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〔高血圧症〕 |
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人間の身体に血液を循環させるために、ポンプである心臓は収縮と拡張を繰り返しています。 |
このような心臓の動きに伴う血圧の変化を表す言葉として「収縮期血圧」および「拡張期血圧」とがあり、それぞれに最適範囲が存在します。 |
自覚症状が乏しいといっても、〔高血圧症〕になると〔動脈硬化〕の症状が着実に進行し、非常に危険な次のような疾患などの原因となります。
・脳溢血
厚生労働省発表の2006年度の「高血圧症有病者」は約3970万人、「正常高値血圧者」は約1520万人で、合計すると約5490万人です。 |
人間の体に血液を循環させるために、ポンプである心臓は毎分60~70回くらいの頻度で収縮と拡張を繰り返しています。 この様子は手首などに親指を当ててみるとドクンドクンと打っている脈拍で分かります。 心臓が収縮して、血液を身体に押し出す瞬間、血管には強い圧力が掛かります。この時に示す最高血圧を「収縮期血圧」といいます。 逆に、一旦収縮した後に心臓が拡張するときには、血圧は一番低くなり、この時の最低血圧を「拡張期血圧」と呼んでいます。 二つの血圧値には、それぞれに最適範囲があり、どちらか一方でもその最適範囲を逸脱して高くなる状態が〔高血圧症〕です。 |
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世界保健機構(WHO)が定める高血圧の基準値を示します。
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同じ人でも、測定するときの心身の状態、測定環境、測定タイミング、測定時の姿勢などいろいろな要因によって、血圧値は変化します。 一般的な傾向としては、日中の血圧が高く、睡眠時の血圧は低くなるのが普通です。 ポンプである心臓の血液を押し出す力が強くて血液量(心拍出量)が多くても、あるいは、輸送経路である血管や末梢血管の抵抗が大きくても血圧は高くなります。 このように心臓の状態と血管の状態とで現実の血圧は決まってくるわけです。 日本高血圧学会が高血圧治療ガイドラインとして定めた高血圧症の分類を左図に示します。 高血圧症かどうかの判定は、血圧の値により多くの段階が定められており、高血圧症といっても軽度のものから重症までといろいろな段階があります。 図で分かるとおり、一口でいえば、収縮期血圧(最高血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(最低血圧)が90mmHg以上なら高血圧症です。これはWHOの基準と一致しています。 |
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通常、高血圧症には明確な自覚症状というものがありません。逆にいえば、自覚症状が出るときには重篤な症状であることが多い病気なのです。 初期の段階では、自覚症状がないために放置されることが多い病気でもあります。 このため、高血圧症は、しばしば「サイレントキラー(沈黙の殺し屋)」という異名で呼ばれます。自覚症状に乏しいからこそ危険な病気なのです。 自覚症状が乏しいといっても、高血圧症になると「動脈硬化」の症状が着実に進行し、非常に危険な脳溢血や脳血栓、脳梗塞、心筋梗塞、腎硬化症などの合併症を引き起こすこととなります。 最悪の場合には、突然死を招くこともあります。 高血圧症の症状が出るときには、病状はかなり深刻な状態と考えなくてはなりませんが、自覚される症状は頭痛、めまい、耳鳴り、肩こり、動悸、息切れなどです。 これらの症状は高血圧症特有の症状ではないため、症状だけで高血圧を早期発見することは難しいのです。 頭痛やめまい、肩こりなどの症状が認められる場合には、念のため血圧測定をした方がよいでしょう。 |
高血圧には〔本態性高血圧症〕といって原因が特定できない高血圧症と、〔二次性高血圧症〕といって、腎臓病や内分泌系の疾患などがあり、それが原因となり引き続いて発症する高血圧症とがあります。 日本人患者の場合では、95%が本態性高血圧です。 本態性高血圧症は、さまざまな原因があるものの、どんな検査をしてもその原因が見つからない、特定できないという高血圧症です。 本態性高血圧症の原因の特定は困難ですが、想定される原因として、少なくとも遺伝的な要因によるものと、生活習慣的な要因によるものとがあります。 遺伝的な原因は何ともしようがないけれども、生活習慣的なものはそれを改めることで、それなりの改善効果は期待されます。
一方、二次性高血圧症の場合には、腎臓病や内分泌系の異常などの原因が特定されます。 |
高血圧の診断は、正式には水銀血圧計か、それと同じ程度の正確さをもつ自動血圧計で測定した数値によって診断します。 血圧値は測定する都度、変化してしまうので、測定結果を正確にするためには、15分間くらい安静にしていて、その後に測定するのが望まくなります。 測定の直前にコーヒーなど刺激性の飲料などは飲まない方が信頼できる測定値が得られます。当然、測定前の喫煙は禁止です。 高血圧症かどうかを正式に測定する方法としては、指先や手首で測定するタイプの簡易型血圧計は使用されません。 高血圧症かどうかの判断は、上腕部(二の腕)を、心臓とほぼ同じ高さに上げた状態で測定した結果で行います。 高血圧症の判定基準値は、収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上となっています。 日本では、先に図で示したように日本高血圧学会が日本人向けの「高血圧治療ガイドライン」というものを発表しています。 この図で分かるように、高血圧症の段階はかなり細かく分割されています。高血圧症状が進行すると人間の身体への影響がそれだけ大きいということを意味しています。 |
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病院などで血圧を測定しようとすると、それだけで緊張してしまい、普段より高めの測定値が出てしまう人もいます。 お医者さんや看護師さんの前に出ると緊張してしまい、そのときだけ血圧が高くなるので「白衣高血圧症」などと呼んでいます。 最近では、簡易型とはいえ家庭で簡単に血圧測定できる機器も発売されています。 そのような機器を用いて、自宅で毎日、定められた時刻に測定する方法も勧められています。 |
高血圧を治療するには、本来ならその根本原因に基づいて治療すべきですが、現実問題として、高血圧の原因というのはなかなか特定することができません。 高血圧症になる原因には、遺伝的なもの、何らかの原因疾患がありそれに引き続いてなる高血圧症、更に日常の生活習慣に起因する場合などがあります。 従って、高血圧症の治療方針は、「原因疾患の治療」「生活習慣の改善」および「薬物療法」などとなります。 いずれにしても、先ずは正しい生活習慣を実行することは不可欠となります。 |
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二次性高血圧症の場合には、原因となる基礎疾患として、腎臓病や内分泌系の疾患などが特定されますので、基本的にその原因疾患の治療を行うことが不可欠です。 この場合には、原因疾患が改善されれば、高血圧症の改善も期待されます。 |
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生活習慣で高血圧を誘発するものとしては、食塩などの摂取量が多すぎる場合、運動不足の場合、過度な肥満の場合などがあります。 高血圧症の真の原因が分からない本態性高血圧症の場合でも生活習慣の改善はそれなりの効果があります。 一般的に生活習慣で改善すべきものは「食生活」「肥満」「運動」「ストレス」および「その他の生活習慣」などです。 これらに留意して生活すれば高血圧症を悪化させることはなくなります。
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生活習慣の改善などで血圧を正常領域まで下げられない場合には、最終的に血圧降下剤などの医薬による対症療法的治療が必要となります。 血圧降下剤は一度使用し始めると一生涯、服用を続けなければいけないこともありますが、服用を続けている限りは安定した血圧を維持することができるようになります。 現在では、非常に優れた血圧降下剤が開発されているので、生活習慣の改善とともにこれらの医薬を併用することで、日常生活に支障をきたすことのない程度には治療ができます。 高血圧症の薬物療法に使用される医薬には、次の藻のなどがあります。
・サイアザイド系利尿薬 |