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〔本態性振戦〕

 本態性振戦とは、何かの動作を始めようとしたり、一定の姿勢を保とうとすると、体が震える病気です。

 震えは主に手、腕、頭部、下顎、舌に現れます。

 緊張したときや疲れたときに震えはひどくなり、アルコールを飲むと一時的に治まります。

 服のボタンが嵌められない、箸がうまくもてないなどの症状があると、この病気の可能性があります。


 本態性振戦は特別な原因がないのに手足などに震えだけがでる病気です。震え以外には何も症状はありません。本態性振戦では、安静時は何も震えがないのに、何かの姿勢をとったり、動作をしようとすると一定のリズムで規則的な震えが現れるのが特徴です。

 日本での本態性振戦の発症率は、調査によりバラツキが多く、人口1000人あたり3~17人で、平均的には約0.6%とのデータもあります。



どんな病気ですか? ◆〔本態性振戦〕とは、一体どんな病気なのかご説明します。
どんな病気ですか?

 振戦というのは、自分の意思とは無関係に規則的な震えが生じてしまう不随意運動のことをいいます。

 パーキンソン病では安静時に振戦が起こりますが、本態性振戦では、文字を書こうとしたときや食事のとき、ボタンを嵌めようとするときなどに震えが出現します。このため、本態性振戦は「動作時振戦」とか「姿勢時振戦」とも呼ばれます。


どんな症状ですか? ◆〔本態性振戦〕の症状をご説明します。
本態性振戦の症状

 本態性振戦は、ふるえを唯一の症状とする神経疾患で、その他の症状はありません。一般に疲れたときや、精神が緊張したときに震えが出現します。ここで本態性振戦の例をいくつか挙げておきます。

 ・文字を書こうとすると手が震える。
 ・箸でものをつかもうとすると手が震える。
 ・コップを持つ手が震える。
 ・衣服のボタンを嵌めようとすると手が震えてうまく嵌められない。
 ・頭が震える。
 ・人前で挨拶しようとすると、声が震える。
 ・・・

 本態性振戦には男女差はありません。通常、高齢になるほど多くなる病気ですが、若い人にも発症することがあります。若い人がこの病気になる場合は、遺伝的要素が作用している可能性があります。


原因は何ですか? ◆〔本態性振戦〕の原因や発症の仕組みをご説明します。
本態性振戦の原因

 本態性振戦の原因はよく分かっておりません。

 しかし、何かをしようとしたときや、緊張状態で震えが出やすいことから、興奮したときに働く交感神経が関係しているのではないかとの説があります。


診断はどうなりますか? ◆〔本態性振戦〕の検査方法や診断方法をご説明します。
本態性振戦お診断方法

 振戦の症状を呈する病気には、本態性振戦の他にも、嗜好品や薬などによる振戦、甲状腺機能亢進症、パーキンソン病、企画振戦、羽ばたき振戦などがあります。通常、振戦がある患者については、服用している薬の作用や、甲状腺機能亢進症などを鑑別(識別)するための血液検査、パーキンソン病を調べる検査などが行われます。

 CTスキャンやMRI検査での画像診断により企画振戦の可能性を調べます。また、羽ばたき振戦では、血液検査によって肝臓や腎臓機能の検査を行います。

 これらの検査をした結果として、患者が随意運動(そうしようと意図して何かをしようとする運動)をしようとしたときに振戦が発症する以外に何も異常がないとわかれば、本態性振戦と診断されます。本態性という言葉は特別な原因が何も見つからないという意味の言葉です。


治療はどうやりますか? ◆〔本態性振戦〕の治療方法をご説明します。
治療方針・予防

 本態性振戦では、震え以外には症状は無く、特に悪化する病気でもないので、日常生活に支障がないのであれば、通常は治療の必要はありません。しかし、震えが出ることで特別な支障がある場合には薬物療法や脳外科手術による治療方法があります。

 本態性振戦は適量の飲酒で起こり難くなりますが、適量を超えての飲酒や禁断症状は逆に振戦を悪化させることがあるので、飲酒は慎重にしないと危険です。

薬物療法

 精密な作業を必要とする職業などの要請から震えが出ると特別に支障がある場合や、緊張する場面が予想される場合などには、「抗不安薬」や「抗てんかん薬」による治療で確実な効果が期待できます。

脳外科手術による治療

 本態性振戦が重症で薬による治療に効果が無く、日常生活が極めて困難な場合に限って、脳外科手術が行われることがあります。これは、パーキンソン病での手術と同一のもので、脳深部の視床の一部を破壊し振戦の起こる経路を遮断するか、視床内部に電極を埋め込み、ここに高周波の電気刺激を与えて振戦を起こり難くします。