ALS:筋萎縮性側索硬化症の症状
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筋萎縮性側索硬化症は、多くの場合、筋肉が痩せ肘から先に力が入らなくなり、手指が使いにくくなって始まります。口がもとらなくなったり、嚥下障害の症状で始まることもあります。
進行するに従い、箸がもちにくくなったり、水や食物を飲み込めなくなったり、呼吸することも困難となってきます。やがて、全身の筋肉が痩せて力が入らず起き上がることも歩くこともできなくなり、最終的には寝たきりになってしまいます。
しかし、症状が進行しても、意識や感覚、知能は最後まで正常で、眼球運動障害や失禁もみられません。聴力が正常であっても言葉を発することができないので、会話が困難となります。
このように、筋萎縮性側索硬化症では、重篤な筋肉の萎縮と筋力低下をきたし筋肉は動かなくなりますが、基本的に精神機能が衰えることはなく、筋肉以外の他の臓器に障害が及ぶことはありません。
後に原因の項で何故そうなるのかという詳細をご説明しますが、筋萎縮性側索硬化症の症状には大きく分けて「下位ニューロン症状」「球麻痺症状」「上位ニューロン症状」および「陰性四微候」の四つがあります。これらの各症状を下表に示します。
なお、筋萎縮性側索硬化症の症状は、発症すると進行が非常に速く、発症後3~5年の間に半数近くの患者が呼吸筋麻痺となり、自力で呼吸できなくなるるために死亡します。
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下位ニューロン症状
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下位ニューロン症状というのは、下位ニューロンが障害され破壊されるために起こる症状をいい、多くの障害が現れます。
筋萎縮
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四肢の筋肉が痩せ細ります。
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筋力低下
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力が入らなくなります。
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攣縮・れんしゅく
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手足がけいれんし、ぴくぴくするようになります。上記3つのような症状が、はじめは左右ばらばらに出はじめ、じきに左右対称にでるようになります。
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猿手
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手の親指の根元の筋肉のふくらみがなくなります。
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鷲手
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指が第一関節で曲がり鷲の足のようになります。
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垂れ足・鶏歩)
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足を引きずって歩くようになり、歩き方もぎこちなくなります。
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廃用性萎縮
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筋肉が使えなくなり、使われなくなった筋肉がますます痩せ衰えていきます。
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球麻痺症状
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球麻痺症状は、球神経の破壊により起こる症状をいい、多くの障害が現れます。球麻痺とは、延髄の運動神経核の変性により、顔や喉の筋肉を動かすための一群の神経が麻痺することで起こる障害です。
顔面・咽喉頭・舌の筋萎縮や、筋力低下をきたし、物が飲み込めなくなったり、言葉が不明瞭になったりします。球麻痺は食事や呼吸に困難を伴う直接生命に関わる症状で、酸素吸入など適切な対応が必要です。
嚥下障害
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食物が飲み込みにくくなります。
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構語障害
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ろれつが回らなくなり会話が困難となります。
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舌萎縮
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舌が縮んでしまいます。
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強制泣き・笑い
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顔が勝手に泣いたり、勝手に笑ったりしているかのように見えるようになります。
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開口不全
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口が完全には開けなくなります。
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流涎・りゅうえん
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よだれが流れ、止まらなくなります。
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上位ニューロン症状
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上位ニューロン症状とは、上位ニューロンの破壊により起こる症状をいい、多くの障害が現れます。上位ニューロンの障害では、四肢の筋萎縮や球麻痺、強制泣き・笑い、の他に腱反射などの亢進が見られます。
痙性・けいせい
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四肢の筋肉の緊張が高まります。
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腱反射亢進
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アキレス腱を叩くと、足が踏みつけるように反応します。足の裏の外側をなぞると、親指が反り返るバビンスキー反射と呼ばれる現象が起こります。更に、はさみ歩行などの症状も現れます。
下位ニューロンの機能として、足の膝の丸い部分の下を軽く叩くと、膝が跳ね上がる「膝蓋反射」があり、脚気の検査に使われる方法として有名です。通常なら上位ニューロンが下位ニューロンを制御していることでこのような跳ね上がり現象は顕著にはでませんが、上位運動ニューロンが破壊されると、下位ニューロンは勝手に動いてしまい、跳ね上がり反射現象が強く現れるようになります。
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陰性四微候
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陰性四微候というのは、筋萎縮性側索硬化症では、筋肉は大きく障害されるけれども、五感は障害されないという特徴があることをいいます。通常、感覚障害、眼球運動障害、膀胱直腸障害、褥創という4つの症状は、末期まで出現することはありません。
感覚障害
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感覚(いわゆる五感)は障害されない
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眼球運動障害
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目の動きは障害されない。眼筋麻痺はおきません。
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膀胱直腸障害
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排泄は障害されず、失禁などの膀胱・直腸障害はありません。
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褥創(じょくそう)
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床ずれ・褥創はできません。
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