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健康用語

〔DV:ドメスティック・バイオレンス〕


 「DV」や「ドメスティック・バイオレンス」という言葉は、日本語に直訳すれば「家庭内暴力」となります。

 ここでいうドメスティックとは、限られた領域=家庭という意味であり、バイオレンスは暴力・虐待という意味です。

 しかし、日本で「家庭内暴力」というと、子供が親に対して暴力を振るうという意味に限定的に解釈されてしまいがちです。


DV:ドメスティック・バイオレンスの種類
肉体的虐待  殴る、蹴る、引きずりまわす、物を投げつける、熱湯をかける、首を絞めるなど。

精神的虐待  大声で怒鳴る、罵る、脅す、無視する、妻の大事なものを破壊する、死んでやるなどという。

性的虐待  妻の望まないセックスを強要する、避妊に協力しない、ポルノを強要するなど。

経済的暴力  生活費を渡さない、妻に働きに行かせない、お金の使途をチェックする、買い物の決定権を与えないなど。

社会的暴力  妻が実家や友人と会わせない、電話や手紙をチェックする、妻の外出を妨害するなど。


 確かに日本人が直感的に解釈するいわゆる「家庭内暴力」もDVのひとつとして含まれてはいますが、DV、あるいはドメスティック・バイオレンスと言うときは、もっと広い意味になります。

 ドメスティック・バイオレンスとは、基本的には同一生活空間を共有する家族やその他のすべての人たち(配偶者・内縁関係の人・両親・兄弟・子供・親戚)から受ける、家庭内におけるすべての意味での暴力をいいます。

 しかし、現実的な広義の解釈では、現時点での同居の有無を問わず、元夫婦や元恋人など近親者間に起こるすべての暴力を指しています。左の表で示すような、一方が、他方を強制的に支配している状態がドメスティック・バイオレンスとなります。

どんな問題ですか? ◆〔DV:ドメスティック・バイオレンス〕はどんな問題なのでしょうか。
どんな問題ですか?

 既に述べたように、同居の有無は別として、元夫婦や元恋人なども含めて、配偶者や内縁関係の人・両親・兄弟・子供・親族などから受ける、家庭や集団内で起こるすべての暴力や虐待をDVあるいやドメスティック・バイオレンスといいます。

 DVの本質は強者が弱者に対して、一方的、強制的に暴力や虐待を行い支配しようとする状態をいいます。暴力や虐待のパターンには次のような多くの種類があります。

 DVには「身体的虐待」「精神的虐待」「性的虐待」「経済的暴力」および「社会低隔離」などの種類があります。

身体的虐待

 身体的虐待は身体的暴力も含み、身体的に傷害を負わせたり、恐怖を与える暴力行為をいいます。

 ・殴る。
 ・蹴る。
 ・引きずりまわす。
 ・物品をぶつける。
 ・熱湯をかけるなどで火傷させる。
 ・テーブルをひっくり返す。

精神的虐待

 日常的・一方的に相手をあざけったり、罵倒したり、無視したりして、相手が心理的恐怖を感じたり、ストレスとなる行為を繰り返す、言葉により相手を攻め立てるなどの行為をいいます。

 ・頻繁に脅したり、恫喝したりする。
 ・日常的に大声で怒鳴り、嘲り、罵倒する。
 ・こんなことも分からないのかと叱る。
 ・お前は何をやらせても駄目だと決め付ける。
 ・人前で欠点をあげつらう。
 ・悪意のある悪口・暴言・欠点の指摘をする。
 ・誰のお陰で生活できているんだと威張る。  ・何かあると、出てゆけと脅す。
 ・子供や肉親を殺してやるなどと脅す。
 ・友人と会わせない。
 ・終始、行動を監視する。
 ・ペットや子供を虐待してみせる。
 ・相手が大切にしている物を壊してしまう。
 ・相手を無視する。
 ・別れるなら死んでやるといって狂言自殺をほのめかす。

性的虐待

 相手の同意なしに、一方的に性交を強要したり、強姦する。無抵抗な者に対して一方的に性交するなどの行為をいいます。

 ・性交を強要し、拒めば殴るなどの暴力を振るう。
 ・無抵抗な者に一方的に性交する。
 ・避妊に協力してくれない。

経済的暴力

 夫が家計を管理していて、妻に生活費を渡さない。収入の状況は財産について何も知らせない、妻に働きに行かせないなど経済的に支配することをいいます。

 ・妻に生活費を渡さない。
 ・財産や家計の状況を何も教えない。
 ・妻を働きに出させない。
 ・お金の使い方をこと細かくチェックする。
 ・買い物の決定権を一切渡さない。

社会的隔離

 社会的隔離とは、夫が妻の行動を管理し、社会から孤立させてしまうような状況、女性を外部や情報から遮断して社会的に隔離してしまうような状況を言います。

 ・女性の外出を厳しく制限したり、妨害する。
 ・携帯電話などを持たせない。
 ・メールなどをいちいちチェックする。
 ・電話や手紙をチェックする。
 ・友人に会わせてやらない。


どんな症状ですか? ◆〔DV:ドメスティック・バイオレンス〕の事例をご説明します。
ドメスティック・バイオレンスの実例

 ドメスティック・バイオレンスの実例は、しばしば新聞やテレビで報道されています。これらには三つの種類に分けることができます。

ドメスティック・バイオレンスの実例
家庭内暴力
夫婦間暴力
恋人など親密な関係者間での暴力 夫や恋人など親密な関係にある又はあった男性から女性に対して振るわれる暴力


原因は何ですか? ◆〔DV:ドメスティック・バイオレンス〕の原因は何でしょうか。
暴力のサイクル

 暴力を振るうようになるには、それなりと理由や原因があります。人が暴力に訴えるまでの状態を「暴力のサイクル」という言い方をするのですが、それには三つの段階「緊張の蓄積期」「暴力の爆発期」および「平穏期」があります。

 多くの場合、暴力を振るうようになるパターンはこのようになっていて、これが何度でも繰り返されるのが普通です。問題は、このサイクルが徐々に短周期になり、暴力自体も激しさを増してくることです。

 長期間にわたりDVが続く場合には、ついには一種の決定的「終末期」を迎えることもあります。この段階では、被害者が逃げ出したり、あるいはそれまでの被害者が凶暴な加害者に変わることもあります。

緊張の蓄積期

 暴力を振るうのは、何らかの基本的な原因や理由が存在して、ある種の緊張が高まってからになるのが普通なのですが、緊張が高まりつつある段階では、加害者側と被害者側とでは微妙な関係が続きます。

緊張蓄積期の状態
加害者側  いらいら感などが高まりつつあり、被害者に対していろいろと文句や小言をいったり、無理な注文をつけたりするようになる。加害者の言葉や態度は徐々に荒っぽくなり、被害者を馬鹿にしたり、けなしたり、脅したりする。
被害者側  ひどい暴力がそろそろ起こりそうだいう気配と予感し始め、緊張と不安の中で加害者の様子を窺いながら毎日をビクビクと暮らしている。被害者は何とか緊張感をほぐそうと加害者のご機嫌をとったり、加害者の気分を害さないように過剰なまでの努力をする。

暴力爆発期

 ある日、突然、いつか始まると予期していた暴力行為が始まります。暴力は極めて破壊的でコントロール不可能な激しいものとなり、しばしば身体の危険、ときには生命の危険におよぶことがあります。

暴力爆発期の状態
加害者側  加害者の我慢の糸が切れ、とても些細な切欠が発端となり、激しい暴力を振るいはじめます。暴力を振るう切欠は、被害者とは何の関係もないことも少なくありません。加害者は、暴力を振るうことで自分の蓄積したうっぷんや緊張を開放しようとするのです。この時期が、最も暴力が激しくなる時期です。

 被害者を殴る、蹴る、首を絞める、物を投げつける、物を破壊するなど、被害者を恐怖に陥れるあらゆる行為をして、暴れまわります。

被害者側  被害者は、身体的に負傷させられたり、大怪我をして救急車を呼ぶような事態になることもしばしば起こります。事実、女性が怪我で救急車を呼ぶ最大の理由はDVによるものだといわれています。

 被害者は肉体的な傷害を受けるばかりでなく、自分がもっとも大切にしている物を破壊されたり、子供やペットを虐待されるなど、精神的な面でも深刻な被害を受けます。極度の恐怖で精神障害を発症したりすることもあります。


平穏期

 被害者に怪我をさせたりしたことで、加害者が謝罪したり、プレゼントを買ってきたりして見せかけの反省をしたりして、被害者を錯覚に陥れます。一見、加害者が優しくなることからこの時期をハネムーン期と呼ぶこともあります。しかし、この時期は長く続くことはなく、短期間で破綻します。

平穏期の状態
加害者側  加害者は、「自分が悪かった」「もう二度としない」などといって泣きながら謝罪したりします。外出すれば何かお土産を買ってきたり、プレゼンをしたりします。もう一度二人でやり直そうといって、素敵なレストランで食事したりします。

 これらは、半分は本気でも、多分に見せかけのことが多く、長くは続きません。最も悪いケースでは、ひどい暴力を振るったにも拘わらず、謝罪することもなく、たとえ一時期たりとも優しくなることもなく、ただ何事もなかったかのように振る舞うだけのこともあります。

被害者側  加害者が泣きながら謝り、もう二度としないなどというと、被害者はもしかしたら、加害者の本当の姿は優しいのではないかと錯覚したりします。こんなに後悔しているのだから許してあげようなどと考えます。

 特に、子供がいる場合には、もしも暴力を振るわれても、自分さえ我慢すればいいのだからと諦めることもあります。

 被害者は、加害者ばかりでなく、本当は自分も悪かったのかも知れないと考えたりもします。もう暴力はなくなるかも知れないと期待してしまいます。しかし、現実には、この期待はすぐに裏切られることになるのです。


終末期

 通常、被害者は永久に被害者のまま、来る日も来る日も加害者からの暴力に怯えおののきながら生き、何とかこの状況から抜け出したいと思いつづけます。長期にわたる暴力にもう我慢できなくなると、いよいよ終末期を迎えることになるのです。

 ある日のこと、被害者はちょっとコンビにまで行ってくるといって出かけます。そしてそのまま、決してその家に戻ることはなく、実家や別の隠れ家に逃げ込みます。これは「逃避型終末」です。加害者は暴力を振るう相手を失い、実家などに隠れている被害者につきまとうストーカーに変身します。実家などに嫌がらせをしたり、脅迫をしたりして、最後には警察のお世話になることが多いです。

 もうひとつの終末期はもっと恐ろしいものとなります。いつも暴力を振るっていた加害者が眠り込んでいる瞬間に、運命の終末がやってきます。いままで、被害者として暴力を受け続けてきた人が、加害者の頭部をビール瓶やナタで滅多打ちにし、殺害してしまうのです。

 DVの悲しい結末ですが、このような事件は毎年、各地で報告されテレビなどでも注目されています。加害者に変身した元の被害者は、精神的に追い詰められた結果のできごとであり、正常な判断ができなくなっていることが多いのです。このような殺人事件では、度重なる暴力を受けた結果、精神衰弱の状態が引き起こした事件として、刑罰が科せられない場合もあります。


何か方策はありますか? ◆〔DV:ドメスティック・バイオレンス〕の方策はどうするのか。
防止するための方策

 たとえ配偶者や恋人同士であっても、暴力により外傷を負わせたり、引き続く暴力により精神疾患を起こさせるような事態になれば、暴行罪や傷害罪に問われ、相手の同意なく性行為を強要すれば、強姦罪に問われます。

 ドメスティック・バイオレンスを防止する方策などあるのでしょうか。家庭内では妻が被害者となって、一方的に暴力に晒されるのが多いのですが、経済力を持たない妻は離婚したくてもそれができないのが普通です。たとえ、逃げ出しても無理やり連れ戻されることも珍しくはありません。結局、弱者である妻は泣き寝入りして我慢し続けることが多いのが実態です。

 日本では、2001年10月に、配偶者からの暴力の防止および被害者の保護に関する法律が施行され、ようやく改善の兆しが見えてきましたが、DVが本当になくなる時代はそう簡単にはやってこないでしょう。


どこに相談できますか? ◆〔DV:ドメスティック・バイオレンス〕をどこに相談できるか。
DV相談所

 ドメスティック・バイオレンスにあったとき、ただ泣き寝入りするのではなく、相談できるところがあれば、多くの弱い立場の人たちが救われます。まだまだ、完全に弱者を救済することは不可能としても、大きな助けになることは間違いありません。

 DVは根深い問題であり、それが起こる真の原因は部外者からは分からないことも多いので、解決は容易ではありません。解決を急ぎすぎて逆に相手を刺激し、もっと激しい暴力を受けることもしばしば起こります。

 被害者は、自分ひとりで悩まないで経験豊かな適切な専門家に相談にのってもらうのが事態解決の助けになるかも知れません。下記にそんな相談所のいくるかをご紹介しておきます。相談所によっては、DVの相談にのってくれる他、緊急の場合に一時的に保護してくれる所もあります。

DV相談所の例
警察 激しい暴力で傷害を負ったりした緊急時には警察に駆け込みましょう。
男女共同参画室 内閣府が運営する男女問題の情報提供サイトが役立つかも知れません。
婦人相談所 各都道府県に設置されていて、ドメスティック・バイオレンスの相談窓口があります。
女性センター 女性の抱える問題全般についての情報提供などを実施しています。
配偶者暴力相談支援センター 相談にのりカウンセリングしてくれたり、緊急時には被害者の一時保護などもしてくれます。
法律扶助協会 弁護士の紹介や裁判費用の立替をしてくれます。しかし、最終的には費用は自分で支払うことになるので、注意も必要です。
福祉事務所 母子生活支援施設などへの入所の窓口となっています。
児童相談所 18歳未満の児童に関する相談、保護などを行ってくれます。
保健所 保健師や心理職が、精神保健相談にのってくれます。
精神福祉保健センター 精神保健および精神障害者相談および指導を行う施設です。
人権擁護機関 法務局の人権に関する機関で人権相談を受け付けています。