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健康用語

〔高血圧・高血圧症〕


 人間の体に血液を循環させるために、ポンプである心臓は収縮と拡張を繰り返しています。

 心臓の左心室が収縮するとき、血圧が最大となり、拡張すすとき最小となります。

 通常、血圧の値を表す言葉として、収縮期血圧と拡張期血圧の二つがあります。

 二つの血圧値には、それぞれに最適範囲があり、どちらか一方でもその範囲を逸脱して高くなる状態を高血圧といいます。


 同じ人でも、その時の心身の状態、測定する環境、測定のタイミング、即提示の姿勢など様々な要因によって、値は変化するのが普通です。たとえば、日中は血圧が高くなり、睡眠時は低くなるなどの一般的傾向があります。

 高血圧には「本態性高血圧症」といって原因が特定できない高血圧症と、「二次性高血圧症」といって、腎臓病や内分泌系の異常などが原因で引き起こされる高血圧症とがあります。日本人患者の場合では、95%が本態性高血圧です。原因の特定は困難な部分があるが、高血圧の原因には遺伝的なものと生活習慣的なものとがあります。

 現在では、血圧降下剤などすぐれば医薬が開発されているので、生活習慣の改善とともい薬を併用することで、日常生活に支障ない程度には治療ができます。



どんな病気ですか? ◆〔高血圧・高血圧症〕とは、一体どんな病気なのかご説明します。
どんな病気ですか?

 人間の体に血液を循環させるために、ポンプである心臓は毎分60~70回くらい収縮と拡張を繰り返しています。この様子は手首などに親指を当ててみるとドクンドクン打っている脈拍で分かります。

 心臓が収縮して、血液を身体に押し出す瞬間、血管には強い圧力が掛かります。この時に示す最高血圧を収縮期血圧といいます。逆に、一旦収縮した後に心臓が拡張するときには、血圧は一番低くなり、この時の最低血圧を拡張期血圧といいます。収縮期血圧、拡張期血圧ともに最適な範囲があり、どちらか一方でも、その最適範囲を超えて高くなると高血圧、あるいは高血圧症といいます。

高血圧の分類

 ポンプである心臓の血液を押し出す力が強くて血液量(心拍出量)が多くても、あるいは、輸送経路である血管や末梢血管の抵抗が大きくても血圧は高くなります。このように心臓の状態と血管の状態とで現実の血圧は決まってくるわけです。

高血圧症判定基準  日本高血圧学会が高血圧治療ガイドラインとして定めた高血圧の分類を左図に示します。

 高血圧かどうかの判定は、血圧の値により多くの段階が定められており、高血圧といっても軽度のものから重症までといろいろな段階があります。

 図で分かるとおり、一口でいえば、収縮期血圧(最高血圧)が140mmHg 以上、または拡張期血圧(最低血圧)が90mmHg 以上なら高血圧症です。


どんな症状ですか? ◆〔高血圧・高血圧症〕の症状をご説明します。
高血圧の症状

 高齢になると高血圧症になる人が多いのですが、軽度の高血圧症では特別な自覚症状が出にくいとされています。逆に言えばはっきりとした自覚症状がでる頃には高血圧症がかなり進行しているとも考えられます。

 高血圧症により現れる自覚症状は、肩こり、頭痛、頭重、動悸、息切れ、耳鳴り、めまいなどです。これらの症状は風邪や疲れ、更年期障害、ストレスなどでも現れる症状ですので、高血圧症特有の症状ではありません。また、普段は温厚な人が何かの原因で高血圧状態になると、急にいらいらしたり、怒りっぽくなったりします。

 高血圧になると動脈硬化が進行し、血管が硬くもろくなることで、心臓血管系の病気に罹りやすくなり、死亡率も高くなります。

 自覚症状がでにくいので、最低限、年に1回は健康診断を受け、血圧も含めた身体の健康状態を把握することが重要です。


原因は何ですか? ◆〔高血圧・高血圧症〕の原因や発症の仕組みをご説明します。
原因による高血圧の分類

 高血圧には「本態性高血圧症」と「二次性高血圧症」とがありますが、日本人患者では95%が本態性高血圧とされています。

 高血圧症のうちで、さまざまな原因があるものの、どんな検査をしてもその原因が見つからない、あるいは特定できないという高血圧症を本態性高血圧と呼びます。また、腎臓病や内分泌系の異常など原因が分かっていて引き起こされる高血圧症は、二次性高血圧症と呼ばれます。

本態性高血圧の要因

 本態性高血圧症は、その原因の特定が難しいのですが、その中でも考えられる原因には、次のようなものがあります。遺伝的な原因は何ともしようがないけれども、その他のことは、これらを考慮することで、それなりの改善の効果を期待することはできます。

本態性高血圧の要因
遺伝的要因 ・ナトリウムが蓄積されやすい。
・交感神経が緊張しやすい。

環境的要因 ・塩分の取り過ぎ
・喫煙習慣
・ストレス
・運動不足



診断はどうなりますか? ◆〔高血圧・高血圧症〕の検査方法や診断方法をご説明します。
正しい血圧の測定方法

 高血圧の診断は、正式には水銀血圧計か、それと同じ程度の正確さをもつ自動血圧計で測定した数値によって高血圧症か、そうではないかを診断します。

 基本的に、血圧は測定する度に数値が変化してしまうので、測定結果を正確にするためには、15分間くらい安静にした後に測定するのが望ましいとされます。また、測定の直前にコーヒーなど刺激性の飲料などは飲まない方が信頼できる測定値が得られます。当然、測定直前における喫煙は厳禁です。

 血圧測定の方法には、指先や手首で測定する簡易型の血圧計というものもありますが、これらはあくまでも簡易的な測定に便利であっても、正式な診断用としては好ましくありません。

 血圧の正式な測定方法は、腕を締め付けながら行う方式のもので行いますが、高血圧かどうかの判断は、心臓とほぼ同じ高さに上腕部(二の腕)を上げて測定したときの結果で行います。

 病院などで血圧を測定しようとすると、それだけで緊張してしまい普段より高めの測定値がでてしまう人もいます。このように、お医者さんや看護師さんの前にでると緊張して、そのときだけ血圧が高くなるので白衣高血圧などと呼んでいます。最近では家庭で毎日、定められた時刻に測定する方法も推奨されています。

高血圧症の診断

 日本では、日本高血圧学会が日本人向けの高血圧治療ガイドラインというものを発表しています。上に示した図でお分かりのように、高血圧症の段階はかなり細かく分割されていますが、高血圧症状が進行すると人間の身体への影響がそれだけ大きいということを意味しています。

 高血圧症の程度は下表の高血圧症の判定基準値に示すように定義されていますが、日常的には、収縮期血圧が140mmHg 以上、または拡張期血圧が90mmHg 以上の場合、高血圧症と診断されます。

成人における血圧値の分類
分類 収縮期血圧 AND・OR 区分 拡張期血圧
至適血圧 <120 AND <80
正常血圧 <130 AND <85
正常高値血圧 130~139 OR 85~89
軽症高血圧 140~159 OR 90~99
中等症高血圧 160~179 OR 100~109
重症高血圧 ≧180 OR ≧110
収縮期高血圧 ≧140 AND <90


治療はどうやりますか? ◆〔高血圧・高血圧症〕の治療方法をご説明します。
高血圧リスクの層別

 日本高血圧学会では、高血圧症の危険度合いを「高血圧の程度」と「血圧以外のリスク要因」との組み合わせに基づいて、「低リスク」「中等リスク」および「高リスク」という三つのリスクに層別化しています。

高血圧患者のリスクの層別化
血圧分類
(収縮期血圧)
(拡張期血圧)
軽症高血圧
(140~159)
(90~99)
中等度高血圧
(160~179)
(100~109)
重症高血圧
(≧190)
(≧110)
危険因子なし 低リスク 中等リスク 高リスク
糖尿病以外の1~2の危険因子あり 中等リスク 中等リスク 高リスク
糖尿病・臓器障害・心血管病の3つの危険因子の内のいずれかがある。 高リスク 高リスク 高リスク

 高血圧症の層別ランクが低リスクの場合には、生活習慣の改善を行うことでよいとされますが、生活習慣の改善を半年以上継続しても血圧値が「140/90」未満に低下しない場合には、血圧降下剤などの服用が必要となります。

 また、中等リスクの段階では、生活習慣の改善を3か月継続しても血圧値が「140/90」未満に低下しないなら、血圧降下剤での治療を始めます。

 高リスクの場合は、放置すれば極めて危険な状態であり、高血圧リスクと判明した段階から生活習慣の厳しい改善と血圧降下剤による治療が必要となります。

生活習慣の改善

 高血圧を治療するには、本来ならその根本原因に基づいて治療すべきですが、現実問題として、高血圧の原因というのはなかなか特定することができません。高血圧症になる原因には、遺伝的なものの他に日常の生活習慣に起因する場合が多いので、先ずは正しい生活習慣を実行することが必要となります。

 その上で、どうしても血圧が正常領域にならないときは、血圧降下剤などの医薬による治療が必要となります。血圧降下剤は一度使用し始めると一生続けなければいけないこともありますが、服用を続けている限りは安定した血圧を維持することができるようになります。

 高血圧症の原因が分からないとはいうものの、頑張って次のようなことを実行すると効果があることが分かっています。

 ・食塩摂取量を制限
 ・脂質の摂取量を制限し肥満を防止
 ・アルコール摂取量を適量に
 ・禁煙
 ・適正体重を維持
 ・適度な運動療法

 生活習慣で高血圧を誘発するものとしては、食塩などの摂取量が多すぎる場合、運動不足の場合、過度な肥満の場合などがあります。食塩の摂り過ぎは高血圧ばかりでなく胃がんや心臓病などの原因にもなるので、減塩は絶対に必要です。日本高血圧学会で、通常の日本人に勧められている1日当りの塩分摂取の目標値は、10g未満ですが、高血圧患者の場合には7g未満となっています。

 塩分の多い食品の例をあげると、漬物、干物、しおから、ラーメンやソバなどの汁やスープ類などがあります。それに、味噌、醤油、ソースなどの調味料も当然、塩分含有量は多いです。高血圧を予防しようとしたら、料理はうす味にするのがコツです。また、体内の余分な塩分を排泄してくれるミネラルとしてカリウムがあります。高血圧の予防にはカリウムの多い食品を積極的に摂るのがおすすめです。カリウムは新鮮な野菜や果物などに多く含まれます。玄米やライ麦パンなどをカリウムが多いです。

 多くの研究から、肥満が高血圧の危険因子となっていることは明らかです。高血圧になりたくなかったら、先ず、標準体重を守る生活習慣を身につける必要があるのです。肥満は、その他の生活習慣病のどれにもよくないので、内分泌・代謝の病気の「肥満症」のページにまとめてあります。

 過度に肥満な人は、食べすぎと運動不足が大きな原因だと思われます。規則正しく運動する人は、肥満にもならないし、コレステロールなどの脂質量も適正のはずです。糖尿病などにもなりにくいといえます。一般に運動している間は血圧が上がりますが、軽い有酸素運動を毎日続けると、高血圧にはなりにくくなります。おすすめの有酸素運動は、ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、水泳などです。軽い運動は大切だけど、高血圧の人には重量挙げや懸垂のように、筋肉を長時間収縮させる運動は、息を止めてする無酸素運動となるから非常に危険です。

 冬の寒さが高血圧に悪いこともよく知られています。厳冬期には、お風呂場やトイレの温度の管理は十分にやりましょう。お風呂はあまり熱い風呂は避けて、ちょっとぬるめくらいの温度でゆっくり入るといいです。浴室と更衣室の温度差が大きいと危険です。高血圧の人は、冷水浴やサウナは厳禁です。

 人間だれにもストレスがありますが、感情が高ぶると血圧も上がります。高血圧を予防するには、ストレスは早めに解消して、心身をリラックスさせるといいです。ストレス解消の方法には、入浴、アロマテラピー、マッサージ、趣味に没頭、好きな音楽を聴く、ペットと遊ぶなどなど何でもいいのです。