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〔陰茎がん〕 |
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〔陰茎がん〕は、陰茎(ペニス)の皮膚や組織内に発症する極めてまれな悪性腫瘍で、主に亀頭や包皮から発生します。 |
また、排尿困難となることもあります。 |
陰茎がんは、男性特有な病気で、陰茎(ペニス)の皮膚や組織内に発症する悪性腫瘍で、主に亀頭や包皮内面から発生します。 このがんの病理組織学的な種類は、大部分が「扁平上皮がん」に限られます。 陰茎がんは、特に痛みを伴うこともなく、陰茎の皮膚から発生し、皮下組織を陰茎体部方向に進展していきます。 陰茎海綿体や尿道海綿体への浸潤は、滅多に起こりませんが、浸潤した場合には、潰瘍を形成したり、出血したり、排尿困難を引き起こすこともあります。 陰茎がんの10万人あたりの発生率は、国や地域により異なりますが、アメリカでは1人、デンマークでは0.8人、オーストラリアでは0.4人、日本では0.1人ほどとなっています。 日本での陰茎がんの発生は、男性泌尿器の悪性腫瘍の4.5%との統計があります。 不衛生な地域では比較的多く発生しますが、日本のような衛生環境の良い地域では非常に少なく滅多に発症しません。 このがんの発症年代は、60~80歳が多いですが、中でも65~70歳に発症のピークがあります。 |
通常、陰茎がんは、特別に痛みを持たない腫瘤(できもの)として、陰茎部に発症します。 特に、包茎のある人の包皮内の亀頭部に発症しやすく、初期にはしこりが感じられる程度です。 やや進行した状態では、表面がゴツゴツした花菜状の潰瘍を呈するようになり、痛みや出血なども生じてきます。 何らかの感染を伴うこともあり、膿または血液の混じった分泌物が見られることもあります。 更に進行すると、排尿が困難になったり、放尿時に包皮部や亀頭部に疼痛を感じることもあります。 陰茎がんは主にリンパ行性に浸潤し、大腿の付け根部分である「鼠径部(そけいぶ)」のリンパ節に転移しやすく、その部位のリンパ節が硬く触れるようになります。 更に進行すると、リンパ液の流れを阻害する結果、足の浮腫みが現われることもあります。 |
陰茎がんの真の原因は、現段階では明確にはされておりません。 しかし、このがんは、乳幼児期に割礼(包皮切除)を受ける習慣のあるユダヤ人種では著しく発症例が少ないとされ、包茎や亀頭包皮炎、生殖器の不衛生が状態が重要な原因ではないかと考えられています。 また、最近では、陰茎がんの夫を持つ女性では子宮頸がんの発症が多くなることから、「ヒトパピローマウイルス」への感染も発症原因のひとつではとの説もあります。 更に、〔乾癬〕患者で、光化学療法PUVAという治療を受けている人でも発症リスクが高いとされ、紫外線も原因になる可能性が指摘されています。 |
陰茎がんは、陰茎が原発巣として発生することが大部分であり、他の部位で発生したがんが陰茎に転移してくる転移がんとして発症することは先ずありません。 しかし、陰茎がんは、他の悪性腫瘍と同様に、身体の他の部位へ転移します。特に、鼠径部リンパ節へは容易に転移が起こります。 このがんは基本的に、亀頭表面や包皮内面にできるため、目視的に容易に診断ができます。 最も転移しやすい鼠径部リンパ節への転移の確認は、触診で行います。 更に、このがんの進行度を調べるために、胸部X線撮影や腹部のCT検査、エコー検査、MRIなどによる他の臓器への浸潤や転移の有無なども調べます。 陰茎がんの症状は、尖圭コンジローマや梅毒などの疾患と似た症状でもあるため、これら他の疾患と鑑別するための確定診断が必要です。 このため、病変部の組織を一部切除して顕微鏡で検査する生検や、病変部の細胞を調べる細胞診が行われます。 |
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陰茎がんは、原発部位で発見されることが多く、他の部位で発生したがんが転移してきて陰茎にがん症状を起こすことは非常に稀です。 しかし、他の悪性腫瘍同様に、身体各部へ浸潤したり転移することはあります。 陰茎がんの病期は、他のがんと同様に、その症状や病巣の拡大・転移の程度に応じて、「TNM分類」のI期~Ⅳ期に分類されています。
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陰茎がんの治療法は、他の悪性腫瘍の治療と同様に、その病期によって異なります。 治療の基本は、手術による腫瘍の摘出や放射線療法、化学療法、免疫療法などがあります。 手術法にはメスによる切除術に限らず顕微手術やレーザー手術などがあります。 病期がI期であり、がんが亀頭部のみ、あるいは陰茎の皮膚・包皮のみに限局している早期のものでは、腫瘍のみの摘出術を施し、放射線照射やブレオマイシンによる化学療法など保存的療法を行います。 がんが亀頭部を越えて海綿体や陰茎体深部へ浸潤・拡大しているが、転移がないⅡ期の場合には、陰茎部分切断術あるいは陰茎全切断術を行います。 その上で、ブレオマイシンと放射線照射を併用して陰茎の形態や機能を多少とも温存できることを狙います。 がんが陰茎および周囲リンパ節への拡大、鼠径部のリンパ節に転移しているⅢ期の場合には、陰茎全切断術とともにリンパ節郭清術を行います。 そして、放射線療法や化学療法を併用します。 他の部位へ転移しているⅣ期では、手術は適用不可能であり、放射線療法と化学療法により延命処置を施すこととなります。 |
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陰茎がんの治療方法は、基本的に外科療法(手術)と放射線療法、化学療法を組み合わせて行います。 それぞれの治療法は次のようになります。
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陰茎がんの予後は、他のがんの場合と同様に、発見された時点での進行度などにより大きく異なります。 しかし、全体での平均的な5年生存率は50%ほどしかなく、非常に厳しい状況です。 蛇足ながら、陰茎がんは男性としても恥ずかしい場所であるために、病院での受診をためらい、症状が相当進行してしまった手遅れ状態になってから受診することが多いのです。 異変に気づいたら早期に受診することが絶対に重要です。 リンパ節まで転移しない段階であれば、完治も夢ではありません。 |