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〔慢性前立腺炎〕


概要病気症状原因診断
治療予後合併症情報書籍
 

この疾患の概要です

 男性生殖器は、睾丸(精巣)、副睾丸(精巣上体)、精管、精のう腺、陰茎、前立腺からなりたっています。

 前立腺は、膀胱の出口で尿道を取り巻くように存在していて、精液の一部となる前立腺液を分泌しています。

 よく知られる前立腺の病気には、加齢によるホルモン分泌量の変化などによる、〔前立腺肥大症〕などがあります。


 慢性前立腺炎は、前立腺の炎症が慢性的に発症している疾患です。

 慢性前立腺炎になると、頻尿や残尿感、不快感、排尿痛、排尿困難などの症状が現れてきます。射精前後に痛みが起こることもあります。

 症状が穏やかで発熱は見られない点で〔急性前立腺炎〕とは症状が異なります。


男性生殖器の図

 この病気については 〔男性特有のがん〕 の項目でご説明しておりますので、そちらを参照してください。

 このページでは、特に重要な男性特有の病気について概説しています。


 慢性前立腺炎には、次のという三つのタイプがあります。

 ・慢性細菌性前立腺炎
 ・非細菌性前立腺炎
 ・前立腺痛

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どんな病気ですか?
〔慢性前立腺炎という病気〕

 既に述べたように慢性前立腺炎には、慢性細菌性前立腺炎と非細菌性前立腺炎および前立腺痛という三つのタイプがあります。

 慢性前立腺炎は、どのタイプでも症状はほぼ同じで、残尿感、不快感、疼痛、排尿困難などの症状がでますが、急性細菌性前立腺炎に比べて比較的おだやかで、発熱もありません。

 前立腺炎患者の90%は慢性前立腺炎患者で、慢性前立腺炎患者の7割が慢性細菌性前立腺炎、3割程度が慢性非細菌性前立腺炎の患者です。

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どんな症状ですか?
〔慢性前立腺炎の症状〕

 慢性前立腺炎には三つのタイプがありますが、自覚症状はどれも同じように現れます。

 主な症状は、排尿障害で終末時の排尿痛、頻尿、残尿感で、いずれも前立腺の炎症が徐々に進行する慢性型症状です。

 また、陰嚢部・睾丸の疼痛や下腹部、尿道、ペニスの痛みや不快感を生じます。性欲低下を訴える患者もいます。

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原因は何ですか?
〔慢性前立腺炎の原因〕

 慢性前立腺炎は、慢性細菌性前立腺炎・非細菌性前立腺炎・前立腺痛の三つのタイプに分類されますが、それぞれの原因を下表に示しています。

慢性前立腺炎の原因
慢性細菌性前立腺炎  慢性細菌性前立腺炎は、文字どおり細菌感染による前立腺の炎症です。

 原因細菌は多くは大腸菌や腸球菌などです。

 慢性細菌性前立腺炎の多くが急性細菌性前立腺炎からの移行によって生じます。

慢性非細菌性前立腺炎  慢性非細菌性前立腺炎は「プロスタトーシス」と呼ばれることもあります。

 原因は主に性的接触による感染症で、細菌よりも微小なさまざまな病原体が原因となる前立腺炎です。

 ・クラミジア
 ・マイコプラズマ
 ・ウレアプラズマ
 ・ウイルスなど

 この場合、一般細菌による感染の併発もみられます。

前立腺痛  前立腺痛は、特別な炎症所見が認められないにもかかわらず、前立腺炎様の症状を生じるもので、「プロスタトディニア」とか「前立腺症」とも呼ばれています。

 前立腺痛の原因ははっきりしません。

 また、これと同様な症状はうつ状態、心身症、神経症、ストレスなどの精神的疾患でも起こることがあり、これらとの区別も難しい面があります。


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診断はどうやりますか?
〔慢性前立腺炎の診断〕

 慢性前立腺炎の検査は「直腸診」「前立腺マッサージ後の尿検査」で行います。必要に応じて血液検査も行います。

慢性前立腺炎の検査
直腸診  肛門から指を挿入して、肛門直上で腹側にある前立腺を触診します。

 指による前立腺の触診では、急性前立腺炎のような痛みや熱感は生じませんが、ほとんどの場合、圧痛が感じられます。

 次のような症状が認められるなら、慢性前立腺炎の可能性が大と診断されます。

 ・前立腺に圧痛や疼痛がないか。

 ・前立腺に硬結がないか。

 ・前立腺に腫れや浮球感がないか。

 ・前立腺周囲の外括約筋の緊張度合いはどうか。

前立腺マッサージ後の尿検査  慢性前立腺炎では、症状が軽いために排尿された尿中に白血球や細菌が検出されないことが多いです。

 このため、前立腺をマッサージして前立腺液を尿道へもみ出してから排尿し、そこに白血球や細菌が出てくるかどうかを検査します。

 前立腺をマッサージし、前立腺圧出液を顕微鏡で検査し、白血球の有無や数、細菌の有無などを調べます。

 前立腺をマッサージする前に採尿した尿の顕微鏡観察結果と前立腺圧出液の顕微鏡観察とで、白血球が増加していないか比較します。

 マッサージ前の尿に対して白血球数(膿)と細菌がどの程度認められるかなどにより、慢性前立腺炎が診断されます。

 ・白血球数が増加していて、細菌も認められるなら、慢性細菌性前立腺炎と診断します。

白血球数の増加は認めるが、細菌が認められないなら、炎症性慢性骨盤内疼痛症候群と診断します。

白血球の増加も細菌も認めない場合は、非炎症性慢性骨盤内疼痛症候群と診断します。

血液検査  性感染症の原因となるクラミジア、マイコプラズマ、ウレアプラズマによる前立腺炎であるかどうかを判定するために、血液検査によるこれら病原体に対する抗体検査を行うことがあります。

 また、前立腺がんの可能性がないかを調べるために、前立腺特異抗原(PSA)を調べることがあります。


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治療はどうやりますか?
〔慢性前立腺炎の治療〕

 一般に慢性前立腺炎は、治りにくい病気ですが、生命に関わるようなことはありません。きちんと治療すれば必ず治ります。

 慢性細菌性前立腺炎の場合は、内服薬による抗菌薬治療(抗生物質)を4~6週間続けます。

 慢性炎症を生じた前立腺には、抗菌薬は届きにくく、やや長期間の服用が必要となります。数か月間必要になることがあります。

 抗菌薬には、前立腺液への薬物移行が良好なニューキノロン剤が最も一般的に用いられます。

 製品名には、次のものなどがあります。

 ・クラビット
 ・タリビッド
 ・オゼックス
 ・トスキサシン
 ・シプロキサン
 ・フルマーク
 ・スパラ
 ・バクシダール
 ・メガシロン

 慢性非細菌性前立腺炎の治療でも一般雑菌による感染の合併も少なくないので、前立腺マッサージによる前立腺液の排出と併せて、1~2週間の抗菌剤投与を行います。

 これで改善できない場合、他に有効な手立ては無く、対症療法での治療のみが行われます。

 但し、慢性非細菌性前立腺炎でも原因が性感染症の原因病原体であるクラミジアやマイコプラズマ、ウレアプラズマの感染が疑われる場合は、次のような抗菌剤が有効です。

 クラミジアには、ニューキノロン系やマクロライド系医薬、テトラサイクリン系医薬が使われます。

 また、マイコプラズマやウレアプラズマに対しては、マクロライド系医薬が使われます。

性感染症の病原体が原因の場合の治療薬
ニューキノロン系医薬製品名  ・クラビット
 ・タリビッド
 ・オゼックス
 ・トスキサシン
 ・スパラ

マクロライド系医薬製品名  ・クラリス
 ・クラリシッド

テトラサイクリン系医薬製品名  ・ミノマイシン
 ・ビブラマイシン

 前立腺痛(ロスタトディニア)の治療は、原因も定かでなく格別な治療法もありません。

 多くの場合、精神科的疾患とも関連するので、泌尿科医だけでは解決できないかも知れません。

 慢性前立腺炎を悪化させる因子として飲酒癖、過労、緊張、ストレス、長期座位、刺激物の多量摂取、射精不足、熱い風呂、慢性的な骨盤底への物理的刺激などがあります。
 逆に、改善因子として、多量の水分摂取、整腸、温座浴、軽い運動、一定期間ごとの射精などが効果あります。


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