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健康用語

〔くも膜下出血〕


 脳の表面は、外側から硬膜、くも膜、軟膜という三つの膜で覆われています。くも膜と軟膜の間には隙間があり、脳の動脈が網の目のように走っています。

 この動脈が破裂して、脳の表面に出血が起こるのが「くも膜下出血」です。

 出血が起こると激しい激痛と吐き気に襲われ、出血量が多ければ意識不明に陥るか、あるいはそのまま突然死してしまいます。

 出血が一旦止まっても再出血することが非常に多く、死亡する確率がとても高くなります。


 くも膜下出血の患者数は、脳出血や脳梗塞などに比べるとそれほど多くはありませんが、発症すれば死亡率は高く、50~60代を中心に死亡者は増加しています。くも膜下出血の発作を起こした人の約20%は数時間以内で死亡するといわれています。

 一方で、くも膜下出血が起こっても脳自体は軟膜で守られているので、直ぐに脳自体に影響は及びません。発作直後に適切な手術や治療がなされれば、後遺症を残すことなく完治する確率は高い病気です。

 突然、頭痛をうったえ、頭を抱え込んで倒れこむような人がいれば、くも膜下出血の可能性が高いと考えて救急車を呼ぶのが最善の対応です。くも膜下出血の患者は毎年1万人に一人の割合で発症していて、脳卒中の内の10%を占めています。



どんな病気ですか? ◆〔くも膜下出血〕とは、一体どんな病気なのかご説明します。
どんな病気ですか?

 脳の表面は外側から表皮、頭蓋骨があり、その下に硬膜、くも膜、軟膜という三つの層があり脳自体を覆っています。くも膜と軟膜との間にある膜下腔と呼ばれる隙間には、脳の比較的太い動脈(栄養血管)が多数走っています。また、無色透明の体液である脳脊髄液も循環しています。

 このくも膜と軟膜との間の膜下腔内の血管が痛んで切れたり、破裂したりして血液が流れ出すのがくも膜下出血で、流れ出た血液は脳脊髄液に混ざります。

 たいていの場合、出血はくも膜下腔に限られ脳の内部には及ばないため、発作が発生しても運動麻痺、言語障害、知覚障害は起こりません。


どんな症状ですか? ◆〔くも膜下出血〕の症状をご説明します。
くも膜下出血の症状

 くも膜下出血が起こると、頭に突然の激しい痛みが走り、激しく嘔吐したり、出血量が多ければそのまま意識不明になったり、突然死してしまうこともあります。発作発生時の症状は次のような言葉で表現されることが多いです。

 ・突然の頭痛
 ・今まで経験したことのないような猛烈な頭痛
 ・瞬間的に痛む頭痛
 ・バットで殴られたような頭痛
 ・激しい頭痛

 たいていの場合、出血はくも膜下腔に限られ脳の内部には及ばないため、発作が発生しても運動麻痺、言語障害、知覚障害は起こりません。

くも膜下出血の症状
激しい頭痛 くも膜下出血の特徴的症状は、上記したように激しい頭痛からはじまります。
嘔吐 吐気を感じずに突然、嘔吐することがあります。
意識障害 出血量が少なければ一時的に意識を失っても数分で回復することもあります。重症になると、弓なりに反り返り昏睡状態となり、そのまま死亡することも多いです。
項部硬直 発作後、かなり時間が経ってから、首筋がこわばり、前屈できない症状が現れます。
眼底出血 眼底に出血が起こると、視力が低下することがあります。
水頭症 出血した血液が脳脊髄液に混ざり脳脊髄液の循環が滞ると、この体液が頭蓋内にある脳室に溜まって水頭症を起こします。くも膜下出血から数週間経過して慢性期になると、痴呆や歩行障害などの症状が現れます。


原因は何ですか? ◆〔くも膜下出血〕の原因や発症の仕組みをご説明します。
くも膜下出血の発症原因

 くも膜下出血の原因の多くは、脳動脈の一部にできた脳動脈瘤が破裂して出血したことによるものです。くも膜下出血を発症した日本人の場合、約75~90%は脳動脈瘤の破裂によるものです。

くも膜下出血の原因
脳動脈瘤破裂 脳動脈にできた動脈瘤に圧力がかかると、動脈瘤が破裂し出血して、くも膜下腔に広がります。これが典型的なくも膜下出血です。動脈瘤はもともと弱い部分があってできるともいわれますが、動脈硬化や頭部の怪我などでできることもあります。
脳動静脈奇形破裂 先天的な脳動静脈奇形があって、動脈と静脈が直接繋がっている異常血管が存在することがあります。その異常血管を通じて動脈側の強い圧力が静脈側に加わり破裂して出血するくも膜下出血です。くも膜下出血の約5~10%ほどを占めているとされ、20~40代の若い人に多く発症します。
高血圧性脳内出血 高血圧があると、強い圧力が脳内の細い動脈壁にもかかり続けます。血管壁が弾力を失ってもろくなり、くも膜下で出血することがあります。くも膜下出血の10%程度は高血圧性脳内出血によるものとされています。


診断はどうなりますか? ◆〔くも膜下出血〕の検査方法や診断方法をご説明します。
くも膜下出血の診断

 くも膜下出血と疑われる症状があれば、先ずCTスキャンによる脳内画像解析検査が行われます。くも膜下出血があると、脳脊髄液に血液が混入するので、CTスキャンには特徴的な結果が現れます。脳動脈瘤の描画のためにMRI検査が用いられることもあります。

 出血の程度が軽度でCTスキャンによる画像解析結果で特徴的所見が見つからない場合には、腰から脳脊髄液を採取して確認することもあります。

 くも膜下出血と判定されると、血管の切れた部分がどこであるかを確認するために、脳血管撮影検査が行われます。最も精度の高い検査は、カテーテルを用いた脳血管撮影検査です。


治療はどうやりますか? ◆〔くも膜下出血〕の治療方法をご説明します。
治療方針・予防

 脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血は容易に再発します。 最初の出血から24時間以内、多くの場合は6時間以内に再出血することが多く、出血を繰り返すたびに脳の損傷がより深刻となり生命の危険度が高まります。いったんくも膜下出血を起こすと、突然死を招くいたり、あるいは突然死を回避できたとしても深刻な後遺症を残す場合が半数にのぼります。くも膜下出血が発生したら一刻も早く手術して再破裂を防止する必要があります。

 くも膜下出血の再破裂防止手術には、開頭手術と脳血管内手術の二つの方法があります。

くも膜下出血の手術
開頭手術 頭の骨を開いて、破裂した脳動脈瘤を直接観察し、手術専用の顕微鏡を用いて、破裂した脳動脈瘤の根元を合金製やチタン製のクリップで挟んで再出血を防止します。この方法は脳動脈瘤頚部クリッピング術と呼ばれ、最も信頼性が高く確率された技術です。
脳血管内手術 太ももの付け根にある動脈から、マイクロカテーテルと呼ばれる細いチューブ状のカテーテルを入れ脳の破裂した脳動脈瘤まで到達させます。その破裂した脳動脈瘤にプラチナ製のコイルを詰めて再出血を防止します。

この技術は、脳血管内手術による塞栓術と呼ばれ、最近では、脳動脈瘤頚部クリッピング術より優れているといわれるようにもなりました。