一人の真面目で、几帳面で、正義感が強くて、責任感が強くて、仕事熱心な人間が、ある日を境にして、まったく突然にすべての意欲を失い、何もしなくなる、あるいは出来なくなることがあります。この人はその瞬間に燃え尽きたのです。これは典型的な「燃え尽き症候群」のパターンですが、英語では「バーンアウト・シンドローム」と呼ばれています。
燃え尽きぬけがらのようになってしまう危険性・リスクは誰にでもあります。特に危険性の高い人は、特別に使命感が強く、人並み以上に仕事に打ち込むようなタイプ、ぎりぎりまで我慢してがんばり続けてしまうタイプの人です。このような人は、ある日突然に燃え尽きてしまう危険性が大きいのです。
ここで考えて見ましょう。この燃え尽きた人を中心に表現する最適な言葉がまさに「燃え尽き症候群」です。一方、この人を外から見ると、どうでしょうか。この人は本来持っている自分の良いところも悪いところも、すべてを燃やし尽くしてしまい、今は中身が何もない状態です。そうですね、この状態こそ第一のパターンの「ぬけがら症候群」ということになるのです。
ぬけがら症候群には、もうひとつ特有なパターンが見られるのですが、特に女性に多いパターンがあります。女性は子供を生み育てるようになると、いつの間にか亭主のことなどそっちのけで、子供の成長する姿を眺めるのが唯一の楽しみ・唯一の生き甲斐のようになるものです。日夜、子供が立派に成長する姿を夢見ながら毎日を忙しく、楽しく過ごすようになり、いつの間にか子供なしでは生きられない自分を発見するのです。もう子離れができない心理状態になっているのです。
しかし、いつの間にか月日が経ち、子供は成長して独自の世界を持つようになると、親から離れて行ってしまいます。突然、唯一の目標、唯一の生き甲斐を失ってしまった母親は、どうしていいか分からなくなり、中身が抜け落ちたセミの抜け殻(ハイボコ)のようになってしまうのです。もう、考えることも、動くこともできなくなってしまいます。これもまたぬけがら症候群、第二のパターンのぬけがら症候群なのです。
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