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〔血液・造血器のがんとは〕 |
骨の中心部の骨髄中には、将来、全ての血液成分の元となる「造血幹細胞」というものが存在します。この造血幹細胞は、二つの大きな特徴をもっています。 第一の特徴は「自分自身と全く同じ造血幹細胞」を複製する自己複製能力です。 造血幹細胞は血液産生のために次々と消費されますが、この自己複製能力があるために尽きてしまうことはありません。 第二の特徴は、全血液成分へ分化する能力です。 造血幹細胞は、次々と分化して、赤血球や白血球、血小板などのもとになる各種の前駆細胞に変化し、更に成熟して赤血球、白血球、血小板成分となって血流中に出ていきます。 |
〔血液のがん〕とは、造血幹細胞がさまざまに分化していく過程で異常が起こり、発生する悪性腫瘍のことをいい、〔造血器腫瘍〕とも呼ばれます。
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〔白血病〕は、何らかの原因で幼若で未熟な白血球細胞ががん化し、骨髄内で限りなく増え続け骨髄を占拠し、正常細胞が産生されなくなる病気です。 これは〔血液のがん〕であり、このようながん化した幼若な細胞は「白血病細胞」と呼ばれます。 〔白血病〕になると、末梢血内での正常な血液細胞が減少することで、感染症や貧血、出血傾向などの症状が出現します。 更に、白血病細胞は、さまざまな臓器に浸潤して障害を起こすようになります。 〔白血病〕には、非常に多くの種類があるのですが、造血過程でどの段階の細胞ががん化するかに由来して、〔骨髄性白血病〕と〔リンパ性白血病〕に大別され、それぞれに急性と慢性とがあります。 |
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骨の中心部にある骨髄内で造られている血液細胞は、赤血球、白血球、血小板という三要素から成り、この内の白血球は顆粒球、リンパ球、単球に分けられます。 すべての血液細胞は骨髄にある造血幹細胞から枝分かれしながら成長・成熟して作られるのですが、骨髄系の造血細胞が腫瘍化し、分化・成熟能を失ってしまうのが〔急性骨髄性白血病(AML)〕です。 分化・成熟能を失った細胞は幼若なままの形態であり芽球と呼ばれます。 〔急性骨髄性白血病〕では、白血球だけが増加し赤血球が減少してしまうため、身体に酸素を運搬することが出来なくなります。 この結果、全身の倦怠感や息切れ、ふらつきなどの貧血症状が現れ、更に大量出血や感染症に罹り易くなります。 通常の血液検査で、白血球数の異常増加、貧血、血小板減少症などが認められ、白血病が疑われるときは、直ちに骨髄穿刺により精密検査して最終診断が確定されます。 |
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骨の中心部にある骨髄では、白血球、赤血球、血小板という三要素からなる血液細胞が作られます。 この内、白血球には、顆粒球、リンパ球、単球とがあります。 本来、骨髄ではやがて成熟した血液細胞となるべき血液幹細胞(造血幹細胞)と呼ばれる未成熟細胞が作られますが、この血液幹細胞は「骨髄系幹細胞」または「リンパ球系幹細胞」になります。 骨髄系幹細胞は成熟して、赤血球や血小板、顆粒球という3種類の血液細胞のどれかひとつになります。リンパ球系幹細胞は、成熟して白血球となります。 ところが、何らかの原因で骨髄や体内を流れる血液中に異常に多くの白血球が増殖する場合があり、これが〔慢性骨髄性白血病(CML)〕です。 |
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〔急性リンパ性白血病〕は白血病の一種で、〔ALL(Acute Lymphoid Leukemia)〕とも呼ばれる病気です。 ALLは、リンパ球の造血細胞が腫瘍化し、分化・成熟能を失ってしまう疾患です。 〔急性リンパ急性白血病〕では、リンパ球系が増加するため、顆粒球系、赤血球系、血小板系は減少します。 T細胞型の急性リンパ急性白血病では、末梢血における白血球が著明に増加する特徴があります。 〔急性リンパ性白血病〕では、脾腫を見ることがありますが、巨脾になることはありません。 小児の急性白血病の多くは、〔急性リンパ性白血病〕です。欧米では白血病の中で〔急性リンパ性白血病〕が大部分を占めますが、日本では〔急性骨髄性白血病〕の方が多く発症します。 初診時の年齢が1歳以下、または10歳以上の乳幼児・学童では、初診時2~6歳の幼児に比べて予後は明らかに不良となります。 白血病細胞がT細胞型であったり、初診時の末梢白血球数が5万以上ならば予後不良を示唆します。 また、男女差では男児の方が予後不良ですし、中枢神経系浸潤がある場合にも予後不良となります。 |
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血液幹細胞は骨髄の中で分化して骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞に分かれ、それらが更に分化して全ての血液成分を作り出しています。 〔慢性リンパ性白血病〕は、骨髄中で白血球の一種であるリンパ球が異常に多く作られる血液のがんで〔CLL(Chronic Lymphocytic Leukemia)〕とも呼ばれる病気です。 〔慢性リンパ性白血病〕では、白血球数は5万~20万/mm3と著しく増加し、大部分は小リンパ球です。 また、対象となるリンパ球の大部分はB細胞型ですが、一部にT細胞型のものもあります。 〔慢性リンパ性白血病〕は、発症は緩やかで進行しないと特別な症状は現れてきません。 そのため、しばしば定期健康診断や他の病気の検査時に白血球増加が見つかり偶然的に発見されます。 症状が進行すると、疲労感や全身のリンパ節の肥大、扁桃肥大、肝・脾腫がみられ、貧血や血小板減少もみられます。 〔慢性リンパ性白血病〕は、中年以降、60歳以上の高齢者に多く発症し、小児に生じることは稀です。 この病気になると、感染症で死亡する人が多く、半数は4~6年で感染症を合併して死亡します。 |
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〔悪性リンパ腫(ML)〕は、リンパ系組織から発生する血液の悪性腫瘍です。 リンパ組織であるリンパ節、リンパ管、脾臓、胸腺、扁桃などの中で悪性細胞が増殖する病気です。 リンパ系組織は全身に分布しているため、悪性リンパ腫は全身に発症する可能性があります。 悪性リンパ腫は、様々な病型のリンパ系組織に発生するがんですが、病型には大別して「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」の二種類があります。 悪性リンパ腫が発症すると、首、腋(わき)の下、足のつけ根などのリンパ節が腫れ、しこりに触れるなどの症状が出現します。 また、全身症状として「発熱」「体重減少」および「盗汗」という三大症状を呈します。 盗汗とは、顕著な寝汗のことをいいます。その他、皮膚に湿疹がでたり、いろいろな部位で痛みを感じることもあります。皮膚の痒みを感じることもあります。 欧米ではホジキンリンパ腫が多く、日本では非ホジキンリンパ腫が大多数を占めています。 悪性リンパ腫は、全身のリンパ系組織のどの部位にも発症するため、治療を行ってもがん細胞を完全に除去できたかどうかは証明できません。 このため、腫瘍を検出できなくなっても「完治」はなく、「緩解」または「寛解」したと表現されます。 |
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〔骨髄異形成症候群(MDS)〕は、この大元の造血幹細胞に原因不明な異常が起こり、骨髄内で正常な血液細胞を作れなくなり、各血液成分が正常な機能を発揮しえない、無効な造血をしてしまう疾患です。 造血幹細胞に異常が発生すると産生される血球形態も異常となり、これを血球の異形成と呼んでいます。 このがんは、赤血球や白血球、血小板のどの組み合わせでも起こります。 貧血症状や息切れ、倦怠感が現われるほか、皮下出血、鼻出血、歯肉出血などの出血傾向、容易に感染症に罹りやすいなどの現象が現われます。 この病気の発症年齢のピークは、60~70代です。 |
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〔多発性骨髄腫〕は〔MM〕とも呼ばれる白血球類縁疾患であり、形質細胞ががん化して増殖し、その産物としてM蛋白と呼ばれるモノクロナールな異常グロブリンが血液中に出現します。 骨髄中の形質細胞は正常時では1%未満の量しか存在しませんが、がん化した形質細胞(骨髄腫細胞)は骨髄のいたることろで多発的に異常増殖し10%以上にまで増加することがあります。 このように形質細胞が異常増殖したものが〔多発性骨髄腫〕と呼ばれる病気です。 〔多発性骨髄腫〕の主要な症状は、貧血や全身倦怠、脱力、体重減少を伴う背中や肋骨、腰などの骨の痛みです。 更に症状が進行すると、多飲・多尿、食欲不振、疲労感、意識レベルの低下、悪心、嘔吐などが現れます。 〔多発性骨髄腫〕の主な発症要因は、加齢、放射線被爆、慢性的抗原刺激、環境暴露などとされています。この病気の治癒は非常に困難で予後も悪くなります。 |