HOME 健康・医療館スマホ版 PC版へ移動現在:スマホ版
 
体の病気操作指示がんの病気  
脳・神経のがん
〔脳・神経のがん〕

脳腫瘍
原発性脳腫瘍
転移性脳腫瘍
神経膠腫
神経線維腫
神経鞘腫
髄膜腫
脊髄腫瘍

〔脳腫瘍〕


概要病気症状原因診断
治療予後合併症情報書籍
 

この疾患の概要です

 〔脳腫瘍〕は、頭蓋内組織に発生する〔新生物腫瘍〕や異常細胞が増殖する病気です。

 その発生の由来から大きく分類すると、脳や脳の周辺部位から発生する〔原発性脳腫瘍〕と、脳以外の他の臓器のがんが転移してきて起こる〔転移性脳腫瘍〕の二種類になります。

 通常、〔脳腫瘍〕が発生すると、脳内の神経などが圧迫されることで、頭痛や悪心、吐き気、嘔吐、目の霞み、痙攣などの初期症状を呈するようになります。


 通常、これら何らかの症状が出現したときには、既に腫瘍がかなりの大きさに増殖していて、脳浮腫を引き起こしているものと考えられます。

 腫瘍の発生場所によっては、頭痛や悪心などの症状に加えて、やがて言語障害や運動障害、意識障害、聴覚障害、視野欠損などの症状も出現します。

 頭痛の症状は、朝の起床直後が最も激しく痛むとされます。

 〔脳腫瘍〕の治療の基本は外科手術による腫瘍の摘出ですが、困難な場合も多く、放射線療法や化学療法、免疫療法なども併用されます。

 他の臓器の悪性腫瘍が脳に転移してきてできた〔転移性脳腫瘍〕が出現した場合には、多くの場合、がんの末期の状態であり、治療は極めて困難となります。

 統計により異なりますが、脳腫瘍の1年間の発生頻度は、人口10万人あたり3.5~10~12人程度とされています。

 このページでは、〔脳腫瘍〕に共通的な症状や原因、検査・診断法、治療法などをご説明しています。

 〔脳腫瘍〕の中で頻度も多く重要な、次のような脳腫瘍については、それぞれの詳細ページで説明しています。

 ・原発性脳腫瘍
 ・転移性脳腫瘍
 ・神経膠腫
 ・神経線維腫
 ・神経鞘腫
 ・髄膜腫

 WHO(世界保健機構)による〔脳腫瘍〕の発生母地に基づく分類法というものがあります。

 参考までに、主な部分を下記説明文の中で「WHOによる発生母地に基づく脳腫瘍分類」として表に示しています。

ページのトップへ戻る

どんな病気ですか?
〔脳腫瘍という病気〕

 〔脳腫瘍〕は、頭蓋骨内に発生するすべての腫瘍の総称です。

 脳腫瘍には脳実質だけでなく、頭蓋内に存在する骨や髄膜(硬膜・くも膜・軟膜)、血管、下垂体、脳神経、先天性遺残組織などから発生する原発性の腫瘍のほか、身体の他の臓器で発生した腫瘍が転移してきて生じた腫瘍も含まれます。

 このように、脳腫瘍には脳自体から発生した〔原発性脳腫瘍〕と、他の身体臓器で発生した腫瘍が脳に転移してきた〔転移性脳腫瘍〕の二種類があります。

 脳本体の細胞は「神経細胞」と「膠細胞」の二種類から構成されていますが、神経細胞から発生する原発性脳腫瘍は極めて稀であり、多くの原発性脳腫瘍は膠細胞から発生し脳腫瘍全体の40~45%を占めるとされます。

 脳腫瘍には先天的脳腫瘍や血管性脳腫瘍というものもありますが、これらも含めて、硬膜やくも膜、軟膜などの膜、下垂体、および脳から外部に接続される神経などから発生するものが全体の脳腫瘍の50%ほどを占めるとされます。

 残りがいわゆる転移性脳腫瘍で他の臓器での腫瘍が転移してきて生じます。

WHOによる各部位での脳腫瘍発生頻度
神経膠腫  約40%
髄膜腫  約18%
下垂体腺腫  約10%
神経鞘腫  約10%

 脳腫瘍は成人では大脳に多く発症し、子どもでは小脳や脳幹に多く発生する傾向があります。

 脳腫瘍は、どの年代でも発生しますが、年少者では10~15歳くらいに多く発症し、成人では35~40~50~55歳が一番多く、それ以降は減少して80歳代以降ではほとんど見られなくなります。

 また、男女差は脳腫瘍の発生にはあまり関係ないとされています。

〔良性脳腫瘍と悪性脳腫瘍〕

 脳腫瘍には他の臓器での腫瘍と同様に、良性腫瘍と悪性腫瘍とがあります。

 特に〔原発性脳腫瘍〕では約半々ずつの比率で悪性腫瘍と良性腫瘍が発生します。

 脳腫瘍の場合には、たとえ良性腫瘍であっても、脳は頭蓋骨でしっかりと囲まれる限られた空間内にあるため、腫瘍が増大すれば、脳内圧力が高まり腫瘍の周辺部位を圧迫することなどでさまざまな障害を呈してくるので油断はできません。

 ここで、良性脳腫瘍と悪性脳腫瘍の例を示しますが、他の臓器での悪性腫瘍が脳に転移してきた転移性脳腫瘍も悪性腫瘍に含まれます。

良性脳腫瘍と悪性脳腫瘍
良性脳腫瘍  ・髄膜腫
 ・神経鞘腫
 ・頭蓋咽頭腫

悪性脳腫瘍  ・神経膠腫
 ・悪性リンパ腫
 ・胚細胞性腫瘍
 ・転移性脳腫瘍


〔脳腫瘍の種類〕

 〔脳腫瘍〕は、頭蓋骨内に存在する多くの組織から発生するため、WHO(世界保健機構)により発生母地に基づく分類が提唱されていて、130種類ほどの脳腫瘍の組織型が定義されています。

 WHOによる発生母地に基づく脳腫瘍分類の中で重要なものを下記に示します。

WHOによる発生母地に基づく脳腫瘍分類
神経上皮組織性腫瘍  星細胞腫、乏突起細胞腫などの神経膠腫、上衣腫、脈絡叢腫瘍、その他の神経上皮性腫瘍、神経細胞性腫瘍、松果体部腫瘍、胎児性腫瘍など

神経鞘性腫瘍  神経鞘腫、神経線維腫など

髄膜性腫瘍  髄膜腫、その他の間葉性腫瘍、悪性黒色腫など

リンパ腫および造血細胞性新生物  悪性リンパ腫、形質細胞腫など

胚細胞性腫瘍  胚細胞腫、卵黄嚢腫瘍、絨毛癌、奇形腫など

トルコ鞍部腫瘍  頭蓋咽頭腫、下垂体細胞腫など

転移性脳腫瘍  身体各部のがんの転移によるがん


ページのトップへ戻る

どんな症状ですか?
〔脳腫瘍の症状〕

 脳腫瘍の症状には二つの特徴的パターンがあります。

 第一番目の特徴的症状は、基本的に頭蓋骨は伸縮しないために、脳腫瘍の病変が頭蓋内で増大してくることと髄液流通障害が発生することで頭蓋内での圧力が上昇し「脳圧亢進症状」が現われることです。

 第二番目の特徴的症状は、脳腫瘍が発生している局部とその近傍で起こる「局所症状(巣症状)」が現われることです。

 通常、何らかの脳腫瘍の症状が出現した段階では、腫瘍は既にある程度の大きさにまで増大していて、「脳浮腫」状態になっているのが普通です。

 このため、二つの症状は同じ時期から認められます。

 特に、トルコ鞍近傍に腫瘍が成長してくると、視床下部、脳下垂体の機能障害が誘発され、プロラクチンと呼ばれる乳汁分泌ホルモンが過剰産生されるようになります。

 この場合、女性に限らず、ときには男性でも、妊娠などしていないのに母乳がでるような現象も起こります。

脳腫瘍の症状
脳圧亢進症状  頭蓋内脳圧亢進症状には、「三主徴」と呼ばれる三つの典型的症状があります。

 ・頭痛
 ・吐き気、悪心、嘔吐
 ・うっ血乳頭

 このような症状は、血管障害の場合とは異なり、通常、緩やかに、しかし着実に進行します。

 特に、朝方に発生する頭痛や悪心などは日増しに酷くなります。

局所症状  局所症状は、「巣症状」とも呼ばれる症状で、腫瘍の占拠部位によってさまざまな症状が現われてきます。

 出現する症状の発症からの経過は進行性であり、徐々に重篤になっていきます。

 ここに示すような症状は、全部が同時に現われるわけではなく、腫瘍のできた場所により異なります。

局所症状の現われ方
痙攣障害  ・痙攣発作
 ・顔面痙攣
麻痺  ・片麻痺
意識障害  ・意識障害
 ・知覚障害
 ・記憶力や判断力の低下
 ・ぼけ
 ・傾眠傾向
視力障害  ・視力低下
 ・視野狭窄
 ・視野欠損
聴力障害  ・聴力低下
運動障害  ・手足の運動麻痺
言語障害  ・発音困難
 ・奇異な会話
 ・理解不能
てんかん様症状  ・急激な手足の突っ張り
 ・口からの泡吹き
 ・痙攣
 ・意識喪失


ページのトップへ戻る

原因は何ですか?
〔脳腫瘍の原因〕

 脳腫瘍には、脳実質や脳を取り巻く周辺部位の組織や脊髄液などから発症する「原発性脳腫瘍」と、他の臓器などで発生した悪性腫瘍が脳に転移してきて発症する「転移性脳腫瘍」とがあります。

 原発性の脳腫瘍の発生原因は、解明されていませんが、複雑な遺伝子異常によるのではとの議論がなされています。

ページのトップへ戻る

診断はどうやりますか?
〔脳腫瘍の診断〕

 脳腫瘍の診断は、臨床的経過や神経学的所見が重要ですが、近年では補助的診断手段として、各種の画像診断技術が用いられます。

 次のような画像診断技術が使われます。

 ・CT(コンピュータ断層撮影)
 ・MRI(核磁気共鳴)
 ・脳シンチグラフィ
 ・脳血管撮影

 また、脳波などの基本的な診断方法も使用されます。

 血液中に造影剤を入れて脳内血管を造影することで詳細な解析をします。

 肉腫の可能性がある場合には、MRIなどの画像検査で病巣の広がりを確認します。

 病名を確定のためには、患部に針を刺してがん細胞の一部を採取するか、小さい手術を行ってがん組織を採取し、病変部を顕微鏡観察して確定診断します。

ページのトップへ戻る

治療はどうやりますか?
〔脳腫瘍の治療〕

 脳腫瘍の基本的な治療方法は、外科手術による腫瘍の摘除です。

 良性腫瘍の場合には外科手術療法だけで治療が完了となることがあります。

 腫瘍の存在部位によっては、たとえ良性腫瘍だとしても外科的な摘出手術が困難な場合があります。

 また、悪性腫瘍の場合には外科手術だけでは完璧を期すことはできません。

 脳腫瘍は放置すれば非常に大きく増大化してしまいますし、やがては肺などに転移してしまいます。

 転移や再発を予防するため、摘出手術では、腫瘍周辺部の健康かもしれない組織を腫瘍ともども切除することがあります。

 このため、悪性腫瘍には手術療法の他に他の治療法が併用されます。脳腫瘍の具体的な治療方法は、次の療法が併せて用いられます。

 ・外科手術療法
 ・放射線療法
 ・化学療法
 ・免疫療法が

 また、手足を動かす神経をはじめ身体の多くの機能と関連する神経などに脳腫瘍が発生した場合などでは、寝たきりになるなど大きな後遺症が残るのを覚悟の上で、救命のためにこれらの神経の一部を除去してしまうこともあります。

脳腫瘍の治療法
〔外科手術療法〕

 脳腫瘍の基本的な治療法は外科手術による腫瘍の摘出です。

 良性の神経膠腫の場合であれば、腫瘍と正常脳組織との境界が明瞭であり、形状的にも摘出しやすく完全に除去可能であり、しかも再発の心配も少なくなります。

 しかし、良性腫瘍でも頭蓋底部に発生することもあり、手術には高度な技術が必要ですし、手術後の麻痺や視野欠損などの神経脱落症状がないわけではありません。

 悪性腫瘍の場合の外科手術の治療は、人間として活動できる時間をいかに延ばせるかという点に焦点が絞られます。

 重症度によっては治療後にかなりの後遺症が残ることも覚悟しなくてはなりません。

 悪性腫瘍の摘出では、悪性腫瘍は周囲の正常脳細胞に浸潤している可能性が高く、腫瘍そのものだけでなく周辺組織を大部分切除して再発の予防をはかります。

 このため、たとえ手術が成功したとしても、多くの場合、術後に片麻痺や言語障害などの重篤な後遺症が残ります。

 手術後には放射線療法や化学療法、免疫療法などを施すこととなります。

 現実問題として脳の悪性腫瘍では、外科手術で患部を摘出しても、平均余命は長くはありません。

 このため、脳の悪性腫瘍と診断が確定された時点で、外科手術のような積極的治療を断念することも多くなっています。


〔放射線療法〕

 がんの放射線療法は、放射線を患部に直接照射して腫瘍細胞を破壊する療法です。

 50~60Gy(グレイ)ほどの強度の放射線を十数回に分けて照射します。

 放射線療法では、感受性の高く効果が現われやすい腫瘍もあり、外科手術をしないで治療できる可能性もあります。

 感受性の高い悪性腫瘍には、胚細胞腫やリンパ腫、髄芽腫などがあります。

 特に、胚芽腫は非常に感受性が高く、放射線照射のみで治癒できる場合もあります。

 最近では、「ガンマナイフ (γ-knife)」や「サイバーナイフ (Cyber Knife)」など患部に放射線を集中砲火的に照射する技術が開発され、一部の腫瘍では高い治療効果がでています。


〔化学療法〕

 一般に、化学療法は薬剤を用いて腫瘍を死滅させたり縮小させたりする療法ですが、脳の腫瘍の場合には大きな関門があります。

 脳には「血液脳関門(BBB; blood-brain barrier)」と呼ばれる機構があって、異物の侵入を阻害する働きをしています。

 このため、薬剤を投与しても、この関門を通過することができず患部に到達することが難しいのです。

 とはいっても、一部の脳腫瘍に対しては、効果的な医薬療法も提唱されていて、それなりの効果が報告されています。

 神経膠腫には「テモゾロミド」という薬剤が用いられ、頭蓋内での悪性リンパに対しては「high-dose MTX療法」なる方法が使われています。


〔免疫療法〕

 免疫療法は、生体の免疫作用を高めて腫瘍の増大を抑制する療法ですが、現段階では、それほどの効果は期待できません。



ページのトップへ戻る

予後はどうですか?
〔脳腫瘍の予後〕

 脳腫瘍の予後は、腫瘍組織により大きく異なります。

 脳腫瘍全体での5年後の生存率は75%を超えるようになっています。

 脳腫瘍全国集計調査報告によれば、良性腫瘍の髄膜腫の場合の5年後生存率は93%とかなり高い率です。

 また神経膠腫全体では38%となっています。

 その他の脳腫瘍も含め5年後生存率は次のようになります。

脳腫瘍の5年後生存率
良性腫瘍  良性腫瘍である髄膜腫の場合で93%
神経膠腫全体  38%
神経膠芽腫  6~10%
悪性星細胞腫  23%(星細胞腫が66%程度)
下垂体腺腫  96%
神経鞘腫  97%
転移性脳腫瘍  13%


ページのトップへ戻る