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〔白血病〕 |
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骨の中心部の骨髄中に存在する「造血幹細胞」は、自分自身と全く同じ造血幹細胞を複製する能力と、将来、白血球や赤血球、血小板などの全ての血液成分に分化する能力とを持っています。 骨髄中で分化してできた白血球や赤血球、血小板などは成熟すると、末梢血流中に流れ出ていきます。 末梢血流内の正常な血液細胞は「アポートーシス」というメカニズムによって、一定期間後には自然に死滅し、それを補うように骨髄から新たな血液成分が出てくるのです。 〔白血病〕は、何らかの原因で幼若で未熟な白血球細胞ががん化し、骨髄内で限りなく増え続け骨髄を占拠し、正常細胞が産生されなくなる病気です。 |
これは〔血液のがん〕であり、このようながん化した幼若な細胞は「白血病細胞」と呼ばれます。
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「造血幹細胞の分化」の図で示すように、骨の中心部の骨髄中に存在する造血幹細胞は、自分自身と全く同じ造血幹細胞を複製するほか、未熟な各種前駆細胞の段階を経て、成熟した白血球や赤血球、あるいは血小板などの血液成分に分化していきます。 骨髄中で分化したばかりの細胞は、まだ未熟な細胞ですが、やがて成熟すると白血球や赤血球、血小板など数多くの血液成分となって、末梢血液中に流れ出ていき、血液成分としての本来の役割を担うようになります。 分化し成熟した正常な血液細胞は、「アポトーシス(計画細胞死)」という特殊なメカニズムにより、特定の寿命をもち一定期間活動した後には自然に死滅します。 死滅した血液細胞を補うように、骨髄中の造血幹細胞から新たに産生され成熟した血液細胞が補充されて、生物の生命を維持しているのです。 赤血球の寿命は120日程度、白血球はわずか4~5日ほどの寿命です。 血小板の寿命は3~10日程度で、死滅すると脾臓で破壊されます。 |
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造血幹細胞が何らかの原因により遺伝子変異を起こして、造血幹細胞あるいはそれが分化しちょっとだけ成長した未熟な細胞ががん化して腫瘍細胞となると、この細胞は無制限に増殖し、骨髄中あるいは末梢血液中に際限なく蓄積してしまいます。 このように血液に起こるがんが〔白血病〕です。 〔白血病〕になると、異常細胞(白血病細胞)が際限なく増加し、正常な血液細胞が減少することで、感染症や貧血、出血傾向などの症状が出現します。 やがて、白血病細胞は、さまざまな臓器に浸潤して生命の維持に致命的となります。 〔白血病〕は、かつては「不治の病」とまでいわれた病気ですが、近年では、副作用も少なく著しい治療効果のある新しい抗がん剤が開発されたり、骨髄移植をはじめとする造血幹細胞移植などの医学的技術の進歩があり、治る確率は高くなっています。 日本における白血病で亡くなる人の数は、年間8000人ほどで、全がんの中で11位となっています。 |
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〔白血病〕には、非常に多くの種類があるのですが、大きくは〔骨髄性白血病〕と〔リンパ性白血病〕に分類され、それぞれに急性と慢性とがあります。 骨髄性とリンパ性の発症比率は「8:2」であり、急性と慢性の発症比率も「8:2」となっています。 一般的には、成人では〔骨髄性白血病〕が多く発症し、小児では〔リンパ性白血病〕が多く発症する傾向にあります。 未成熟な白血病細胞が急速に増殖するのが〔急性白血病〕であり、成熟した白血病細胞がゆっくりと増殖するのが〔慢性白血病〕です。 典型的で最も重要な白血病の種類は、次の四つになります。
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重要な〔白血病〕には、〔骨髄性白血病〕と〔リンパ性白血病〕とがあり、それぞれに急性と慢性があります。 これらを包含した白血病の完全な分類として、「FAB分類」と呼ばれるものがあります。 FAB分類とは「French-American-British Classification」による血液腫瘍の分類法で、フランス・アメリカ・イギリスの研究者グループによって、1976年に提唱され、その後改定されたもので、血液腫瘍の代表的な分類法となっています。
FAB分類とは別な分類法として、「新WHO分類」と呼ばれる分類法もあります。
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白血病は、大きくは〔骨髄性〕と〔リンパ性〕に分類されますが、症状の出方については、あまり差はありません。 しかし、〔急性白血病〕と〔慢性白血病〕とにおいては、症状の出方はかなり異なります。 白血病の最大の怖さは、容易に感染症を引き起こすことです。 特に敗血症や肺炎の感染は白血病での死因の一番目になります。 また、薬の副作用による出血も重篤です。 白血病細胞が、中枢神経に浸潤すれば、頭蓋内圧亢進による頭痛や嘔吐、視力障害、神経麻痺などの症状が現われます。
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造血幹細胞をがん化させる明らかな原因は、放射線被爆です。 その他にも、有毒有機化合物や薬剤などへの暴露がリスクを高めます。 また、慢性骨髄性白血病では、染色体異常が原因となって発症すると考えられています。 |
白血病の主な検査は、血液検査と骨髄穿刺(こつずいせんし)により行いますが、これらの検査に加えて白血病細胞の染色体検査や遺伝子検査なども行われます。
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白血病の種類により、所見や治療法は異なります。 このために、どの種類の白血病であるかの鑑別が行われます。 白血病は、白血病細胞の種類により骨髄性とリンパ性に分けられますが、病態や臨床所見的には、それなりの違いはあるものの、大きな差があるわけではありません。 未成熟な細胞が急速に増殖していれば急性白血病であり、ゆっくりした経過を辿っていれば慢性白血病となります。
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白血病の治療方針は、がん化した血液細胞を排除し、正常な血液を産生できる状態に戻すことにあります。 しかし、血液は全身に行き渡っているので、血液の病気である白血病の白血病細胞は身体中に存在します。 このため、基本的に手術で悪い部分だけを切り取って治療することはできません。 白血病の主な治療方法としては、基本的に次の三つがあります。
・化学療法
病気の進行度や患者の身体の状態などに合わせて、これらの方法を併用して治療が行われます。 |
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白血病の治療方法の基本は化学療法である点は変わりませんが、具体的な治療方法は、白血病の種類によっても、その進行度によっても異なります。 特に、急性と慢性とではかなり異なります。 急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病の治療は、診断確定後直ちに治療を始めないと生命の危険度が高まります。 急性白血病治療では、化学療法として「寛解導入療法」と「寛解後療法」の二段階が行われます。 化学療法では、複数の抗がん薬を組み合わせて投与する併用化学療法が使われるのが普通ですが、急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病では、使用される医薬の種類や投与スケジュールは異なります。 寛解とは、病気の症状が、一時的あるいは継続的に軽減した状態、あるいは見かけ上消滅した状態をいいます。 安定状態ではあっても完全治癒とまではいえない状態であり、再発の危険性がある状態をいいます。 尚、これらの急性白血病では、化学療法に続いて、造血幹細胞移植が行われることもあります。
慢性骨髄性白血病の治療では、「急性転化」してしまうと治療は非常に困難となるため、「慢性期」に確実な治療をすることが大切です。 |
白血病は、非常に重篤ながんながら、化学療法の急速な進歩もあって、その予後は改善されてきましたが、5年後生存率などは、治療する施設により違いは大きいです。 寛解導入療法を受けた場合の急性骨髄性白血病の完全寛解率は60~80%に達しています。 その内、約30%は5年以上再発することなく、治癒している可能性があります。 しかし、急性骨髄性白血病全体での5年生存率は20%~30%程度に留まっています。 急性リンパ性白血病の完全寛解率は65%~85%程度です。しかし、5年生存率は25%~40%程度となっています。 慢性骨髄性白血病の診断後の平均生存期間は3~4年です。慢性リンパ性白血病の診断後の平均生存期間は4~5年です。 |