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〔全身性エリテマトーデス〕


概要病気症状原因診断
治療予後合併症情報書籍
 

この疾患の概要です

 〔全身性エリテマトーデス〕は、なんらかの原因で自分の細胞や組織に対して抗体ができ、自分の体の細胞に対して免疫機能が攻撃するために、多くの臓器で血管炎を起こす自己免疫性の病気です。

 初期の段階では、発熱、全身倦怠、食欲不振、体重減少などの症状が現れます。

ひどくなると両方の頬が赤くなり、赤味が鼻で繋がる特徴的な蝶型紅斑が出現します。



 この病気では、顔の鼻を挟んだ部位に狼(ループス)に噛まれでもしたような紅い湿疹・斑点が、蝶のような形(蝶型紅斑・紅蝶型)で現れる特徴があります。

 〔全身性エリテマトーデス〕の正式名称は、〔全身性ループス・エリテマトーデス〕という病気で、略称では〔SLE〕とも呼ばれます。

 全身性エリテマトーデスは10~60代に広く見られますが、中でも20~40代の女性に特に集中的に発病します。

 男女比では、圧倒的に女性に多く、全体の9割りを占めています。


 全身性エリテマトーデスは、重症度が高く治療が困難な病気として、「特定疾患治療研究事業」による医療費の援助が受けられます。

 他の多くの膠原病と同じく、全身性エリテマトーデスも「特定疾患」に認定されているのです。

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どんな病気ですか?
〔全身性エリテマトーデスという病気〕

 通常、〔全身性エリテマトーデス〕と呼ぶ疾患は、正式名称を〔全身性ループス・エリテマトーデス(SLE:Systemic Lupus Erythematosus)〕といいます。

 この病気は、基本的に免疫異常があって、自分自身の身体を攻撃する自己抗体ができて炎症を起こす病気なのですが、何故そうなるのか原因がはっきりしていない膠原病の病気のひとつです。

 発病のパターンはさまざまで、急性な発病もあり、徐々に発病することもあります。

 典型的な症状は、先に述べたような紅い蝶型紅斑が鼻を挟んだ部位に出現しますが、それと同時に、手のひらや胸、足などの皮膚にも赤い斑点が現れます。

 寒さに触れると手の指が痛み出して白くなり、やがて赤くなる「レイノー現象」が出現します。

 病気に気づかず放置すると生命の危機になりかねない重篤な病気ですが、早期発見して適切な治療を続ければ、それほど支障なく普通の生活は営めるようになります。

 しかし、他の膠原病と同じく、いったん発病してしまうと、治療しても完治は困難で、病状は寛解状態(よくなったり)と再燃状態(ぶりかえしたり)を繰り返すことが多いです。

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どんな症状ですか?
〔全身性エリテマトーデスの症状〕

 全身性エリテマトーデスでは、他の膠原病全体に共通する症状が現れますが、その他にこの病気特有な症状も現れます。

 症状には、全身症状、皮膚症状、関節症状など分かり易い症状がありますが、その他、腎臓や心臓、肺、消化器などの内臓症状、精神や神経に影響を与える症状などがあります。

全身性エリテマトーデスの症状
全身症状  典型的な全身症状は、発病すると疲れ易くなり、体重の減少が起こったり、微熱が続いたり、ときには高熱が出たりします。

皮膚症状  皮膚に現れる症状で最も特徴的なのは、頬の鼻を挟む両側に蝶が羽根を広げたような赤色の斑点が出ることです。特に痛みはないものの少しの盛り上がりがあり、くっきりと見えますが痒みはありません。

 また、紅斑は頬だけでなく、手の指や手のひら、胸などにも出現します。

 次に典型的な症状はレイノー現象で、寒さに接触したり、緊張すると、手や足の指が白くなり、やがて赤や紫色に変化する症状です。

 頭部毛根の血管に炎症が起こることがあり、前頭部や頭頂部の脱毛が増え、毛髪が薄くなる症状もでることがあります。

 口内炎(口腔内潰瘍)もよく起こりますが、特に痛みを伴わない特徴があります。

関節症状  発病の初期段階から、関節の痛みやこわばり現象が起こります。全身性エリテマトーデスによる関節痛は、関節リウマチのように骨の破壊や関節の変形にまで進行することはそれほどありません。

 また、筋肉の炎症までに至らないものの、腕や足の筋肉に痛みがでることはあります。

腎臓に現れる症状  全身性エリテマトーデスでは、かなりの確率で腎障害が発生します。しかし、腎臓は機能が相当低下するまでは自覚症状が出てこないので、尿検査を初めとして定期的な腎臓機能検査が必要です。

 尿検査では、尿たんぱくや赤血球尿、円柱尿が陽性となれば腎機能が障害を受けていると考えられます。やがて、足や顔にむくみが起こり同時に血圧上昇がみられます。

心臓・肺への症状  胸の痛みや息切れ、動悸、息苦しさなどの症状が出たり呼吸が速くなったりします。

消化器症状  胃腸の血管に炎症が起こり、下痢、腹痛、嘔吐、便秘などの症状が出ることもあります。

精神・神経症状  この病気により起こる精神症状は、手足のしびれ感を伴うような、うつ状態や興奮状態、不眠などで、ひどくなると情緒不安定になり、錯乱などの症状も現れます。痙攣や意識障害が現れることもあります。

その他の症状  女性では、月経不順や貧血などの症状が出ることがあります。その他にも多くの症状があります。


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原因は何ですか?
〔全身性エリテマトーデスの原因〕

 全身性エリテマトーデスは、他の膠原病と同様に、免疫機構が自己抗体を作り出し、自分自身の細胞や組織に対して、攻撃してしまう病気です。

 しかし、どうして自己抗体ができるのか、その原因は分かっていません。

 真の原因は分からないにしても、遺伝的要素は関係していることは確かなようです。

 たとえば、二卵性双生児の一方が全身性エリテマトーデスを発症すると、もう一方が発症する確率は10%満に過ぎませんが、一卵性双生児の場合には、それが14~58%にもなることが知られています。

 この遺伝的な素質がある人が、強い紫外線に晒されたり、ウイルスに感染したり、サルファ剤を服用したり、ストレスに晒されるなどの後天的要素が加わると、発症したり病勢が悪化する可能性が大きくなると考えられています。

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診断はどうやりますか?
〔全身性エリテマトーデスの診断方針〕

 全身性エリテマトーデスの検査では、主に血液検査と腎臓検査が行われます。

 また、診断方法には、アメリカリウマチ学会が作成した診断基準が極めて有用で信頼すべきものとして使用されます。

 更に、特定疾患の申請においても本診断基準が採用されています。

 下記の表で示すこの基準では、11項目中4項目以上が該当すれば、全身性エリテマトーデスと診断されます。

アメリカリウマチ学会による全身性エリテマトーデス診断基準
1 顔面(頬)に紅斑がみられる。
2 円盤状紅斑(慢性の皮疹・ディスコイド疹)がみられる。
3 日光に対する過敏症がある。
4 口腔内に無痛性の潰瘍ができやすい。
5 二つ以上の関節に、関節の痛みや腫れがある。
6 胸や心臓に水が溜まる。(胸膜炎、心外膜炎)
7 腎障害がある。(0.5g/日異常のたんぱく尿、または細胞性円柱の出現)
8 神経障害がある。(けいれん、または精神症状)
9 血球検査の異常がある。(溶血性貧血、または4000/mm3以下の白血球減少、1500/mm3以下のリンパ球減少、10万/mm3以下の血小板減少)
10 血液検査による免疫学的異常がある。

(抗2本鎖のDNA抗体陽性、抗Sm抗体陽性、または抗リン脂質抗体陽性/lgGまたはlgM抗カルジオリピン抗体の異常値・ルーブス抗凝固因子陽性・梅毒血清反応生物学的擬陽性、のいずれか)
11 抗核抗体が陽性にでる。


〔全身性エリテマトーデスの検査〕

 上記の診断基準を直接満たしていない場合でも、この病気特有の他の症状があったり、現在までの経過から、全身性エリテマトーデスの疑いが極めて高ければ、総合的にこの病気であると診断されることもあります。

 上表の項目7(腎障害)と項目9~11(血液検査)関係が、この病気を診断するための主要な検査となります。

 検査項目はこれ以外にも必要に応じて追加されます。次の表で検査の概要を説明します。

全身性エリテマトーデスの検査
腎臓の検査  全身性エリテマトーデスでは「ルーブス腎炎」という腎臓の病気を発症することがあるため、これを検査確認します。

 この腎炎があると、尿中にたんぱくが出たり、尿沈渣検査で赤血球や細胞性円柱が見つかります。

 腎炎が疑われる場合、腎臓に針を刺して腎臓組織を採取し、顕微鏡で調べる生検を行うこともあります。

 いずれにしても、全身性エリテマトーデスの患者は、腎機能が急激に低下する可能性があるため、定期的な尿検査は必要です。

血液の検査  全身性エリテマトーデスでは、貧血や白血球減少、リンパ球減少、血小板減少などの現象が起こるので、血球や赤沈(赤血球沈降速度)、CRP検査を行い確認します。

 炎症があると赤沈の値が大きくなります。

抗核抗体の検査  全身性エリテマトーデスでは、細胞内の核成分を攻撃する自己抗体が高い率で陽性になります。

 特に抗DNA抗体が高い値を示しますが、LE細胞、抗RNP抗体、抗Sm抗体、抗SS-A抗体、抗SS-B抗体なども調べ、どの抗体が病気を活性化させているのか確認します。

 病気が活動期にあると複数の抗体が陽性になることがあります。

 免疫反応が異常になると血液中の補体が消費され減少します。補体の値が低値を示すなら、この病気が活動期にあることの証拠となります。

臓器の病変の検査  全身性エリテマトーデスでは、多くの臓器に炎症による病変を生じさせるため、主要な臓器に病変がないか検査します。

 主な検査項目は、心電図、胸部X線撮影などは必須で、必要に応じて超音波検査やCTスキャン、脳のMRI検査なども行われます。


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治療はどうやりますか?
〔全身性エリテマトーデスの治療方針〕

 全身性エリテマトーデスの治療法の基本は、他の膠原病と同様に、薬物療法です。使用される主な医薬は、非ステロイド抗炎症薬やステロイド薬です。

 病気の状態によって、免疫抑制剤の使用やその他の療法として血漿交換療法や血液透析も行われます。

〔全身性エリテマトーデスの薬物療法〕

 この病気では多くの場合に内臓への障害が起こるので、炎症抑制のためにステロイド薬の使用が欠かせません。

 ステロイド薬には重篤な副作用が起こる可能性があるので、炎症を抑えることのできる必要最小限を使用することになります。

全身性エリテマトーデスの薬物療法
皮膚症状

 全身性エリテマトーデスの病気でも、内臓に障害が出ない程度の軽度の症状の場合で、皮膚に湿疹が出たり、粘膜に病変がでる場合は、少量のステロイド薬を含有するような軟膏やクリームなどの外用薬を塗って対応し様子をみます。

 しかし、内臓に炎症を伴うようになると、非ステロイド抗炎症薬やステロイド薬などの服用が必須になります。

関節・筋肉症状

 関節痛や筋肉痛があり多少の微熱がある場合で、内臓に障害が出ない程度の場合には、非ステロイド抗炎症薬の内服で治療します。

 この薬には多くの種類があるので、効き具合と副作用の出方などをみながら薬を選択・変更して、自分に最適なものを探します。

 この薬には服用だけでなく坐薬もあり緊急的に痛みを和らげる効果があります。

内臓病変

 全身性エリテマトーデスによる炎症がひどくなり臓器の障害が現れた場合には、亢進した自己免疫反応を抑制し炎症を止めるために、直ちにステロイド薬を服用します。

 ステロイド薬には危険な副作用があるのは事実ですが、次のような症状があるなら、この療法は必須となります。

 ・広範囲の皮膚の病変や潰瘍の存在
 ・ルーブス腎炎などの腎病変
 ・中枢神経症状や精神症状
 ・間質性肺炎、胸膜炎、心外膜炎
 ・溶血性貧血
 ・血小板減少性紫斑病
 ・急性腹症

 ステロイド薬の使用方法については、「膠原病の治療」を参照してください。

免疫抑制剤

 内臓障害を伴う場合の最も優れた治療方法は、ステロイド薬の使用ですが、ステロイド薬でも十分な効果が現れない場合や、ステロイド薬がうまく減少できない場合、ステロイド薬による副作用が強く現れることがあります。

 このようにステロイド薬療法が適さないときには、免疫抑制剤の使用を試みます。ステロイドが効きにくい場合に効果的に使用できる免疫抑制剤がありますが、感染症や副作用には十分な注意が必要です。


〔血漿交換療法〕

 ステロイド薬でも免疫抑制剤でも十分な治療効果が得られなかったり、副作用が強すぎる場合に、血漿交換療法が使用されることがあります。

 この方法は「体外循環療法」のひとつで、血液の一部を抜き取り、血球成分と血漿成分とに分離し、血漿成分中に含まれる自己抗体や免疫複合体を選択的に除去して、正常になった血漿成分と血球成分とを再び体内に戻す方法です。

 一回あたりの血液処理量は3~4リットルで、これを定期的に繰り返します。

 急性のルーブス腎炎やけいれんや意識障害の発作を伴う中枢神経障害の場合は、医療保健対象です。

〔血液透析〕

 ルーブス腎炎で腎機能が極度に低下した場合には、血液透析を行います。

 これにより尿毒症で生命に関わることを防ぐのです。

 この病気による症状は、本質的な腎臓病によるものではないので、膠原病の治療に成功し寛解状態(安定した状態)になれば、血液透析を中止できる場合もあります。


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