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呼吸器のがん
〔呼吸器のがん〕

原発性肺がん
転移性肺がん
悪性胸膜中皮腫

〔原発性肺がん〕


概要病気症状原因診断
治療予後医薬情報書籍
 

この疾患の概要です

 〔肺がん〕は、肺の気管、気管支、肺胞細胞が正常な機能を失い無秩序に増殖する悪性腫瘍の総称です。

 〔肺がん〕は、他の臓器のがんに比較して非常に治療しにくいがんです。

 いわゆる〔肺がん〕には、〔原発性肺がん〕と〔転移性肺がん〕とがあります。

 通常は単に〔肺がん〕といえば、〔原発性肺がん〕を指しています。


 この場合の「原発性」という言葉は、呼吸器系自身から発生したことを意味しています。

 〔原発性肺がん〕は、他の臓器で発生したがんが転移してきたものではなく、肺などの呼吸器自体から発生した悪性腫瘍だという意味です。

 〔肺がん〕の発症部位が、口に近い側か、口から遠い側かで分類することがあります。

 口に近い側の肺がんは〔肺門型肺がん(中心型肺がん)〕と呼ばれ、口から離れている側でのものは〔肺野型肺がん(末梢型肺がん)〕と呼ばれています。

 肺門部の肺がんの典型的な主症状は、初期段階から、肺がんの三大症状とされる「咳」「痰」「血痰」の症状が現れることです。

 やがて気管支の内側が狭窄し〔閉塞性肺炎〕が起こり、「咳」だけでなく「発熱」「胸痛」の症状も出てきます。

 更に進行すれば、がんで気管支が閉塞し「呼吸困難」となります。

 肺野部の肺がんでは、初期には特別な症状がなく、進行してしまい自覚症状が認識される段階になると、がんが周囲の臓器に浸潤して強烈な痛みが現われてきます。

 この場合、早期発見が非常に重要ですが、そのためには、胸部X線検査を受けるしか方法がありません。

 肺がんの腫瘍は、肺の局所で腫瘤を作りながら隣接する臓器に浸潤して、際限なく増殖します。

 肺がんは、リンパ節や遠くにある他の臓器に遠隔転移しやすいがんとされます。

 特に、脳や骨、肝臓などへの転移は深刻で進行すれば治療は極めて困難となり、最終的には宿主である人を死に至らしめます。

 よく知られる通り、肺がんの最大の発生原因は喫煙です。

 特に、50歳以上で「喫煙指数」600以上の人は極めて危険な状況下にあるといわざるを得ません。

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どんな病気ですか?
〔原発性肺がんという病気〕

 肺は呼吸器系の中心的存在で重要な臓器で、心臓や気管、食堂などからなる縦隔を挟んで胸部に左右二つあります。

 それぞれは左肺、右肺と呼ばれます。

 肺は体内に酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出する大切な役目をもっています。

 左肺は、上葉と下葉の二つの部分に分かれ、右肺は、上葉、中葉、下葉の三つの部分に分かれています。

肺がんの説明図

 肺のどの部分にも悪性腫瘍は発生し、これが〔肺がん〕で、上図にがんの発症部位などの例を示しています。(上図は「エルねっと」WEBサイトより転載しています。)

〔原発性肺がんの細胞形態による分類〕

 呼吸器のがんは、それを顕微鏡で観察したときのがん細胞の形態によって分類して四つのがんに分けられます。

 ・小細胞がん
 ・腺がん
 ・扁平上皮がん
 ・大細胞がん

 通常、〔小細胞がん〕は進行が極めて速いがんですが、化学療法や放射線療法が効きやすい悪性腫瘍です。

 一方、その他の〔腺がん〕〔扁平上皮がん〕〔大細胞がん〕は、一括して〔非小細胞がん〕と呼ばれています。

 これらのがんは進行速度が緩やかである反面、化学療法や放射線療法があまり効果を発揮できない特徴があります。

 このため、治療面では〔小細胞がん〕と〔非小細胞がん〕とに分けて分類されます。

肺がんの細胞形態による分類
小細胞がん  〔小細胞がん〕は、肺がんの15~20%を占めるがんです。

 進行が極めて速いがんで発見されたときには既に症状が相当進行していて、手術が行えない状況になっている場合があります。

 しかし、化学療法や放射線療法が有効に作用する特徴があります。

 このがんは、明らかに喫煙との関連があり、男性に多く発症します。

 また、比較的に肺門部に多く発生します。

腺がん  〔腺がん〕は、発生部位としては肺野部から発症するがんの代表的ながんで、肺がんの半分以上を占めています。

 男性の肺がんの40%、女性の肺がんの70%ほどを占めていて増加傾向にあります。

 腺がんは、比較的緩やかに進行しますが、化学療法や放射線療法があまり効果を発揮しません。

扁平上皮がん  〔扁平上皮がん〕は、肺門部がんの代表的ながんであり、全肺がんの25%ほどを占めています。

 男女比では圧倒的に男性に多く見られる悪性腫瘍です。

 〔扁平上皮がん〕も、進行は比較的緩やかですが、化学療法や放射線療法があまり効果を発揮しません。

大細胞がん  〔大細胞がん〕は、全肺がんの7%ほどを占めています。

 〔大細胞がん〕も進行は比較的緩やかですが、化学療法や放射線療法があまり効果を発揮しません。


〔原発性肺がんの発生部位による分類〕

 肺がんの発生部位が、口に近い側にできたか、口から遠い側にできたかにより分類します。

 口に近い側でのがんは〔肺門型肺がん〕と呼び、口から離れている側でのがんは〔肺野型肺がん〕と呼ばれます。

呼吸器のがんの発生部位による分類
肺門型肺がん
(肺門部肺がん)
(中心型肺がん)
 〔肺門型肺がん〕は別名〔肺門部肺がん〕や〔中心型肺がん〕とも呼ばれるもので、肺の入口付近にある太い気管支に出来るがんです。

 中心型肺がんでは、比較的早い段階から咳、痰、血痰の三大症状が現れます。

 気管支などの喉に近い部分は、喫煙による煙に多く晒されやすいために、中心型肺がんが出来易くなります。

肺野型肺がん
(肺野部肺がん)
(末梢型肺がん)
 〔肺野型肺がん〕は〔肺野部肺がん〕や〔末梢型肺がん〕とも呼ばれるもので、口より遠い部分、肺の奥の方に出来るがんです。

 初期には咳や痰などの症状はあまり見られません。

 往々にして、健康診断時のレントゲン検査やCT検査などで発見されます。


〔原発性肺がんの治療戦略による分類〕

 「がん細胞形態での分類」の項で既に述べているように、肺がんを治療方法・治療戦略によって分類すると、二種類に分けられます。

 一つ目は、進行は速いが化学療法や放射線療法が効きやすい〔小細胞がん〕です。

 二つ目は、逆に進行は緩やかながら化学療法や放射線療法が効きにくい〔非小細胞がん〕です。

呼吸器のがんの治療戦略による分類
小細胞がん  小細胞がんは、喫煙者に多く見られる肺がんで、全肺がんの20%ほどを占める肺がんです。

 長く続く咳をはじめ、次のような多くの症状がでます。

 ・長く続く咳
 ・胸痛
 ・呼吸時の喘鳴(ヒューヒュー音)
 ・息切れ
 ・血痰
 ・声のかすれ
 ・顔や首の腫れなど

 小細胞がんは、進行が極めて速く、初期より転移傾向も強い悪性度の高いがんです。

 しかし、化学療法や放射線療法に対する感受性が高いので、早期発見し化学療法で治療すれば治癒の可能性は高まります。その反面、発見が遅れれば致命的となります。

非小細胞がん  治療戦略の観点で見ると、〔非小細胞肺がん(腺がん・扁平上皮がん・大細胞がん)〕は、全肺がんの約80%を占めています。

 非小細胞肺がんの発症パターンは多彩で男女による違いなども多いです。

 最も多いのが「腺がん」で男性の肺がんの40%、女性の肺がんの70%を占めています。

 これは通常の胸部レントゲン撮影で見つかり易いタイプです。

 次に多いのが「扁平上皮がん」で、男性の肺がんの40%、女性の肺がんの15%を占めています。

 一般に〔非小細胞肺がん〕は、進行は緩やかであるものの、化学療法や放射線療法が効き難く、治癒を目指すには早期発見し手術で病巣を切除するのが一番です。

 しかし、早期発見できなかったとしても、治療に全く効果がないわけではなく、症状の改善や多少の延命効果はあります。

 〔非小細胞肺がん〕の進行度は、I期からⅣ期に分けられます。

 I期~Ⅱ期までの進行度であれば完全に切除して治療可能ですが、それ以上では手術はかなり困難となります。


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どんな症状ですか?
〔原発性肺がんの症状〕

 原発性肺がんの症状は、肺がんの原発巣が肺のどの部位から生じたかにより異なります。

 一般的な症状としては、なかなか完治しない咳をはじめ、次のような多くの症状が現れます。

 ・長引く咳
 ・胸痛
 ・息切れ
 ・しわがれ声
 ・血痰
 ・喘鳴
 ・顔や首の浮腫など

 以下に典型的な症状を示しますが、ある段階になると、これらの症状に加えて疲労感や食欲不振、体重減少などの現象も起こります。

 症状が末期に近くなれば、ちょっとした風邪をこじらせただけでも、容態が急変し死に至ります。

原発巣の部位による症状
肺門型肺がん
(肺門部肺がん)
(中心型肺がん)
 肺がんの原発巣が、肺の入口付近にある太い気管支やそこに近い部位にできるとき、初期の段階から肺がんの三大症状である「咳」「痰」および「血痰」が現われてきます。

 がんが進行しがんにより気管支の内側が狭くなってくると〔閉塞性肺炎〕の状態となり、三大症状に加えて「発熱」や「胸痛」の症状が出現します。

 更に進行して気管支が塞がれてしまうようになると、肺に空気が送り込めない〔無気肺〕の状態となり、呼吸困難となります。

肺野型肺がん
(肺野部肺がん)
(末梢型肺がん)
 肺がんの原発巣が、口より遠い部位である細い気管支から末端の肺胞に至る部位にあるとき、初期の段階では特別な自覚症状は現われません。

 〔肺野型肺がん〕で激しい痛みなどの症状が出てくるのは、がんが相当進行し、周囲に浸潤した段階であり、しばしば手遅れになります。

 定期的にレントゲン検査を受けて早期発見に努めなければなりません。

 肺がんは身体の他の部位に容易に転移します。

 肺がんの病態がかなり進行して、周囲の臓器に浸潤や転移するようになると、その部位に激しい痛みを感じるようになります。

 更に、肺がんが身体のどの臓器に転移したかによって特有な症状を呈するようになります。

肺がんの転移による症状
胸膜への転移  〔がん性胸膜炎〕となり、咳などの症状に加えて胸痛の症状が出てきます。更に進行して、多量の胸水が貯留するようになると、呼吸困難になります。

骨への転移  転移部分での激しい痛みがでます。酷いときは骨折してしまいます。

脳への転移  頭痛や嘔吐の症状が出現します。

 脳のどの部位に転移したかにより、視力障害や手足の麻痺などの症状がでてきます。

リンパ節への転移  咳がでたり、首のリンパ節が腫れます。

 左右の肺で挟まれた部位である縦隔へのリンパ節転移が進むと、上大静脈が圧迫されると〔上静脈症候群〕の症状がでます。

 上半身が浮腫み、紫色になり、呼吸困難となります。


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原因は何ですか?
〔原発性肺がんの原因〕

 原発性肺がんに限りませんが、どのような悪性腫瘍でも基本的な発生原因は細胞遺伝子の変異です。

 何らかの原因で遺伝子が変異し、自己増殖にブレーキがかからなくなる状態が起こったとき、それはがんと呼ばれます。

 喫煙が肺がんの最大の原因であることは誰でも知っていますが、肺がんの四大原因は次の四つとされています。

 東京電力福島第一発電所の原発事故以降、放射線の影響も無視できない重大な原因になってしまいました。

 ・タバコに含まれる発癌性物質
 ・放射線・放射能
 ・遺伝的感受性
 ・ウイルス

 特に喫煙による影響は極めて大きく、どれくらい喫煙したら危険なのか判断する方法に「喫煙指数」という指標が提案されています。

 この「喫煙指数」は「ブリンクマン指数」とも呼ばれ、1日当たりの平均喫煙本数と喫煙年数とを掛け合わせた数値です。

 〔喫煙指数〕=〔喫煙本数〕X〔喫煙期間〕

 たとえば、1日20本タバコを吸う人が、喫煙を30年間続けると、喫煙指数は600となります。

 特に、50歳以上で「喫煙指数」600以上の人は極めて危険な状況下にあるとされます。

 一説では、タバコ1本吸うと、寿命が5分30秒短かくなるといわれています。

 今までに短縮した寿命も含んでの話です。

 喫煙指数600の人の場合、既に2.3年分寿命が縮んでいる計算になります。

 (20本X365日X30年)X5.5分=1,204,500分短縮

 (1,204,500分)/(60分X24時間X365日)=2.3年短縮

喫煙指数と肺がんの危険性
喫煙指数 危険性
400以上 肺がんが発生しやすい状態
500以上 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の危険値
600以上 肺がん発生の高度危険値
1000以上 喫煙者の喉頭がん発症者の平均値
1200以上 肺がんに加え喉頭がん、胃がんのリスクが激高となる状態

 特に喫煙指数が1200以上となると、肺がんに加え〔喉頭がん〕になるリスクが極めて大となります。

 非喫煙者に比べて女性では約6倍、男性では約8倍です。

 男女差での喫煙の影響度では、喫煙指数が同程度の場合、女性の方が男性より重症化する傾向があります。

 あなたの場合、もう手遅れかも知れませんが、今からでも禁煙すればそれなりの効果はあります。

 余命がほんの少しだけ伸びる可能性は残っています。

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診断はどうやりますか?
〔原発性肺がんの検査〕

 肺がんでは、余命3ヶ月という末期段階になっても一見元気そうにしている人もいます。しかし、この凝りになるとちょっとした風邪でも命取りとなります。

 こうならないためには、早期発見、早期治療が不可欠ですが、検査の基本は「喀痰検査」と「胸部X線検査」です。診断が難しい場合には、「X線CT」や「ヘリカルCT」「MRI」などの画像解析検査が有用です。

 更に、これらの検査を行った上で、肺がんのがん細胞を確認する確定診断のための検査も行われます。

肺がんの検査
喀痰検査  肺の入口付近の太い気管支周辺の肺門部肺がんの検査には、「喀痰検査」あるいは「喀痰細胞診」という検査が有効です。

 採取した痰を顕微鏡で観察して、その中にがん細胞が含まれていないかを調べる検査です。

胸部X線検査  口から遠い部分の肺の細い気管支から肺胞に至る肺野部がんの検査には、「胸部X線検査」が有効です。

 胸部X線検査では、肺炎や肺結核、肺がん、肺気腫、胸水、気胸、縦隔腫瘍などの呼吸器系疾患の有無とその程度を知ることができます。

 肺がんがあると、不整な円形の白い影が観察されます。また、肺結核や肺炎での炎症があると境目のはっきりしない白い影が見られます。

画像解析検査  近年、コンピュータを用いた高度な画像解析検査法が実用化されました。肺がんの検査でも、胸部X線検査や喀痰検査だけでははっきりしない、がんの部位や広がりなどを詳細に調べるためにこれらの画像解析機器での検査が使用されます。

 主に使用される機器には、X線CTや短時間で広範囲の撮影ができるヘリカルCT、そしてMRIなどが使われます。


〔肺がんの確定診断検査〕

 肺がんと確定するためには、実際にがん細胞を採取し確認する生検が必要となります。このために、次のような方法で現実の病変部からがん細胞を採取したり、あるいは直接観察したりします。

確定診断検査
気管支鏡検査  最も一般的な方法は、気管支ファイバースコープという気管支鏡機器を病変部に挿入し細胞を直接的に観察して診断したりがん細胞を採取する方法です。

病変部細胞採取検査  病変部の細胞を採取して確認する方法です。具体的な方法としては、細胞採取用器具を気管支経由で病変部まで挿入して直接的に病変部細胞を採取する方法と、体外から病変部に向かって細い針を刺して細胞を採取する方法とがあります。


〔肺がんの臨床病期〕

 肺がんの進行度を調べる方法は、がん細胞の検査結果や胸部X線検査による方法だけでなく、転移などしている場合には、必要に応じてさまざまな臓器のX線CT検査やMRI、超音波検査、アイソトープ検査などを行います。

 肺がんの臨床病期は、次の表で示すように〔非小細胞がん〕の場合と〔小細胞がん〕の場合とで少々異なります。

 〔非小細胞肺がん〕の病期は「潜伏がん」「0期」の段階から「I期」~「Ⅳ期」に分けられますが、I期~Ⅲ期はさらにAとBに分けられます。

 〔小細胞肺がん〕ではこの分類に加えて「限局型」と「進展型」に分類することがあります。

非小細胞肺がんの臨床病期
潜伏がん  痰の中にがん細胞がみられるが、胸のどこに病巣があるか分からない早期の段階。

0期  がん所見が局所にあるが、気管支を覆う細胞の細胞層の一部のみにある早期の段階。

I期 A  がんが原発巣にとどまっている。大きさは3cm以下、リンパ節や他臓器に転移なし。

B  がんが原発巣にとどまっている。大きさは3cmを超え、リンパ節や他臓器に転移なし。

Ⅱ期 A  原発巣のがんの大きさは3cm以下。原発巣と同じ側の肺門のリンパ節に転移、他臓器には転移なし。

B  原発巣のがんの大きさは3cmを超える。原発巣と同じ側の肺門のリンパ節に転移、他臓器には転移なし。

 あるいは、原発巣のがんが胸膜、胸壁に直接およぶがリンパ節や他臓器に転移なし。

Ⅲ期 A  原発巣のがんが胸膜、胸壁に直接およぶが、転移は原発巣の同じ側の肺門リンパ節まで、または縦隔のリンパ節に転移しているが、他臓器には転移なし。

B  原発巣のがんが直接縦隔に拡がったり、胸膜へ転移(胸膜播腫)したり、胸水が溜まったり、原発巣と反対側の縦隔、首の付け根のリンパ節に転移しているが、他臓器には転移なし。

Ⅳ期  原発巣の他に脳、肝臓、骨、副腎などの肺の他の場所に遠隔転移がある段階。


小細胞肺がんで追加される病期
限局型  がんが片側の肺と近隣のリンパ節にとどまるもの。

進展型  がんが肺の外にまで拡がり遠隔転移が認められるもの。


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治療はどうやりますか?
〔原発性肺がんの治療方針〕

 肺がんの基本的治療法は、「外科療法」「化学療法」および「放射線療法」の三つで、最も効果があるのは外科療法(手術)です。

 早期肺がんでリンパ節への転移がない段階であれば70%以上が治癒可能です。

 しかし、一般的に肺がんの発見はかなり進行してからの場合が多く、外科手術を受けられるのは患者の僅か30%ほどしかありません。

 結局、治療法の選択は、がんの種類や発生部位、進行度、患者さんの体力などの状態によって行われます。

 小細胞がんで手術可能なのはごく初期の段階だけで、中心的療法は化学療法です。

 放射線療法が併用されることもあります。

 非小細胞がんでは、Ⅲ-A期までなら、手術が主体になりますが、それ以上に進行している場合には、抗がん剤治療を中心とした集学的治療となります。

〔肺がんの治療法〕

 基本的な肺がん治療法は、外科療法、化学療法、放射線療法の三つですが、その他にもレーザー療法や遺伝子療法などがあります。

 これらがどのように選択され、どのような効果が期待できるかなどの特徴を示します。

肺がんの治療方法とその特徴

外科療法  肺がん全体の外科手術による治癒率は50%程度です。

 外科手術の対象となる病期は、小細胞がんでは「I期」までで、非小細胞がんでは、「I期」~「Ⅲ-A期(Ⅲ期の軽度のもの)」までです。

 肺は生命維持のために非常に重要な臓器であり、どのような場合でも手術により切除可能なのは一方の肺の完全切除までです。がんの種類や発症部位、進展状況などによって、手術の方法が異なります。

外科療法の種類と特徴
〔一側肺全切除術〕

 気管支中央部に病巣がある場合、片側の肺の全部切除を行います。

 患者の負担が大きくなるので、気管支形成術の方が好ましいです。

〔肺葉切除術〕

 肺野部がんで、5つある肺葉のひとつに限局してがんがある場合、その肺葉だけを切除し、その肺葉に関連するリンパ節を郭清(かくせい:全面切除)します。

〔気管支形成術〕

 早期の肺門部がんの場合、病巣のある気管支と肺葉だけを切除し、残りの正常な気管支を繋ぎ合わせる手術です。

〔肺部分切除術〕

 肺野部がんで転移の可能性がない場合、肺葉中で病巣のある部分だけを切除します。

 微小転移などを見落とす可能性もあり、肺葉切除術の方が好ましいです。

〔リンパ節郭清の縮小術〕

 縦隔リンパ節転移の場合、転移の起こりやすいリンパ節を郭清し、転移の起こりにくいリンパ節の郭清を省略して切除範囲を小さくします。

〔胸腔ドレーン〕

 肺切除とリンパ節郭清実施後に、手術後の胸腔に出てくる出血や残った肺から漏れてくる空気を抜くための管(胸腔ドレーン)を1~2本挿入します。


化学療法  化学療法が最もよく効くのは小細胞がんで、90%ほどの効果があります。

 医薬が効いている間は延命効果があるので、副作用を克服して服用を続けることが肝要です。

 非小細胞がんへの抗がん薬の有効率は50%程度です。

 手術などで主病巣を治療後に抗がん薬を併用すれば、腫瘍縮小効果や症状の改善、生存率向上、延命が期待できます。

放射線療法  限局型の小細胞がんに抗がん薬治療に加えて放射線療法を併用すると効果が高まります。

 手術不能な非小細胞がんでは、放射線療法が中心的治療法となります。

 小さな肺がんに対しては、ピンポイントで放射線を集中させる「定位放射線治療法」があります。

 また、加速した水素原子核をがんだけに打ち込み、正常細胞への影響を抑える「陽子線治療法」もあります。

レーザー療法  がんの範囲が気管支鏡の可視範囲にある肺門部の早期がんに対して、気管支鏡でがんを観察しながら、病巣にレーザーを照射する治療法です。

 高出力Nd:YAGレーザーを照射する「腫瘍焼灼法」と低出力レーザーによる「PDT:光線力学的治療法」とがあります。

遺伝子療法  非小細胞がんの多くでP53がん抑制遺伝子の変異が確認されています。

 正常なP53遺伝子をがん細胞に導入して抗腫瘍効果を高めようとする方法ですが、現在は臨床試験段階です。


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予後はどうですか?
〔原発性肺がんの予後〕

 肺がんの予後は、がんの種類が「非小細胞がん」だったか、「小細胞がん」だったかによって大きく異なります。

 また、当然のことながら、がんの進行度(病期)によっても異なります。

 そして、患者自身の一般的健康状態などにも深く関連しますが、目安としての一例を示せば次のようになります。

 肺がんは本質的に予後不良のがんであり、完全に治癒するためには、早期発見、早期治療以外に方法はありません。

肺がんの予後の例
非小細胞がん  病期により外科手術可能な場合と、手術が不可で化学療法や放射線療法などだけで治療した場合で5年生存率や1年生存率などが異なります。

非小細胞がんの予後例
Ⅰ-A期
Ⅰ-B期
外科手術実施の場合
 5年生存率:70%
Ⅱ-A期
Ⅱ-B期
外科手術実施の場合
 5年生存率:50%
Ⅲ-A期


Ⅲ-B期
外科手術可能な場合
 5年生存率:25%

外科手術不可で放射線療法と化学療法合併療法の場合
 2年生存率:40~50%
 5年生存率:15~20%
Ⅳ期 化学療法を受けた場合
 1年生存率:50~60%

小細胞がん  小細胞がんで手術の対象となるのは、病期のI期だけに限られます。それ以降は、限局型では放射線療法と化学療法の合併療法が行われます。また、進展型で化学療法が行われます。

小細胞がんの予後例
限局型 放射線療法と化学療法の合併療法で治療の場合。
 2年生存率:約50%
 3年生存率:約30%
 5年生存率:約25%
進展型 化学療法を受けた場合。
 3年生存率:約10%


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原発性肺がんにはどんな薬が使われますか?
〔原発性肺がんの薬〕

 肺がん治療に用いられる抗がん剤療法は、非小細胞がんの場合と小細胞がんの場合で異なります。

〔非小細胞がん治療薬〕

 非小細胞がんは肺がんの約8割を占め、進行は遅いものの抗がん剤が効きにくい特徴があります。

 最近の標準的治療法は、プラチナ製剤に別の抗がん剤を加えた二剤併用療法となっています。

 それぞれの抗がん剤には特有な副作用もあるので、適用に当たってはさまざまな工夫も必要となります。

二剤併用療法の例
IP療法 イリノテカン+シスプラチン
TC療法 パクリタキセル+カルボプラチン
DC療法 ドセタキセル+カルボプラチン
GP療法 ゲムシタビン+シスプラチン
NP療法 ビノレルビン+シスプラチン


〔小細胞がん治療〕

 小細胞がんは進行が速く多くの場合に転移がみられます。

 がんが特定の範囲にとどまっている限局型と拡がっている進展型とがあります。

 抗がん剤はよく効き、限局型では治癒が期待できます。

 進展型では一時的によくなったように見えても予後は決してよくありません。

抗がん剤療法の例
IP療法 イリノテカン+シスプラチン
PE療法 シスプラチン+エトポシド



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