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健康用語

〔肋間神経痛

肋骨と肋間神経
 肋骨に沿って、胸椎から腹部まで、肋骨と肋骨の間に伸びる神経に肋間神経というものがあります。

 この肋間神経が何らかの原因で激しく痛む症状を「肋間神経痛」といいます。

 肋間神経痛は、突如として背中や身体の側面部分に、針で刺されたような鋭い痛みが繰り返し発生する神経痛の一種です。

 通常は、痛みの持続時間は短く、片側のみに耐え難い痛みが走ります。


 痛みを感じるのは身体の表面部分で、狭心症などのような胸を締め付けるような痛みではありません。


 肋間神経痛の痛みは、深呼吸や咳、伸びをしたとき、大声をだしたときなどに突如として誘発され、肋骨と肋骨の間をビリビリという激しい痛みが走る症状を呈します。

 痛みは、神経の方向に沿って肋間を帯状に放散していきます。
 肋間神経痛の原因には、原因不明のものと、ある程度原因が明らかなものとがあります。

 原因が分かっているものでは、脊髄や脊椎の病気やヘルペスウイルスによる帯状疱疹などがあります。

 肋間神経痛の発生しやすいのは中年以降の人といわれます。

どんな病気ですか? ◆〔肋間神経痛〕とは、一体どんな病気なのかご説明します。
どんな病気ですか?

 人間の身体には、背中から胸の前面まで回りこむ形で「第1肋骨」~「第12肋骨」までの12組の肋骨があります。それらの肋骨に沿う形で各肋骨と肋骨の間にあり、背中から出て胸腹部に分布する末梢神経は「肋間神経」と呼ばれています。

 上部7対の肋間神経は、肋骨に沿って胸骨に向かい、下部5対の肋間神経は前下方に向かって走行し腹部に分布しています。

 この肋間神経は、この神経の支配領域である、胸部の筋肉を動かす運動神経、または皮膚感覚などの知覚を司っています。

 「肋間神経痛」は、何かの原因で数多くある肋間神経のどれかが、突如として激しく痛む症状をいいます。なお、肋間神経痛という言葉は、正確には病名ではなく、症状名です。


どんな症状ですか? ◆〔肋間神経痛〕の症状をご説明します。
肋間神経痛の症状

 肋間神経痛による痛みは、通常は左右どちらかの片側だけで突如として起こり、ビリビリとした針で刺されたような鋭い痛みが繰り返し起こります。痛みの持続時間は瞬間的か、数秒、そうでなくても数分程度で、そう長くは続きません。とにかく片側だけの極めて激しい痛みが肋間神経痛の特徴です。

 痛みが発症するきっかけは、おうほうにして、深呼吸や咳、両腕を伸ばしてする伸び、大声を出したときなどで突発的に誘発され、肋間神経の支配領域が繰り返し痛むのが特徴です。肋骨に沿った部位などを指で押すと、痛みが起こる「圧痛点」が存在することもあります。

 中年以降の年配者が、肋間神経痛になりやすい傾向があるので、中年以降の年齢になったら、深呼吸ひとつでも起こることがあります。特に、いちど起こった場合には繰り返し起こるので注意は必要です。


原因は何ですか? ◆〔肋間神経痛〕の原因や発症の仕組みをご説明します。
肋間神経痛の原因

 肋間神経痛には、原因がまったく不明の「原発性肋間神経痛」と原因が明らかな「続発性肋間神経痛」とがあります。原発性は下記にご説明している続発性肋間神経痛や心因性原因による神経痛を除いて、抹消神経になんら特別な病変を認めないものをいいます。

 続発性の肋間神経痛の原因には、脊髄や脊椎の病気、心臓や肺など胸部にある内蔵の病気などによるものと、ヘルペスウイルスによる帯状疱疹などの病気の後遺症によるものがあります。その他、髄膜炎や大動脈瘤、胸膜炎などいろいろな病気の初期症状のこともあるので注意が必要です。

 脊髄や脊椎などの病気には、変形性脊椎症や椎間板ヘルニア、脊髄の腫瘍などがあり、多くの場合、肋間神経が骨や筋肉の間に挟まれ、圧迫されて痛みを生じる「絞扼(こうやく)神経症」がでます。不自然な姿勢や疲労により発症しますが、痛みは通常一時的です。

 咳や身体の動きで痛みがでる肋間神経痛の場合は、ゴルフの過度な練習などによる肋骨の骨折や亀裂が原因となることがしばしばあります。中高年女性の場合には、骨粗しょう症のために、咳や重量物運搬などの無理をして発症することもあります。このような場合は、姿勢を変えると痛みが強くなり、呼吸によっても痛むことが特徴です。

 帯状疱疹は肋間神経に沿って発症しやすく、ブツブツが治まった後になって、肋間神経痛の痛みを発症することがあります。帯状疱疹は、ヘルペスウイルスに感染して起こり、帯状の疱疹ができて、激しい痛みが2週間くらい続いてから治ります。その後になって「帯状疱疹後神経痛」という頑固な肋間神経痛となって残ることがあります。

 肋間神経痛の原因として、心因性というものがありますが、これは日常生活での度重なるストレスや疲労が原因で発症するといわれますが、通常、症状は軽微です。


診断はどうなりますか? ◆〔肋間神経痛〕の検査方法や診断方法をご説明します。
肋間神経痛の診断

 肋間神経痛の検査として、先ずは背骨のエックス線写真(レントゲン写真)を撮影して調べます。このレントゲン写真で異常がない場合には、MRI核磁気共鳴画像装置で詳細を調べます。

 肋骨に骨折があったり、ヒビが入っていても、亀裂の程度がわずかな場合は、痛みがあるにも拘わらずX線検査やMRI検査、CT検査でも診断しにくい場合が多いです。また、肋間神経痛は、胸椎の圧迫骨折やがんが転移しても起こりますが、この場合は椎体の変形があるのでX線検査やCT検査で確認できます。

 ヘルペスウイルスの感染による帯状疱疹の後遺症として現れる肋間神経痛は、2週間くらいの間、帯状疱疹による非常に激しい痛みが続き、それが治ってから発症するのが普通ですが、稀にはヘルペスウイルスに感染しても帯状疱疹が出ない人もいるので、この場合には、血液検査でウイルスを突き止めないと正しい診断ができなくなります。


治療はどうやりますか? ◆〔肋間神経痛〕の治療方法をご説明します。
肋間神経痛の治療方針

 肋間神経痛には多くの原因があるので、治療法も原因により多少異なります。それぞれの場合の治療法は次のようになります。

肋間神経痛の治療方法
原発性肋間神経痛の治療  原発性の肋間神経痛で原因が不明の場合には、湿布、痛み止め、消炎鎮痛剤、鎮痛作用のある抗うつ剤などを併用しての対症療法を行い、経過を観察します。
外傷性肋間神経痛の治療 外傷が原因で起こる肋間神経痛では、胸郭を固定するため、幅広いベルトで肋骨を固定します。
背後の病気が原因の場合の治療 基本的に、現れている症状に対しての対症療法と、背後にある病気の治療が必要です。
痛みが激しいときの治療  痛みが激しく長引くときには、神経ブロックと呼ばれる局所麻酔薬の注射も行われます。肋骨のすぐ下を走る肋間神経に麻酔薬を局所注入します。神経の炎症を伴うときは、局所麻酔薬とステロイドを混用して注射することもあります。
鍼治療・お灸  鍼治療やお灸が効くとの説もありますが、効果のほどは定かではありません。
その他  肋間神経痛の直接的な治療法ではないですが、ゆったりと入浴してストレスを解放すると神経痛の痛みを緩和できます。痛みのために睡眠不足になる人でも、リラックスした入浴で快眠できるようになるかも知れません。