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〔乳がん〕 |
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女性の乳房は、左図(乳房の構造図)に示すように、鎖骨の下あたりにあって多くの組織からできています。 〔乳がん〕は、女性が母乳をつくるところである「乳腺」にできる悪性腫瘍です。 〔乳がん〕の約90%は〔乳管がん〕と呼ばれるもので、次いで5~10%の〔乳腺小葉がん〕があります。その他にもごく僅か特殊な乳がんがあります。 |
〔乳がん〕には、他のがんのようなはっきりした症状はほとんどなく、通常は乳房のしこりで発見されます。 |
乳がんは、女性が母乳を作る乳腺組織である乳管や乳腺小葉、腺房上皮にできる悪性腫瘍です。 乳がんの約9割は乳管から発生する乳管がんで、次いで1割ほどの乳腺小葉がん(小葉がん)があります。稀に、ごく僅かの特殊な乳がんもあります。 乳がんの好発年齢は40歳代の女性となっていますが、約1%ほどの割合で男性乳がんもあります。 乳がんは世界でも日本でも女性の死亡原因のトップとなっていますが、早期発見すれば治癒率が高いとされるがんです。 上図(乳がん死亡者数の図)に見る如く、1950年以降、日本での乳がんによる死亡者数は年々増加傾向にあり、2010年以降では毎年12,000人以上の女性が亡くなっています。 乳がんは、自分でも乳房のしこりを確認し、発見できる可能性がある数少ないがんですが、早期発見、早期治療のためには、日ごろのセルフチェックの他、定期的な検診が必要です。 乳がんは、比較的小さいうちに、乳腺組織から外れて血液やリンパの流れに乗って肺や肝臓、骨などの全身へと転移する性質があり、これを〔転移性乳がん〕と呼んでいます。 |
乳がんの主な症状は、乳房のしこりと呼ばれる腫瘤であり、乳がんが増殖し始めると、先ずしこりが現われます。 しかし、小さなしこりができても、初期には食欲が減退したり、体調が悪くなることもないので気づき難いです。 初期の症状としては、乳房の変化が唯一の症状で、この変化を見逃して放置すると危険になります。 乳がんの特殊型として、乳房の広い範囲での浮腫や発赤を伴い、急速に進行する〔炎症性乳癌〕と呼ばれるものがあります。 また、乳頭近傍が湿疹様に変化して、しこりをつくらない〔乳房のパジェット病〕と呼ばれるものもあります。 乳がんは、初期の段階から血流やリンパ流に乗って肺や肝臓、骨などの全身臓器へ転移しやすい特徴があります。 血行性転移の場合には、骨や肺、肝臓への転移が多くなります。 また、リンパ節転移の場合には、腋窩(えきか)や鎖骨下、胸骨傍への転移頻度が多く、これら部位への転移個数は、治療後の予後に強く影響します。
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乳がん発症の機序は明確には分かっておりませんが、乳がんを発症させる危険因子についてはかなりのことが分かっています。 危険因子としては、大きくは三つがあります。
・遺伝性因子 危険因子ごとの特徴などを下記の表で示しますが、中でも閉経前の女性の喫煙は非常にリスクが高く、喫煙女性は非喫煙女性の3.9倍も高い乳がん発症率となっている点が特筆されます。
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乳がんの発見は、定期的な自己検診と定期健診とにより行うのが重要です。 自己検診は、自分自身で乳房の状態を検査する方法です。 定期健診とは、各市町村などで定期的に行われているもので、女性の場合にはマンモグラフィーなどによる乳がん検診があります。
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乳がんの検査機器を使用した検査方法には、次の方法があります。
・単純乳房撮影法(マンモグラフィー)
これらの機器診断では、医師による視診や触診などで発見できなかったような初期段階の微細な乳がんの発見ができます。
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乳がんの病期(ステージ)は、基本的に次のような三要素により決定されます。
・乳がんが乳腺の中でどれくらい拡がっているかの腫瘍の大きさ 乳がんの病期については、その進行状態から次の5段逢いに病期分類されます。
・0期 そして、Ⅱ期、Ⅲ期については更に細かく区分されています。乳がんの治療はこれらの病期に応じて治療方針が設定されます。
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乳がんの治療は、基本的に「外科療法」や「化学療法(薬物療法)」「放射線療法」の三つを組み合わせて行われます。 外科療法と放射線療法の二つは、治療部位にだけ効果が期待されるので「局所療法」と呼ばれていています。 そして、化学療法(薬物療法)の効果は、全身におよぶために「全身療法」と呼ばれます。 乳がんの治療方針は、乳がんの病期に対応して、これらの治療法を組み合わせて定められる「集学的治療法」として行われます。 乳がんの集学的治療法はかなり進んでいて、他のがんの治療法の手本となっています。 |
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乳がんの病期が、0期~Ⅲ期の場合には、手術を基本とした治療が行われます。 手術前に抗がん剤を服用して、腫瘍の縮小化を行います。 乳がんの外科療法には、次のような療法があります。
・乳房温存術
以前には乳房全体を取り去る手術が普通でしたが、がんが小さく、リンパ節転移もしていない場合には乳房全体を取り去っても温存しても、その後の再発率や生存率に大きな差異はなく、乳房温存術が主流となっています。
手術によりリンパ節を郭清した場合には、腕が挙げられなくなる後遺症が出ることもあるため、手術後には早い時期からリハビリテーションを行う必要があります。 |
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乳がんは、多くのがんの中でも抗がん剤による化学療法が比較的に効果を発揮しやすいがんとして知られています。 乳がんの病期がかなり進行してしまい、外科手術が困難となってしまった場合には、基本的に化学療法が行われます。 また、最近では、外科手術に先立って化学療法を施し、がんを縮小させてから手術する術前化学療法も積極的に適用されるようになってきました。 更に、手術後の再発を予防する方法として、術後化学療法も行われるようになりました。
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乳がんの放射線療法は、多くの場合、外科手術の温存療法後の化学療法に併用して行われます。 乳房切除後の転移予防として広範囲のリンパ節に放射線を照射する場合もあります。 また、進行がんの場合には、乳房切除後の胸部にも照射することもあります。 |
乳がん全体での五年生存率は80~90%です。 大病院やがん専門病院で治療を受けた患者の十年生存率は、次のようになっています。
乳がん手術後に再発するのは五年目以内が多いですが、最も再発の多い時期は手術後2~3年目です。 乳がんは発生しても進行速度は遅いので、手術後五年以降でも再発することが全くないわけではなく、稀には十年後以降に再発することもあるので、手術後の定期検査は重要です。 乳がんには抗がん剤や放射線療法が効果を発揮しますので、たとえ再発しても早い段階で発見できれば、高いQOL(生活の質)を得ることも可能です。 |