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〔前立腺肥大症〕 |
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この病気については 〔男性特有のがん〕 の項目でご説明しておりますので、そちらを参照してください。 このページでは、特に重要な男性特有の病気について概説しています。 |
睾丸や陰茎と関連の深い男性性器のひとつとして前立腺があります。 |
前立腺は本来であれば、高齢化と共に役目を終え萎縮して小さくなるのですが、人によっては、増殖して肥大することがあります。これが〔前立腺肥大症〕です。 |
日本では、以前には前立腺は高齢化とともに萎縮し小さくなるのが普通でしたが、最近では、食生活の向上や欧米化などのためか、80%の男性が80歳までに前立腺肥大になるといわれています。 |
前立腺は男性に固有な臓器で睾丸や陰茎と関連の深い性器のひとつです。 前立腺は前立腺液という精液を分泌しますが、この液は射精された精液中の精子を保護し、エネルギーを補充する役割を果たしています。 前立腺液と精巣からの精子、精嚢からでる液体がまざって精液となります。 高齢化に伴い、生殖能力が必要でなくなるので、本来なら前立腺は萎縮して小さくなるのですが、しばしば萎縮しないで肥大化することがあります。 前立腺は、膀胱の下側に位置して存在し、尿道が前立腺の内部を貫く形で走っています。 このため、何らかの原因で前立腺が肥大化すると、尿道が圧迫される形となり、排尿が困難になったり、頻尿になったりなど様々な症状が発症してきます。 前立腺肥大症は、加齢と共に前立腺が肥大化する疾患で、それにより尿に関する多くの障害が発症するわけです。 以前は、日本人の男性は多くの場合、高齢化と共に前立腺は萎縮し小さくなったのですが、近年の食生活の欧米化や質の向上からか、40~50歳代で何らかの症状が出はじめ、60歳代では頻尿や放尿力低下などの症状を訴えるようになります。 そして80歳までに、80%以上の男性では前立腺肥大症になるといわれています。 大部分の男性では、最終的には前立腺肥大になり、一種の老化現象とも考えられることから、男性の更年期障害のひとつなどと呼ばれることもあります。 |
前立腺肥大症による最大の問題は排尿障害で、尿が出にくくなったり、昼夜を問わない頻尿になったり、排尿後にまだ尿が残っているという残尿感があったり、我慢できずに尿漏れしてしまうなどの症状がでます。 最初の症状は、夜間におしっこが近くなることから始まり、徐々に症状が重くなります。 症状の程度により「第1期」~「第3期」までに分類されています。 前立腺肥大は、肥大した前立腺組織が尿道を圧迫するために起こる病気で、がんではなく良性であり、生命の危機にはなりませんが、症状を放置すると、最終的には尿閉という尿が全くだせなくなる状態になってしまいます。 |
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前立腺肥大になると、主症状として排尿障害が現れ、付随するいろいろな症状も現れ障害の重さも異なりますが、多くの共通的な症状が現れます。 ここでは、先ずどのような症状がでるのか示しておきます。
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第1期は、いろいろな症状が出はじめる時期です。昼間のトイレ回数が増え始め、夜間にもトイレのために起きるようになります。排尿時の勢いがなく、尿量も少なくなります。また、尿が出はじめるまでに時間がかかるようになります。
尿の出が悪くなる。 |
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第1期の症状に加えて、排尿が終わった後でも、まだ尿が残っている感じ(残尿感)が強くなります。 ときには、おしっこが間に合わず、チビッてしまうことが起こります。
排尿が困難となり、腹部に力を入れないと出ない。 |
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尿道の圧迫がさらに進行し、第1期、第2期の症状に加えて、昼夜を問わずトイレに行く回数が非常に多くなります。 ひどくなると排尿にかかる時間がとても長くなり数分もかかることがあります。 また、更に悪化すると、尿がまったくでない尿閉の状態になってしまいます。 この状態になると極めて危険で、緊急手術も必要となることがあります。
排尿量が極端に減少する。 |
前立腺肥大の原因は、まだはっきりとは解明されていないのが現状です。 現象的には加齢による男性ホルモンの分泌の変化が影響しているらしいのですが、前立腺肥大が起こるメカニズムなどは分かっていません。 |
50歳以降の男性であれば、前立腺肥大になる可能性は誰にでもあります。 前立腺肥大は泌尿器科での検査で容易に診断されます。 診断においては「排尿障害の程度」「前立腺の大きさ」が調べられますが、前立腺肥大と同様な症状を招く疾患に「前立腺がん」があるため、これとの鑑別(区別)が必要となります。 前立腺肥大の具体的な検査は「問診」「尿検査」「直腸診」「超音波診断」「内視鏡検査」および「血液検査(腫瘍マーカー測定)」などとなります。 前立腺肥大の程度を表す方法として、国際前立腺症状スコア(I-PPS)という質問表があります。 これは尿の勢いや排尿回数、残尿感などを点数化したもので、一般に7点以下なら軽症、20点以上なら重症とされています。
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前立腺肥大の程度を表す方法として、国際前立腺症状スコア(I-PPS)という質問表です。 それぞれの答えると、その症状に応じて点数が付けられます。 この合計点が診断基準で、7点以下なら軽症、20点以上なら重症と診断され即時治療が必要です。
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前立腺肥大症であっても、日常生活に特別な不便がない場合には、特別な治療は必要ありません。 しかし、頻繁にトイレに入るようになったり、頻尿のために外出が億劫になったり、夜間頻尿などの症状があるなら、治療が必要です。 前立腺肥大症の治療方法は、大きな区分としては「薬物療法」と「手術療法」とがあります。 この他にも「民間療法」と呼ばれるものもあります。 |
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前立腺肥大症の薬物療法として使用される主な医薬は、次のようにいろいろあります。
・交感神経α1遮断薬
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前立腺肥大症の手術療法には、次のような方法があります。
・経尿道的前立腺切除術
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前立腺肥大症の改善方法として、漢方薬の使用や民間療法と呼ばれるものがありますが、必ずしも医学的な根拠が明確ではありません。 薬物療法や手術療法によらないで、民間療法を行おうとする場合には、医師にご相談することをお勧めします。 |
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前立腺肥大症になり、治療を開始したら、次のような点に注意する必要があります。 前立腺肥大症の治療薬以外の医薬のうち、利尿剤や抗コリン剤、抗うつ剤、抗ヒスタミン剤などの服用は、急な尿閉などの症状を引き起こすことがあるので、医師にその旨を伝えておき、医薬の服用について適切な指導を受けてください。 とかく、夜間頻尿が心配になり、夜間の水分を控え気味になりますが、あまり水分摂取を抑えてしまうと、脱水症状となり、最悪時には腎機能障害を招くこともあるので、ある程度の水分の摂取はしなくてはなりません。
手術後は手術部を圧迫するような運動は控え、安静にすることは勿論ですが、水分をこまめに摂取し、排尿することが大切です。 |