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〔卵巣がん〕 |
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卵巣に発生するがんが〔卵巣がん〕です。 |
〔卵巣がん〕による死亡率は、50歳代以降増加し高齢者ほど高くなります。 |
卵巣がんは、子宮の両脇にある親指大の楕円形をした臓器で、いろいろな腫瘍ができることがあります。 卵巣にできる腫瘍のうち80~85%は良性腫瘍ですが、残りは悪性腫瘍で、これは卵巣がんと呼ばれます。 卵巣に発生する腫瘍はその発生する組織により区分されていて、最も多く発生するのは卵巣表面細胞に由来する上皮腫瘍です。 これには良性腫瘍と悪性腫瘍(卵巣がん)、およびその中間的な性質の腫瘍とがあります。 卵巣がんの主なものは、卵巣表面細胞から発生するもので、これが全卵巣がんの90%を占めています。 卵巣がんの中で二番目に多いのは、卵子のもとになる胚細胞から発生するがんで「卵巣胚細胞腫瘍」と呼ばれています。 卵巣がんの発生数は、40歳代から増加しはじめ、50歳代前半で最大となり、以降は横ばいとなります。 80歳代以降は再度増加する傾向にあります。卵巣がんによる死亡率は50歳代以降増加します。 卵巣がんは、進行度合いに応じて病期が「I期」「Ⅱ期」「Ⅲ期」および「Ⅳ期」に別れていて、5年後、10年後の生存率は次のようになっています。(これは、あくまで参考値としてご覧ください。)(国立がんセンターのホームページ掲載情報) 5年生存率、10年生存率というのは、治療成績の統計的な表し方で、治療後それぞれ5年経過、10年経過して生存している割合を意味しています。
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卵巣がんには「転移しにくいがん」と「転移しやすいがん」の二つのグループがあり、それぞれにより症状の出方に違いがあります。 どちらのタイプの卵巣がんであっても、卵巣は腹部にあって腫瘍ができても初期段階ではほとんど自覚症状はありません。 多くの場合、転移した後の自覚症状で発見されることになります。 卵巣がんで最も多く起こる転移は、卵巣の表面からがん細胞が腹膜に拡がっていく「腹膜播種」というパターンです。 ちょうと卵巣表面から種を撒くように拡がるという感じです。 当然、転移する場所は卵巣に近い部位が多いですが、卵巣から離れた横隔膜やリンパ節への転移もあります。
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卵巣がんの発症する組織型は多種多様で、単一の原因では説明できませんし、真の原因もよくは分かりません。 いずれにしても単一の原因というものはありません。 卵巣がんの発生原因としては複数の要因が関与していると考えられていて、現在までに挙げられている要因には、次のようなものがあります。
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卵巣がんの検査・診断は、概ね次のように行われます。
・腫瘍の存在確認 |
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腫瘍がある程度大きくなり、下腹部に圧迫感がある場合には、婦人科診察だけでも腫瘍の有無、それが卵巣の腫瘍か子宮筋腫かなどが分かります。 |
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内診で腫瘍の存在が疑われる場合には、超音波やX線CT検査、MRI検査などの画像診断によって、卵巣腫瘍か、子宮の腫瘍か、腫瘍の大きさ、腫瘍の内部の構造、がんの進行度、転移の有無などを詳細に調べます。 しかし、がんの直径が1cm以下の小さなものでは明確にわからない場合もあります。 |
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卵巣腫瘍が両性の腫瘍か悪性の腫瘍かを区別するために、腫瘍マーカーという血液検査の方法があります。 血液中に存在する「CA125」などの糖たんぱく質が主な腫瘍マーカーで、これらが異常な高値を示す場合には悪性がんの可能性が高くなります。 検査結果が出るまでには1~2週間くらいかかります。 腫瘍マーカーの「CA125」は、進行した明らかな卵巣がんでは高い陽性率を示しますが、早期がんでは陽性率が低いこと、若い女性の場合に卵巣がんでなくても軽度陽性の人もいることから、卵巣がんの早期発見用としてはあまり有用ではありません。 このマーカーは、卵巣がんの治療中や治療後に繰り返し測定することで、治療効果の判定や経過観察には有用な指標となります。 |
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腫瘍マーカーで調べてもはっきりしない場合、開腹して腫瘍細胞の一部を採取して、細胞検査・組織検査を行うことがあります。 特に、腹水や胸水が溜まっている場合には、生体組織による検査が有用です。 最終診断は、病理検査で、良性腫瘍か悪性腫瘍か、がんの組織型が診断されます。 |
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卵巣がんと診断された場合、治療方針を定めるためにも、がんがどの程度進行し、転移しているかなどを検査しなくてはいけません。 がんの進行程度・拡がり程度を「病期」と呼び、「I期」~「Ⅳ期」まであります。 腹膜播種のような転移の状況を画像診断だけで発見することは困難なので、病期の確定は手術所見によって決められます。 手術時の転移状況の直接的観察と、摘出物の検査で行います。 病期がI期~Ⅱ期の場合には、卵巣がんは完全に切除可能ですが、病期がⅢ期~Ⅳ期になると「進行がん」といわれ、手術だけで完全に除去することはできません。
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病期がI期とⅡ期で、転移のないがんや、転移があってもその範囲が、卵巣の周囲の卵管や子宮、直腸、膀胱などの腹膜に限られている場合には、卵巣がんは手術で取り除くことができます。 しかし、病期がⅢ期、Ⅳ期の卵巣がんで転移が進行している状態では、手術だけでがんを取り除くことはできません。 除去し切れなかったがんは、放射線療法や化学療法による治療が必要となります。 結局、卵巣がんの治療方針は、その進行度によって、三つの方法のどれか単独、あるいは組み合わせで対応することになります。
・外科療法 |
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卵巣がんの正確な診断は手術によって行われ、その結果に基づいてその後の治療方針が決められます。 卵巣がんの手術で切除する範囲などは、がんの進行度・転移の状態や年齢などによって変わります。 卵巣がんの手術で切除する範囲は、多くは、「卵巣の切除」および「大網の切除」の範囲で行われます。 転移が拡がっている場合には、更に広い範囲の切除が行われることもあります。
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放射線療法では、高エネルギーX線を身体外から照射する方法と、放射性リンの溶液を腹腔内に注入し、内部から腹膜の表面を照射する方法があります。 なお、手術後の卵巣がんに対する放射線療法は、最近は脳に転移した腫瘍に対して使用されるますが、その他の部位に対してはあまり使用されません。 代わりに化学療法が行われます。 |
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化学療法とは「抗がん剤」を使用した薬物療法のことで、抗がん剤を内服するか静脈注射して行われます。 抗がん剤を使用するの目的は、手術で除去し切れなかったがんに対する治療です。 抗がん剤は、がんを攻撃しがん細胞を障害しますが、同時に正常な細胞にも影響を与える副作用を伴います。 主な副作用は、血液中の白血球や血小板の減少、貧血、嘔吐、食欲低下、脱毛、手足のしびれなどです。 抗がん剤は副作用があっても、がんの消滅に不可欠の医薬なので、我慢して使い続けることが大事です。 化学療法による治療は、がんのタイプ、転移の状態、年齢、がん以外の病気の有無などにより異なりますが、状況に応じた最も有効とされる「標準的治療法」が定められています。 なお、新しい治療法が試みられる「臨床試験」もあります。 新しい治療法が現在の標準的治療法より優れているとは限りませんが、慎重な臨床試験の結果で新しい治療法が優れていると判定されれば、それが次の「標準的治療法」となります。 患者は希望すれば、現在の標準的治療法を受けるか、臨床試験中の新しい治療法を受けるか、選ぶことができます。 |