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がんの治療法
〔がんの治療法〕

集学的治療法
免疫療法
内分泌療法
温熱療法
動注療法
漢方療法
代替療法
支持療法

〔免疫療法〕


この治療法の概要

 〔膠原病〕やその他の〔自己免疫疾患〕は、免疫異常によって発症することが分かっています。

 それらの免疫異常を改善することで疾患を治療するのが「免疫疾患に対する免疫療法」と呼ばれています。

 一方、人間のからだには、もともと免疫作用が備わっていて、その免疫力を強化することで、がん細胞を攻撃しようとするのが「がんに対する免疫療法」であり、「免疫細胞療法」などとも呼ばれます。


 この療法の基本的考え方は、患者自身がもっている免疫細胞を活性化し増殖させることでがん細胞を攻撃しようとするものです。

 免疫作用は生物がもともと持っている機能なので、副作用が少ないという特徴があるものの、それだけでがんが治療できるほど強力ではありません。

 一般的には、がんの外科手術療法や化学療法(薬物療法)、放射線療法などと組み合わせて使用する集学的治療法となっています。

 このため、免疫療法は「第四のがん治療法」と呼ばれることもあります。

 免疫療法には多くの種類が提案されていて、一部治療に実施されてはいますが、多くの場合、その医学的効果、科学的証明が十分には検証されていないのが現状です。

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免疫療法の進化
〔免疫療法の進化〕

 本来、人間の生体には、体外からの異物(抗原)の侵入に対して、これを攻撃し、撃退しようとする機能が備わっていて、免疫作用と呼ばれています。

 免疫作用には、がんに対しても、その増殖を抑制したり死滅させたりする作用があります。

 免疫療法は、何らかの方法でこの免疫力を強化してがんを攻撃し、抑制したり死滅させようとする療法です。

 がん患者の免疫力を強化するための実現方法として、「免疫物質の調達方法による分類法」と「治療方法による分類法」など免疫療法の分類は複雑多岐にわたっています。

 免疫物質の調達方法による分類法では、免疫物質を患者自身の免疫システムの活性化で実現する方法と、体外から免疫物質を注入する方法とがあります。

免疫物質の調達方法による分類
患者自身の免疫力活性化  がんワクチン療法やサイトカイン療法などがあります。
体外から免疫物質注入  抗体療法や養子免疫療法などがあります。

 また、別の分類方法として、特定のがんではなく、がん全般に効果を発揮する「非特異的免疫療法」と特定のがんを専門的に攻撃する特異抗原を見つけて治療する「特異的免疫療法」という分類もあります。

 特異的免疫療法は、近年急速に進化しつつある免疫療法です。

がん免疫療法の進化の図

非特異的か特異的かによる免疫療法の分類
非特異的免疫療法  非特異的免疫療法は、がん患者の免疫力を活性化するために、免疫賦活薬を用いる療法です。

 免疫賦活薬により高められた免疫力によって、がんを攻撃し、死滅させようとするものです。

 免疫を担う細胞には、次のようなものなどがあります。

・マクロファージ(貪欲細胞)
・B細胞
・ヘルパーT細胞
・キラーT細胞
・ナチュラルキラー細胞(NK細胞)
・リンホカイン活性キラー細胞(LAK細胞)

 ヘルパーT細胞、キラーT細胞、ナチュラルキラー細胞などは、いわゆるリンパ球です。

 これらの細胞は、体外から侵入してくる外敵(異物、抗原)に対抗する「抗体」と「生理活性物質(サイトカイン)」を産生し侵入者を撃退する性質があります。

 免疫賦活薬は、生体に備わった免疫細胞に作用してさまざまなサイトカインを分泌させ、それにより抗体と共に侵入者を攻撃するのです。

 非特異的免疫療法としては、次のようなものなどがあります。

・免疫賦活剤療法
・サイトカイン療法
・活性リンパ球療法
・細胞免疫療法

特異的免疫療法  特異的免疫療法は、がん細胞だけがもつ特定の抗原(特異抗原)を見つけ、それを攻撃する免疫機能を活性化して治療する方法です。

 特異的免疫療法としては、次の療法などがあります。

・樹状細胞療法
・抗体療法
・ワクチン療法

 原理はよいのですが、特異抗原を見つけ出すのは極めて困難であり、動物実験は別として、現時点ではまだ進化段階にあります。

 ワクチン療法などでは、画期的な成果も報告されていますが、まだまだ万能ではありません。


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免疫療法の種類
〔免疫療法の種類〕

 上記のような分類法とはまた別の分類として、「がんの治療方法による分類法」があり、とても多くの治療法があります。

 免疫療法の種類とは、簡単に言えば、免疫物質の調達方法による分類や非特異的か特異的かによる免疫療法の分類に登場する、全ての免疫療法を指しています。

 治療方法による分類としては、次のような療法があります。

・免疫賦活剤療法
・ワクチン療法
・細胞免疫療法
・サイトカイン療法
・生体応答調節療法
・抗体療法
・遺伝子療法

 その他にも「自律神経免疫療法」や「健康食品療法」「心理療法」などというものを含めることもあります。

 このページでは、治療方法による分類法に従って、これらの免疫療法を少し詳しく、個別に説明しています。

がんの治療方法による免疫療法の分類
免疫賦活剤療法 免疫賦活薬を用いて免疫機能全般を強化する療法。
サイトカイン療法 インターフェロンやインターロイキン2、細胞傷害因子などでがんを攻撃する療法。
細胞免疫療法 患者の免疫細胞を一旦体外に取り出し培養し活性化後、再び体内に戻す療法。
抗体療法 がん細胞に適合した抗体を用いてがんを攻撃する療法。
ペプチドワクチン療法 がん細胞に特異的な抗原などの目印を見つけリンパ球にがん細胞だけを攻撃させる療法。
自律神経免疫療法 爪の生え際などに注射針などで出血させ免疫機能を引き出す療法。
生体応答調節療法 免疫システムなど体全体の働きを調節してがんを治療する方法。
遺伝子療法 特異的に発生するがん細胞抗原を認識し直接がん細胞を攻撃する方法。
健康食品療法 いわゆる健康食品でがんになりにくくする方法。医学的根拠は少ない。
心理療法 生きがいを見つけて打ち込んだり、笑ったりして免疫力を高める方法。


〔免疫賦活剤療法〕

 従来から用いられてきた免疫療法は「免疫賦活薬療法」と呼ばれるもので、「免疫賦活薬」を用いて免疫機能全般を強化する療法です。

 これは「免疫増強療法」とも呼ばれています。

 免疫賦活剤は、細菌類やキノコ類、植物から抽出される成分、BCGその他の菌体成分、あるいは他人のリンパ球成分などから抽出されることが多いです。

 一般に、免疫賦活剤療法では特定のがんにしか適用することができません。

 次の表に主な免疫賦活剤を示します。

主な免疫賦活剤
クレスチン  免疫賦活薬のクレスチンと抗がん薬を併用することで、胃がんや結腸がん、直腸がんなどでの延命効果があるとされます。
ピシパニール
レンチナン
シゾフィラン
BCG
OK432
移入リンパ球
BRP


〔サイトカイン療法〕

 細胞が産生する生理活性物質は、サイトカインと呼ばれていて、既に数百種類が発見、確認されています。

 一般にサイトカインは、細胞の増殖や分化、機能亢進、免疫作用などに極めて重要な役割を担っています。

 サイトカインの中で、直接的にがん細胞を攻撃したり、他の免疫担当細胞を活性化することで、がんの増殖を抑制する作用を持ったものに、次のものなどがあります。

・インターフェロン(IFN)
・インターロイキン2(IL2)
・細胞傷害因子

サイトカインによる免疫療法
インターフェロン  サイトカインのひとつであるインターフェロン(IFN)には、腎臓がんや多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病、悪性黒色腫(メラノーマ)などのがんを縮小させる効果が確認されています。

 しかし、インターフェロンの投与には限度があり、多量投与する重篤な副作用が起こるとされています。

インターロイキン2  インターロイキン2(IL2)は、T細胞により産生され、T細胞、B細胞、マクロファージ等の細胞に作用し、がん細胞を破壊するナチュラルキラー細胞(NK細胞)の働きを高めて、がんを攻撃します。

 投与量を増やすと、抗腫瘍作用が高まりますが、多量に投与すると重篤な副作用が出現するため、投与量には限度があります。

 腎臓がんに対しては、低用量でも高用量に匹敵するような腫瘍縮小効果があるとされます。

細胞傷害因子  サイトカインの中で、「腫瘍壊死因子(TNF-α)」や「リンフォトキシン(TNF-β)」などは、がん細胞をアポトーシス(自殺)に導く作用があります。

 TNF-αは代表的な炎症性サイトカインです。

 TNF-αとTNF-βは化学的構造的に類似していて、「TNFスーパーファミリー」と呼ばれることがあり、性質も似ています。

その他のサイトカイン  がんといえども、血液の供給なしでは成長することはできません。インターフェロンやインターロイキンには、がんが作り出す新生血管の成長を抑制する作業がありますが、その他にも、同様な作用をもつサイトカインが存在します。


〔免疫細胞療法〕

 免疫細胞療法とは、患者の免疫細胞を一旦体外に取り出し培養して数を増やしたり、働きを強化するなどして活性化した後に、再び体内に戻してがん細胞の増殖を抑制する療法です。

 一般にがん患者の免疫細胞は、健康なときに比べて低下していますが、患者自身の免疫細胞を体外で増やし活性化してから体内に戻すので、副作用が少ない特徴があります。

 がんの外科手術後に、化学療法や放射線療法と併用することで、相乗効果や副作用の軽減も期待されます。

 また、転移や再発予防にも効果が期待されます。

 免疫細胞療法は、先進医療の一環として一部の大学病院などで、研究が急速に進化しつつあるものの、現時点ではまだ十分な治療効果が実証される段階には至っていません。

 この療法にも多くの手法があり、それらをここで概説しておきます。

免疫細胞療法の種類
活性化リンパ球療法  活性化リンパ球療法は、活性化自己リンパ球療法とも呼ばれる療法です。

 患者自身の血液を少量採取しリンパ球を分離して培養し、1000倍ほどに増殖した後、再び患者の体内に戻します。

 これによりがん患者の弱まった免疫力を強化することで、がんの再発予防やがんの進行抑制、更には生活の質(QOL:Quality of Life)を向上させることが期待されます。

 この療法では患者自身の細胞を利用するため、ほとんど副作用が起こらない特徴があります。

養子免疫療法  養子免疫療法は、患者自身のリンパ球を取り出し、サイトカインを加えて活性化してから、再び体内に戻す療法です。

 この方法でも、がんの再発予防やがんの進行抑制、更には生活の質(QOL:Quality of Life)を向上させることが期待されます。

細胞傷害性Tリンパ球療法  細胞傷害性Tリンパ球療法(CTL:Cytotoxic T-lymphocyte Therapy)は、患者の血液からリンパ球を取り出し、外科手術で取り出した患者自身のがんとサイトカインとを加えて、体外で培養した後、再び体内に戻します。

 この療法は、免疫細胞療法の中では最強のものです。

 がん細胞と接触したリンパ球は、がん細胞の特徴を覚え、そのがん細胞だけを攻撃する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)となります。

 このCTLによりがん細胞を攻撃するのです。

樹状細胞療法  樹状細胞(DC:Dendritic Cell)は、免疫担当細胞のひとつで、体内に侵入してくるバクテリアなどの外敵やがんなどの抗原の特徴をTリンパ球に伝達する、抗原提示細胞です。

 樹状細胞による抗原提示機能は非常に強力であり、APC(プロッフェッショナル抗原提示細胞)と呼ばれることもあります。

 樹状細胞療法では、体外でこの樹状細胞とがん組織や人工抗原などと培養し、がん組織の情報を覚えさせてから、再び体内に戻します。

 情報を受け取ったTリンパ球は、そのがんに特化した状態に活性化してがんを攻撃し排除します。

 この療法では、T細胞の数が多いほど効果が高くなるので、活性化リンパ球療法と併用して行うのがより有効です。

高活性化NK細胞免疫療法  リンパ球のひとつであるナチュラルキラー細胞(NK細胞)は、自然免疫の中で主体的役割を演じていて、外部から侵入するウイルスなどの外敵や、体内で発生するがんなどの異物細胞に結合して殺傷する役割を担っています。

 通常、がん患者の場合、健康時に比べてNK活性が低下しているため、このNK細胞を体外で培養し、数百~数千倍に増殖し、高活性化してから、体内に戻します。


〔抗体を用いた免疫療法〕

 がん細胞に適合した抗体が発見されれば、その抗体を用いてがんを攻撃することができます。

 現在、このような抗体として5種類ほどのモノクローラル抗体が知られています。

 特定のがんに特化したモノクローラル抗体と抗がん剤を併用することで、効果がより大きくなると期待されますが、この療法は現在ではまだ研究途上にあります。

 乳がんの抗体による免疫療法薬として、「ハーセプチン」が知られていて使用されています。

 将来的には、大腸がんや白血病、悪性リンパ腫などのがんに特効的に効く抗体が発見されることが望まれます。

〔ペプチドワクチン免疫療法〕

 ペプチドワクチン免疫療法は、がん細胞に特異的な抗原などの特徴(目印)を発見し、リンパ球などにそのがん細胞だけを攻撃させる治療法です。

 この療法は、現段階では実用段階には至っていませんが、大阪大学で研究されている「WT-1ワクチン療法」は、かなり有望と考えられています。

 WT-1ペプチドという人工抗原を注射し、体内で樹状細胞の働きを活性化します。

 WT-1は多くのがんの種類に存在する抗原であるため、免疫力を高める方法として期待されています。

〔自律神経免疫療法〕

 自律神経免疫療法は、「刺絡療法」とも呼ばれる療法で、爪の生え際などの身体末端部に注射針やレーザー針、電子針を用いて出血させ、自律神経に刺激を与え、免疫機能を引き出して治療する方法です。

〔健康食品による免疫療法〕

 がんに効果のある健康食品が頻繁に宣伝されています。

 いわゆる健康食品の中で、がんに効くというものにキノコ類や蜂蜜、初乳類、酢、ハーブ類などがあります。

 特に、アガリスクやプロポリス、ロイヤルゼリー、黒酢など、がんに効くというものが多々あります。

 しかし、ほとんどの場合に、これらの物質については、医学的な検証は全くといっていいほど、なされていませんので、信頼性は非常に低いと考えるべきです。

〔心理療法による免疫療法〕

 人は趣味などで生きがいを見出したり、よく笑うなどの心理的状態をつくると免疫系を活性化させることができるとされています。

 この種の療法には、イメージ療法、サイモントン療法、笑いヨガ療法などがあります。


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