。

 わざわざアレルギーを起こす物質を体内に導入するわけで、危険な面もありますが、非常に低い濃度のアレルゲンエキスを用いて、長期にわたり治療すれば、効果が期待できます。現状、確実な根治療法が存在しない中で、減感作療法が唯一、根治療法に近い治療法といえます。

 減感作療法の詳細については、「アレルギーの治療」のページで説明していますので、必要に応じてそちらも参照してください。

予防的治療

 最近では花粉が飛散するタイミングは予測が出されるので、主にスギ花粉シーズン到来の前に、予防的治療として薬の服用を始めると効果があります。これを「季節前投与」と呼んでいます。

 投与する薬の効果が出るまでには、ある程度の時間が必要なので、通常は花粉飛散シーズン開始の2週間くらい前に薬の内服などを開始すると効果的です。

 症状がひどくなってからの花粉症の治療は困難でもあり苦痛も大きくなる傾向があるので、この予防的治療は、症状が出にくくしたり、発症したとしても炎症を軽く済ませるためにとても有効な方法です。

 花粉飛散シーズン到来前か、遅くても症状ができるだけ軽いうちに受診し、治療を開始することがおすすめです。

日常生活の改善

 花粉症への対処は、医療機関での治療も重要ですが、患者自身の生活改善によっても、発症を回避したり、発症を遅らせたり、症状を軽く抑えることができます。患者自身による生活改善的な手法は「セルフケア」と呼ばれています。

 セルフケアでの花粉症対策の主な方法は、原因となる花粉との接触の回避と、身辺にある花粉の除去ということになります。絶対的な決め手となる方法ではありませんが、下記のような点に気を配った生活に心がけましょう。

日常生活の改善
花粉情報

 テレビや新聞で花粉飛散情報が報道されるので、この情報に基づいて行動計画を立てます。

・外出するときは、なるべく花粉が飛散しやすい時間帯を避ける。
・外出時には、質のよいマスクを着用し、必要なら専用のメガネも着用する。

外出から帰宅後

 花粉飛散シーズンに外出すると、帰宅時に花粉を家の中に持ち込む危険があります。帰宅時の花粉持込防止対策をします。

・玄関ドアを開く前に、髪の毛や衣服に付着している花粉を払い落とす。
・顔や手足に付着している花粉をよく洗い流し、丁寧にうがいもする。

家庭内清掃

 家庭内に侵入する花粉を最小限にするために、家庭内は綺麗に掃除します。

・家庭内の掃除回数はできるだけ多くする。
・掃除機は、折角吸引した花粉が再飛散しないように、高性能フィルター(HEPAフィルター)を装着した機種にする。
・できれば、「空気清浄機」を使用する。